遥かなる宇宙の彼方、暗黒星雲の奥深くから……
美しい緑の星・地球を我が物にせんと狙い続けている、恐怖の怪獣軍団。
その秘蔵っ子たる邪悪の五人衆、人呼んで“ダークネスファイブ”。
バルタン星人Ｊｒと同様、怪獣軍団の若きエリートとして将来を嘱望されており
それぞれが宇宙の各地へ散って、修行に励んでいた彼ら五人の宇宙人――
そんなダークネスファイブが今、続々と古巣の暗黒星雲に帰参を果たしつつある。
既に北海道千歳市へ襲いかかった“氷結の”グロッケン、“地獄の”ジャタール、
そして“極悪の”ヴィラニアスら、ダークネスファイブに名を連ねる三大宇宙人が
我らが宙マンの正義の力の前に敗れ去っていたものの、肉体の強靭さにも恵まれ
ヤングパワー全開の彼らは、宙マンにとって厄介な相手には違いなかった。
そして今、“極悪の”ヴィラニアス敗退の報を受け……
暗黒星雲では、怪獣魔王イフの腹立ちが早くも頂点に達していた！
「えぇい！ 何たるザマだ、ヴィラニアスよ！！」
イフ「さんざん大口を叩き、息巻いて出撃しておきながらあの失態……
ことは、ただ単にお前ひとりだけの問題ではないぞ。
お前をワシに預けてくれた我が義兄弟、お前の親父にも申し訳が立たぬ！」
ヴィラニアス「や、面目ない……ああ、分かってるよぉ、イフの叔父貴。
だからその件については、これ以上ツッコまない方向で……」
イフ「いいや、良い機会だ、とことんやるぞ！
この際、今回のこのエピソードをワシの説教だけで全編埋め尽くし……」
「……グ オ オ オ ッ」
突如、怪獣魔王の背後から響いてきた低い唸り声。
思わずぎょっとして怪獣魔王が振り返ると、そこに立っていたのは――
イフ「（表情がほころび）おお、デスローグ！……
“炎上の”デスローグではないか、よくぞ戻った！」
ダークネスファイブの一員、“炎上の”デスローグ。
かつて彼の同族が、エンペラ星人の下で“謀将”を拝命していたこともある
デスレ星雲人たちの眷属にして、控えめで無口ながらも気配り上手な性格から
アクの強い個性派揃いで喧嘩の絶えないダークネスファイブ内に潤いをもたらす
五人衆のアイドル的な存在なのである。
イフ「いや、戻ってきた早々で悪いがな……
積もる話は後回しにしてもらえぬか、デスローグよ。
ワシはこれから、ヴィラニアスへの説教できっちり奴にお灸をすえ――」
デスローグ「グオオオ……（それは駄目だ、と首を振り）」
イフ「なに、やめろと申すのか！？
いや、いかにお前の頼みとは言え、こればかりは……」
デスローグ「……（縋るように怪獣魔王を見つめて）」
イフ「ぐ……ぐぬぬっ、わかったわかった！
まったく、お前にはかなわんわい――
よいかヴィラニアス、こたびの一件、よ～く反省するのだぞ！」
ヴィラニアス「ふぅ～、助かったぞ……デスローグ！
お前の助け舟がなかったら、今ごろ俺様は叔父貴の「朝まで生説教」で
そりゃもう、うんざり気の滅入るような時間が延々と……」
デスローグ「……グロロッ♪（嬉しそうに頷いて）」
グロッケン「久々に会ってみても……相変わらず無口な野郎だぜェ」
ジャタール「ああ。だが、そこがデスローグの魅力でもある――」
ヴィラニアス「そうとも。そこが良い！！」
無言で立ち去って行くデスローグの背中を見送って……
お互いの顔を見交わし、ニンマリ笑って深く頷き合うダークネスファイブの三人。
そんな愛されキャラのデスローグが、今、暗黒星雲を飛び立った。
目指す先は……勿論、我々の故郷である宇宙のエメラルド・地球だ！
危うし地球、危うし宙マン！
だが、ひとまずそれはそれとして――。
こんちお馴染み、宙マンファミリーとコロポックル姉妹。
今日は市内・文化センターにおける市民文化交流の定例会議に揃って参加し、
他の町内会の人々と諸々の意見交換を行ってきたところであった。
