毎度おなじみの舞台、日本列島の最北端。
北海道はうららかな4月の陽気に温められ、平和の中にあった。
それはまた、北海道千歳市・ほんわか町5丁目の一角に暮らす
宙マンファミリーの面々も例外ではない。
彼らはあくまで彼ららしく、今日も今日とてのんびり、まったり
静かな日々を過ごす、はずだったのだが……。
落合さん「お殿様、お殿様っ!」
宙マン「んー、どうしたのかな落合さん?」
落合さん「今ちょうど、お殿様宛のお手紙が届いて参りましたわ」
宙マン「私あてに? ほう、どれどれ?」
落合さんから、宙マンに手渡された一通の封筒。
さっそく開封して、書面に目を通した宙マンの顔が……
それまでの朗らかさから、明らかな緊張を孕んで引き締まった。
宙マン「……ううむ……っ」
落合さん「(きょとんとして)……お殿様?」
宙マン「……」
落合さん「あの、お殿様。……どうか致しまして?」
宙マン「(笑顔を作って)はっ……ああ、いやいや、別に何でもないよ」
宙マン「それはそうとね、落合さん、私はちょっと出かけてくるから。
遅くなるかもしれないけど、夕飯には間に合うように帰るよ――
じゃ、行ってきます!」
落合さん「あ、お殿様っ!」
急ぎ足で、ぱたぱたと駆け出していく宙マン。
その落ち着かぬ様子に、落合さんたちもただ唖然とするより他にはない。
ピグモン「はう~、宙マン、いったいどうしちゃったの~?」
ビーコン「あの慌てっぷり、どうにも只事じゃないっスね~。
飲み屋のつけの督促状が届いて、慌ててどっかにトンズラとか……」
落合さん「(呆れて)そんな、ビーコンさんじゃあるまいし!
……それにしても、ホントにご様子がおかしいですわね? お殿様」
さて、ここで場面は変わって……
場所は千歳市の郊外、ご覧の通りの荒涼たる場所である。
ピカッ、ゴロゴロドドーンっ!
一天、にわかに掻き曇り、空に奔る鋭い落雷。
その閃光の中から、地上にその恐るべき姿を現したのは……
怪獣軍団の一員、マイナスエネルギーの化身たる硫酸怪獣ホーだ!
「おろろん、おろろん、おろろんろ~んっ!」
イフ「怪獣ホーよ、ワシがお前に与えた使命はただひとつ……
恨み重なる不倶戴天の敵・宙マンを、何が何でも倒すことだ!」
ホー「おろろ~ん……全てこの私にお任せ下さい、魔王様!」
ホー「首尾は上々、実戦に向けてのコンディション調整も万端。
おろろ~ん、あとは宙マンがやって来るのを待つばかり……」
「ああ、来てやったとも、お望み通りにな!」
凛として響き渡った声に臆することもなく、悠然と振り返るホー。
華麗な空中回転とともに、戦場たる荒野に舞い降りてきたのは……
勿論この人、地域の英雄こと宙マンだ!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
お前からの果たし状は読ませてもらった……その挑戦、受けてやる!」
ホー「おろろ~ん、嬉しいぞ宙マン!
臆病風に吹かれて、尻尾を巻いて逃げ出すような奴じゃなくてな!」
宙マン「ああ、あんな事を書かれちゃ来ないわけにはいかないだろう。
決闘に応じなければ、千歳市内の旨い鴨南蛮を食わせてくれる蕎麦屋を
ことごとく壊滅させる……と来た日にはな!」
ホー「おろろ~ん、お前の趣味や好物については既に調査済みだ。
その心理まで計算に入れた、果たし状の文面構成の勝利だな!」
宙マン「ああ、敢えて釣られてやったとも。……
千歳の蕎麦屋と、正義のために!」
力強いファイティングポーズをとり、敢然と身構える宙マン。
さぁ、今日もまたスーパーバトルの始まりだァ!
ホー「おろろ~ん……宙マンよ、この荒野がお前の墓場だ!」
宙マン「さぁ、かかって来い、怪獣軍団の悪党め!」
ホー「おろろ~ん、行くぞぉぉっ!!」
激突、宙マン対ホー!
草ひとつない荒野を舞台に、両者の死闘が展開される。
持ち前の怪力を活かし、パンチ攻撃を仕掛けてくるホー。
負けじと宙マンも、磨き抜かれた格闘技の冴えで渡り合う。
力と力、技と技。
響き渡る打撃音とともに、両者の意地と誇りが火花を散らす。
宙マン「それっ、どうだ、これでもか!」
ホー「おろろ~んっ、なんの、まだまだぁ!」
宙マンの猛攻を受けてなお、驚異的スタミナで食いついてくるホー。
そして、遂にその執念が……
鋭いチョップの一閃となって、宙マンの胸板を捉えた!
バ キ ィ ィ ィ ッ !
宙マン「う、うわぁぁぁぁ……っ!」
ホー「おろろ~ん、思い知ったか、宙マンめ!」
大きく吹っ飛び、ドドーッと倒れた宙マンの体!
とどめを刺さんものと、そこへホーがのしかかってくる。
ホー「宙マン、その首の骨、へし折ってやる!」
宙マン「なんの……負けて、たまるかっ!」
互いにもみ合い、地面を転がっての激しい攻防戦!
そんな、どこか泥臭いマウントポジションの奪い合いが続き……
攻撃の間合いをつかんで先に立ちあがったのは、我らが宙マンであった。
宙マン「(ジャンプ一閃)行くぞ、ホー!」
ホー「(態勢の立て直しが遅れ)……お、おろろろっ!?」
宙マン「エイヤァァーっ!
宙マン・ミラクル・キック!!」
出た、電光石火の必殺キック!
痛烈なその一撃に、ホーがたまらずブッ倒れたところへ――
「とどめだ――宙マン・超破壊光線!!」
両手の間にエネルギーを集中させ、激しいスパークとともに放つ大技。
「超破壊光線」の直撃を受け、火花を散らすホーのボディ!
ホー「ぎゃおおおっ……残念無念、リベンジならずぅぅ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
イフ「うがぁぁぁっ、何たることだ……
またしても宙マンめにしてやられるとは!
今度こそ、今度こそは絶対に勝てると思ったものを……!」
かくして硫酸怪獣ホーは、宙マンの正義の威力の前に敗れ去った。
そして、壮絶な戦いを終えたヒーローの胸に去来するものは――
宙マン「あーっ、お腹すいちゃったなぁ……。
……よし、そうだ、軽く蕎麦でも食べて帰ろう!!」
そう、どこまでも呑気でマイペース。
怪獣軍団の思惑はどうあれ、宙マンはあくまでも宙マンなのであった。
今日も本当にお疲れさま、宙マン。
だが未だ、怪獣軍団の野望は尽きない……
さぁ、次回はどんな冒険が待っているのかな?