遊びをせんとや生まれけり

全ての「面白がりやさん」へ――千歳より、愛をこめて。

秘境のお騒がせの巻

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入浴後に化粧水が必要ないほど、素肌に潤いをもたらすところから

「美人の湯」とも呼ばれる芦別温泉……

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そんな温泉の評判から、道内における一大観光地のひとつとして

賑わいを見せていた、北海道・空知地方の芦別市

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今回の『宙マン』は、その芦別市から物語を始めよう。

 

 

 

とは言うものの……

毎度お馴染みの宙マンファミリー、何も温泉に入りたいがために

この芦別を訪れていたわけではない。

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ビーコン「ヒヒヒ、オイラたちの目的はっスねぇ!」

落合さん「ご当地名物の“ガタタン”、これに尽きますわ!」

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宙マン「あちこちで、美味しいと言う評判は聞くものだから……

 ぜひ一度、機会を見つけて食べてみたかったんだよねぇ」

ピグモン「はうはう~、ピグちゃんも今からワクワクなの~♪」

 

そも“ガタタン(含多湯”とは何ぞや?

結論から言ってしまえば、ボリュームがあってとろみのついたスープのこと。

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第二次大戦後、旧満州から芦別に引き揚げてきた

村井豊後之亮(むらい・ぶんごのすけ)氏が、同市の中華料理店

「幸楽」で供したのが始祖である、と伝えられている。

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白菜・人参・豚肉・イカ・ホタテ・山菜・団子・玉子などの豊富な具材の旨味を

鶏ガラベースと塩味の、あっさり優しいスープのとろみに閉じ込めたおかげで

ご当地の厳しい寒さにおいても、旨さや熱さを逃すことなく頂ける一杯。

 

そんなガタタンを求め、宙マンファミリーが訪れた市内のレストラン。

何はなくともメニューの注文、と思いかけたその時!

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ピグモン「(ピクっと震えて)……あっ

 

落合さん「あら、どうしましたの、ピグモンちゃん?」

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ピグモン「んっとね、なんかね、変な感じがしたの~。

 ぞわぞわっとして、ちょっと怖いような、嫌な感じ……」

落合さん「嫌な感じ……ですか?」

ビーコン「ヒヒヒ、なんともないっスよ~、ピグモン

 気のせい、気のせい、ただの考え過ぎ……」

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宙マン「いや、ピグモンは勘の鋭い子だからね。

 ただの気のせいとばかりも言えないと思うよ」

落合さん「まぁ……お殿様も、何か事件の前兆とお考えで?」

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宙マン「そればっかりは、実際に確かめてみない事にはね。

 ……私も気になってきた、ちょっと様子を見てくる!」

ビーコン「ちょ、今からっスか!?(汗)」

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落合さん「お殿様、お殿様ったら!

  ……メニューのご注文はどうなさいますの!?」

宙マン「ガタタン一択。……なぁに、すぐに戻るよ!」

ビーコン「……ちょ、アニキ! アニキってばー!」

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一度気になり出すと、どうにもこうにも止まらない。

かくして宙マンは、店を飛び出し……一路、芦別市の郊外へ。

 

そんな宙マンの懸念が、杞憂であってくれればよかったのだが。

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ああ、だがしかし……

事件の予感は、不幸にも的中したのである。

 

見よ、芦別市郊外の原生林に忽然と姿を現した不気味な姿を!

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「ぐおおお~んっ!!」

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異様な唸り声、鎧のように分厚い髭、巨大発達した耳……

幾度も地球を襲い、宙マンとも死闘を繰り広げた異次元宇宙人。

怪獣軍団の一員、イカルス星人の同族だ!

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イカルス星人「ぐぉぉ~んっ……魔王様、ゾネンゲ博士!

 不肖・イカルス星人、ただいま地球に到着致しました!」

ゾネンゲ博士「うむうむっ、ご苦労!」

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ゾネンゲ博士「さて、恒星間長距離移動の直後で悪いが……」

イフ「お前には早速、仕事にかかってもらわねばならん。

 ワシがお前に与えたる使命、それは即ち――」

イカルス星人「我々の悲願、北海道への前線基地建設!」

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イフ「そうだ、その通りだ、イカルス星人!

 かつて四次元世界に基地を築き、地球攻撃を有利に進めた

 異次元宇宙人の手腕に、ワシは大いに期待しておる!」

イカルス星人「ぐぉぉ~んっ、万事この私にお任せ下さい!」

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イカルス星人「千歳から遠く離れた、この芦別の山奥ならば……

 秘密基地の建設工事を進めたとて、誰にも気付かれは――」

 

「はっはっはっはっ……

 果たして、そう思い通りにいくものかな!?」

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イカルス星人「(ギョッとして)むむっ、何奴!?」

 

不意に響いてきた凛たる声に、驚いて振り返るイカルス星人。

次の瞬間、華麗な空中回転とともに舞い降りてきたのは……

もちろん、この男だ!

