渦巻く暗黒星雲の奥深くに陣を構え……
今日もまた、虎視眈々と地球を狙い続ける恐怖の怪獣軍団。
イフ「さぁ、行けィ! 破壊と戦闘のエキスパート、我が怪獣軍団の精鋭よ!
今度こそ、あの青く美しい星……地球をワシらのものにするのだ!」
怪獣魔王・イフの命を受け、今また新たに地球へ送りこまれた悪の使者は
ずる賢く奸計に長けた、第7銀河系出身のスラン星人である。
彼は千歳市内の「青少年宇宙科学センター」へ密かに潜伏し、同センター内に
千歳市全域の酸素を一瞬のうちに破壊・消滅せしむる悪魔のマシンを設置。
それにより、戦わずして千歳市の占拠を目論んでいたスラン星人の計略は
着々と、まさにあと一歩と言うところまで進んでいたのだが――
……今回、その辺の描写は全てカットするものとする。
スラン星人「(思わずドタこけ)……ちょ、おまっ!
おいおいおいおい、そりゃないでしょうがよ~!?」
そう、スラン星人の恐るべき陰謀を阻んだのは、毎度お馴染み我らが宙マンと
落合さんにビーコン、ピグモン、みくるん&ながもんのコロポックル姉妹らによる
連携と尽力の賜物であり、その過程において個々人が見せた勇気や機転なども
実に目を見張るものがあったのだが……
やはり今回、その辺の描写は全カットなのである。どうか悪しからず。
宙マン「そういうことだ、スラン星人。お前の野望もここまでだぞ!」
スラン星人「……うっわ、こいつムカつく! 超ムカつく、略して超ムカっ!」
スラン星人「……この作戦のために、私が周到に準備してきた装置と設営の手間暇……
加えてこの私自身の、知性派悪役としてのスマートなかっこよさ。
それらの全てをバッサリカットされ、あまつさえ“そういうこと”などと
たった一行・六文字だけで総括されてたまるものかッ!」
落合さん「う~ん、私どもにそう言われましても……」
ビーコン「実際こう言う流れなんスから、そこは潔く諦めてもらうしかないっスね~」
スラン星人「ぐぬぬぬっ……ムカつき指数・大幅アップ!(怒)」
「まぁまぁ。……落ちついて」
ながもん「あなたの……気持ちは……よく、わかる。
私も、せっかくの……見せ場……センターからの、脱出シーンが……
全カット、されたのは……非常に……忸怩たる……ものが」
スラン星人「おおっ! 判ってくれるかね、おチビちゃん!」
ながもん「……(コックリと頷く)」
みくるん「納得いかないこととか、世の中には色々あると思いますけどぉ……
そういう時は、とりあえずお腹いっぱい食べるのが一番ですよ~。
私の手料理でよかったら、いつでもご馳走しますぅ」
ながもん「みくるんの……青椒肉絲は……天下、一品」
スラン星人「ううっ、有難いなぁ、ひとの情けが身に沁みる……(涙目)」
ピグモン「はうはう~、めでたしめでたしなの~☆」
スラン星人「……って、ちっがーう!!」
スラン星人「ねーいっ、どいつもこいつも私をコケにしよってからに!」
みくるん「あっ、あの、私、そんなつもりじゃなかったんですけどぉ……(汗)」
ながもん「(無表情)これも、また……人生の……理不尽」
「うぬら、目にもの見せてやる~っ!!」
怒りに燃えたスラン星人の超能力が発動!
宙マンたちの眼前でみるみる巨大化し、天を衝くサイズの巨人と化す。
落合さん「あらあらまぁまぁ、何てことでしょう!」
ビーコン「だーっ、結局は今回もこうなっちまうんスねぇ!?(汗)」
スラン星人「本当ならば、もっとスマートに事を運びたかったのだが……
やむを得ん、こうなったら実力行使だ!」
スラン星人「この私の……
スラン星人の取り柄が、ただ知略だけではないと思い知らせてやる!」
ピグモン「ひ~ん、そんなの別に知りたくないの~!」
宙マン「……うぬっ!」
イフ「そうだ、その意気だ、大いに暴れるのだスラン星人!
見せ場がなければ自分で作る、それこそが怪獣軍団の心意気ぞ!」
イフ「さぁ行けィ! 求めよ、さらば与えられん!」
スラン星人「グホホホ、魔王様の仰せの通りにございます~っ!」
野太い咆哮をあげ、進撃開始するスラン星人!
迫り来るその巨体を前に、悲鳴をあげて逃げ惑う人々――
北海道千歳市、またまた絶体絶命の大ピンチ!
だが、そんなスラン星人の暴虐を阻まんものと……
「全機、攻撃開始! 何としても巨大宇宙人の侵攻を食い止め……」
スラン星人「えぇい、堕ちろカトンボ! 私は今、非常に機嫌が悪いんだ!」
「うわぁぁ~、まだ何にもしてないのに~っ!」
スラン星人の爪から、大空へと放たれる破壊光線!
戦闘機は攻撃の暇さえなく、次から次へと撃墜されていく。
シュバッ! シュバババっ!
