寒い、寒い、本当に寒い日が続く日本……
列島の最北端、北海道ともなればその厳しさはひとしお。
そんな一面の銀世界を、夕日が赤く染めて行く時間帯。
寒さの中にも、どこかほっと気持ちの落ち着くほのぼのとした空気が
冬の街全体を包み込んでくれているかのような……。
そんな中、幕を開ける今回の『宙マン』。
毎度おなじみ、千歳市の「宙マンハウス」から物語を始めよう。
宙マン「いや~、昨日の夜もまた、一段と冷えこんだねぇ!」
落合さん「ニュースによれば、今年一番の寒波だそうで……」
ビーコン「しかもしばらく、日本上空にとどまるって話じゃないっスか。
ぶるぶる、こうして話題にしてるだけでも寒くて気が滅入るっス~」
ピグモン「えう~、道路も凍ってツルツルなの~」
みくるん「うふふっ、でも、冬至を過ぎたおかげで……」
ながもん「(頷き)少しづつ……陽のさす、時間……長く、なってきた」
宙マン「うん、今年の冬もそろそろ曲がり角と言ったところかな」
ビーコン「こう寒いと、なかなかそう言う実感もないっスけどね~」
落合さん「早く暖かな春の訪れを体感したいものですわね。
ひとまず、我が家の食卓だけでも一足早めに暖かく……
と言う訳ですので、今夜は鍋料理に致しましょう!」
ピグモン「はうはう~、ピグちゃんお鍋だいすきなの~♪」
だが、その平穏を破るかのように……
宇宙の彼方から、猛スピードで飛来してくる怪物体。
赤い光球は宇宙を飛んで太陽系に達し、地球の大気圏を突き抜け
ピューっと尾を引き、千歳市のど真ん中に落下した!
ズゴゴゴグワーンっ!
みくるん「きゃあああああっ!」
落合さん「こ、これは……一体!?」
ビーコン「どひ~っ、こいつァ近いっスよ、うちのすぐそばっス!」
すわ何事と、慌てて家の外へ飛び出していく宙マンたち。
光球の落下地点から、忽然と巨大な姿を現したもの……それは!
「フォッフォッフォッフォッ……!」
みくるん「ああっ、う、宇宙人ですぅ!」
ながもん「(無表情に)……誰もが知ってる、宇宙の忍者……」
ピグモン「(涙目)……ば、バルタン星人なの~!」
そう、怪獣界でも屈指の知名度を誇る宇宙忍者、バルタン星人!
怪獣軍団の一員として、またしても地球と宙マンに挑戦してきたのだ。
バルタン星人「と言うわけで、今から仕事にかかるんで。
そこんとこヨロシクね!」
落合さん「あらまぁ、えらくザックリまとめたものですわねぇ!?」
ビーコン「そんなのヨロシクしたくないんスけどねぇ!?(汗)」
バルタン星人Jr「フォッフォッ、張り切ってるなぁ、叔父さん!」
バルタン星人「おうよ、甥っ子のお前のためでもあるからな!」
バルタン星人Jr「く~っ、嬉しいコト言ってくれるかぁ♪」
イフ「わははは……それでよい、バルタン星人よ!
余計な事に惑わされず、粛々とお前に与えられた使命を果たすのだ。
地球征服の手始めに千歳を制圧する、怪獣軍団の栄光ある大使命をな!」
バルタン星人「フォッフォッフォッ……お任せ下さい、魔王様!」
怪獣魔王の命を受け、猛然と行動を起こす宇宙忍者。
鋏からのバルタン・ファイヤーで、千歳の街を焼き払っていく!
ビーコン「どひ~っ、なんかのっけからやる気出し過ぎっスよぉ!(汗)」
落合さん「寒すぎたり熱すぎたり、両極端な夕方ですこと!」
宙マン「いいから、とにかく逃げるんだ!」
みくるん「ふぇぇん、どうしましょう、このままじゃ……」
ながもん「千歳が……千歳が、大ピンチ」
ピグモン「はわわわ……宙マン、宙マン、何とかしてなの~」
宙マン「(頷き)おのれ、もう許さんぞ!
宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、荒れ狂うバルタンの前へ舞い降りる!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
宇宙忍者バルタン星人、どうやら少々おいたが過ぎたようだな!」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「出たっス、アニキの十八番!」
ながもん「おおっ……いつもながら……頼もしい」
ピグモン「はうはう~、宙マン、頑張ってなの~!」
バルタン星人「フォッフォッフォッ……出たな宙マン!」
宙マン「千歳の街で、これ以上の無法は通らない……
いや、私がいる限り、決して通さないと知るがいい!」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ。
バルタン星人「フォッフォッフォッ、大口を叩くな宙マン!
ついて来い、こっちで勝負だ!」
宙マン「望むところだ!」
持ち前の飛行能力で、千歳市の上空へと急上昇していく両者。
重力のくびきから解き放たれたかのような、宇宙人同士の空中戦が展開。
バルタン星人「死ねィ、宙マン!」
宙マン「おっと!」
星人の放つバルタン・ファイヤー、続けざまに破壊光線!
