“エゾミカサリュウ”の発見された場所として知られるこの街は、古くから
数多くの化石がゴロゴロ発掘される「化石のまち」なのである。
そう、例えば……
こんな名前の民宿が、堂々と罷り通ってしまうほどに。
てなわけで、毎度おなじみ宙マンファミリー。
今回は千歳からはるばるやって来ました、ここ三笠!
ピグモン「はうはう~、三笠に到着~なの~!」
落合さん「あらあら、ピグモンちゃんったら……(微笑)」
ビーコン「場所はどうあれ遠出となりゃあ、そりゃピグモンじゃなくたって
テンションも上がるっってもんっスよ!
ヒヒヒ、だからオイラも落合さんに華麗なるセクハラタイフーンを……」
げ し っ !
落合さん「……あらあら、ビーコンさんったら!(怒)」
宙マン「……たっはっはっはっ(苦笑)」
さて、「化石のまち」見物に訪れたからには、ここに来なけりゃ始まらない――
そう、言わずと知れた三笠市立博物館。
ピグモン「わ~、すっごいの~!」
宙マン「う~ん、これは壮観だねぇ」
博物館の作りそのものこそ、こじんまりとはしているものの……
アンモナイト化石の所蔵量においては、この博物館こそが文句なしの日本一。
内容の充実度という点でも、決して他の博物館にひけはとっていない。
ピグモン「あ、怪獣の骨があるの~」
落合さん「ああ、あれは怪獣じゃなくって恐竜ですわ、ピグモンちゃん。
特別展示の、アロサウルスの化石なんですって」
ビーコン「いやー、そっち方面には興味のないオイラでさえ、こうして見てると
古代へのロマン、ってやつをびんびん掻き立てられるっスよ~。
……ああ、落合さん、言いたいことは分かってるっスよ。
オイラと二人抱き合いながら化石になって、愛とロマンを後世に伝え……」
げ し っ !
落合さん「……ビーコンさんの痕跡なんて、この宇宙に塵一つ残すものですかっ!(怒)」
「ふふふっ、皆さん、お賑やかでいいですね~♪」
そう言って、宙マンファミリーへ気さくに声をかけてきたのは
市立博物館に勤める、清掃員のお姉さん。
宙マン「あ、いや!……はっはっはっはっ、参ったなぁ~、
なんだかお恥ずかしいところを見られてしまって……」
ビーコン「ウヒョ~、これはまた清々しいミリキあふれるオネイサンっスね!
ハァハァハァハァ、早速っスけどご飯にするっスか? お風呂にするっスか?
それともぉ……ヒヒヒ、寝るっスかぁ?」
げ し っ !
落合さん「恥を上塗りしてどうするんですっ、このエロ怪獣!」
「ふふふっ。化石、お好きなんですか?」
ピグモン「うんっ、ピグちゃん、カセキ大好きなの~♪」
「それでしたら是非、桂沢湖の方にも行かれてみてはどうですか。
あそこでは今、かなり大型の化石の発掘が行われてて……
エゾミカサリュウ以来の大発見かもしれないって、ここの学芸員さんたちも
久しぶりに大張り切りしちゃってるところなんですよ~」
ビーコン「あ~、そう言えば新聞にも載ってたっスね、そんなニュース」
ピグモン「ばう~、ピグちゃんも見てみたいの~」
落合さん「どう致しましょうか、お殿様?」
宙マン「どうするもこうするも……これはもう、行くしかないよねぇ!」
毎度のことながら、野次馬根性めいっぱいの宙マンファミリー。
清掃員のお姉さんから詳しい道順を聞いて、さっそく化石の発掘が行われている
桂沢ダムの近辺へとやって来たぞ。
ビーコン「あっ! ほらほらアニキ、アレっスよ!」
宙マン「うん、どうやら間違いなさそうだね」
ちょうどその場所において……巨大生物の化石が、むき出しの土の中から
今まさに掘り出されているところであった。
ピグモン「はうはう~、恐竜さんなの、ホネホネさんなの~♪」
宙マン「なぁるほど、これは確かに……」
落合さん「学芸員さんたちが色めき立つのも道理、ですわねぇ~」
ビーコン「でも、こいつが無事に発掘されたとしたら、名前は何になるんスかね~。
三笠市の恐竜だから“ミカサドン”とか?」
落合さん「ぷっ! なんですのビーコンさんったら、その無粋な名前は。
桂沢湖畔の恐竜ですもの、“カッシー”に決まってるじゃありませんの!」
ビーコン「ちょっ! 落合さん、それ、もしかしてギャグで言ってんスかぁ~?」
落合さん「んーまっ! 私のネーミングセンスに、何か文句があるとでも!?」
ビーコン「あのね~、センスってのは団扇の親戚のことじゃないんスよ。
誰がどう考えたって、ミカサドンの方がカッコいいに決まってるっス!」
落合さん「いえいえ、断然カッシーですとも!」
ビーコン「ミカサドン!!」
落合さん「カッシー!!」
何とも下らない理由で、下らない論争を繰り広げる極楽コンビ。
そして、その泥仕合は――意外なところの、意外なものに「火」をつけた!
