

「空の玄関口」新千歳空港に対しての、「海の玄関口」……
北海道を代表する、港湾・工業都市のひとつ。

それが、『宙マン』シリーズの舞台・千歳市の“お隣さん”こと

輸送船やフェリーが多く発着し、ホッキ漁などの水産業も盛んな
苫小牧市は、同時にその地域条件ゆえ、大海原を根城とする
海棲怪獣にとっては、絶好の上陸ポイントでもあった。
が、ひとまずそれはそれとして。

こんち、お馴染み宙マンファミリー。
此度は苫小牧在住の知人宅を訪ねて、久々にゆっくりと歓談し
気がつけば、もうこんな夕暮れ……と言う次第であった。
ビーコン「やー、すっかり長居しちまったっスねぇ!」
宙マン「松永先生の考古学絡みは語り口が明快だから、ついついこちらも
夢中で聞き入ってしまうよねぇ」
ピグモン「はうはう~、ピグちゃんも凄くたのしかったの~」

落合さん「このまままっすぐ千歳へ帰るのも良いですけど。
もう時間も時間ですし、何か食べてから帰りません?」
宙マン「おおっ、外食かぁ、悪くないね!」
ピグモン「んーと、何を食べよっか~?」
ビーコン「旨いもの食わせる店が多くて、どれもハズレなし。
……選択肢が多くて目移りってのも、贅沢な悩みっス~」

宙マン「そうだな、とりあえず私はラーメンでも「入れて」きたいね。
ほら、前にみんなで行ったあのお店……」
ビーコン「おおっ、“小貫修三”さんっスね!?」
落合さん「えぇ、あのお店でしたら絶対に間違いないですわね!」

当地・苫小牧市において、誰もが口をそろえる名店の一つ……
らーめん「小貫修三(おぬき・しゅうぞう)」。
その人気メニューが、この“濃いめの鶏白湯塩ラーメン”である。

鶏ガラベースの上品なコクが、ポタージュ状のとろみと共に
麺へ、具材へ絡み、雪崩を打って口中に押し寄せてくる――
庶民的で、かつ洗練された豊かな味わいが、以前に一度店を訪れた
宙マンファミリーを、揃って魅了していたのであった。
ピグモン「う~、思い出しただけでヨダレ出てきそうなの~」
ビーコン「ああ、いいっスね、いいっスねぇ――
あそこのラーメン、もう一度味わってみたかったんスよ!」
落合さん「ふふっ、そうですわね。
今のこの時間なら、怪獣が出てくる心配もないですし……」

ビーコン「だーっ、落合さん、ストップストップ!
……そう言う時に限って、怪獣って出てくるもんなんスよ。
変な出現フラグ立てるのは、危ないから禁止っス!(汗)」
落合さん「んーまっ、ビーコンさんったら、人聞きの悪い!」

落合さん「さすがにそれは心配が過ぎると言うものですわ。
ほらごらんなさい、こんなに平和な夕餉時ですもの……
何かが起こりそうな気配なんて、どこにもございませんわよ?」
ビーコン「だーかーらー、それが色々ヤバいフラグなんスってば!」
落合さん「(鼻で嗤って)もう結構です、ビーコンさん。
フラグの何だのと、ゲームの類じゃあるまいし……」
……と、落合さんが話を打ち切りかけたその時である!

ピグモン「……なんか、におうの」
落合さん「……えっ!?」

宙マン「まさか、ビーコンの言う通りに怪獣が……!?」
落合さん「ちょ、そんなまさかっ、何かの間違いでは――」
ああ、だがしかし……
ピグモンの鋭敏な嗅覚が嗅ぎ取った不穏な「におい」は、間違いなく
新たなる大怪獣の出現を告げる前兆なのであった!

「グェグググゥ~、
ゲスラちゃんでゲ~スっ!!」
その異名のごとく、容貌怪異な文字通りの“海のけだもの”だ。

ビーコン「だーっ!! ほんとに、フントに、全くもう!
落合さんが余計なフラグ立てさえしてくんなきゃ……!」
落合さん「(憤慨)ちょ、私のせいだと仰りたいんですの!?」
ピグモン「も~、二人とも、ケンカしてる場合じゃないの~!」

宙マン「こんな時間に現れるなんて、何て言うマナー違反だね!」
ゲスラ「グェグググ~、こんな時間だから来たんでゲス。
只でさえ旨いものだらけな苫小牧、しかも頃合いに夕飯時……
苫小牧をブチ壊し、旨いものも食いつくしてやるでゲス!」
ビーコン「ちょ……ゲスラならゲスラらしく、ゲラン蜂の幼虫だったり
カカオ豆でも食ってりゃいいじゃないっスか!」

ゲスラ「グェグググ~、バカだねぇ!
どっちも好物だけど、それだけじゃ「偏る」でゲしょ?
バランスよく食べる、健康生活の第一歩でゲスよ! OK?」
ビーコン「う~ん、一理ある……なるほどっス!」
落合さん「納得してどうするんですかっ!(汗)」

イフ「わははは……よい、よい、それでよい!
遠慮はいらんぞ、思い切り暴れるのだゲスラ!
心の赴くままに破壊し、苫小牧を怪獣軍団のものとせよ!」
ゲスラ「グェグググ~、任しといて下さいでゲスよ、魔王様!」

怪獣魔王の命を受け、猛然と進撃開始するゲスラ!
迫り来る巨体を前に、人々は逃げ惑うより他に術がない。

ビーコン「どひ~っ、せっかく楽しい苫小牧訪問だったのに……
最後の最後で、とんでもねー事になっちまったっス~!(汗)」
落合さん「ボヤいてる場合ですか、ビーコンさんっ!」
宙マン「いいから逃げるんだ、さぁ早く!」
ああ、苫小牧市、絶体絶命の大ピンチ!