宙マン「ふぅ～、やれやれ、無事に会議も終わってよかったね！」
落合さん「この調子ですと、春の文化発表交流会も上手くいきそうですわね」
ビーコン「あとは当日まで、余計なトラブルとかなけりゃいいんスけど……」
宙マン「ああ、全くだねぇ」
ピグモン「はうはう～、今から発表会の日が楽しみなの～」
みくるん「えぇと、時間もちょうどいい頃合いですしぃ……」
ながもん「……みんなで、一緒に……ランチ、タイム」
宙マン「うんうん、いいねぇ！」
ビーコン「よーし、そうと決まりゃ、善は急げっスよ！」
落合さん「えぇ、企業のお昼休みとぶつかって、お店が混みあわないうちに――」
……だが、ちょうどその時である！
ズゴゴゴグワーンっ！！
ビーコン「ど、どひ～っ、いきなりなんスか！？」
落合さん「こ、これは、もしかして……」
宙マン「もしかすると……」
ピグモン「（泣きベソ）……も、もしかしちゃうの～！？」
「 グ オ オ オ ッ …… ！」
噴き上がり、膨れ上がった炎が急激に凝縮し……
宙マンたちの目の前で、巨大なデスレ星雲人デスローグとして実体化する。
宙マン「“謀将”デスレム！？……いや、違うか――」
ながもん「たぶん……デスレ星雲、出身の……別人さん」
宙マン「なるほど、そう言うことなら合点がいくな。
……君はどこの組織に属し、何のためにこんな乱暴なマネをする？」
デスローグ「……（無言のまま答えず）」
落合さん「（憤慨）あらいやだ、シカトですの！？」
ビーコン「な～んか、シャレとか冗談の通じる相手じゃなさそうっスねぇ（汗）」
落合さん「通じたところで、何の慰めにもならなそうですが……（汗）」
みくるん「ふぇぇん、とにかく不気味で怖いですぅ～（涙目）」
イフ「わはは！ さぁ、行くがよい――
ダークネスファイブが一人、デスレ星雲人“炎上の”デスローグよ！
お前の力で、千歳の街を一面の焼け野原へと変えてしまえィ！」
デスローグ「（頷き）グオオオ…！」
怪獣魔王の命を受け、進撃を開始するデスローグ！
迫り来るその巨体を前にして、悲鳴をあげて逃げ惑う千歳の人々である。
宙マン「ふむふむ、そうか……彼の名前は、デスローグと言うのか！」
ビーコン「……アニキ、感心するトコ微妙に間違ってないスか！？（汗）」
落合さん「とにもかくにも避難ですわ、避難！」
みくるん「ふぇぇん、こっち来てますぅ～！（涙目）」
おお、まさに千歳の危機！
だが、デスレ星雲人のこれ以上の進撃を阻むべく、直ちに千歳基地の陸の精鋭が
最新鋭の戦闘車両とともに出動した。
「全車、一斉……攻撃開始っ！！」
デスローグめがけて迸る、殺獣光線車のメーサー光線！
それに負けじとばかり、ロケット砲車両からの砲撃も激しく叩きこまれる。
まさしく怒涛、押し寄せてくる圧倒的火力の攻撃！
だが、それらの相次ぐ直撃にも、いささかも動じず、びくともしないデスローグ。
デスローグ「グオオ……っ！」
低いうなり声とともに、デスローグが巨大な左手を振り下ろした瞬間……
天空から無数の火球が降り注ぎ、地上の戦闘車両を次々に破壊していく！
無数の火球を自在に創り出し、思いのままに操るパイロキネシス能力。
加えて仲間たちへ寄せる慈悲心とは裏腹に、敵とみなした者たちに対しては
一片の容赦もない夜叉と化して、苛烈な攻撃を加え続ける二面性。
……正にそれこそが、彼をダークネスファイブの一員たらしめているのだ！
みくるん「ああっ、大変！」
ながもん「このままじゃ……私たちの、街が」
ビーコン「どひ～っ、シャレんなんない展開に押しつぶされそうっス～！（汗）」
ピグモン「はわわ、宙マン、なんとかしてなの～」
落合さん「今となってはもう、お殿様だけが頼みの綱ですわ！」
