静かに夕焼けが、大地を包んでいく……
何時もと変わらぬ、日暮れ。
家路を急ぐものあり。
過ぎゆく一日にしみじみと思いを馳せるものあり。
そして……
今夜の夕食に、早くも胸をときめかせる者もあり。
と言うわけで……今回も暮れなずむ千歳市・ほんわか町5丁目の
毎度おなじみ「宙マンハウス」から物語を始めよう。
宙マン「やぁ、いい匂いをさせてるなぁ!」
落合さん「うふふ、この匂いで既にお気づきかと思いますが……
今夜はカレーにしてみましたのよ、お殿様」
宙マン「うんうん、いいじゃないかカレーライス!」
宙マン「今はカレーと言っても、随分とジャンルの裾野が広がって
いろいろ本格的だったり、凝った趣向のものも、昔に比べて
ずっと気軽に食べられるようになったけど……」
ビーコン「でも、その上で……なんスよね、アニキ?」
宙マン「(頷き)そう、「それ」なんだよ。
家で食べる家のカレーには、また違った嬉しさがあるんだ!」
ビーコン「そーそー、月に一度は食べたくなっちゃうっスよねぇ」
ピグモン「はうはう~、ピグちゃんもカレーだいすきなの~♪」
ビーコン「ヒヒヒ、そしてカレーを味わった後には……
とびきり甘いのにスパイシーな、オイラの熱い接吻を……♪」
落合さん「だーっ、もう、何で隙あればイヤらしいんですっ!」
そんな、宙マンハウスの「いつもの会話」。
だが、そんな平穏を破るかのように、突如!
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラっ!
ピグモン「は、はわわわわわっ!?」
落合さん「この揺れ方……只事ではございませんわね!」
ビーコン「どひ~っ、ってコトは、また……!?」
そう、その通り!
街を揺るがし、大地を裂いて……今回もまた怪獣軍団の刺客が
夕陽に染まった千歳市のド真ん中へその巨体を現した!
「ラゴラゴ……ラゴァァァ~っ!!」
古代魚と原始恐竜がミックスされたような、青光りする巨体。
怪獣軍団の次なる使者は、恐怖の冷凍怪獣・ラゴラスだ!
ビーコン「あぁ……
要は今度もまたまた、めんどくさい展開ってことっスね!?」
落合さん「毎度毎度お殿様に叩きのめされておいでですのに……
いい加減懲りればよろしいものを、どうしてまた?」
ラゴラス「ラゴゴァァ~、そりゃ愚問!」
ラゴラス「ラゴゴァァ~、季節は冬……
となれば、冷凍怪獣の俺ちゃんが満を持して出陣しないことにゃ
怪獣ファンのみんなが納得しないでしょう、ねっ!?」
ビーコン「いや、「ねっ」って言われても……(汗)」
落合さん「だいたい、あなたたちの唐突なお出ましで……
納得できたことなんて、只の一度もございませんけど!?」
ピグモン「えう~、乱暴する悪い子ちゃんはキライなの~(涙目)」
ラゴラス「ラゴゴァァ~、ありがとう、いい反応ありがとう!
う~ん、実に納得できちゃうなぁ、俺!」
ビーコン「どひ~っ、会話を成立させる気ゼロっスか!(汗)」
宙マン「……むむっ!」
グロッケン「ケッケッケッ……いかがですかィ魔王様、あの雄姿!
俺たち凍結系の怪獣・宇宙人が、一番イキイキする季節……
ここは一発、ラゴラスに働いてもらおうってコトでさぁ!」
イフ「うむ、大いに納得できるぞ、グロッケン。
……さぁ行けラゴラス! 思い切り暴れて千歳を蹂躙せよ!」
ラゴラス「ラゴラゴぁ~、お任せを、魔王様~!」
破裂音のような咆哮とともに、進撃を開始するラゴラス!
迫り来る巨体を前に、悲鳴をあげて逃げまどう千歳の人々。
ビーコン「どひ~っ、こっち来てるっスよ!?」
落合さん「ああ、やっぱり今回もこうなっちゃうんですのねぇ!」
ピグモン「はわわ、早く逃げなきゃなの~!」
ラゴラス「がははは、お楽しみはこれからだぜ――
俺の必殺技、氷結爆砕光線の威力を見やがれィ!」
ラゴラスの口から吐き出される、青色の怪光線……
超低温によって一瞬にビルをも粉砕する「氷結爆砕光線」の威力!
ビーコン「……ど、どひ~っ!!」
落合さん「ちょ、腰抜かしてる場合ですか!?(汗)」
おお、まさに千歳の危機!
だが、星人のこれ以上の進撃を阻むべく、千歳基地の空の精鋭が
直ちにスクランブルをかけた。
ピグモン「あっ、防衛隊のおじさんたちなの!」
ビーコン「いえっふ~、頼んだっスよ~!」
落合さん「頑張って下さいませ、航空防衛隊の皆様方!」
「ようし……全機、攻撃開始だッ!」
激しいアタックをかける戦闘機隊!
持てる火力の全てが、怒濤のごとく冷凍怪獣へ叩きこまれるが
全くびくともせずに、悠然と進撃するラゴラス。
「(驚愕)なっ、これだけの攻撃が……!?」
ラゴラス「がははは、こそばゆいってんだ~!」
戦闘機隊の猛攻をアザ笑うように、ラゴラスは氷結爆砕光線で
次々と、そして確実に破壊の手を広げていく。
おお、千歳市、またまた絶体絶命の大ピンチ!
ビーコン「ひぇぇぇ、もうだめっス、おしまいっス!」
落合さん「こうなってはもう、お殿様だけが頼みの綱ですわっ」
ピグモン「はわわ……宙マン、宙マン、なんとかしてなの~」
宙マン「(頷き)おのれ、もう許さんぞ!
宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、暴れ回るラゴラスの前へ舞い降りる!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
冷凍怪獣ラゴラス、悪ふざけはそのくらいにしておけ!」
ズ、ズーンっ!!
ピグモン「はうはう~、宙マン、かっこいいの~!」
落合さん「あぁ、いつもながら、この頼もしさと言ったら!」
ビーコン「いえっふ~! 任せたっスよ~、アニキ~!」
ラゴラス「ラゴラゴぉ~、出てきたな宙マン!
仲間たちの恨みもこめて、今度こそ叩きのめしてやるぜ!」
宙マン「おぉっと、そうは問屋が卸すかな!?」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ。
宙マン「さぁ、どこからでもかかって来るがいい、ラゴラス。
正義の力と言うものを、今日も思い知らせてやる!」
ラゴラス「野郎ッ……仲間の噂通りに、ムカつく野郎だぜ!」
ラゴラス「そのお澄まし顔を、今すぐ泣きっ面にしてやらぁ!」
宙マン「さぁ来い、勝負だ!」
怒り、猛然と突進してくるラゴラス。
宙マンもまた、ファイティングポーズで迎え撃つ。
激突、宙マン対ラゴラス!
落合さんたちが見守る中、氷点下の街で巨体が鎬を削る。
宙マンのストレート・パンチ炸裂!
その威力によろめくも、ラゴラスの闘志は衰えをみせない。
宙マン「それっ、どうだ、まいったか!」
ラゴラス「ぐぬぬ、ラゴラゴォォ~ッ……なめんなよ宙マン!」
突進してきたラゴラスを、がっちり受け止めた宙マンだが……
その勢いたるや凄まじく、体ごとぐんぐん押されていく。
ラゴラス「わははは、そりゃあーっ!」
宙マン「う、うわぁぁぁっ……!?」
ラゴラスの猛パワーで、遂に押し負かされ吹っ飛ぶ宙マン。
ドドーッと音を立て、巨体が大地に倒れ伏す。
落合さん「ちょっ、そんな!?」
ピグモン「はわわわ、宙マンがふっとばされちゃったの~!」
ビーコン「どひ~っ、アニキ、マジでヤバそうなんスけど~!?(汗)」
イフ「おおっ、やるではないか、ラゴラス!」
グロッケン「この真冬こそ、冷凍怪獣の檜舞台……
ラゴラスにとって、存分に力を発揮できるワケでさぁ。
さぁ、もっとやれラゴラス、宙マンにとどめだ!」
ラゴラス「おうさ、殺らいでか~っ!」
ラゴラスの口から吐き出される氷結爆砕光線!
辛くもかわした宙マンのかわりに、雑居ビルが凍り付いて
次の瞬間、木っ端微塵に砕け散ってしまう。
ビーコン「ああっ! マズいっスよ、あの光線だけはマジヤバっス!
アレを一発でも食らったら、いくらアニキだって……!」
宙マン「心配ない――見ててくれ、みんな!」
そう、その頼もしい宣言通り……
宙マン・プロテクションが、ラゴラスの光線を無力化した!
ラゴラス「(衝撃)……しょ、しょんなぁぁっ!?」
宙マン「どうだラゴラス――氷結爆砕光線、敗れたり!」
落合さん「やりましたわ、さすがお殿様です!」
ビーコン「いよっしゃ~! アニキ、今がチャンスっスよ~!」
ラゴラス「こ、この……この野郎~っ!」
宙マン「なんの!」
苦しまぎれな尻尾の一閃も、もはや宙マンには通用しない。
受け止めた尻尾をがっちりと掴んで、逆にそのまま振り回し……
パワー全開、宙マンの豪快な投げ技が炸裂!
地面に叩きつけられ、ラゴラスがふらふらになったところへ――
宙マン「とどめだ!
宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、ラゴラスを直撃!!
ラゴラス「ぐはぁぁぁっ、また負けちゃったぁぁ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
ビーコン「いえっふ~! 今日もアニキがやってくれたっスよぉ!」
落合さん「お見事ですわ、やはりお殿様は素敵です!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、ありがとうなの~♪」
イフ「うぐぐぐっ……おのれ、またしても宙マンめ!
どこまでワシらの邪魔をすれば気が済むのか……。
だが見ておれ、この次こそ思い知らせてくれるわ!」
……などと言う、毎度毎度の負け惜しみはさて置いて。
かくして我らが宙マンの活躍により、千歳を氷に閉ざさんとした
冷凍怪獣ラゴラスは撃退され、平和が蘇ったのであった。
落合さん「改めましてお殿様、大変お疲れ様でした!」
宙マン「いやぁ、怪獣退治で一汗かいたら……
すっかりお腹ペコペコで、もう目が回りそうだよ」
落合さん「(苦笑)……えぇ、無理もございませんわ」
ピグモン「はうはう~、さっそく帰って晩ごはんなの~。
落合さん特製のカレーライスが待ってるの~!」
宙マン「うんうん、心行くまで頂きたいもんだね!」
ビーコン「ウヒヒ、そしてスパイスたっぷりのカレーには……
なんつっても、甘い付け合せがなくちゃっスよね!
てなわけで落合さんにはオイラの甘いキスから始まって
モウここでは言えないほどの猥褻純情フルコースを……」
落合さん「……( ぶ ち っ ! )」
げ し っ !
落合さん「ねーいっ、だったら一生その口を閉じてなさいっ!!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、結局今回もこうなっちまうっスねぇぇ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
ひとつの危機は去った……
だが、怪獣軍団の野望は未だ尽きない。
さぁ、次回はどんな冒険が待っているのかな?