苫小牧の平和を守るべく、航空防衛隊が直ちに出撃した。

落合さん「ああっ、防衛隊の皆様ですわ!」
ビーコン「いつもながら、ほんとタイミングは最高なんスよねぇ!」
ピグモン「はうはう~、おじさんたち、ファイトなの~!」

「ようし……全機、一斉攻撃開始っ!」

持てる火力の全てが、怒濤のごとくゲスラへ叩きこまれる!
だが、戦闘機隊の攻撃をアザ笑うかのように、ゲスラは悠然と
その歩みをいささかも緩めず、進撃を続ける。

ビーコン「ああっ、今回もまたまた……効いてないっスねぇ!?」
落合さん「(慌てて)シーッ! 「また」とか言わないっ!」

落合さん「それにしましても、こうなっては……
もう例によって、お殿様だけが頼みの綱ですわ!」
ピグモン「はわわ……宙マン、宙マン、なんとかしてなの~」
宙マン「(頷き)おのれ、もう許さんぞ!
宙マン・ファイト・ゴー!!」

閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、暴れるゲスラの前へ舞い降りる!

宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
楽しい夕餉に水を差す野暮天め、正義のお灸を据えてやる!」

ズ、ズーンっ!!

巨大化した宙マンが、苫小牧の街に颯爽の着地を決めた時……
夕暮れのオレンジ色は、更なる深まりを見せつつあった。

ビーコン「いよっ! 出たっス、アニキの十八番!」
落合さん「待ってましたわ、心から!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」

ゲスラ「グェグググ~、出たでゲスね、宙マン!」
宙マン「ああ、こんなバカげた大暴れは終わらせてやる!」

ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ!

真っ向激突、宙マン対ゲスラ!
夕陽の苫小牧市に、凄絶な勢いで響き渡る両者の打撃音。

ドスドスと無遠慮な足音を響かせて、突進してくるゲスラ。
その猛威を前に、怯むことなく立ち向かっていく正義の味方……
さぁ行け宙マン、今こそゲスラをやっつけろ!

ビーコン「アニキ~、頼んだっスよ~!」
落合さん「ファイトですわ、お殿様!」
ピグモン「はうはう~、ピグちゃんたちがついてるの~」

宙マン「晩ごはんが最優先だ、今すぐケリをつけてやる!」
ゲスラ「グェググ~、それはこっちの台詞でゲス!」

ズ、ズーンっ!
炸裂、ゲスラのメガトン頭突き!
直撃を食らい、たまらず吹っ飛ばされる宙マンの巨体。

ピグモン「ああんっ、宙マンがあぶないの~!」
落合さん「(歯噛みして)……なんていう馬鹿力でしょう!?」
ビーコン「どひ~っ、アニキ、がんばってくれっスよ~!(汗)」

落合さんたちがハラハラと見守る中、戦いは更なる急加熱!
倒れた宙マンの上にのしかかり、パンチの連打を食らわすゲスラ。
……だが、このままやられっぱなしの宙マンではない。

宙マン「なんの、これしき……舐めるなよっ!」
ゲスラ「グ、グェグォォッ!?」

宙マン、パワー全開!
渾身の右足蹴りで、自らの上に乗ったゲスラを吹っ飛ばす。
宙マン「ようし、今だっ!」

勢いよく跳ね起きるや、ゲスラめがけて反撃開始。
ゲスラの腹部めがけてのボディブロー連打で敵のスタミナを奪い、
ダメ押しとばかりに、その脳天へ空手チョップ!

痛烈! そして強烈!
振り下ろされた手刀に、ゲスラが脳震盪を起こしたところへ――
宙マン「くらえ!
宙マン・エクシードフラッシュ!!」

全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、ゲスラを直撃!!

ゲスラ「グェェェッ……こりゃまたどうにも、堪らんでゲス~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!

ビーコン「いえっふ~! やっぱアニキはそうじゃなきゃっス!」
落合さん「今日もますますお見事でしたわ、お殿様!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、ありがとうなの~!」

イフ「う、うがぁぁぁっ……またしても、またしても宙マンめが!
だが、怪獣軍団の芯の怖ろしさはこんなものではないのだぞ。
次こそお前は、嫌と言うほどそれを思い知ることになるのじゃ……!!」
……などと言う、毎度の負け惜しみはさて置いて。

夕餉時の苫小牧市に、再び平和と笑顔が戻ってきたのであった。
落合さん「お殿様、どうもお疲れ様でした!」

宙マン「やぁやぁ、お待たせ、お待たせ!
……一戦交えたおかげで、腹ペコに拍車がかかってしまったよ」
ピグモン「(頷き)ピグちゃんも、お腹ぺっこぺこなの~」
落合さん「では予定通り、ラーメンを食べに参りましょう!」

ビーコン「ヒヒヒ、そして落合さんには……
怪獣出現フラグ構築の罰ゲームが待ってるっスからね~!
この場合の「罰ゲーム」は、勿論ポルノ的意味合いっスから
青少年諸君、どちらさんもティッシュを用意の上で……」

げ し っ !

落合さん「ねーいっ、黙って聞いていれば……!!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、こっちの方が怪獣よりよっぽど怖いっスぅぅ~」
宙マン「はっはっはっはっ」

千歳への帰還前に味わう、一杯の絶品ラーメンの味わい。
ヒーローにとっての、ささやかで……絶大なる報酬であった。

ひとつの危機は去った……
だが、怪獣軍団の野望は未だ尽きない。
さぁ、次回はどうなるかな?