更に、スラン星人の額が断続的なスパークを放つのと同時に……
そこから迸ったエネルギー衝撃波が、街を舐め回すように炸裂していく。
爆発! 炎上!
炎の中を右往左往する人々の悲鳴が、幾重にも交差し……
千歳市内は、今や大パニック状態に陥っていた。
スラン星人「グホホホ……見たか、この私の偉大な力を!」
ビーコン「どひ~っ、アイツ、めっちゃ勝ち誇ってるっスよ!(汗)」
落合さん「このままでは、いろいろ本当にシャレになりませんわ!」
みくるん「ふぇぇ……そんなぁ、そんなの嫌ですぅ~(涙目)」
ながもん「(じっと宙マンを見て)頼りに、なるのは……あなただけ」
ピグモン「はわわ……宙マンお願い、なんとかしてなの~」
宙マン「ようし、やるぞ! 宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、暴れ回るスラン星人の前へと舞い降りる!
宙マン「トゥアーッ! 宙マン、参上!
スラン星人、悪ふざけもそこまでにしておくがいい!」
ズ、ズーンっ!!
ながもん「おおっ……宙マンの……十八番」
ビーコン「うお~い、アニキ、頼んだっスよ~!」
落合さん「よろしくお願い致します、お殿様!」
スラン星人「グホホホ、な~にが「悪ふざけ」なもんかよ!
こっちは本気も本気、大真面目だぞ!」
宙マン「あぁ、そう返してくるだろうと思ってはいたよ――
だからこそ余計に、黙って見過ごすわけにはいかない!」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ!
スラン星人「かかって来い、宙マン!」
宙マン「ああ、いいだろう、とことん勝負だ!」
宙マン「さぁ来い、地獄の使者め!」
スラン星人「グホホホ、いい響きだな。気に入ったぞ!」
宙マン「(チッと舌打ち)……減らず口をッ!」
激突、宙マン対スラン星人!
落合さんたちが見守る中、巨大戦が凄絶なる火花を散らす。
スラン星人「グホホホ、宙マン、お前の力はその程度か!」
宙マン「なんのっ、まだまだ――宙マン・パンチを受けてみろ!」
スラン星人「(苦悶)ぐフッ!?」
宙マンの繰り出した鉄拳に、よろめいて足元がふらつく星人。
その気を逃さず、宙マンは大空高くジャンプ!
宙マン「これで終わりだ! ミラクル・キックを受けてみろ!」
スラン星人「おのれェ……なめるな、宙マンっ!」
「――ぐわぁっ!?」
ミラクル・キックの態勢に入ろうとした直前……
怒るスラン星人の放った破壊光線が、宙マンのボディめがけて炸裂!
その威力とダメージに、空中でのバランスを大きく崩して墜落する緑の巨体。
みくるん「(驚愕)ちゅ、宙マンさんっ!?」
宙マン「(よろめきつつも)――くそっ!」
立ち上がりざまに、ヘッドビームを放つ宙マン。
だがスラン星人は、宙マンに勝るとも劣らぬ驚異的な跳躍力で
素早くこれを回避してみせたではないか!?
宙マン「な、何っ!?」
スラン星人「グホホホ、驚くのはまだ早いぞ、宙マン!」
背後の気配に宙マンが振り向きかけた時には、既に大ジャンプで大空へ――
スラン星人の挙動ほど「目にも止まらぬ」と言う形容が似合うものはない。
スラン星人「グホホホ、教えてやろう!
何故この私が“怪獣軍団最速の男”と呼ばれているのかを!」
宙マン「(その動きに目を見張り)……な、何っ!?」
おお、見よ! 驚愕せよ!
これこそ“高速宇宙人”の異名を取る、スラン星人の本領。
圧倒的なスピードによる、凄まじいばかりの超高速機動!
宙マン「(攻めあぐんで)こ、これはっ……」
スラン星人「グホホホ、私の勝ちだ宙マン!
もはやお前には、決して私の姿を捉えることなど出来はしない!」
三人、四人……五人……十人……いや、それ以上!
残像を伴い、一人のスラン星人が幾人にも分身して見えてしまうほどの
時速170km/hにも達するという超高速移動が、宙マンを翻弄する。
宙マン「(歯噛みして)くッ……!」
スラン星人「グホホホ! 宙マン、この一撃を受けてみろ!」
ズバァッ!
超高速ですれ違いざまに繰り出された、星人の爪の斬撃によって
ボディを切り裂かれ、ドドーッと再び地に倒れ伏す宙マン。
更にダメ押しとばかり、スラン星人が額からエネルギー衝撃波を放った!
「う、うわぁぁぁぁ……っ!!」
みくるん「(ああっ、宙マンさんが!」
落合さん「(息を呑み)あの動きを見切るのは、至難の業ですわっ」
ビーコン「でも、それをやんなきゃアニキは……」
ながもん「間違いなく……星人に……やられる」
ピグモン「えう~、宙マン、まけないでなの~!(必死に)」
ゾネンゲ博士「おおっ! ご覧下さい魔王様、スラン星人のあの動き!
