悠々自適の北海道暮らしを満喫しつつ……
その一方で、地域の平和のために怪獣どもとも戦い続ける宙マン。
「それっ、とどめだ!
宙マン・エクシードフラッシュ!!」
「ちっ、チクショオぉぉ……
次は絶対、単独出演回で逆襲してやる~!!」
必殺光線が炸裂し、超古代植物・ギジェラを一撃で吹っ飛ばす。
やったぞ宙マン、今日もまたまた絶好調!
かくてまたまた、怪獣軍団の野望は水泡に帰すはめに。
暗黒星雲の怪獣魔王・イフにとって、これが面白かろうはずもなく……。
イフ「ぐぬぬぬ……どこまでも小癪な宙マンめが!
今度こそ勝てるはずが、またも奴を調子づかせてしまったぞ!」
こちら、暗黒星雲の奥深く……
怪植物ギジェラの敗退に、ギリギリ歯噛みして悔しがる怪獣魔王である。
イフ「誰でもいい、一日も早くあの宙マンを倒せる者は……
ワシの気分をスカッとさせてくれる者はおらんのか!?」
「んーふふふ、お任せ下さい、魔王様!」
イフ「おおっ、何か手があるのか、“魔導の”スライ!?」
スライ「んふふ、でなけりゃ挙手など致しません♪」
イフ「相変わらず減らず口を……まぁよい、さっさと話せ!」
スライ「ギジェラ君との戦いを終え……
一件落着して、宙マンはたった今、意気揚々と山を下り
千歳市の中心部に帰っていったところでございます」
イフ「うむっ、甚だシャクな話だな!」
スライ「そう、そして……それが私の狙い目です。
宙マンが去り、ちょうどガラ空き状態になった同じ場所へ
時間差で、新手の怪獣を送りこめば……!」
イフ「おおっ、なるほど!」
スライ「宙マンさえいなければ、我々の目的もス~ンナリ!」
イフ「くううっ、そいつは楽しみだわい――
今度こそ邪魔はさせんぞ、今に見ておれ!」
おお、何と言うことだろう……
恐るべき怪獣軍団の魔の手が、またしても!
スライ「さぁ……今こそ出番ですよ、ゴーストロン君。
君の怪力を、思う存分に揮う時が来たのです!」
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラっ!
スライの呼びかけとともに、千歳の山奥に生じる局地地震。
大地を引き裂き、もうもうたる土煙を巻き上げて……
今、ギジェラに次ぐ怪獣軍団・第二の刺客が姿を現した!
「ピギャルァァ~っ!!」
岩を吹き飛ばして、地上にその姿を見せた異形。
「爆弾怪獣」の異名をとるゴーストロンだ!
スライ「んー、ふふふ、ご苦労ですゴーストロン君!」
スライ「では、早速ではありますが……
一働き、「仕事」にかかってもらうとしましょうか」
イフ「左様、ギジェラが果たせなかった使命を引き継ぎ……」
イフ「ワシらの悲願、地球前線基地の建設。
そのための整地作業において、お前の怪力は欠かせぬ。
……やってくれるな!?」
ゴーストロン「ピギャルル、勿論でさぁ!」
イフ「うむっ、頼もしいの。その答えが聞きたかったのじゃ!」
スライ「しっかりやって下さいよ、ゴーストロン君!」
ゴーストロン「ピギャルル~、お安い御用さぁ。
宙マンもいないってんなら、尚のこと楽勝……」
「うン、この私がどうしたって?」
ゴーストロン「ぬうっ、ど、どこのどいつだ!?」
不意に響いてきた声に、驚いて振り返るゴーストロン。
……あぁ、そうとも、彼をおいて他に誰がいるだろう?
ゴーストロン「げげぇっ、ちゅ、宙マン!?」
宙マン「(気さくに)やぁ♪」
ゴーストロン「“やぁ”じゃねぇよ、“やぁ”じゃッ。
大体お前、さっきのギジェラとの戦いが終わって……
一件落着だと安心して、街まで帰ったんじゃなかったのか!?」
宙マン「うん、私もそのつもりだったんだが……」
宙マン「道中、なんだか胸騒ぎがしたものでねぇ。
念のために確認だけでも……と思って、引き返してみれば
案の定、君がいたってわけさ。はっはっはっ!」
ゴーストロン「こ、この野郎ぉぉっ……
普段は呑気なくせに、変なとこで気ィ回しやがって!」
巨体を震わせ、猛然と迫り来るゴーストロン。
等身大の宙マンを、一気に踏み潰すつもりなのだ!
宙マン「ううむっ、どうやら戻ってきて正解か!
宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、ゴーストロンの前に舞い降りる!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
千歳での悪事は、私が決して見過ごしておかないぞ!」
ズ、ズーンっ!!
