例年がそうであるように、深い雪に覆われて……
1月の北海道千歳市は、今や一面の銀世界。
日々厳しく、身を切られるようなこの寒さ。
そんな中にあっても、千歳市に暮らす人々は各々の日常生活を
各々のペースで、それなりに謳歌していたのであった――
と言う大前提のもと、今日も幕を開ける『#宙マン』のお話。
では、そんな雪深い千歳市の一角に目を向けてみよう。
毎度おなじみ、「宙マンハウス」の落合さんとビーコン。
こんち極楽コンビ、連れだって1月の街を行く最中なのであった。
ビーコン「いえっふ~、そう! そこの読者さん、察しがいいっスね!
オイラと落合さんのツーショット……
ってことはデートっスよ、デート一択!」
落合さん「だーっ! 止して下さいまし、人聞きの悪いっ!!(汗)」
落合さん「知人の方へのお届け物もありますし……
今の時期、何気にあちこちへの提出書類も多いですのよね。
ビーコンさんが一緒なら、荷物持ち程度の役には立つってだけのお話ですッ」
ビーコン「ヒヒヒ、愛の告白に聞こえるっスよ~☆」
落合さん「(ジト目)あらあら、それじゃ良い耳鼻科をお勧めしましょうか!?」
ビーコン「(しれっと受け流して)うう~、それにしても寒いっスね~。
ねぇ落合さん、家に帰ったら鍋作って欲しいっスよ、それに熱燗も一本!」
落合さん「あら、それぐらいご自分でおやりになったらいかがです?」
ビーコン「っがー、なんたる暴言! メイドの風上にもおけないっスね!
だいたいそれじゃ、オイラただ働きじゃないっスか~!?」
落合さん「な~にがただ働きですかっ!
私の下着は勝手に売り飛ばす、お小遣いをあげたそばから使ってしまう……
ええ、お屋敷から叩き出されないだけでも感謝して欲しいものですわね!」
ビーコン「だー、全くもう、このオネーチャンときたらっ!
どうして、どうしてオイラにだけ、そんな当たりが厳しいんスかぁ!?」
落合さん「胸に手を当てて、よーく考えてごらんなさいな」
ビーコン「えっ、いいんスか!?(落合さんの胸に手を伸ばし)」
落合さん「(その手をぴしゃりと叩いて)ご自分の手ですっ!!」
例によって例の調子、極楽コンビが顔を合わせればこの通りの痴話喧嘩。
放っておけば、どこまでも際限なく実のない言葉の応酬が続くところだが
……当然、そうは問屋がおろさなかった!
ズゴゴゴグワーンッ!!
ビーコン「ど、どひ~っ!」
落合さん「な、何です? なんなんですの、いきなり!?」
みくるん「あ、落合さんにビーコンさ~んっ!」
ながもん「おおっ……この……安心感」
落合さんたちの姿を見つけて、ぱたぱたと駆け寄ってきたのは……
これまたお馴染み、みくるん&ながもんのコロポックル姉妹。
落合さん「あらあら、みくるん様にながもん様!」
ビーコン「二人も街まで来てたんスか?」
みくるん「(頷き)青じそポン酢とか生卵とか、いろいろ切れてましたから
ちょっと買いにきたんですけどぉ……」
ながもん「そしたら……いきなり……コレだから」
ビーコン「あー、びっくりするっスよねぇ、無理もないっス」
宙マン「あっ、いたいた……おーい、落合さん、ビーコン!」
ピグモン「はわわ、二人とも無事でよかったの~」
落合さん「まぁまぁ……お殿様にピグモンちゃんまで!」
宙マン「二人のことが心配で、慌てて駆けつけてきたんだよ」
落合さん「(ぽっ)まぁ、そんな……お殿様ったら……。
でも嬉しいですわ、お殿様のご慈愛がひしひしと……♪(くねくね)」
ビーコン「(ジト目)んー、そこっ! ノロケは後っスよ!」
と、更にその時である!
宙マンたちの頭上……
遥かな宇宙の彼方から、地上めがけて降ってきた赤い光球。
ぐんぐんと加速度を増し、地上に激突した!