流石の宙マンも、今度ばかりは手も足も出ない有様ですぞ!」
イフ「うむっ、見事じゃスラン星人!
このまま攻撃の手を緩めず、一気に宙マンへとどめを刺してしまうのだ!」
スラン星人「グホホ……何を仰いますか、魔王様!」
スラン星人「これまで我々に恥をかかせ続けてきた、恨み重なる相手です。
一息になどと言わず、じわじわ痛めつけて嬲り殺しにしてやりましょう!
えぇ、そうでなくては楽しくありませんとも!」
イフ「こ、こらっ、そこで油断をするでない!
その驕りのせいで、どれだけの怪獣たちが泣きを見てきたか……」
スラン星人「グホホホ、驕りなどと……とんでもない!
それに他の連中とは違います、もはや私の勝ちは動きません!」
みくるん「どうしよう、どうしよう、このままじゃホントにっ……(涙目)」
ながもん「宙マン。……ファイツっ」
宙マン「(苦悶)う、うう……っ……」
スラン星人「グホホホ、宙マン、このままラクに死ねると思うなよ!」
全身にダメージを受け、未だ足元がふらついている宙マンを嘲弄するように
これ見よがしに、宙マンの周囲を再び超高速移動し始めるスラン星人。
だが、宙マンとて、ただただ翻弄されているばかりではない――
――先の戦いと、現在のスラン星人の動きから、ヤツが超高速移動する際の
動きのパターンを冷静に「読み」、今まさに逆転のチャンスを掴んだのだ!
宙マン「そこだっ! 宙マン・ウェッジビーム!」
スラン星人「(悶絶)ぐ、グボァァァッ!?」
くさび状の破壊光弾・ウェッジビームが宙を舞い、虚空に炸裂!
超高速で動き回る星人の軌道を先読みし、直撃させて動きを止めたtころへ――
宙マン「とどめだ! 宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、スラン星人を直撃!!
スラン星人「グホォォッ……わ、私が負けるなんてぇぇ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
ピグモン「はうはう~! やったのやったの、またまた宙マンの勝ちなの~!」
みくるん「宙マンさん、ありがとうございますぅ!」
ながもん「いつもながらの……グッジョヴ……二重丸っ」
落合さん「今回もまたまたお見事でしたわ、お殿様!」
ビーコン「や~、一時はどうなるかとヒヤヒヤしたっスよ~」
宙マン「ありがとう。……勝てたのは、みんなの応援のおかげだよ!」
イフ「うぐぐぐっ……スラン星人のたわけが、己の技に溺れおって!
だが、これで勝った気になるなよ、宙マンめ……
この次こそは万全の必勝プランで、お前に目にもの見せてやる!」
……などと言う、怪獣魔王と軍団の負け惜しみはさて置いて。
かくして、我らが宙マンの活躍によって……
スラン星人の謀略は完全粉砕され、千歳に平和が戻ったのであった。
落合さん「改めまして……どうもお疲れ様です、お殿様!」
ビーコン「流石はアニキ、見事な逆転劇だったっスね~。
弟分として、オイラも鼻が高いっスよ!」
ながもん「まずは、ゆっくり……休んで」
みくるん「お腹すいてるようでしたら、我が家の青椒肉絲いかがですかぁ?」
宙マン「おおっ、嬉しいねぇみくるんちゃん、有難く頂くよ!
実はさっきの一戦と巨大化で、ちょうどお腹が減りまくってたところでね」
ピグモン「はうはう~、美味しいごはんは元気のもとなの~♪」
宙マン「(にこやかに)あぁ、その通りだともピグモン!」
ビーコン「……と、これにて一件落着したところでっスね。
今回のお話において、バッサリ容赦なくカットされた前半部分……
そこにおいて何が展開されてたか、読者の皆さんにお伝えするっスよ!」
落合さん「まぁ、何か特筆すべき事項でもございましたかしら?」
ビーコン「ヒヒヒ、アリもアリ、大アリっスよ! つまりっスね……」
「あぁん、お願ぁい……何も言わずに抱いて、ビーコン様ぁ☆」
「ずうっと前からお慕いしておりました、ビーコン様!」
「あはァンッ、私をビーコン様だけの女にしてぇ~ンっ♪」
ビーコン「がっはっはっはっ、ようがすようがす、おいでんさいっス!
み~んなまとめて、オイラがねっとりたっぷり愛してあげちゃうっスよ~☆」
ビーコン「……と、言ったような感じでっスね!
男子だったら誰もが憧れる、うら若き乙女たちとの酒池肉林が……」
落合さん「(ワナワナと震えて)……へぇぇ、そうですか、そうですか……!」
げ し っ !
落合さん「ねーいっ、このエロ怪獣!
おバカな妄想で、物語の余韻をブチ壊すんじゃありませんっ!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、願わくばいつか現実になって欲しいっスぅぅ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
いつも優しいその瞳、僕らの街の呑気者……
だけど、ひとたび悪に向かえば電光石火!
さァて宙マン、次回はどんな活躍を見せてくれるかな?