……寒いっ!!
という一言だけで、全てが説明できてしまうのが「らしい」と言えばらしい
現在、1月下旬の北海道。
冬場の寒さが厳しいのは、毎年のこととはいえ……
その要因が、観測史上でも屈指とされる最強寒波によるもので
日中でもマイナス10度越え、とくれば、さすがに話は別である。
そんな中、今回も幕を開ける『宙マン』のお話。
寒い、寒い、本当に寒い……北海道千歳市から物語を始めよう。
と、言うわけで。
こちらは毎度お馴染みの舞台……
北海道千歳市・ほんわか町5丁目の『宙マンハウス』。
で、なんせ最強寒波の真っただ中にある北海道であるから……
落合さん「うう~、今日はまた、一段と冷えますわね!」
と、これまたお馴染み・メイドの落合さんの発した第一声が
そんなボヤキだったとしても、決して彼女は責められまい。
落合さん「パネルヒーターの暖房レベル、いつもより大きめですのに……
何でしょう、不思議と暖房が効いている気がしませんわ」
宙マン「たはは、何しろ外の寒さが寒さだからねぇ」
ビーコン「ちょっと外に出ただけで、寒いって言うより……
むしろ「痛い」んスよね、寒気が肌にヒリヒリして!」
ピグモン「えう~、これじゃ、お外で遊ぶどころじゃないの~」
ビーコン「いやいや~、こんな寒い中、外出なんて自殺行為っスよ。
ここはもう、ひたすら家に引きこもって護りの一手……
あったかくして、ダラダラ怠惰に過ごすに限るっス!」
落合さん「“怠惰”はともかく、それしかないんでしょうね。
幸い、我が家の冷蔵庫には食材の備蓄が行き届いておりますから
三日や四日の籠城でもビクともしませんわ」
宙マン「おおっ、そりゃ頼もしい!
それじゃ今夜の夕飯にも、うんと期待が持てそうだね」
落合さん「(頷き)今夜は“レモン鍋”を予定しておりますわ」
宙マン「ほう、レモン鍋……?」
落合さん「何でも、広島のレモン農園が発祥のお鍋だそうで。
たっぷり二個分のレモンと水菜で、鱈や牡蠣などの魚介類を
さっぱり爽やかに頂いてしまおうと言う趣向ですわ」
宙マン「ほぉ、いいじゃないか、そりゃ旨そうだ!」
落合さん「ただ、何ぶん今回が初挑戦のお料理ですので。
お殿様たちのお口に、少しでも合えば良いのですけど……」
ビーコン「ヒヒヒ、大丈夫っスよ、落合さん。
不味かった時は、落合さんのカラダで口直しっスから♪」
落合さん「(赤面)っがー、このセクハラ怪獣っ!
まだ昼間で陽も高いうちから、何て言う問題発言をっ……!」
落合さんの怒りが、ビーコンへの鉄拳制裁となろうとした時。
そう、事件が起こったのは、まさにその時であった!
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラっ!
落合さん「きゃ、きゃあああっ!?」
ビーコン「うわ、うわ、うわ~っス!」
のどかな、平穏な時間を破るかのように……
不意の局地的大地震が、またまた千歳の街を襲った。
大量の土砂を天高く撒き上げ、舗装道路をもやすやすと引き裂いて
地の底から今また新たに、その姿を現わさんとしている邪悪な影。
……果たして、それは!?
「ムギュギャギャギャ~っ!!」
コンクリートの舗装をブチ破り、地底からその姿を現す大怪獣。
棘状の無数の足を蠢かせ、太く長い胴体をくねらせ這い出た異形は
まさに「大百足」としか形容のしようがない怪物である。
ピグモン「ああっ、怪獣なの!」
宙マン「あいつは確か……百足怪獣・ドグマだったっけな!?」
所謂「怪忍獣」たちの里としても密かに知られる怪獣界のメッカ、
紀州・根来谷出身の巨大な百足怪獣ドグマ。
宙マンの豊富な経験と記憶の中に、その名前があったのである。
落合さん「よりにもよって、こんな真冬に虫の怪獣さんだなんて……
少々、季節感覚なさすぎじゃございません!?」
ビーコン「そうそう、そーっスよ、それそれ!