ズゴゴゴグワーンっ!
「ドラドラドラぁぁぁ~っ!!」
みくるん「ああっ、またまた怪獣ですぅ!」
ピグモン「コイン怪獣の、カネゴンちゃん……だった、かしら~?」
ながもん「(’首を横に振り)あれは……宇宙怪獣・マンドラ……ちゃん」
マンドラ「ドラドラぁぁ~っ、いかにも俺様はマンドラさぁ!
怪獣軍団きっての暴れ者の名、よく知ってたと褒めちゃるぜ――
だがな、”ちゃん”だけは余計だったな、お嬢ちゃん!」
ながもん「おおっ、これは……どうも、失礼」
宙マン「いやいやいや、そこは謝るポイントじゃないと思うなぁ!」
マンドラ「あぁ、そうとも、言い間違いなんて些細なコトさ。
これから俺様がおっ始めようって言う、千歳大破壊に比べりゃなァ!」
ビーコン「どひ~っ、なんかヤな方向にやる気マンマンっスよ、アイツ!」
落合さん「……毎度のこととは言え、困りものですわねぇ!」
イフ「わははは、さぁ行けマンドラ!
心のままに思い切り暴れて、思い切り破壊し尽くすがいい――
それこそ、お前の大得意分野であろう!?」
マンドラ「ドラドラぁ~っ、モッチのロンですよ、魔王様!」
怪獣魔王の命を受け、進撃開始するマンドラ!
迫り来るその巨体を前に、右往左往しながら逃げ惑う人々。
ビーコン「どひ~っ、怪獣軍団は相変わらずの通常営業っスねぇ!」
落合さん「いっそ半永久的店じまいでも、一向に構いませんのに!」
ピグモン「はわわわ、そんなコト言ってる場合じゃないの~!」
宙マン「いいから逃げるんだ、早くこっちへ!」
だが地球人とて、ただ座して見ているだけではない――
怪獣の進撃を阻むべく、航空防衛隊がスクランブルをかけた。
ビーコン「おおっ、毎度ながらのこの勇ましさっス!」
ピグモン「はうはう~、かっこいいの~!」
落合さん「確かに格好良いんですよねぇ……この時点では!」
「これ以上、怪獣による市街地への被害を広げてはならん――
全機、攻撃開始っ!!」
最新鋭戦闘機からのロケット砲攻撃!
怪獣のボディや周囲に直撃するたび、激しく火花が飛び散るが……
その威力をもってさえも、マンドラの勢いは止まらない。
マンドラ「ドラドラァ~、うるさい奴め、これでもくらえ!」
「う、うわぁぁぁ~っ!?」
マンドラの口から発射される、恐怖の破壊光線!
その直撃を受けて、戦闘機隊は勇戦空しく次々に撃破されていく。
みくるん「ああっ、やられちゃったぁ……!」
落合さん「最新鋭機が、決して弱いはずがないんですけど……」
ビーコン「怪獣が、アイツの強さがケタ外れすぎなんスよ!」
マンドラ「ドラドラぁ~、分かってんじゃねぇか、その通りさぁ!」
戦闘機隊を全滅させ、今やノリノリのマンドラ。
その破壊の勢いは、千歳の市街地にも容赦なく向けられ……!
ズガーン! グワーンっ!
口から破壊光線を吐き散らし、怪力でビルを叩き壊し……
逃げ惑う人々をアザ笑うかのように、マンドラ大暴れ!
その威力の前に、今、千歳市の平和は風前の灯であった。
落合さん「ああっ、どうしましょう……
これでは、本気で千歳が大ピンチですわ!」
ピグモン「はわわわ……宙マン、宙マン、何とかしてなの~」
宙マン「(頷き)おのれ、もう許さんぞ!
宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、暴れ回るマンドラの前へ舞い降りる!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
怪獣マンドラ、もうお前の思い通りにはさせないぞ!」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「ああ、やっぱここ一番で頼りになるのはアニキっスよねぇ!」
落合さん「えぇ、安心の度合いが全然違っておりますわ!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
マンドラ「ドラドラぁ~、出たな宙マン!