「て、てめぇらぁぁ、黙って聞いてりゃ好き勝手抜かしゃあがって……
う、ううっ、うがぁぁぁ~っ!!」
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラっ!
大地を引き裂き、煙を吹き上げ、巨体を立ち上がらせた者とは!?
「ギシャギシャ、ギシャァァ~ッ!!」
ビーコン「ああっ、ミカサドンの化石が生き返ったっス!」
落合さん「違いますっ、あれはカッシーですってば!」
「うっがー、、そのどっちでもねぇ~っ!
いいか、よく聞け! 俺は天下のステゴン、大怪獣ステゴン様だ――
勝手にセンスのない名前つけられて、黙ってられるかってんだ!」
ゾネンゲ博士「ええい、ステゴンめが、カッと頭に血が昇りおって!」
そう、読者諸賢のご推察通り!
怪獣ステゴンがわざわざ化石に化けて三笠市内の土の中に埋もれていたのは
こちら、ゾネンゲ博士の指図によるもの。
「新発見の古代生物」として発掘された後で息を吹き返してみせ、
おんどりゃ誰に断って発掘しとんのじゃい、と理不尽なインネンをつけた上で
三笠市から「化石の町おこしキャラとしての使用料」をたんまりふんだくって、
そのロイヤリティを怪獣軍団の軍資金に充てよう……という計画だったのだが。
ゾネンゲ博士「……だが、それもあのバカの先走りのおかげでブチ壊しだわい!
くぅぅぅっ、せっかくの私の完璧な計画を……!(泣)」
イフ「まぁ止むを得まい、過ぎたことは過ぎたことだッ。
……こうなればステゴンよ、暴れるだけ暴れて三笠市を全滅させる事が
今のお前に出来る唯一の罪滅ぼしだと思え!」
ステゴン「ホッホ~イ、心得マンモス、魔王様~!」
巨体を震わせ、のっそりと進撃開始するステゴン!
目的はただひとつ、三笠市中心部の破壊である。
「どひ~っ、また大変なコトになっちまったっス~!」
思わぬ急展開に、驚いて目を白黒させる宙マンファミリー。
その眼前を、四つの足で大地を踏みしめながら悠然とステゴンが往く。
イフ「さぁステゴンよ、お前もまた怪獣軍団の栄えある一員であるからには……
そう呼ばれるに相応しいお前の力、まずはワシの眼前に示してみせよ!」
ステゴン「ギシャシャ、ご覧下さい魔王様、この通りでございます!」
グワッと開いた口から、勢いよく溶解液を吐き出すステゴン!
液を浴びた造成用の重機が、次々と泡を吹いて溶け崩れ、消滅していく。
宙マン「ううむっ……なんて威力だ!」
落合さん「確か、三笠市の中心部に暴れこむ……と言ってましたわよね!?」
ビーコン「あの威力で暴れ回られちゃ、何もかも只じゃ済まねっスよ!(汗)」
ピグモン「はわわわ……宙マン、宙マン、何とかしてなの~」
宙マン「(頷き)ああ、私はやるとも! 宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
荒れ狂うステゴンの前へ、敢然と立ちはだかるこの雄姿!
ビーコン「いえっふ~、やったっス! アニキが出張ってくれりゃ一安心っス!」
落合さん「そうですとも……私たちのお殿様ですもの!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~♪」
宙マン「地底怪獣・アルフォンよ、この宙マンが相手になってやる!」
ステゴン「だーっ、宙マン、てめぇまで言うかっ!
