今年ももう、残りあとわずか……
気が付いてみれば、あっという間に12月。
だが、ひとまずそれはそれとして、地球に生きる人々はそれぞれに
それぞれの日常を、淡々と過ごしていたのであった――
毎度お馴染みの物語の舞台、北海道千歳市・ほんわか町5丁目の
「宙マンハウス」に暮らす面々も、勿論その例外ではない。
落合さん「ふう~、寒む寒む……。
……ああ、今日も今日とて冷えてますわねぇ!」
宙マン「夏の暑さが、ついこの間だとばっかり思ってたら……
もう今年も、残りあと一か月を切ってる勘定なんだよねぇ」
ピグモン「朝も夜も寒くって……
一度おふとんに入ったら、もう出たくなくなっちゃうの~」
ビーコン「暑い暑いと言ってたら、急転直下の冬到来。
いくらそういう季節だからって、このメリハリの効きすぎ具合は
ちょっと度ぉ越してる気がするんスよねぇ」
ピグモン「ううう~、ピグちゃん寒いの……へくちっ!」
落合さん「あらあら、ピグモンちゃん、大丈夫ですか?」
宙マン「風邪はひきはじめが肝心、って言うからね。
今日はうんとあったかくして、早めに休むといい」
宙マン「……でも、まぁアレだね。
この寒さ、案外悪い事ばかりじゃないかもしれないよ」
ビーコン「はぁ、この気候が、っスかぁ?」
落合さん「どういう事でしょう、お殿様?」
宙マン「毎日毎日、震え上がるようなこの寒さだからかな?
……その冷え込みぶりには、流石の悪い怪獣も音を上げたと見えて
ここ数日は、すっかり静かで平和じゃないか」
ビーコン「ああ、そう言われてみりゃ……」
落合さん「なるほど、確かにそれはありますわねぇ!」
宙マン「寒い日には、寒い日なりの楽しみ方もあるものさ。
怪獣どもも大人しくなった事だし……
私たちは私たちで、あったかい料理に舌鼓を打とうじゃないか!」
落合さん「承知しましたわ、ではすぐに支度を!」
ビーコン「いえっふ~、そうこなくっちゃっス!」
ピグモン「はうはう~、平和がいちばんなの~♪」
真冬の寒さで、すっかり鳴りを潜めたように見える怪獣軍団。
……だが、本当にそうだろうか?
「……わっはっはっ、バァカ!
ンなわけねぇだろがあぁ~っ!!」
肌寒いが平和だった千歳の街に、突如として響き渡る大絶叫。
冷凍庫なみの寒気をはらんで、忽然と町のど真ん中に現れた巨体とは!?
「うっう~、うっうぅ~っ!!」
ピグモン「あっ、怪獣なの!」
咆哮とともに現れたのは、全身が白く長い剛毛で覆われた巨体。
怪獣軍団の一員、“喧嘩屋”とも“まぼろし怪獣”とも異名をとる
名うての暴れん坊、伝説怪獣ウーである。
ビーコン「どひ~っ、あ、あれは!?」
落合さん「ウー。……雪山怪獣のウーですわ!」
宙マン「全くもう……この寒いのに、やけに元気だねぇ!?」
ウー「うっう~、冬はいいねぇ、気持ちがウキウキ弾んでくるぜ!
肌身に染みわたるこの寒さ、ピリピリくるような空っ風……
あーもう、一年ずっと冬だったらいいのになぁ!」
落合さん「あー、なるほど、色々合点がいきましたわっ」
ビーコン「冷凍怪獣勢にとっちゃ、喜んでニワ駆けまわっちゃうぐらい
テンション上がっちゃうシーズンなんスねぇ!(汗)」
ウー「うっう~、ありがとう、ご理解ありがとうっ!」
ピグモン「えう~、嫌な方にどんどん話が進んでくの~」
宙マン「……うぬっ!」
イフ「わははは、そうだウーよ、この真冬こそお前の檜舞台だ!
全身にみなぎるそのパワー、千歳の街に叩きつけろ――
徹底的に暴れて、何もかも壊し尽くしてしまえ!」
ウー「うっう~、俺的にはハナからそのつもりでさぁ!」
怪獣魔王から大暴れの許可を得て、俄然張り切る喧嘩屋ウー!
逃げ惑う人々を追い散らし、傍若無人の大進撃を開始する。
ウー「うっう~、この開放感! 最高だぜぇ~っ!」
ビーコン「どひ~っ、元気杉にもほどがあるっスよ~!」
落合さん「でもって、私たちまで「走らされ」ますのねぇ!(汗)」
だが、この一大事に、人類もただ手をこまねいている訳ではない――
まぼろし怪獣ウーの進撃を阻むべく、航空防衛隊の空の精鋭たちが
ピグモン「あ、防衛隊のおじさんたちが来てくれたの!」
ビーコン「頑張ってくれっス、頼むっスよ~!」
落合さん「どうか、どうか、街を守って下さいませ!」
「我々の底力、見せてやれ――攻撃、開始っ!」
戦闘機編隊から、雨あられとばかりに叩きこまれるロケット弾!
