日に日に、寒さが深まってきて……
いよいよ、秋から冬への境目がくっきり見えはじめてきた北海道。
それはさておき、北海道もまた年に一度のハロウィン!
キリスト教における「万聖節」の前夜祭として、毎年10月31日の夜に催される
ヨーロッパ起源の民俗行事のことである。
ただし、その正確な由来は知らずとも、大きなお化けカボチャのランタンであったり
思い思いの仮装に身を包んだ子どもたちが「トリック・オア・トリート!」の声とともに
町の各戸を訪問してお菓子を貰ったりといったビジュアル面や、一イベントとしての
楽しそうな雰囲気は、結構なじみがあったりするのではないだろうか。
と言う大前提のもと、、その幕を開ける『飛び出せ!! 宙マン』。
今回は、そんなハロウィン・パーティにまつわるお話である。
そう、今日はハロウィンの日。
一歩街に出れば、お馴染み千歳市もこの通り。
折からの秋の木々の色づきと、カラフルなハロウィン関連の装飾、
それに人々の楽しげな仮装で、ご覧の通りのお祭り騒ぎ!
ビーコン「うひょ~、やってる、やってるっス!」
落合さん「年に一度ですもの、これを逃す手はございませんものね。
商店街の皆様も、手ぐすね引いての大張り切りですわ」
ピグモン「はうはう~、ピグちゃんもハロウィン大好きなの~♪」
「んぶフフフフ……
そのどっちでも、ないとしたら~!?」
ながもん「……ども」
宙マン「やぁやぁ、どうも、ハッピー・ハロウィン!」
ビーコン「かーっ、なんつーか……みんな単純っスよね~。
マスコミのイメージ戦略と、菓子屋のインボーにまんまと乗せられて……」
宙マン「まぁまぁ、あんまり硬いことは言いっこなしだよ、ビーコン。
こういう楽しいことが大好きなのは、どこの国でもおんなじさ」
ビーコン「ま、なんだかんだでオイラも楽しんじゃうんスけどね~、ヒヒヒ。
……あ、それはそうとっスねぇ、落合さん」
落合さん「何ですの?」
ビーコン「インボウを「淫棒」って書くと、なんかすっげぇエロくないっスか!?」
落合さん「すこぶるどうでもいいですわねっ!(呆)」
宙マン「それはそうとだね、落合さん。
今夜、みんなにあげるお菓子の準備は出来てるかな?」
落合さん「ええ、抜かりはございませんわ、お殿様!
この私が腕によりをかけました、落合特製パネトーネ……
どこのお宅のお菓子にも、引けはとらないものと自負しておりますわ」
みくるん「わぁっ、素敵ですぅ!」
ながもん「今から、夜が……待ちきれない……じゅるりっ」
落合さん「えぇ、うんと素敵な扮装でおいで下さいませ♪」
宙マン「それにしても、日本のハロウィン……
いつの間にやら、すっかり馴染んで定着したよねぇ」
ながもん「空に、あんなのも……浮かんじゃう、くらいに」
ピグモン「(首を傾げて)……ほにゃ、あんなの?」
ビーコン「あんなの……って、どんなのっスか、ながもんちゃん?」
ながもん「(空を指差し)……こんなの」
と、ながもんが指差した先を一同も見やれば――
おお、何と言うことであろう?
そこには……大空の上には、巨大なカボチャがプカプカと。
落合さん「宣伝用の気球……でしょうか?」
ビーコン「にしては、ずいぶん手が込んでるっつーか……」
ピグモン「はう~、本物のカボチャにしか見えないの~」
宙マン「いやいや、いくらなんでも、あんな巨大なカボチャは……。
にしても、市の商工会か青年部か、思い切った趣向だねぇ♪」
「んぶフフフフ……
そのどっちでも、ないとしたら~!?」
みくるん「(びくっと怯えて)ほ、ほにゃっ! お空のカボチャに、目と顔が!」
ビーコン「どひ~っ、おまけにクチまでききやがったっス!(汗)」
宙マン「って事は、あいつは……!?」
そう、まさしくその通り!
おお、見よ! 驚愕せよ!
眩いスパークとともに、超巨大カボチャの真下に体が生え……
カボチャ頭の巨大モンスターとして、実体化を遂げたではないか。
みくるん「ふぇぇん、カボチャのお化けです~!」
ながもん「ハロウィン、らしいと言えば……らしいけど」
ピグモン「でも、こんなのは凝りすぎで怖すぎなの~!(涙目)」
「ヘ~イ、ヘイヘイヘイヘイ……
レディース・エンド・ジェントルマン、お父ッつぁん&お母ッつぁん!
年に一度のハロウィン、楽しんでるか~い!?」
「この俺ちゃん、パンプキンラッパー様が……
Coolな夜に、とびきりHotな絶望をプレゼントしちゃうぜィ!