虫なら虫らしく、春先とか夏場を選んで出りゃいいのに!」
ドグマ「ムギャギャ、拙者も最初はそのつもりだったでござるのよ」
ドグマ「だけど……観測史上屈指とかの、この寒波だろ!?
冬眠休暇をとって、春先まで眠ってる予定だったものの……
寒くて寒くて、とても寝てられる状況じゃねぇっ!!」
ビーコン「……な、なんつー理由で……!(呆)」
落合さん「ですが、そう感じるお気持ちは分かる気がしますわ。
今年の寒さは、本当に記録的ですもの……
ですから今日のところは、大人しく帰って頂けません?」
ドグマ「ムギュギュギュ、う~むっ……」
イフ「えぇい、ドグマよ、そんな口車に乗せられるでない!
寒い時にはな、とにかく元気に暴れるのが一番だ――
街を炎に包めば、無理なく暖もとれて一石二鳥だぞ!?」
ドグマ「ムギャ~、さっすが魔王様! んじゃ、早速そのように!」
寒さに震えつつ、ヤケクソで進撃を開始するドグマ!
唸りをあげて迫る巨体から、悲鳴をあげて逃げ惑う人々。
落合さん「あらあら、せっかく平和的に落着だと思ってましたのに!」
ビーコン「イイところまで行ってたはずなんスけどね~!?」
ピグモン「はわわわ、いいからとにかく逃げるの~!(汗)」
だが、そんな百足怪獣ドグマの進撃を阻むべく……
航空防衛隊の精鋭たちが、直ちにスクランブルをかけた。
ビーコン「おおっ、またまたいいタイミングぅ!」
落合さん「今回こそは、期待したいです……本気で!(汗)」
ピグモン「はうはう~、おじさんたち、がんばってなの~!」
「ようし、やるぞ……全機、一斉攻撃開始っ!」
戦闘機編隊、ロケット砲による一斉攻撃!
だが、その凄まじい弾着にも怯まず、猛然と進み続けるドグマ。
「な、何て奴だ……全く効いていないだと!?」
ドグマ「ムギャギャギャ、格が違うぞなもし!」
「……ど、どわぁぁぁ~っ!?」
ドグマの吐き出す火炎で、次々に撃墜されていく戦闘機!
そして、その洗礼は千歳の市街地にも容赦なく及び……
ズガーン! グワーンっ!
爆発、炎上!
平和な千歳の街は、みるみるうちに炎の地獄と化しつつあった!
ドグマ「ムギャギャギャ、よしよし、あったまってきた~♪」
ピグモン「えう~、あんなこと言ってるの~(泣)」
落合さん「あの怪獣さんは、それでいいのかもしれませんけど……
この寒空に放り出される、私たちは堪ったものじゃありません!」
ビーコン「アニキ~、ここは一発なんとかして欲しいっス!」
宙マン「ああ、もっともだ、やるともさ!
宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、ドグマの前へと舞い降りる!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
怪獣軍団の悪党め、寝ぼけるのももそこまでだ!」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「いえっふ~、出たっス、アニキの十八番!」
落合さん「お殿様、しっかり! この落合がついておりますわ!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
ドグマ「ムギャギャギャ~っ、出おったな、宙マン!」
宙マン「百足怪獣ドグマ、正義の力で打ち砕いてやる!」
ファイティングポーズを取り、敢然と身構える宙マン。
さぁ、今こそ世紀のスーパーバトル開幕だ!
ドグマ「ムギャギャ~、そして今すぐ閉幕だァ!」
ドグマの火炎を、すかさずプロテクションで無力化する宙マン。
その際に生じた閃光と爆音が、戦闘開始を告げるゴングとなった。
激突、宙マン対ドグマ!
落合さんたちがハラハラと見守る中、死闘が展開される。
ビーコン「うおぉぉ、アニキ、ファイトっスよ~!」
ピグモン「宙マンしっかり、がんばってなの~!
落合さん「もはや勝利の栄光は目前ですわ、お殿様!」
鋭い前足の爪で斬りかかってくるドグマ!