……しかも、ビミョーに判りづれぇボケかましやがって!」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ。
ステゴン「ギシャ~っ、宙マン、この俺が叩きつぶしてやるぜよ!」
宙マン「あぁ、どこからでも来るがいい!」
激突、宙マン対ステゴン!
落合さんたちが見守る中、巨大な者同士の戦いが北の大地を揺るがす。
時に四足での突進、また時に後ろ足で立ち上がっての張り手攻撃。
持ち前の獰猛性とパワーを、前面に押し出して宙マンと渡りあうステゴン。
宙マン「ぬうっ……なかなかやるな!」
ステゴン「俺の持ち技は、まだまだこんなもんじゃないぜ。
ギシャシャシャ、こいつを受けてみな、宙マン!」
ステゴンの口から吐き出される溶解液!
まともにこれを全身に浴びてしまい、凄まじいダメージが一度に宙マンを襲う。
宙マン「(苦悶)ぐ、ううっ……か、体が焼けるようだ……!」
ステゴン「まだまだ、お次はこれだ!」
猛然と走り寄り、メガトン級の体当たり!
このダメ押しを喰らって、さしもの宙マンも遂に吹っ飛ばされてしまった。
落合さん「お、お殿様っ!?」
ビーコン「やばいっスよ、このままじゃ相手の一方的なペースのままっス!」
ピグモン「はわわわ、宙マン、がんばってなの~!」
ステゴン「ギシャ~っ、このまま踏み潰してノシイカにしてやらぁ!」
宙マン「なんの……負けて、たまるかっ!」
全身のダメージによろめきながらも、なんとか体勢を立て治し……
再び突進してきたステゴンの巨体を、今度はガッチリ受け止めてみせる宙マン。
ステゴン「ぎ、ギシャっ!?」
宙マン「さぁ、今度は私の番だな。まとめて一気にお返しだ!」
宙マン、パワー全開!
豪快な一本背負いが決まり、ステゴンが地面に叩きつけられたところへ――
「受けてみろ――宙マン・超破壊光線!!」
両手の間にエネルギーを集中させ、激しいスパークとともに放つ大技。
「超破壊光線」の直撃を受け、火花を散らすステゴンのボディ!
ステゴン「ほ、ほ……骨折り損の、くたびれ儲けぇぇ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
ピグモン「はうはう~! やったのやったの、宙マンの勝ちなの~!」
ビーコン「さっすがはアニキ、やっぱこうじゃなきゃっスよねぇ!」
落合さん「今日もお見事でしたわ、お殿様!」
イフ「おのれぇぇ……またしても、またしても宙マンめが!
だが、この屈辱は必ず二倍、三倍以上にして叩き返してやる!
よいか、覚えておれよ、最後に笑うのはワシら怪獣軍団なのだ……!」
……などと言う、もはや毎度の負け惜しみはさて置いて。
かくして宙マンの活躍により、怪獣軍団の尖兵・ステゴンは倒され
三笠市の化石騒動も、否応なしに一段落することになったのだった。
ピグモン「はうはう~、宙マン、お疲れ様なの~♪」
落合さん「でも……三笠市の皆様にとっては、なんともお気の毒なお話でしたわね~。
エゾミカサリュウ以来の大発見と思ったら、とんだ空振りだなんて……
期待が大きい分、落胆の方もさぞや大きいのではないかと思いますわ」
宙マン「……確かに、それはあるかもしれないねぇ」
宙マン「でもね、落合さん……三笠の人たちは、そう簡単に古代へのロマンや
未来への希望、それに向かって歩む勇気を捨てたりなんかはしないさ。
そして、そんな人たちがいっぱいいる大地だから……
だからこそきっと、この北海道って土地は素晴らしいんだよ♪」
ビーコン「お~、さっすがアニキ、最後にもっともらしくまとめたっスね!」
宙マン「いやぁ、はっはっはっはっ」
宙マン「さぁさぁ、せっかく三笠まで来たんだ。
千歳へ帰る前に、ご当地の“ホルモン鍋定食”でも食べていこうじゃないか!」
ピグモン「はうはう~、そう言えばお腹がぺっこぺこだったの~♪」
落合さん「善は急げですわ、お店が込み合う前に参りましょう!」
ビーコン「いえっふ~、ホルモン鍋めがけて突撃っス~☆」
固く、渇いた「化石の心」……
お馴染み宙マンファミリーに、そんな言葉はそぐわない。
正義の味方、次回もばっちり頼んだぞ!