遥かなる宇宙の彼方、暗黒星雲の奥深くから……
美しい緑の星・地球を我が物にせんと狙い続けている怪獣軍団。
今日も配下の怪獣たちへと向けて、怪獣魔王・イフの檄が飛ぶ。
またしても恐るべき侵略の魔手が、我らの青い地球へ向けて伸びるのだ!
イフ「うぅむ、“魔導の”スライは未だ戻らぬか。
……だが、ダークネスファイブだけに任せておいてはならんぞ。
怪獣軍団の一頭一頭が知恵を絞り、力を尽くして地球侵略に励むのだ。
ゾネンゲ博士よ、そのための作戦は既に進んでおろうな!?」
「勿論でございますとも、魔王様!」
ゾネンゲ博士「既に地球には、円盤生物ノーバを送りこんであります――
ひとたびノーバが行動を開始すれば、破壊と混乱、そして悲鳴が地上を充たし
青い地球はたちどころに、我が怪獣軍団の手中へと落ちましょう!」
イフ「ううむっ、実に素晴らしい、実に楽しみじゃ!
して、今ノーバはどこで何をしておる?」
怪獣軍団が送り込んだ、新たなる地球侵略の使者……
それはブラックスター出身の生ける殺戮マシン、円盤生物ノーバであった。
おお、まさに、この瞬間にも……
北海道千歳市に潜伏したノーバは、彼に与えられた使命を完璧に果たすべく
虎視眈々と邪悪な爪を研ぎ、侵略計画を推し進めているに違いないのである。
さて、そのノーバは……円盤生物ノーバは、今!?
「ありがとうございました~。またおいで下さい~!」
ノーバ「フヘフヘフヘ~、ごっそさん。旨かったよ~!」
……と言う、極めて庶民的かつ呑気なやり取りを経て、石焼きカレーラーメンが
評判を呼んでいる、千歳市近郊の店から食事を終えて出てきたところであった。
ノーバ「さーて、食後にはやっぱりコーヒーだよなぁ!
……てなわけで、どっかテキトーな喫茶店ないかなぁ?
コーヒー飲みつつ時間潰して、あとは適当に作戦失敗の上手い言い訳でも
でっちあげつつ暗黒星雲へ帰る、ってコトで……」
「コラぁっ、ノーバよ! 全部まる聞こえだぞ!?」
ノーバ「(驚き)げげぇっ、魔王様!……聞いてたんですか、趣味が悪いなぁ!」
イフ「全く、お前と言う奴は……
隙あらば、仕事をさぼってダラダラすることばかり考えおってからに!
そんな奴は、怪獣軍団の掟にのっとって粛清せねばならぬ――
具体的には、おやつ抜き三か月の処分だッ!!」
ノーバ「(思わず蒼ざめ)……ひ、ひぇぇ~っ、そんな殺生な!
……ハイハイ、やりますやります、やりゃいいんでしょ~っ!_」
怪獣魔王からの恐怖宣告に、震えおののき――
粛清などされてはたまらぬと、赤い煙に包まれて一気に巨大化するノーバ。
「フヘフヘ……ノバ、ノ~バぁぁ~っ!!」
千歳市のど真ん中に、忽然と姿を現した真紅のてるてる坊主!
そうとしか形容のしようがないノーバの巨体を目の当たりにして、平和な街は
たちまちのうちに人々の悲鳴が渦巻く大パニックの巷と化した。
ピグモン「ああっ、なんかまた出てきたの!」
宙マン「……さては、また怪獣軍団の手の者か!」
ノーバ「フヘフヘ~、いかにもタコにも、おれは円盤生物ノーバ様だ!
怪獣軍団の地球征服、その第一歩として千歳の街を破壊すること……
それが、この俺に与えられた使命なのさ」
落合さん「ンもう……いつだって唐突で、なおかつご勝手なんですから!」
ビーコン「毎回懲りずにそんなことする、筋の通った理由があるんスか!?」
ノーバ「フヘフヘ~、うるせぇ、こっちだってやるしかねェんだよ!
上手いこと仕事サボろうとしたら、まんまと見つかって怒られて……
真面目にやらにゃ、こちとら三か月間のおやつ抜きだ!
……どうだ、これ以上の理由が必要か!?」
宙マン「うむっ……それは確かに、筋の通った理由だ!」
ビーコン「……ってアニキ、納得してどうすんスかぁ!?(汗)」
イフ「ふはは……さぁ行けノーバ、「死を呼ぶ赤い暗殺者」よ!
お前も怪獣軍団の戦士たるに恥じぬ存在だと、その行動で示してみよ!」
ノーバ「ノバノバ~、お任せ下さい、魔王様!」
怪獣魔王の命を受け、進撃を開始するノーバ!
迫り来るその巨体を前に、右往左往して逃げ惑う千歳の人々。
ビュウンッ!
勢いよく振るわれ、叩きつけられる鞭の一撃。
その痛烈な打撃によって、車が、建物が、次々に破壊されていく!
ビーコン「どひ~っ、まずいっスよ、あんな緊張感のないルックスなのに……」
落合さん「……あの怪獣、なかなかにお強くてらっしゃいますわねぇ!」
ピグモン「はわわ……宙マン、宙マン、なんとかしてなの~」
宙マン「(頷き)おのれ、もう許さんぞ! 宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、荒れ狂うノーバの前に舞い降りる!
