爽やかな陽気に包まれている北海道。
ここ・千歳市もまた、清々しい青空の下で平和の時を満喫中である。
などと思って、安心していると……
おやおや、今日もまた、にわかに不穏な気配が漂ってきた様子だぞ。
「ふぇぇん……宙マンさん、宙マンさ~んっ!」
ピグモン「あ、みくるんちゃんとながもんちゃんなの!」
落合さん「どうなさいましたか? そんなに慌てたご様子で……」
宙マン「もしかして、また何か事件かい?」
ながもん「……(こくこくっと頷き)」
みくるん「えっと、話せば長いんですけどぉ……」
宙マン「構わないよ、聞かせてくれたまえ」
ビーコン「深呼吸して……落ち着いて、ゆっくりっスよ?」
実は、ここ数日……
千歳市一帯では、原因不明の奇妙な現象が相次いでいたのであった。
地下の電話回線ケーブルがずたずたに切断され、電話が不通になったり……
その調査のために地下へ潜ったNTT東日本の職員が、地下通路の奥深くに
ギョロリと光る巨大な目玉を見た、と相次いで証言してみたり。
そして今、みくるんたちもまた……!
みくるん「私たちも……見たんですぅ、おっきな目を!」
みくるん「森の中へ、山菜を取りに出かけたら……」
ながもん「洞穴の、中に……」
宙マン「大きな目玉が、ギョロリ……かね?」
ながもん「……(こくこくっと頷き)」
落合さん「……どう思われます? お殿様」
宙マン「もしかしたらまた、怪獣軍団か……」
ビーコン「事実だとしたら、そうなんスけどね。
……でもまだ、見間違いの可能性も捨てきれないっしょ?」
落合さん「見間違え?」
みくるん「そんなっ、私たち、確かにこの目で――」
ビーコン「いやいや、みくるんちゃんたちを疑ってるわけじゃなくて
オイラのマジな願望、ってやつっスかねぇ。
そう毎度毎度、悪い怪獣に出てこられちゃ敵わねーっスよ!」
落合さん「えぇ……それはまぁ、確かに……」
……だが、次の瞬間!
ズゴゴゴグワーンっ!
落合さん「あっ、あらあらまぁまぁ!?(汗)」
ビーコン「どひ~っ、何スか、なんなんスか、いきなり!?」
爆発! 炎上!
そして、事態はただそれだけにとどまらず――
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラっ!
ビーコン「(慌て)お、おろろろっ!?」
ピグモン「きゃああんっ、揺れてるの、おっきいの~!」
落合さん「こっ、これはもしかしますと……」
宙マン「……みくるんちゃんたちの言ってた「眼」の持ち主、かな!?」
そう、残念ながら今回もやっぱり「もしかする」のである。
激しく大地を揺さぶる局地地震とともに……
天高く土砂を吹き上げながら、地上に姿を現した者とは!?
「ギョゴゴゴゴ~ンっ!!」
みくるん「(涙目)ああんっ、やっぱり今日も怪獣ですぅ!」
ながもん「毎度、おなじみの……流れ……とは、言うものの」
ピグモン「はわわ、怖いものはやっぱり怖いの~!」
唸りをあげて、千歳市のド真ん中に姿を現したのは……
怪獣軍団の一員、一つ目怪獣ザゴラ。
世紀の奇書「世界の怪獣」に曰く――
チベット奥地の「ザゴラ山」にその怪獣(ひと)在りと噂され、
古代恐竜を思わせる隆々たる体躯に、巨大な単眼がギロリと光る
凄味もパワーもたっぷりな秘境の顔役なのである。
ザゴラ「ギョゴゴォ~、俺の事、分かったかな!?」
ザゴラ「分かってくれたところで、派手に大暴れ行くんで……
そういうことで、ひとつヨロシクぅ!」
ビーコン「どひ~っ、全然よろしくしたくないっスよぉ!(汗)」
落合さん「出来れば一生、分かりたくもなかったですわね!(汗)」
みくるん「ふぇぇん、暴れて騒ぐのは勘弁してほしいですぅ~(涙目)」
宙マン「……うぬッ!」
ヴィラニアス「ぬははは……ボヤけ、怯えろ、地球人ども!」
イフ「さぁ行けザゴラよ、お前の力を存分に奮え!」
ザゴラ「ギョゴゴォ~、お任せを、魔王様!」
怪獣魔王らの命を受け、進撃開始するザゴラ!
迫り来る巨体を前に、悲鳴をあげて右往左往、逃げ惑う人々。
落合さん「ああ、もうっ、結局こうなっちゃうんですのねぇ!」
ピグモン「きゃああんっ、おっかないの~!」
おお、早くも千歳は絶体絶命の大ピンチ!
だが、一つ目怪獣の暴虐を、防衛隊が見過ごすはずもなく……
危機的状況を前に、空の精鋭らが直ちにスクランブルをかけた。
ピグモン「あっ、防衛隊のおじさんが来てくれたの!」
ビーコン「でも、大丈夫っスかねぇ、普段が普段だけに!」
落合さん「信じましょう。……今は、それしかありませんわ!」
「う~ん、なんか今、凄く失礼なコトを言われたような……
えぇい、気にせず行くぞ。全機、攻撃開始だっ!」
戦闘機隊のミサイル攻撃!
が、度重なる爆発にも、ザゴラの勢いは止まらない。
ザゴラ「ギョゴゴォ~ンっ、そんなもん効くかぁ!」
「……ど、どわぁぁぁ~っ!?」
ザゴラの巨大な一つ目から放たれる怪光線!
