雪、雪、雪……
名実ともに今、北海道は冬まっさかり。
これから再び春が訪れるまで、この分厚い雪に埋もれるようにして
絶えず寒さと戦いながら暮らすこととなる北海道民。
白くて美しいが、冷たくかさばって何かと厄介――
北国で暮らしていると、否応なしに向き合わざるを得ないのが
この「雪」と言う存在なのである。
でも、だからと言って。
家に閉じこもり、縮こまってばかりいては気が滅入る!
と言うわけで、こんちお馴染み宙マンファミリー。
いつもの「宙マンハウス」を飛び出して、一面の銀世界が広がる
千歳市の郊外まで足を延ばしていた。
宙マン「いや~、雪の白さが目にまぶしいくらいだねぇ!」
ピグモン「はうはう~、キラキラしてとってもきれいなの~♪」
落合さん「冷えることは冷えますけど……
その分、お天気に恵まれたのはせめてもの幸いですわね。
あぁ、空気も美味しいですこと!」
ビーコン「チチチ、だめだめ、だめっスよ落合さん。
これからもっと旨いもん食いにいくのに、そんな空気なんて
美味しがってるようじゃ、ね!」
落合さん「いいんですのよ、空気は空気で別腹――
おうどんを頂く上で、何の支障もございませんわ!」
そう、ここまでのやりとりでお察し頂けた通り。
今日の宙マンファミリーは、地元の清冽な天然水を用いている
こだわりの麺づくりに定評のある、郊外の手打ちうどん屋さんへ
絶品うどんを求めてやって来たのである。
宙マン「あそこのうどんはねぇ、何と言っても麺が絶品だよねぇ――
冷やしても固くなりすぎず、温かいツユの中に投じても
しっかり気持ちの良いコシがあって、ねぇ!」
落合さん「そして、そんな出来の良い麺が活きるのも……
丁寧にとられたダシ汁と、それを元にしたツユあってのこと。
うふふ、私、あそこの天ぷらうどんが大好きで♪」
ビーコン「天ぷらの衣が食べ進めてくうちにツユの中でほぐれて、
ツユの味がぐんと旨さを増してくるんスよねぇ。
色っぽいやら旨いやら、もう堪らねっスよ!」
落合さん「えぇ、珍しく意見が一致しましたわね!」
宙マン「あっさり、すっきり、それでいて旨味豊か。
簡単なようで、これがなかなか……」
落合さん「メイドとしましては、何とか味の秘訣を盗みたいところですので……」
ビーコン「ヒヒヒ、こりゃもう通い詰めるしかないっスねぇ!」
ピグモン「はわわ~、ピグちゃんもう……
お話聞いてるだけで、お腹ぺっこぺこなの~」
宙マン「はっはっはっ、全くだねぇ。
さぁ、みんな、お店へ急ごうじゃないか!」
寒さで白い息を吐きながら、うどん屋さんへと向かう宙マン一家。
だが、その時である!
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラっ!
宙マン「う、うおっ!?」
落合さん「こ、この揺れ方は、もしかしたら……」
ビーコン「どひ~っ、よりによって、このタイミングでっスかぁ!?(汗)」
そう、落合さんの推測通り――
千歳郊外の平原を引き裂き、地中から姿を現したのは、例によってまた
暗黒星雲からの使者、恐るべき大怪獣に他ならなかった!
「ギシェエエ~ンっ!!」
ピグモン「はわわわ、か、怪獣なの~!」
落合さん「きっとまた、怪獣軍団からの差し金ですわ!」
宙マン「ううむっ、怪獣魔王め……性懲りもなく!」
重々しい足音を響かせて、雪の郊外をのし歩く巨体は……
怪獣軍団の一員、剛鉄怪獣プラチ。
一見すると、M78星雲・メタル製出身の怪獣と見間違いそうだが
ウルトラセブンと共に戦う「正義の怪獣」として有名なあちらと違い
このプラチは札付きのワル、怪獣魔王の信任篤き暴れ者なのである。
プラチ「ギシェエエェ~っ、この俺ちゃんが来たからにゃ……
もうお前らは、呑気に昼飯食ってる暇なんてないんだぜ!」
ビーコン「どひ~っ、ランチタイムに何て問題発言っスか!」
落合さん「全ての労働者の敵ですわ、この方はっ!」
宙マン「……ううむっ!」
イフ「わははは……さぁ行け、大いに破壊するのだ!
