山を砕き、大地を裂いて、次々に現れる大怪獣。
その猛威に立ち向かい、平和を守り抜くことが出来るのは……
プラネット星からやって来た、彼をおいて他にはいない!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
怪獣軍団の手先め、もうお前の好きにはさせんぞ!」
正義のヒーロー、今日も今日とて颯爽の巨大化。
対する敵は……多彩な攻撃技が自慢の宇宙斬鉄怪獣・ディノゾールだ!
宙マン「さぁ、どこからでもかかって来い!」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ。
ディノゾール「キャキャウゥゥ~ッ、行くぜェ、宙マン!」
宙マン「よし来い、勝負だ!」
猛々しく咆哮し、宙マンへと牙を剥いて襲い来るディノゾール。
この好カード、もはや一瞬一秒たりとも見逃せないね!
……と言いつつ、ここでおもむろに早送り装置を作動。
戦いの大詰め、ラストの美味しいところだけどうぞ!!
「それっ、とどめだ!
宙マン・エクシードフラッシュ!!」
ディノゾール「キャキャウゥああ~っ、そ、そんなのアリかよ~っ!?」
やったぞ宙マン、大勝利!
宙マン「はぁ、はぁ、はぁ……怪獣ディノゾール、怖ろしい強敵だった!」
落合さん「どうもお疲れ様です、お殿様!」
ビーコン「でもアニキ、もたもたしてる場合じゃないっスよ!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、早く早くなの~」
宙マン「おっと、いけない……そうだったね!」
戦い終えて、巨大化を解き……
みるみるうちに、その場で通常サイズへと戻る我らが宙マン。
宙マン「やぁやぁ、お待たせ、お待たせ!」
宙マン「野暮用も済んだことだし、それじゃ改めて……」
ビーコン「例の定食屋の、ランチタイムを狙って突撃っス!」
宙マン「(こっくりと頷き)」
宙マン「材料よし、ボリュームよし、そしてお値頃価格もよし……
あそこの日替わり定食は、本当に評判がいいからねぇ」
ビーコン「こないだのカットステーキ定食も、マジ絶品だったっス!」
落合さん「あのバラエティ豊かなメニューと、的確な調理。
当家のメイドとしましても、実に興味深いところですわ」
ピグモン「今日のランチは何なのか、今から楽しみなの~」
宙マン「あぁ、私もさ、ピグモン。
だからこそ、怪獣退治なんてものはさっさと「巻き」で片付けて
じっくりお昼ご飯を愉しみたいよねぇ」
落合さん「お殿様のその想い、無駄にしないためにも……
一刻の猶予もなりませんわ、急いでお店へ!」
ビーコン「ここまできて、ランチ終了なんてコトになったら……
オイラ、もう泣くに泣けねぇっスよ!」
ピグモン「はわわわ、宙マン、はやくはやくなの~」
宙マン「(微笑)ようし、それじゃ行こうか!」
かくして、ランチタイムの定食屋へと向かった宙マンファミリー。
笑顔の絶えない、平和そのものの光景であった。
だが、その一方で……。
自信をもって送り出したディノゾールを、まんまと返り討ちにされた
暗黒星雲の怪獣軍団としては、これでおさまるはずもなく。
イフ「ぐ……ぐぬっ、うぬぬぬぬ……!」
イフ「おのれおのれ、またしても宙マンめが!
よくもディノゾールを……よくもやってくれたな!」
ジャタール「ま……まぁまぁ魔王様、少し落ち着かれては!」
ヴィラニアス「そうだぜ叔父貴、カッカするとまた血圧が……」
イフ「えぇい、黙れ黙れッ!」
イフ「だいたい、お前たちもお前たちだぞ――
そんな風に、呑気に構えている場合か!?
