じわじわと雪も溶けてきて……
新たな季節の足音が、確実に近づいてきている北海道。
大地を暖め、みんなの心を明るくしてくれる季節。
そう、寒さの厳しい北国にも、春はしっかり訪れるのだ。
柔らかな、春のぬくもりの中で幕を開ける今回の『宙マン』。
舞台はもちろん、北海道千歳市である。
さて、毎度おなじみ、落合さんとビーコンの極楽コンビ。
今日は市内在住の知人に依頼されていた諸々の届け物をするため
連れ立って外出していたのであった。
落合さん「ふぅ~、無事に任務終了、っと!」
ビーコン「水元さん、喜んでくれてホントよかったっスねぇ」
落合さん「えぇ、それが本当に何よりです。
……荷物持ちを引き受けて下さったビーコンさんにも
一応、お礼は申し上げておくとしましょうか」
ビーコン「ヒヒヒ、感謝は具体的に示して欲しいっス、落合さん!
そう、具体的に言うなればっスねぇ……」
落合さん「(ジト目)……セクハラは無しですからねっ!?」
ビーコン「チッ、先回りされちまったっス!」
落合さん「やっぱりそのおつもりでしたのね……(汗)」
ビーコン「ンじゃまぁ、昼飯おごってもらうンで手ェ打つっスよ。
そう、具体的には肉汁したたるステーキとか!」
落合さん「ほら来た、最初からそういう腹でしたのね!?
ビーコンさんがお手伝いを妙にあっさり引き受けて下さったから
どんな魂胆かと、密かに訝しんではおりましたが……」
落合さん「あなたとお出かけすると、結局は高くつくんですもの!」
ビーコン「あいや、それがまた、さにあらずなんスよ落合さん!
ボリュームたっぷり、200gのステーキ……
香ばしい炭火焼きで、ランチタイムなら1300円っスよ!?」
落合さん「あらまぁっ、それはまた……
不覚にも、心動かされてしまいますわねぇ」
ビーコン「ヒヒヒ、そうこなくっちゃっス!」
ビーコン「いよっしゃ、そんじゃ昼はステーキ一択で!
アニキとピグモンには内緒で、ゴキゲンなランチっス~☆」
落合さん「もう……悪い怪獣(かた)ですわねぇ、ビーコンさん」
ビーコン「ヒヒヒ、お代官様のお仕込みっス♪」
と、言うわけで……。
用事を済ませた極楽コンビが、自分たちだけで美味しいステーキに
舌鼓を打とうか、と言う時。
そう、事件が起こったのは、まさにその時であった!
ズゴゴゴグワァァーンっ!
ビーコン「(目がテン)……へっ?」
落合さん「な……何ですの、何なんですの~!?」
爆発! 炎上!
そして、事態はただそれだけにとどまらず――
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラっ!
落合さん「こっ、これはもしかして……」
ビーコン「今度もまたまた、もしかするんスか~!?」
そう!
残念ながら今回もやっぱり「もしかする」のである。
激しく大地を揺さぶる局地地震とともに……
天高く土砂を吹き上げながら、地上に姿を現した者とは!?
「ギュロロロ……っ!!」
極彩色の体色も鮮烈な、芋虫のごとき異形の巨体。
怪獣軍団の一員、でんぱ怪獣バタイユだ!
バタイユ「ギュロロロ……しょ、紹介ありがとうなんだな!」
バタイユ「と、言う訳なんで……よ、よろしくなんだな!」
ビーコン「どひ~っ、色々すっ飛ばしすぎっス!」
落合さん「出来ればあまり、よろしくしたくもないですわねぇ!(汗)」
ヴィラニアス「ガハハハッ、いい感じで嫌がられてるな、バタイユ!
それでいいんだ怪獣は、まずは一点先取だぜ!」
イフ「そのまま勢いに乗って、千歳を徹底的に破壊せよ。
さぁ行け、やるのだバタイユよ!」
バタイユ「お、お任せなんだな、魔王様~!」
怪獣魔王らの命を受け、猛然と進撃開始するバタイユ!
迫り来る巨体を前に、人々は逃げ惑うより他に術がない。
ビーコン「どひ~っ、エラいことになっちまったっスねぇ!」
落合さん「毎度コレですもの、参りますわねぇ!」
おお、僕らの街……北海道千歳市が、またまた大変だ!
だが、そんな怪獣バタイユの暴虐を阻まんものと……
ビーコン「頼んだっスよ~、航空防衛隊!」
落合さん「頑張って下さいませ、応援しておりますわ!」
「ようし……全機、一斉攻撃開始だっ!」
激しいアタックをかける戦闘機隊!
持てる火力の全てが、怒濤のごとく電波怪獣へ叩きこまれる。
バタイユ「そ。そんなもの……効きゃしないんだな!」
「……う、うわぁぁぁぁ~っ!?」
一機、また一機……
バタイユの殺人メーサー光線で撃墜されていく戦闘機。
落合さん「(戦慄)……な、何て威力なんでしょう!?」
ビーコン「ガタガタブルブル、おっそろしいっスね~!
……あ、でも、それはそれとしてっスね」
落合さん「へ?……何ですの?」
ビーコン「ステーキに限った話じゃないスけど、香ばしく焼けた肉に
どーしてああも、白い飯ってやつが合うんスかねぇ!?
う~ん、オイラ思うに、むしろご飯の方がおかず……」
げ し っ !
落合さん「……ねーいっ、少しは状況を弁えなさいっ!!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、あまりの恐怖に現実逃避っスぅぅ~」
……などと言う、極楽コンビのおバカなやりとりの間にも。
バタイユはますます荒れ狂い、千歳の街を蹂躙していく!