大怪獣プラチ、お前の威力を見せつけるのは今だぞ!」
イフ「そして、その焦土の上に、ワシら念願の前線基地を築きあげ……
今度と言う今度こそ、地球を一気に征服するのじゃ!」
プラチ「ギシェエェェ~ンっ、やりますよォン、魔王様!」
ビーコン「どひ~っ、何つープラチな悪行三昧っスかぁ!?」
落合さん「……全然上手くないですからね、ビーコンさん!」
ピグモン「えう~、冷静にツッコんでる場合じゃないの~!(汗)」
千歳の平和、今まさに風雲急を告げる!
だが、その一大事を、黙って見ている防衛隊ではない――
落合さん「ああっ、またいいところで来て下さいましたこと!」
ビーコン「期待してるっスよ~、毎回わりとマジで!」
ピグモン「防衛隊のおじさんたち、がんばってなの~!」
「ようし、やるぞ――全機、攻撃開始っ!」
人々の声援を受け、張り切って攻撃開始する戦闘機隊!
だが、そんなロケット弾の洗礼も、全くプラチを止められない。
プラチ「ギシェェ~ンっ、雑魚はすっこんでろっての!」
「う、うわぁぁぁ……っ!?」
プラチが口から吐き出す灼熱火焔弾!
その直撃を受け、戦闘機隊は次から次に撃墜されていく。
ピグモン「ああっ、やられちゃったの!」
落合さん「あらあらまぁまぁ、何てことでしょう!」
ビーコン「これじゃマジで……
うどんより先に、オイラたちの方がのびちまうっス!」
ピグモン「はわわ……おねがい宙マン、なんとかしてなの~」
宙マン「(頷き)ようし、とことんやってやる!
宙マン・ファイト・ゴー!!」
気合一発、勇気百倍!
みるみる巨大化して、荒れ狂うプラチの前に立ちはだかる宙マン。
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
大怪獣プラチ、それ以上の乱暴は許さないぞ!」
プラチ「ギシェエェェ~ン、出たな宙マン!
暗黒星雲の仲間が言ってた通り……
カッコつけやがって、いけ好かねぇ奴だぜ!」
宙マン「果たして、うわべだけの格好つけかどうか……
痛い目を見て、その身で思い知ってみるかね?」
プラチ「(イラッ)……野郎っ!」
ファイティングポーズを取り、敢然と身構える宙マン。
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ!
プラチ「ギシェェェ~ッ、いいとも、だったら勝負だ!!」
宙マン「やはりそうなるか……さぁ来い、プラチ!」
真っ向激突、宙マン対プラチ!
落合さんたちがハラハラと見守る中、両者の死闘が展開。
メタリックに輝くボディに秘められた、問答無用の猛パワー!
太い腕で殴りかかってくる、超豪快なプラチの力技である。
猛攻をかわしつつ、宙マンも決死の接近戦を挑んでいくが……
持ち前の剛腕で、押しに押しまくるプラチ!
勢いに乗った連打に、さしもの宙マンも苦しい戦いだ。
プラチ「ギシェェェ~ッ、思い知ったか、俺ちゃんの強さ!」
宙マン「なんの、まだまだっ!」
出た、宙マン得意の浴びせ蹴り!
しなって唸るキックは、鞭のような痛烈さでプラチの脇腹を打ち据える。
プラチ「うぐぅぅぅ……っ!」
ズ、ズーンっ!!
宙マン「ようし、これで決まりだ!
宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線。
エクシードフラッシュの一閃が、プラチを直撃……
……したかと、思いきや!?
プラチ「ギシェエェェ~ンっ、何じゃそりゃ、くすぐったいわ!」
宙マン「馬鹿な……エクシードフラッシュが!?」
これまで幾多の凶悪怪獣を倒してきたヒーローの得意技……
それが通用しないとあって、さすがに宙マンの動揺も大きい。
イフ「わははは……驚いたか、宙マン!」
イフ「超宇宙金属の体の前には、もはや貴様の光線技など児戯同様!
さぁやれプラチよ、今こそ宙マンにとどめを刺すがよい!」
プラチ「ギシェエェェ~ンっ、勿論ですとも、魔王様ァ!」
プラチの口から、宙マンめがけて吐き出される灼熱火焔弾!
宙マンの周囲に炸裂して、たちまち巨大な火の手をあげさせる。
ズガーン! グワーンっ!
これにはたまらず、ぐらりと大きくよろける宙マンの巨体!
落合さん「ああっ、お殿様が!」
ビーコン「ヤバいっス、あれを何度も食らったら……!」
ピグモン「はわわわ、宙マン、まけないでなの~!」
プラチ「ギシェェ~っ……そぉら、死ね死ね!」
いよいよ図に乗って、火炎弾を乱射するプラチ。
次々と巻き起こる爆発で、真冬の花火大会の様相を呈する中……
宙マンは素早く態勢を整えるや、それらの爆発を軽快な身のこなしで
ひらり、ひらりと回避していく。
そして、一瞬のチャンスを逃すことなく……
火炎弾回避のジャンプとともに、大きく空に舞い上がる宙マン!
プラチ「(目をパチクリ)ぎぎ、ギシェェェェっ!?」
宙マン「正義の刃、受けてみろ!
秘剣・スーパー滝落とし!!」
ザシュウッ!!
スーパー剣を抜き放ち、刀身にエネルギーを集中させ……
豪快な空中回転とともに、真っ向から振り降ろされる光の刃!
宙マンの「滝落とし」が、プラチの巨体を唐竹割りに切り裂いた。
宙マン「それっ、もういっちょう!
秘剣・スーパー大波崩し!!」
ズバァァッ!
怒涛のような突進の勢いに乗り、斜め一文字にひるがえる光の刃!
プラチ「ね……念入りにも、程があるぅぅ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
落合さん「やりました……お見事ですわ、お殿様!」
ビーコン「いえっふ~、やっぱアニキはこうじゃなきゃっス!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、ありがとうなの~♪」
イフ「おのれ、おのれぇぇ……またしても宙マンめが!
だが、覚えておれよ……
最後に笑うのは、ワシら怪獣軍団なのだと言う事をな!」
……などと、そんな毎度の負け惜しみはさて置いて。
我らが宙マンの活躍で、大怪獣プラチは撃退され……
美しい千歳の雪景色に、再び元の静けさが戻ったのであった。
落合さん「改めまして……どうもお疲れ様でした、お殿様!」
宙マン「いやはや、一勝負したら、すっかりお腹がすいちゃったな。
さぁさぁ、早くうどん屋さんでランチにしようよ!」
ピグモン「はうはう~、ピグちゃんも異議なしなの~♪」
落合さん「美味しいおうどんで、体の芯まで暖まりましょう!」
ビーコン「ヒヒヒ、そしてそして。
落合さんの冷えた心に火を灯すのは、オイラの……」
落合さん「(ジト目)……ビーコンさんの、何です?」
ビーコン「がっはっはっ、今更言葉にするなんて野暮っスよ!
さぁ落合さん、何なら今すぐこの場で愛の実演を……☆」
げ し っ !
落合さん「っがー! おぞましいから言わなくて結構ですっ!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、七味クラスの激辛パンチっスぅぅ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
今日も本当にありがとう、宙マン!
だが、未だ怪獣軍団の野望は尽きない……
さて、次回はどんな冒険が待っているのかな?