毎度お馴染み、北海道千歳市――
この街の一角には、国際空港があると言う利点を活かした大型の生産拠点、
「臨空工業団地」が存在している。
地球征服の野望に燃え、その第一歩として千歳市への前線基地建設を企てる
暗黒星雲の無法者・怪獣軍団が、これを見逃すはずがない。
そう、今まさに奴らの猛威が、臨空工業団地へと迫っていたのだ!
イフ「いまぞ起て、我が怪獣軍団の戦士よ!
生産と流通の重要拠点、臨空工業団地を叩き潰すのだ――
いでよ! 破壊工作のベテラン、技を極めし宇宙の忍者よ!」
ピカッ、ゴロゴロドドーンっ!
一天、にわかに掻き曇り、空に奔る鋭い落雷。
閃光を伴い、虚空から浮き出るがごとく恐るべき姿を現したのは……
怪獣界でも屈指のメジャーさを誇る宇宙忍者・バルタン星人のひとりだ!
「ヴォッフォッフォッフォッ……!!」
バルタン族の中でもより戦闘的な、毒々しい外骨格に覆われたフォルムを有し
一般には“コスモスバルタン”の通称で呼ばれていたりもする彼。
だが、その呼ばれ方がどうあれ、持ち前の邪悪な心と行動は、この北海道にまた
大いなる災厄をもたらす存在であることには変わりない。
バルタン星人「フォッフォッ……不肖バルタン、ただいま到着いたしました!」
イフ「うむ、まずはご苦労!
改めて説明するまでもないだろうが、お前の果たすべき使命は――」
バルタン星人「臨空工業団地の完全破壊ですね、判っておりますとも!」
イフ「そうだ、まさにその通り!
臨空工業団地を完全に破壊し、その跡地へワシらの前線基地を築く……
地球人どもの生産・流通機構を混乱させ、怪獣軍団の地球征服を容易にする
まさに一石二鳥の作戦だ!」
スライ「んーふふ、そしてこの作戦の重要ポイントはもうひとつ――」
スライ「そう、未だ宙マンに気づかれていない、と言う事です。
宙マンの散歩ルートの調査データによれば、、ここに奴が来る心配はなし。
……と言うわけでバルタン君、一気にコトを進めちゃって下さァい!」」
バルタン星人「ヴォッフォッフォッ、ああ、任せとけ!」
バルタン星人「宇宙忍者と呼ばれた俺の実力にかかれば、こんな場所を
跡形もなく消し飛ばすなんてお安いご用さね。
どォれ、まずは爆弾を仕掛けるところから――」
「おおっと、そうはさせないぞ!?」
バルタン星人「(ギョッとして)むむっ、誰だ!?」
不意に響いてきた凛たる声に、驚いて振り返るバルタン星人。
次の瞬間、華麗な空中回転とともに舞い降りてきたのは……もちろん、この男だ!
宙マン「トゥアーッ! 宙マン、参上!
また懲りずに悪企みか……怪獣軍団、今度と言う今度は容赦しないぞ!」
バルタン星人「ゲゲェーッ、ちゅ、ちゅ、宙マン!?
どういう事だよ、“魔導の”スライ――
宙マンは、臨空工業団地にはやって来ないはずじゃなかったのかぁ!?」
イフ「(苛立って)……えぇい、スライよ、どうなっておるのだ!」
スライ「い、いやはや、こんな筈では……
宙マン、君の散歩コースにこの一帯は含まれていなかったはず!」
宙マン「ああ、散歩のコースかい?
毎度毎度同じじゃ、さすがにマンネリになるから……
今日はちょっと、道順を変えてみたんだ♪」
スライ「(絶句)……な、何ですとぉぉっ!?」
スライ「ぐぬぬぬっ、奴の気まぐれさは知っていたつもりでしたが……
……よりにもよって、こんな時にこんなところで!
これじゃ、私のメンツ丸つぶれじゃないですかぁっ!(涙目)」
イフ「えぇいっ、こうなれば作戦変更だ!
臨空工業団地を破壊するために、まずは邪魔な宙マンから始末するのだ!」
バルタン星人「ヴォッフォッフォッ、お任せを~!」
バルタン星人「邪魔者め、綺麗さっぱり片付けてやるぜ!」
宙マン「私も言ったはずだ、お前たちの悪企みを許しはしないと!」
激突、宙マン対バルタン星人!
曇天の下、臨空工業団地の一角を舞台に戦いのゴングが鳴り響いた。
両手の鋏で、左右からパンチ攻撃を繰り出してくるバルタン星人!
その攻撃を受け流し、かいくぐりながら、宙マンも果敢に反撃していく。
バルタン星人「どうだ、このヤロ、これでもかっ!」
宙マン「なんの!」
怒りに燃え、猛然と攻めかかってくるバルタン星人。
だが、その勢いに呑まれることなく、華麗な格闘技の冴えでこれと渡り合うのは
長年の経験に裏打ちされた、ベテランヒーローたる宙マンの真骨頂である。
パンチにチョップ、休みなく繰り出される両者のパワー技!
幾度となくそれらがぶつかり合い、周囲に強烈な打撃音が響き渡る。
ガキーン! バキーンっ!
いつ果てるともしれない肉弾戦、ここにおいて両者はほぼ互角。
だが、そんな攻防にしびれを切らし――
両者の間合いが離れたところへ、すかさずバルタン星人が破壊光線を放った!
宙マン「(よろめき)うわっ!?」
バルタン星人「ヴォッフォッフォッ、今だ!」
宙マンがバランスを崩したところへ、すかさずバルタンの突きがヒット!
さしものヒーローも、これにはたまらず地面に倒れこんでしまった。
宙マン「くッ、しまった!」
バルタン星人「ヴォッフォッフォッ、このままその首、ちょん切ってやるぜ!」
倒れた宙マンにのしかかり、一気にとどめを刺さんとするバルタン星人。
そうはさせじと、宙マンも必死で抵抗する。
両者の体が激しくもみ合い、地面を転がる――
息詰まる攻防の果て、次にマウント・ポジションをとったのは宙マンであった。
お返しだとばかりに、バルタンめがけてパンチの連打!
星人の戦意が萎えかけた隙を見逃さず、その体を高々と持ち上げる。
宙マン「ウオリャァァーッ! 宙マン・リフターだ!」
敵を一気に地面へ叩きつける、宙マンの豪快な投げ技が炸裂!
この痛烈なる一撃に、バルタン星人が大ダメージを受けたところへ――
「これでとどめだ! 宙マン・超破壊光線!!」
両手の間にエネルギーを集中させ、激しいスパークとともに放つ大技。
「超破壊光線」の直撃を受け、火花を散らす宇宙忍者のボディ!
バルタン星人「ぐ、グハァァァッ、こんなはずじゃなかったのに……
えぇい、宙マンめ……覚えてろ、今に見てろよ~ッ!」
捨て台詞を残し、赤い光を放ってフッと消えるバルタン星人の体。
やったぞ宙マン、大勝利!
イフ「おのれ宙マン……よくも、よくもやってくれおったな!
やはり貴様こそ、ワシら怪獣軍団が全力で倒すべき最大の敵……
次こそは更に怖ろしい怪獣を送りこみ、必ず息の根を止めてくれるわ!」
宙マン「ふぅっ……これでどうやら、この一件もやれやれか!
……うん、時々目先を変えるってのは、やっぱり大事なことだねぇ」
かくして、我らが宙マンの活躍によって――
臨空工業団地は、恐るべき怪獣軍団の魔手から救われたのであった。
今日も本当にありがとう、宙マン!
さぁて、次回はどんな活躍を見せてくれるかな?