その一撃をクロスガードで受け止めた宙マンは、怯むことなく
果敢にドグマの内懐へと飛び込んでの接近戦を挑んでいく。
宙マン「それっ、どうだ、これでもか!」
ドグマ「ムギュギュッ、ムギャギャギャ~っ!」
うねるドグマの巨体を、ぐっと両腕で抑えこみにかかる宙マン。
そのまま首絞めで、相手をギブアップさせる作戦だったが……。
何と、驚くべきはドグマのスタミナと怪力!
宙マンの締め技を強引に振りほどき、素早く間合いを取るや……
そのまま一気に、宙マンめがけて突進してきたではないか!
「う、うわぁぁぁぁ……っ!!」
ドグマの殺人頭突きがヒット!
大きく吹っ飛ばされ、ドドーッと地面に叩きつけられる宙マン。
落合さん「……お、お殿様っ!?」
ビーコン「寒さのせいか、冬眠途中で目ぇ覚まされたせいか……
ヤバいっスよ、あいつ、メチャクチャ気が立ってるっス!(汗)」
ピグモン「はわわわ……宙マン、まけないでなの~!」
大ダメージを受け、なかなか立ち上がれない宙マンめがけ……
一気にとどめを刺さんものと、猛然と突進してくるドグマ!
ドグマ「ムギャギャギャ、これで終わりだ、宙マン!」
宙マン「なんの……勝負は、ここからだッ!
怒れ稲妻! 宙マン・ボルトサンダー!!」
ピカッ、ゴロゴロドドーンっ!
宙マンの気合とともに、念動力で発生させる正義の稲妻!
眩い閃光とともに、ドグマの背中を直撃したボルトサンダーが
大百足の全身を猛然と駆け巡り、容赦なく痛めつけて――
ドグマ「ム、むぎゅぎょぎょっ、これは効くぅぅ~っ!?」
宙マン「とどめだ!
宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、ドグマを直撃!!
ドグマ「ムギャァァァッ……無念、怨念、おぼえてろ~っ!!」
やったぞ宙マン、大勝利!
ビーコン「いえっふ~! やったっスねぇアニキ、さすがっス!」
落合さん「期待以上にお見事でしたわ、お殿様!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、ありがとうなの~♪」
イフ「うぐぐぐっ、おのれ……
やはり、冬眠途中の寝覚めでは無理があったか!
だがしかし、これしきでいい気になるなよ宙マンめ。
我が怪獣軍団には、まだまだ強豪が控えておるわ……!」
……などと言う、いつもの負け惜しみはさて置いて。
かくして、我らが宙マンの活躍により……
百足怪獣ドグマは倒され、千歳の平和は守られたのであった。
ビーコン「や~、アニキ、どうもお疲れ様っした!」
宙マン「はっはっはっ、みんなの応援のおかげで勝てたよ。
……に、しても、アレだ。
戦いが終わってみると、やっぱり寒さが堪えるねぇ!」
落合さん「えぇ、確かに……
何といっても、観測史上屈指の最強寒波ですものね」
ビーコン「百戦錬磨のアニキも音ぇあげるなんざ、よくよくっスよ」
宙マン「ああ、こないだのラゴラスが可愛く思えるぐらいだもの!
ピグモン「早く帰って、おうちであったまるの~」
宙マン「あぁ、そうしよう、それがいい。
あったかい料理に、あったかい風呂……
そしてみんなで、のんびり待ったり過ごすのが一番さ」
落合さん「えぇ、お殿様の仰る通りですわ!」
ビーコン「ヒヒヒ、オイラも異議なし、激しく同意っスよ!
なんせねぇ、こう凄まじい冷え込み方じゃ……
オイラの下ネタも、いまいち切れ味が鈍っちまうっス!」
落合さん「(呆れ)生涯封印して下さって構いませんのよ、ソレ!?」
宙マン「はっはっはっはっ……さぁ、それじゃ、帰ろうか!」
最強寒波も、えんやこら……
怪獣退治だ、どっこいしょ。
頑張れ宙マン、次回もまた頼んだぞ!