だが、その猛攻撃をまともに受けてなお、ウーの猛りは止まらない。
ビーコン「ありゃ、効いてないっス!」
落合さん「今日は撃墜されていないだけまだマシ、ということで……」
ビーコン「う~ん、それもどうかと思うっスけどねぇ!?(汗)」
ピグモン「はわわ……宙マン、宙マン、なんとかしてなの~」
宙マン「(頷き)ようし、判った!
宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、荒れ狂うウーの前へ舞い降りる!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
伝説怪獣ウー、手前勝手な振る舞いは私が許さないぞ!」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「いよっしゃ、アニキの十八番っス!」
落合さん「ええ、こうでなくてはいけませんわね、このシリーズは!」
ピグモン「宙マ~ン、よろしくお願いなの~!」
ウー「うっう~、出やがったな宙マン!
ナメた態度だけじゃ飽き足らず、仕事の邪魔までしようってか!?」
宙マン「ああ、平和の敵はとことん邪魔させてもらうとも!」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
今日もまたまた、世紀のスーパーバトル開幕だ!
ウー「よくもほざいたな……行くぞォォッ!」
宙マン「さぁ来い、ウー!」
激突、宙マン対ウー!
落合さんたちが見守る中、巨大な正邪の攻防がダイナミックに展開。
ドガッ! バキッ!
響き渡る打撃音の大きさは、すなわち激闘の凄まじさの証拠。
「喧嘩屋」の異名に相応しい、猛然たるウーの張り手攻撃!
その猛攻に、怯むことなく真っ向から渡り合う宙マン。
宙マン対ウー、両者のパワーが拮抗。
冷え切った街が、今やむせ返るような戦いの熱気に包まれていく。
ウー「うっう~、これでもくらいやがれっ!」
炸裂、ウーのメガトン体当たり!
単純な攻撃ながらも威力は絶大で、大きく吹っ飛び倒れる宙マン。
落合さん「ああっ……お、お殿様!?」
ビーコン「怪力系の怪獣は、当たり判定がデカいから厄介っス!(汗)」
ピグモン「はわわわ、宙マン、まけないでなの~!」
宙マン「(苦悶)う、うう……っ!」
ウー「うっう~、とどめだ宙マン、その首ィねじ切ってやるぜ!」
宙マン「なんの……負けて、なるものかっ!」
宙マン「デリャァァァーッ! 宙マン・ショット!」
気合とともに、不可視の破壊衝撃波を繰り出す宙マン!
正義の一撃を受けて、ウーの動きが止まったチャンスを逃さず
持ち前のジャンプ力で、一気に大空へと舞い上がる。
ウー「(驚き)う、ううっ!?」
宙マン「さぁ、今度はこいつを受けてみるがいい――」
宙マン「セイヤぁぁーっ!
宙マン・レインボー乱れ蹴り!」
出た、絢爛豪華の超絶技!
虹色の連続蹴りを食らい、ウーがたまらずブッ倒れたところへ――
宙マン「とどめだ!
宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、ウーを直撃!!
ウー「うっう~、俺の胸にも……空っ風ぇぇ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
ピグモン「はうはう~、やったのやったの、宙マンの勝ちなの~!」
ビーコン「アニキ~、今日もまたお疲れ様っした!」
落合さん「ああ、輝いてますわね、お殿様の雄姿……♪(うっとり)」
イフ「うぐぐぐっ……宙マンめ、またしても邪魔だてを!
だが忘れるな、ワシらはあくまで地球を諦めない決意だ……
この次こそは、必ずお前の息の根を止めてやるからな!」
……な~んて言う、いつもの負け惜しみはさて置いて。
かくして宙マンの活躍により、千歳を寒気に覆い尽くさんとしていた
怪獣軍団からの使者、喧嘩屋ウーは撃退されたのであった。
……にも、関わらず。
ビーコン「ん~、なんつーか、あったかさが戻る気配がないっスねぇ!?」
ピグモン「なんだか風も、ひんやり感じるくらいなの~」
落合さん「肌寒さの源の怪獣は、お殿様がやっつけて下さいましたのに……」
宙マン「はっはっはっ、風が涼しく感じるのも当然さ――
考えてもみてごらんよ、今はもう12月だよ?」
ピグモン「あっ!」
ビーコン「言われてみれば、言われるまでもなく……っスよねぇ」
落合さん「お殿様の熱いファイトに、熱く声援を送らせてもらったおかげで
お恥ずかしながら、すっかり失念しておりましたわ(赤面)」
宙マン「さぁ、早く帰ってあったまろうか――
それじゃ改めて、落合さん、今夜の夜の献立は……」
落合さん「えぇ、うんと温まるメニューに致しましょう!」
いつしか、風は真冬の色……
だが、宙マンファミリーの元気の火は消えず。
だから勿論、次回も大活躍だよ~!