ゴーストロン「ピギャルゥゥ~、出やがったな、宙マン!」
ゴーストロン「さっきギジェラと戦ったばっかで、疲れてるお前が……
この俺様を相手に、勝てると思ってるのかィ!」
宙マン「(ニヤリ)……試してみるかね?」
右手を伸ばして、クイックイッと手招きし……
大胆不敵にも、ゴーストロンを挑発してみせる宙マン。
「……こ、この野郎がぁぁ~っ!」
怒り、猛然と突進してくるゴーストロン!
だが、その反応こそ宙マンの思う壺であった。
宙マン「そぉれっ、宙マン投げだ!」
ズ、ズーンっ!
ゴーストロンの首をとり、一気に投げ飛ばすスーパーパワー!
爆弾怪獣の巨体が軽々と宙を舞い、地面に叩きつけられる。
ゴーストロン「ピギャルル、まだまだ、勝負はこれからだぜ!」
宙マン「さぁ、どこからでもかかって来い!」
ファイティングポーズをとり、敢然と身構える宙マン。
さぁ、本日二度目のビッグファイト開幕だ!
真っ向激突、宙マン対ゴーストロン!
緑豊かな千歳の山を舞台に、両者の攻防戦が火花を散らす。
パワー全開で、接近戦を挑んでくるゴーストロン。
宙マンも負けじと、ボクシング・スタイルで迎え撃ち……
凄絶な打撃音が、千歳の山いっぱいに響き渡る。
ゴーストロン「ピギャル~、なかなかやるじゃねぇか!」
宙マン「いいや、まだこんなものじゃないさ――それっ!」
熱い闘志をこめて、鋭く繰り出されるストレートキック!
その直撃を胸板に受け、ずずっと後退するゴーストロン。
ゴーストロン「(息が詰まり)……ぐ、フゥ……っ!」
宙マン「さぁて、お次の一撃は――」
ゴーストロン「おおっと! 俺様が先だぜ、宙マン!」
ゴーストロンの怒りそのもののように、勢いよく迸る熱線!
宙マンの周囲に炸裂し、凄まじい爆炎が噴き上がる。
ズガーン! グワーンっ!
「う、うわぁぁぁぁ……っ!」
スライ「んーふふふ、宙マンの奴め……
先のギジェラ戦での消耗は、隠しきれないようですなぁ!」
イフ「うむ、うむっ……いいぞゴーストロン、その調子だ!
恨み重なる宙マンに、今度こそとどめを刺すのだ!」
宙マン「(苦悶)うう……うっ!」
ゴーストロン「ピギャルルル……さぁて、死んでもらうぜ、宙マン!」
宙マン「なんの、これしきで……やられる、ものかァッ!」
宙マン、パワー全開!
ゴーストロンの熱線を、ジャンプでかわして大空へ。
ゴーストロン「(驚き)ぴ、ピギャルルっ!?」
宙マン「行くぞ、ゴーストロン――
これでもくらえ! 宙マン・閃光波!」
ピッキュイィィーン!
高らかな音とともに、宙マンの手にストロボ状の発光が生じ……
次の瞬間、ゴーストロンのボディで激しい爆発が起こる。
連続アタックに、たまらず怪獣が倒れたところへ――
宙マン「とどめだ!
宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、ゴーストロンを直撃!!
ゴーストロン「ピギャあぁっ、こ、こりゃたまら~んっ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
宙マン「ふぅ……これで今度こそやれやれ、かな!」
イフ「ぐ、ぐばばばばばっ……おのれ、よくもやってくれたな!
ギジェラばかりか、ゴーストロンまでも……
覚えておれ宙マン、この仕返しは必ずしてやるぞ!」
……などと言う、怪獣魔王のいつもの負け惜しみはさて置いて。
我らが宙マンの活躍により、怪獣ゴーストロンは撃退され……
怪獣軍団の基地建設の謀略は、今度も未然に防がれた。
そしてようやく、宙マンは家に帰ってきたのであった。
宙マン「ふぅ~、ただいまぁ!」
落合さん「あらあら、お疲れ様でした、お殿様!
今日のお散歩、何か変わったことはありませんでした?」
宙マン「はっはっはっはっ、例によって異常なし。
変わりのない、ごくごく平凡な私たちの日常ってやつさ」
ビーコン「すべて世はこともなし。平和で呑気なもんっスね~」
落合さん「そうそう事件ばかりでは、本当に堪りませんものね!」
宙マン「(頷き)うんうん、平和で呑気、それが一番さぁ。
……それはそうと、何だかすっかりお腹がすいちゃったな」
落合さん「(にっこり)お昼のご用意、出来ておりますわ」
宙マン「はっはっはっはっ、さすが落合さん、そうこなくっちゃ!」
宙マンの人知れぬ活躍があったことを、誰も知らぬまま……
千歳市のランチタイムが、今日も穏やかに訪れたのであった。
めでたし、めでたし。
正義を秘めて、勇気に燃えて……
やるぞ宙マン、地域の味方。
さて、次回はどんな冒険が待っているのかな?