それらの恐るべき一閃を巧みにかいくぐり、かわしていく宙マン。
見よ、この華麗なる空中回転!
その軽やかさには、さしもの宇宙忍者もたじろいでしまうほど。
バルタン星人「ぐぬぬっ、小癪な!」
宙マン「それっ、今度はこっちがお返しだ!」
宙マン、エクシードフラッシュで反撃!
だが、その一閃もまた、バルタンにひらりと躱されてしまう。
バルタン星人「フォッフォッフォッ、どうしたどうした!
自慢のエクシードフラッシュは、百発百中ではなかったのか!?」
宙マン「おのれ……いい気でいられるのも、そこまでだ!」
大きく間合いをとった、光線技の応酬では埒があかないとばかりに……
バルタン星人の懐へと入り込み、接近戦を挑んでいく宙マンである。
空中で激しくもみあう両者!
みくるん「だ……大丈夫かなぁ、宙マンさん!?」
ながもん「問題ない。……宙マンは、きっと勝つ……絶対、勝つ……!」
ビーコン「(頷く)っスよ!」
見よ、千歳上空での大格闘戦!
空中を滑るように舞いながら、激しく鍔ぜりあう宇宙人ふたり。
巨大な鋏を用い、連続突きで襲うバルタン星人。
その鋭利な先端をかわしながら、宙マンもまた長年の経験を通じて
磨き抜かれた格闘術の冴えをもって、怯むことなく渡りあう。
バルタン星人「フォッフォッフォッ……
ううむっ、しぶとい奴め! これでもか!?」
宙マン「なんの、これしきでやられる私じゃない!」
幾度もの空中激突を経て、再びバッと離れる両者。
その間合いを得た宙マンは、すかさず見せた空中回転とともに
バルタンめがけて躍りかかっていく!
敵に生じた一瞬の隙を、宙マンの鋭い眼は決して見逃さない――
狙うは、バルタン星人の胸板ただひとつ!
バルタン星人「(慌てて防御しようとして)う、うおおおっ!?」
宙マン「――遅い!」
宙マン「ハイヤぁぁーっ!
宙マン・雷光キック!」
出た、まばゆいばかりの超絶技!
雷光を纏った蹴りが、宇宙忍者の動きを鈍らせたところへ――
「受けてみろ! 宙マン・超破壊光線!!」
両手の間にエネルギーを集中させ、激しいスパークとともに放つ大技。
「超破壊光線」の直撃を受け、火花を散らす宇宙忍者のボディ!
バルタン星人「ぐはぁぁぁっ……
俺もまた、こうなっちゃうのねぇぇ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
みくるん「わぁっ、やりました、宙マンさんの勝ちですぅ!」
ながもん「やっぱり、千歳のヒーローは……伊達じゃない」
ピグモン「はうはう~、宙マン、今日もありがとうなの~」
バルタン星人Jr「あわわわわ……お、叔父さぁ~んっ!(汗)」
イフ「うぐぐぐっ……おのれ宙マン、にっくき奴め!
よくもまた、ワシら怪獣軍団の邪魔をしてくれおったな。
だが忘れるな……最後に笑うのは、怪獣軍団だと言うことをな!」
……などと言う、いつもの負け惜しみは例によってさて置き。
我らが宙マンの活躍によって、襲来してきた宇宙忍者・バルタンは撃退され
千歳市には再び、夕暮れ時の穏やかな時間が戻ってきたのであった。
ピグモン「はうはう~、宙マン、今日もありがとうなの~」
落合さん「一難去って、ほっと一息……は、良いのですけれど。
騒動が収まってみますと、急激に寒さが身に沁みますわねぇ~」
ビーコン「いやぁ、宇宙人の火炎放射で煽られるよりなんぼかマシっスよ!」
ピグモン「はうはう~、ビーコンちゃんの言うとおりなの~」
落合さん「えぇ、実に正鵠を射たご発言ですわね。
……ビーコンさんにしては珍しく、ですけど!」
ビーコン「(憤慨)ちょっとぉ、そりゃないっスよぉ!?」
宙マン「はっはっはっはっ、まぁまぁ、落合さんもビーコンも。
痴話喧嘩も世間話も、まずは家に帰ってからにしようじゃないか!」
ピグモン「そうなの、それよりもっと大事なことがあると思うの~」
みくるん「うふふっ、せっかく平和になったのに……
風邪ひいて寝込んじゃうなんて、ばかばかしいですもんね~」
ながもん「……(コックリ頷く)」
宙マン「はっはっはっ、さぁさぁ、帰ってご飯にしよう!」
ピグモン「はうはう~、今夜の鍋料理が楽しみなの~♪」
ひとつの危機は去った……
だが、怪獣軍団の野望は未だ尽きない。
宙マン、これからも千歳の平和を頼んだぞ!