大見得なんぞ切りやがって、勝てるつもりかよ!」
宙マン「(ニヤリ)その言葉、そっくりそのままお返しだ!」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ!
真っ向激突、宙マン対マンドラ!
落合さんたちがハラハラと見守る中、戦いの火花が散る。
太く逞しい腕で、猛然と掴みかかってくるマンドラ。
その攻撃をかいくぐり、宙マンも果敢に敵の懐へと飛びこんでいく。
唸る鉄拳、パンチとパンチの応酬!
両者の格闘戦はほぼ互角で、なかなか勝負がつかない。
宙マン「ほほう、なかなかやるな!」
マンドラ「なんの、まだまだこれからだぜ――
宙マン、こいつを受けてみな!」
マンドラの巨大な口から、グワッと吐き出される破壊光線。
その威力に、さしもの宙マンも大きくよろめかされた。
落合さん「お、お殿様っ!?」
ビーコン「やばいっス、アレをまともに食らっちゃアニキでも……!」
ピグモン「はわわ、宙マン、まけないでなの~!」
みくるん「宙マンさん、しっかりですぅ!」
ながもん「千歳の、みんなが……ついている」
マンドラ「ど~ら、ドラドラ、終わりだぜ宙マン!」
勢いに任せ、破壊光線を周囲に吐き散らす宇宙怪獣。
だが宙マンは、身軽な体術でこれをかわして大空へとジャンプ!
マンドラ「(驚愕)ど、ドラドラっ!?」
宙マン「行くぞ、マンドラ!」
宙マン「エイヤぁぁーっ!
宙マン・ミラクル・キック!」
電光石火の必殺技が、マンドラの胸板めがけて炸裂!
宇宙怪獣もこれにはたまらず、ドドーッと音を立ててぶっ倒れたぞ。
ビーコン「いよっしゃ、さっすがアニキ、上手いっス!」
落合さん「さぁ、お殿様、今がチャンスですわ!」
宙マン「(頷き)これでとどめだ!
宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、マンドラを直撃!!
マンドラ「ひょんげ~っ、ま、参ったぁぁ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
ピグモン「はうはう~、やったのやったの、宙マンが勝ったの~!」
みくるん「さすがですぅ、やっぱり宙マンさんですよね!」
ながもん「またまた……グッジョヴ」
人々の歓声が響き渡る中……
1月の北の大地に、宙マンの雄姿がたくましく佇んでいた。
イフ「ぐぬぬぬ……おのれ宙マン、またもワシらの邪魔立てをっ!
だが覚えておれよ、この仕返しは必ずしてやるからな……!!」
……などと言う負け惜しみは、いつも通りサラリと聞き流して。
かくして宙マンの活躍により、恐るべき宇宙怪獣マンドラは撃退され
千歳市はまたも壊滅の危機を免れたのであった。
みくるん「改めて宙マンさん、どうもお疲れ様でした!」
ながもん「安心したら……ちょっと、おなか……すいたかも」
宙マン「そんな時にこそ、しっかり食べるに限るってものさ」
みくるん「いいですね、それじゃ何を食べに行きましょうか?」
ながもん「和食に、中華に、イタリアン……
肉か、魚か……麺か……それとも、ご飯もの?」
ピグモン「ん~、いろいろあって迷っちゃうの~」
落合さん「えぇ、選択肢が多すぎる故の嬉しい悩みですわねぇ」
ビーコン「ヒヒヒ、何も迷うことなんてないじゃないっスか!
一番大事なものは、いつだって一番身近にあるものなんスよ。
だからこそどの娘もこの娘も、オイラの股間へ一直線に――」
げ し っ !
落合さん「ねーい、その選択肢は真っ先に除外ですっ!!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、真冬の火鍋なみに激辛な一撃っスぅぅ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
いつもドタバタ、にぎやか珍騒動……
その騒がしさこそ、宙マンが愛してやまぬもの。
次回もう~んと、にぎやかに大活躍だよ~!