バタイユ「ち、千歳市民諸君、思い知ってくれたかな? な!?」
爆発! 炎上!
ピンチのさなか、のんびりとその場に姿を現したのは……。
宙マン「やぁ、いたいた、ここだったのか落合さん!」
ピグモン「二人の帰りが遅いから、心配になって来てみたの~」
落合さん「ああっ、お殿様、いいところへいらっしゃいました!
実はかくかくしかじかで……」
ビーコン「……って言うか、
この有様を見てもらうのが一番早いっスけどね~(汗)」
ピグモン「(周囲を見回し)……はわわ、
なんか大変なことになっちゃってるの~!」
宙マン「(頷き)……なるほどね。よーっく、判ったよ」
落合さん「お殿様、今回もまた……お願いできますかしら!?」
宙マン「ああ、これはどうやら出番のようだね!
宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、バタイユの前へと舞い降りる!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
これ以上の傍若無人な振舞いは、私が許さんぞ!」
ズ、ズーンっ!!
落合さん「よろしくお願い致しますわね、お殿様!」
ビーコン「こうなったらもう、アニキだけが頼みの綱っス!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
バタイユ「しょ、性懲りもなく出てきたんだな、宙マン!」
宙マン「この状況、さすがに黙って見過ごせないからね!」
ファイティングポーズで敢然と身構える宙マン。
さぁ、今日もまた、世紀のビッグファイトの幕開けだ。
バタイユ「じゃ、邪魔をするなら……叩きのめしてやるんだな!」
宙マン「いいだろう、勝負だ!」
宙マン対バタイユ、真っ向から激突!
落合さんたちが見守る中、巨大戦が凄絶な火花を散らす。
どちらかと言えば鈍重で、ややスローモーなバタイユ。
が、芋虫を思わせるボディに秘められたパワーは侮れず――
それを熟知しているからこそ、宙マンも慎重にならざるを得ない。
ヘビー級のボディを唸らせ、突進してくるバタイユ!
真っ向からこれを迎え撃つ宙マンーー
大地を揺るがし、両雄の激しい格闘戦が展開される。
宙マン「それっ、こいつを受けてみろ!」
宙マンの繰り出す浴びせ蹴り!
鞭のように鋭いその一撃が、バタイユを怯ませる。
バタイユ「(呻いて)ぐううっ……なんだな!」
宙マン「どうだバタイユ、正義の力を思い知ったか!」
バタイユ「あ、甘く見るんじゃないんだな~っ!」
おお、これぞ大怪獣の恐るべき奥の手!
バタイユを「でんぱ怪獣」たらしめる怪電波が、宙マンめがけて
容赦のない大出力で放射されたではないか。
バタイユ「(ニヤニヤ)う、うんと苦しむがいいんだな!」
宙マン「ぐ、う……ぬぉぉぉっ、うぁぁぁっ……!」
ズ、ズーンっ!
落合さん「ああっ、お殿様が!?」
ビーコン「あれを何度も喰らったら、いくらアニキでも……!」
ピグモン「えう~、そんなの嫌~んなの~!(涙目)」
落合さん「(口の中で)……お殿様……っ!」
宙マン「(苦悶)う……ううっ……!」
バタイユ「ギュロロロロ~、と、とどめなんだなぁ!」
「なんの、これしき……負けて、たまるかッ!!」
宙マンの防御技、プロテクション発動!
バタイユのメーサー殺人光線を、見事に受け止め無力化する。
バタイユ「(驚き)……ギュロロロ、そ、そんなバカな!?」
宙マン「とどめだ!
宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、バタイユを直撃!!
バタイユ「ギュロロォォ……こ、これは悔しいんだなぁぁ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
落合さん「ああ……お見事でしたわ、お殿様!」
ビーコン「いえっふ~、やったっスね、アニキ!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、今日もありがとうなの~」
イフ「ぐがががっ……おのれ、またしても宙マンめが!
だが、これしきで地球を諦める怪獣軍団ではないからな~!」
かくして、我らが宙マンの活躍によって……
怪獣バタイユは倒され、千歳の街に再び平和が蘇ったのであった。
落合さん「改めまして……お殿様、このたびはお疲れ様でした!」
ビーコン「ホント、ホント。
アニキが来てくれなかったら、マジでヤバかったっスよ~」
宙マン「はっはっはっはっ、みんなが無事で何よりだったよ。
それじゃ、時間も時間だし……
ここらでひとつ、みんなでランチって事にしようか!」
落合さん「えぇ、それは勿論ですとも、お殿様っ!」
ピグモン「はうはう~、ピグちゃんも異議なしなの~♪」
ビーコン「ヒヒヒ、ほんとはアニキ達に内緒でこっそりと……」
落合さん「(小声で)シーッ! 声が大きいですわよ、ビーコンさんっ」
ビーコン「(小声で)タダってわけにはいかないっスヨォ?」
落合さん「(小声で)く、口止め料をせびるおつもりですの!?」
ビーコン「(小声で、ニヤニヤ)へー、いいんスかぁ?
んじゃ、この一件、アニキにバラすっスよ!?」
落合さん「(小声で、憤慨)う、うぐぐぐっ……この悪党!!
……あ、あんまり法外な金額はNGですから……ね!?」
ビーコン「(小声で)ヒヒヒ、毎度ありっス~☆」
ピグモン「はう~……ビーコンちゃんたち、何こそこそ喋ってるの~?」
宙マン「(首を傾げて)……さぁ……ねぇ?」
十人十色の思いを包みこんで……
今日も千歳は、のどかな春のまどろみの中。
はてさて宙マン、次回の活躍や……いかに!?