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宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!

 地球侵略の前線基地など、この私が作らせはしないぞ!」

イカルス星人「ぐぬぬぬ……おのれぇ、宙マンめっ!」

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イカルス星人「ど、どうしてここが判った!?(汗)」

宙マン「ふとしたと、日頃の行いの賜物さ!」

イカルス星人「な、何たる強引な! 納得いかんぞ!?」

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怒り、息まくイカルス星人を前に……

宙マンもまた、ファイティングポーズをとり、身構える。

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一気に高まる緊張感!

ただならぬ気配を察して、野鳥の群れが一斉に飛び立つ――

その荒々しい羽音が、両者の戦いのゴングとなった。

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イカルス星人「ぐぉぉ~んっ……納得いかん、納得いかんっ!

 納得いかんから、まずは貴様を叩きのめしてやる!」

宙マン「なんの、叩きのめされるのはお前のほうだ!」

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片や軽快なフットワーク、片や不気味な瞬間移動で……

じりじりと間合いを詰め、同時に突進していく宙マンと星人。

さぁ、今回もまたビッグファイトの幕開けだ!

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ついに激突、真っ向から相打つ宙マンとイカルス星人。

芦別の滝壺と岩場に、両者の繰り出す打撃音が響き渡る。

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持ち前の獣性を前面に顕し、荒々しく迫り来るイカルス星人。

その猛攻をかいくぐりつつ、宙マンも怯まず渡り合っていく。

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イカルス星人「ぐぉぉ~んっ、これでもか、まだ参らないかッ!」

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宙マン「なんの、それしき!」

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がっぷり四つに組み合っての力比べ、そこからのパンチ・チョップの応酬!

いささか泥臭いが、凄絶そのものの死闘がダイナミックに展開される。

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宙マン「さぁ、どうした――もう手詰まりかね!?」

イカルス星人「ぐぉぉ~んっ、ナメおって!!」

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怒りとともに、イカルス星人の右手から迸るエネルギー。

あらゆる物を焼き尽くす、集束アロー光線だ!

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「う、うわぁぁぁぁ……っ!!」

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イフ「よぉし、よしよし……その調子だ、イカルス星人!

 地球侵略の前線基地建設、何人たりとも邪魔させてはならん!」

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イフ「分かっておろうな、そのためにこそ……

 ここで油断せず、一気に宙マンへとどめを刺してしまうのだ!」

イカルス星人「ぐぉぉ~んっ、お任せ下さい、魔王様!」

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宙マン「(苦悶)う、ううっ……うっ!」

イカルス星人「ぐふぉふぉ……

 馬鹿な奴め、ここで出しゃばったのが運の尽きよ。

 ……さぁ、潔く死んでもらうぞ、宙マン!!」

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瞬間移動で一気に間合いを詰め、宙マンへと迫るイカルス星人。

だが、これしきで挫ける宙マンではない――

残された気力と体力を一気に振り絞り、パワー全開!

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宙マン「なんの……負けて、たまる、かぁぁっ!

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イカルス星人「(驚き)ぐ、ぐおおおっ!?」

 

宙マン「エイヤァァーっ! 宙マン・ミラクル・キック!

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出た、電光石火の必殺技!

ラクルキックの直撃に、イカルス星人が倒れたところへ――

 

宙マン「受けてみろ! 宙マン・超破壊光線!!

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両手の間にエネルギーを集中させ、激しいスパークとともに放つ大技。

「超破壊光線」の直撃を受け、火花を散らす異次元宇宙人のボディ!

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イカルス星人「(悶絶)……や、やられたっ、こりゃたまらん……

 ちゅ、宙マンめ、覚えてろ~っ!!

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捨て台詞を残し、その場からふっと消え去るイカルス星人の姿。

やったぞ宙マン、大勝利!

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イフ「ぐ、うぬうううっ……よくも、よくもやってくれたな!

 だが、これしきの事で図に乗るでないぞ、宙マンよ。

 怪獣軍団には、まだまだ強力な怪獣どもがおるのだからな!」

 

……などと言う、いつもの負け惜しみはさて置いて。

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宙マン「ふぅっ。……これでどうにか、やれやれか!」

 

かくして、我らが宙マンの活躍によって……

イカルス星人は撃退され、芦別の平和は守られたのであった。

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そして、そんな正義の戦いに対するささやかな報酬として……

宙マンもまた、ファミリーから少し遅れて、芦別市の名物料理たる

「ガタタンラーメン」を心行くまで堪能したのは言うまでもないだろう。

 

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今日もやったぞ、さすがだ宙マン――

だが、悪の野望はとどまるところを知らない。

さァて、次回はどんな冒険が待っているのかな?