宙マン「トゥアーッ! 宙マン、参上!
この私がいる限り、千歳の街で乱暴狼藉は出来ないものと知るがいい!」
ズ、ズーンっ!!
ノーバ「フヘフヘ~、出たな宙マン……
お前をやっつけて、さっきのチョンボもまとめて帳消しにしてやる!」
宙マン「残念だがそれはない――今日もまた、返り討ちだ!」
ファイティングポーズを取り、敢然と身構える宙マン。
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ!
激突、宙マン対ノーバ!
落合さんたちが見守る中、巨大な両者が真っ向から戦いの火花を散らす。
ノーバの武器は、右手の鞭と左手の鎌。
これを激しく振るい、嵐の激しさで宙マンめがけて襲いかかってくる。
だが、その猛攻を前にしても、宙マンの闘志は決して衰えない。
繰り出される鞭の軌道をかいくぐり、鋭利な鎌の一閃を押さえこみつつ
敵の内懐へ飛び込み、肉弾技を次々にお見舞いしていく。
宙マン「くらえ! 宙マン・ウェッジビーム!」
指先にエネルギーを集中させ、くさび状の破壊光線を放つ宙マン。
しかしノーバは、持ち前の飛行能力でその一閃をふわりと浮きあがってかわし
そのままフワフワと空中に浮きあがったまま、宙マンへ襲いかかってくる。
宙マン「ムッ!?」
ノーバ「フヘフヘフヘ~、見たか宙マン、ノーバ様の華麗なる空中浮揚!」
ふわふわと予測不能な軌道を描きながら、空中を自在に舞って
宙マンを翻弄しつつ鞭と鎌で襲いかかる、ノーバ得意の幻惑殺法。
その動きに翻弄され、さしもの宙マンも攻めあぐんでしまう。
宙マン「くそっ、ちょこまかと……!」
ノーバ「フヘフヘフヘ、これでもくらえ~!」
口から吐き出される、赤色のノーバ・ガス!
その不意打ちに目くらましを食わされ、幻覚作用に宙マンがよろめいたところへ
すかさずノーバが、目から放つ怪光線で追い打ちをかける。
連射される怪光線によって、宙マンの周囲に巻き起こる爆発。
そして、遂に……その恐るべき威力が、宙マンのボディを直撃した!
「う、うわぁぁぁぁ……っ!!」
ズ、ズーンっ!!
落合さん「ああっ、お殿様っ!」
ビーコン「まずいっス、今度アレを食らったらいくらアニキでも……!」
ピグモン「はわわ……宙マン、まけないでなの~!」
全身に受けた大ダメージに、がっくり片膝をつく宙マン。
そんな彼に狙いを定め、空中を滑るように舞いながらノーバが迫ってくる!
ノーバ「フヘフヘフヘ、いよいよ最後の時だな宙マンよ!」
宙マン{(苦しみつつも立ち上がり)なんの……負けて、たまるかッ!」
気力を振り絞り、とっさに形成した宙マン・プロテクション!
空間湾曲で生じさせた防護壁により、ノーバの怪光線は完全に無力化される。
ノーバ「(驚き)……な、何ですとぉぉっ!?」
宙マン「とどめだ!
宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、ノーバを直撃!!
ノーバ「……こ、こんな……こんなハズじゃ、なかったのに~!」
やったぞ宙マン、大勝利!
ビーコン「やったやった! やってくれたっスねぇ、アニキ!」
落合さん「今日もまた素敵の一言に尽きますわ、お殿様!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、ありがとうなの~♪」
人々の声援を受け、すっくと立つ宙マンの巨体。
どこまでも凛々しいその雄姿には、青空こそが何より似合う王者の冠であった。
イフ「ぐぬぬぬっ……おのれ、よくもこのワシに恥をかかせてくれたな!
だが宙マンよ、お前は未だ怪獣軍団の真の怖ろしさを知らぬ……
次から次に新しい怪獣を送りこみ、必ず貴様の息の根を止めてやる!」
……などと言う、毎度お馴染みの負け惜しみはさて置いて。
ビーコン「いえっふ~、アニキ、どうもお疲れ様っした!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、今日もかっこよかったの~♪」
宙マン「ありがとう、みんなが応援してくれたおかげだよ。
……それにしても、三か月間のおやつ抜きとは……
あの怪獣軍団にも、なかなかに厳しい鉄の掟があったのだねぇ」
落合さん「(頷き)えぇ、ただの呑気な寄り合い所帯と思っておりましたら……」
ビーコン「なんだかんだで“悪の組織”なんスねぇ、連中も」
ビーコン「ヒヒヒ、その点オイラはアニキの家の居候でホント良かったっス!
何をするのも自由気まま、落合さんのおケツ撫でたりオッパイ揉んだって
誰にもとがめられることなく……」
落合さん「……ッ!!(わなわなと震えて)」
げ し っ !
落合さん「ねーい、粛清っ!!(激怒)」
ビーコン「どひ~っ、我が家の掟もオイラには厳しかったっスぅぅ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
今日も本当に有難う、宙マン。
だが未だ、怪獣軍団の野望は尽きない……
さぁ、次回はどんな冒険が待っているのかな?