ワシらがこんな屈辱を味わっている一方で、宙マンときたら……
今にも能天気に食レポなど始めようか、と言う勢いではないか!」
「んー、ふふふ……
でしたら魔王様、この私にお任せを!」
余裕綽々の笑いとともに、怪獣魔王の前に進み出てきたのは
怪獣軍団の幹部候補生たる「ダークネスファイブ」のリーダー格、
メフィラス星人“魔導の”スライである。
イフ「おおっ、スライか!」
イフ「そなたに任せれば、全て問題ないのだな?」
スライ「んー、ふふふ、勿論でございますとも魔王様。
むしろこの私、“魔導の”スライ以外の誰にそれが叶いましょうや――
万事お任せを、宙マンと見事に渡り合ってみせましょう!」
イフ「頼もしい言葉じゃ、大いに期待させてもらうぞ!」
スライ「んーふふふ、では……こちらをご覧下さい。
……ポチっとな♪」
リモコン操作で、怪獣軍団の映像装置に映し出されたのは……。
イフ「はて……ここは、地球か?」
スライ「(頷き)北海道の上川地方北部、美深町にございます」
スライ「かねてより、この美深町では……
町を挙げてチョウザメの養殖に力を入れており、食用として
その肉を味わうことの出来る、道内でも稀有な場所なのです」
イフ「……ほうほう?」
スライ「と、言うわけで。
この私、怪獣軍団きってのグルメこと“魔導の”スライがですな、
さっそく現地で味わい尽くしてきちゃいました~!!」
イフ「……はぁ!?」
スライ「コホン、改めまして……
ご当地・びふか温泉さんの「ちょうざめ堪能」コース」
スライ「まずはチョウザメの前菜三種。
来たる主菜への期待に胸を躍らせつつ……」
スライ「続いてお造り。
マグロ、南蛮海老、そして勿論チョウザメ!」
スライ「更に、握り寿司。
サーモン、いくら、マグロ、チョウザメ。
……っと、ここでお気づき頂けましたでしょうか、魔王様?」
イフ「(身を乗り出し)お、おうっ、何じゃ!?」
スライ「これこれ、コレですよ魔王様。
彩りも美しく、味わいも深いことこの上なしですよ!」
イフ「お……おう(汗)」
スライ「ここで、平鉢。
山菜蕎麦の爽やかな喉越しが、コース中盤の涼風となって
舌の上を適度にリフレッシュしてくれたところで……」
スライ「お次はコチラ、美深牛のカットステーキ。
純そのものの旨味が、品よく舌の上でとろける快感!」
スライ「と、ここまで食べ進んだところで……
チョウザメの蒸籠蒸しが、ちょうど熱が通って食べ頃に。
スライ「火が通り、熱で味わいの活性化したチョウザメの身は
生とは一味以上も違う味の膨らみが出てきます――
で、その旨味を受け止めた野菜のまた旨いこと!」
イフ「……あぁ、そう……(もはや言葉もなく)」
スライ「吸い物は、チョウザメすり身のの澄まし汁仕立てで。
すり身がさっとほぐれ、汁全体に行き渡る典雅な旨味!」
スライ「で、そんな中で出しゃばり過ぎず……
メインを引き立てる名脇役、茶碗蒸しが心憎い限りでして」
スライ「そして食後のデザートは、「びふか温泉」特製……
羊乳プリンのフルーツ添えでありますよ!
濃厚なのに軽く、もたれない、いやはや全くこれがまた♪」
スライ「ひとつひとつの料理は少なめながらも、順に味わっていくと
いつの間にか程よく心地よい満腹感が得られている……
んーふふふ、コースメニューの摩訶不思議ですなぁ」
スライ「以上、しっかり堪能してきちゃいました~♪
皆様もご来道の折には、是非ともご賞味下さいませませ!」
……と、ここでようやく映像終了。
スライ「んーふふふ、いかがでしょうか、私のレポートは!
質的にも、量的にも、宙マンと互角以上に張り合えるはず……
……っと、魔王様? 聞いてますか? もしも~し?」
イフ「……( ぷ ち っ !! )」
「えぇい、この大たわけが~っ!!」
イフ「黙って聞いていれば、なんだそれは!
誰が宙マンと「食レポで」張り合えなどと言った!?(激怒)」
スライ「ひょえぇ~、魔王様も最後まで聞いてたくせにぃぃ~!(汗)」
と言ったところで、今日のお話はこの辺で。
……お粗末!
今日も宇宙は平和そのもの。
だが、油断は禁物だぞ……
次回は一体、どんな事件が巻き起こるのやら!?