その洗礼を受けて、次から次に撃墜されていく戦闘機。
みくるん「ああっ、やられちゃったですぅ!」
ピグモン「どうしよう、このままじゃ街がメチャクチャなの!」
ながもん「これは、色々……シャレに……ならない」
ビーコン「ひぇぇ、もうダメっス、おしまいっス!(汗)」
落合さん「だーっ、取り乱すんじゃありません、ビーコンさん!」
宙マン「いいや、まだだよ……千歳には、この私がいる!
宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、荒れ狂うザゴラの前に舞い降りる!
宙マン「トゥアーッ! 宙マン、参上!
怪獣軍団の手先め、もう好き勝手はさせないぞ!」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「ああ、やっぱ頼りになるのはアニキっスよねぇ!」
落合さん「えぇ、安心の度合いが段違いですわ!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
ザゴラ「ギョゴゴォ~ンっ、出やがったな、宙マン!」
宙マン「あぁ、如何に現役引退の身とは言え……
こんな悪事を、黙って見過ごせない性分でね!」
ファイティングポーズを取り、敢然と身構える宙マンーー
バトルのテンションは、一気にヒートアップ!
ザゴラ「ギョゴゴォ~ンっ、行くぞぉぉっ!」
宙マン「どこからでもかかって来い!」
激突、宙マン対一つ目怪獣ザゴラ!
落合さんたちの見守る中、巨大な両者が戦いの火花を散らす。
野太い二本の腕で、パンチ攻撃を仕掛けてくるザゴラ。
幾多の怪獣バトルを勝ち抜いた、その怪力は圧倒的な脅威だ。
だが、宙マンも冷静にその攻撃をかわし、受け流しながら……
相手の隙を的確に見極め、猛然と相手の懐に飛びこんでいく。
宙マン「そぉれっ! 宙マン・キックのお見舞いだ!」
ザゴラ「(よろめき)ぬ、ぬおおっ!?」
宙マンのストレートキックで、ザゴラがよろめいた隙を逃さず
その巨体を抑えつけ、関節技に持ちこむ宙マン。
宙マン「えい、やぁっ、どうだ……これでもか!?」
ザゴラ「ギョゴォォ~ンっ、なめんなッ!!」
宙マンの押さえこみを、強引に怪力で振りほどき……
次の瞬間、ヒーローの胸板めがけて頭突きを炸裂させるザゴラ!
「う、うわぁぁぁぁ……っ!」
みくるん「ああっ、宙マンさんが!」
ビーコン「どひ~っ、なんつー石頭っスか!?」
ながもん「単純な、技だけど……あなどり、がたし」
ピグモン「はわわ、宙マン、まけないでなの!」
落合さん「(祈るように)……お殿様っ!」
ヴィラニアス「おーし、おしおしっ……その調子だ、いいぞザゴラ!
それでこそ、このヴィラニアスが見込んだ怪獣だ!」
イフ「このチャンスを逃すな、宙マンを倒せ!」
宙マン「(苦悶)う、うう……っ!」
ザゴラ「ギョゴォォ~ンっ、今日こそお前の最期だな!」
「なんの……そうは、いく、ものかッ!」
ザゴラ「ギョゴォォ~ンっ、くたばりやがれッ!」
宙マン、パワー全開!
ザゴラの放った怪光線を、ジャンプでひらりとかわして大空へ。
ザゴラ「(狼狽)ぎょ、ギョゴォォッ!?」
宙マン「さぁ、今度はこっちがお返しだ!」
宙マン「エイヤぁぁーっ! 宙マン・ミラクル・キック!」
出た、電光石火のミラクルキック!
その一撃を食らい、ザゴラが目を回したところへ――
宙マン「とどめだ! 宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、ザゴラを直撃!!
ザゴラ「ぎゃひぃぃっ……また会う日まで、ゴキゲンよぉぉ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
落合さん「ああんっ、やっぱり素敵です……流石はお殿様♪(うっとり)」
ビーコン「っスよねぇ、やっぱそうこなくっちゃっス!」
ピグモン「はうはう~、宙マンが勝ってよかったの~♪」
ながもん「(ボソッと)……グッジョヴ」
みくるん「宙マンさん、どうもありがとうですぅ!」
人々の笑顔と歓声が、宙マンの勝利を讃える――
千歳の街に立ちつくす巨体は、どこまでも雄々しく、逞しかった。
イフ「うぐぐぐっ……またしても、またしてもやってくれたな!
だが宙マンよ、怪獣軍団はこれしきで地球を諦めんぞ……
この次こそは、きっとお前をギャフンと言わせてやる!」
……などと言う、怪獣魔王のいつもの負け惜しみはさて置いて。
我らが宙マンの活躍によって、千歳市を急襲した怪獣ザゴラは
見事に撃退され、街に再び平和が蘇ったのであった。
落合さん「どうもお疲れ様でした、お殿様!」
宙マン「いや、なんのなんの……
みんなの応援がなければ、私もどうなっていたか!」
ながもん「ふふ……ご謙遜」
みくるん「宙マンさん、ほんとにかっこよかったですぅ!」
宙マン「たはは、照れるなぁ!
ピグモン「はうはう~、宙マン、だいすきなの~♪」
ビーコン「ヒヒヒ、そして落合さんにはオイラがいるっスからね。
ベッドルームの晴れ舞台で、裸で踊るシュール・ダンス……
まさにここからが愛の正念場っスよ、落合さん!」
落合さん「(口許が引きつり)……はァ……!?」
げ し っ !
落合さん「調子に乗るんじゃありません、このエロ怪獣っ!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、やっぱ今回もこうなっちゃうっスねぇぇ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
今日もまた……
千歳市民の頭上に輝く、平和の太陽。
ありがとう宙マン、次回も頼んだぞ!