宙マン「（頷き）おのれ、もう許さんぞ！ 宙マン・ファイト・ゴー！！」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、暴れるデスローグの前に舞い降りる！
宙マン「トゥアーッ！ 宙マン、参上！
デスレ星雲人、これ以上お前の好き勝手にはさせないぞ！」
ズ、ズーンっ！！
ビーコン「うお～い！ アニキ、ここは任せたっスよ～！」
ながもん「今は、宙マン……あなただけが……頼り」
ピグモン「はうはう～、宙マン、頑張ってなの～！」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ。
真っ向激突、宙マン対デスローグ！
落合さんたちが見守る中、巨大な宇宙人ふたりが戦いの火花を散らせる。
宙マン「正義の力で、お前を叩きのめしてやる！」
デスローグ「グオオオ……っ！」
低い唸り声をあげながら、宙マンめがけて襲いかかってくるデスローグ！
ひたすら無言で淡々と攻撃をしかける姿は、さながら殺人マシンのようである。
宙マン「（よろめき）くッ……！」
デスローグ「（その機を逃さず）グオオ……っ！」
出た！ デスレ星雲人のお家芸――
扇状の巨大な左手から連射される灼熱の火炎弾が、宙マンを急襲！
更に、持ち前の念動力をも発動させ、天空から無数の火球を降り注がせる。
宙マンの周囲に、上空からの火球が次から次へと落下し……
爆発！ 爆発！ また爆発！！
「う、うわぁぁぁぁ……っ！！」
みくるん「ああっ、宙マンさんが！」
ながもん「あの宇宙人、かなり……強い」
ビーコン「しかも、ギャグのひとつも飛ばしてくれねーもんだから……
すっげー不気味で、威圧感がハンパねぇっスよぉ！」
落合さん「もっとも、今の流れでギャグかまされても困ってしまいますが……（汗）」
ピグモン「はわわわ、宙マン、がんばってなの～！」
宙マン「（苦悶）う、うう……っ！」
デスローグ「……（無言で、とどめの攻撃態勢に入る）」
「なんの……やられて、なるものかッ！」
宙マン、パワー全開！
デスローグが放ったとどめの火炎弾を、辛くもかわして大ジャンプ！
デスローグ「（驚愕）……ぐ、グオオッ！？」
宙マン「行くぞ、デスローグ！」
宙マン「エイヤァァーっ！
宙マン・ミラクル・キック！！」
出た、電光石火の必殺技！
ミラクル・キックの直撃を受け、デスローグが悶絶してのたうった所へ――
宙マン「とどめだ、受けてみろ――宙マン・超破壊光線！！」
両手の間にエネルギーを集中させ、激しいスパークとともに放つ大技。
「超破壊光線」の直撃を受け、火花を散らすデスローグのボディ！
デスローグ「……ぐ、グオオオオ……っ！！」
やったぞ宙マン、大勝利！
グロッケン「ああっ、デスローグが！」
ジャタール「惜しいッ、あと一歩……あそこまで宙マンを追いこんでおきながら！」
ヴィラニアス「よくも俺様たちのデスローグを……おのれ宙マン、断じて許さんぞ！」
イフ「あぁ……そうだ、そうとも、このままにはしておくものか！
宙マンよ、次なるワシらの挑戦を楽しみに待っているがいい……
今度こそは、必殺の刺客が貴様の息の根を完全に止めてくれようぞ！」
“炎上の”デスローグとの対決は、宙マンの勝利でその幕が下りた。
そう、あくまでひとつの戦いが……終わった、と言うだけの話に過ぎない。
戦いを終え、千歳の街に立つ巨大なる雄姿！
平和を守ったヒーローの雄姿を、人々が惜しみなく讃える。
だが、この時すでに、また新たなる邪悪の影が近づきつつあることを……
千歳市民も、宙マンファミリーも、未だ誰も知らずにいたのであった。
かくして、今日も千歳の平和は守られた。
だが、ダークネスファイブ・最後の一人とは何者？
そして、来たるべき宙マンとの戦いの日はいつ！？
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