よー、よーよーよー、どちらさんもノッていこうぜィ!」
ビーコン「……ちょ、のっけから何なんスか、このうるさいノリは!?(汗)」
落合さん「いずれにせよ、こういう方はと言えば……
どうせ今回もまた、怪獣軍団の差し金に決まっておりますわ!」
怪奇の事件は、怪獣軍団の仕業!
これまでに幾度となく千歳に起こった事件や騒動から逆算すれば
千歳の人々がそう思うのも無理はないところだが。
……では、実際のところはどうなのであろう?
「ズバリ言おう、ワシらじゃないぞ!?」
……と、千歳に突如として出現した怪物パンプキンラッパーの姿に
最も驚き、動揺していたのは、他でもない怪獣魔王をはじめとした
暗黒星雲・怪獣軍団の面々なのであった。
イフ「ワシの配下に……あのような奴、見たこともないわ!」
イフ「念のために聞いておくがの、ゾネンゲ博士。
今、千歳に現れたあやつは、そなたの差し金ではあるまいな?」
ゾネンゲ博士「い、いえいえそんな、滅相もない!」
ゾネンゲ博士「給料や待遇面での契約などなど、メンバーのスカウトは
私の一存でどうにか出来ることではございませぬし……
その際にはまず、何をおいても魔王様のご意見を仰ぎます!」
イフ「うむっ、確かに……。
と言う事は、何者がワシの縄張りにちょっかいを出してきたということか!」
ゾネンゲ博士「さては又しても、あの異次元人ヤプールが?」
イフ「いや、奴の配下の超獣……とは、また違った気配だ――」
イフ「いずれにしても、小癪な奴よ。
こうもふざけた真似をするのは単なる無知か、それとも……
まずは奴めの力のほど、見させてもらおうではないか!」
「ワァ~オっ、ラッパッパ~っ!」
ダンスでも踏むような軽快なステップで……
しかしその巨体ゆえに、恐るべき進撃開始のパンプキンラッパー!
迫り来る異形を前に、悲鳴をあげて逃げ惑う人々。
落合さん「ああもう、せっかくのハロウィンだと申しますのに……」
ビーコン「どひ~っ、これじゃお祝いどころじゃないっスよ!」
みくるん「いいから今は、とにかく逃げなきゃですよぉ!(汗)」
北海道千歳市、またまた絶体絶命の大ピンチ!
だが、こんな緊急事態を、航空防衛隊は放置などしない。
直ちに空の精鋭たちが、最新鋭の戦闘機でスクランブル!
ビーコン「おおっ、来てくれたっスねぇ、航空防衛隊!」
ピグモン「おじさんたち、グッドタイミングなの~」
落合さん「頼みましたわよ~、皆様!」
「ようし……全機、一斉攻撃開始っ!」
激しいアタックをかける戦闘機隊!
持てる火力の全てが、怒濤のごとく恐獣へと叩きこまれる。
パンプキンラッパー「はは~ん、何それ……もしかして、攻撃!?」
「……う、うわああぁぁぁ~っ!!」
「お手本を見せてやるぜ」とばかりの、不敵な破壊閃光!
パンプキンラッパーの反撃を食らって、航空防衛隊の最新鋭機も
勇戦むなしく、次々に撃墜されていく。
みくるん「ああっ、やられちゃったぁ!」
ながもん「冗談、みたいな……姿の、わりに……」
ピグモン「……冗談みたいに、強いの~!(ガタガタ震えて)」
パンプキンラッパー「ハイハイハァイ、そこが俺様の威力で魅力ゥ!」
更に、体から伸びた蔦を鞭のように奮っての攻撃!
その一撃で、堅牢なビルさえもがあっけなく破壊され、崩壊していく。
ビーコン「どひ~っ、ハロウィン終了のお知らせっス~!(汗)」
落合さん「ハロウィンどころか、これでは私どもの生活が……!」
みくるん「そんな、そんなの絶対イヤですぅ!」
ながもん「ここは、一発……ヒーローの、出番」
ピグモン「はわわ……宙マン、宙マン、なんとかしてなの~」
宙マン「おのれ、もう許さんぞ! 宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、荒れ狂うパンプキンラッパーの前に舞い降りる!
宙マン「トゥアーッ! 宙マン、参上!
もう、悪ふざけはその辺にしておくがいい!」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「待~ってましたっス、アニキの十八番!」
落合さん「(呆れ)まったく、ビーコンさんは調子がいいんですから……。
でも、私も心よりお待ちしておりましたわ、お殿様!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
宙マン「カボチャのお化けめ、ハロウィンだからと言って……
おふざけが過ぎるようなら、この私が黙ってはいないぞ!」
パンプキンラッパー「よー、てめぇが噂の宙マンかィ。
てめーはこの俺様のノリと勢いに、絶対勝てやしねぇのさ。
勝てない、しがない・パーティーナイトっ!」
ファイティングポーズを取り、敢然と身構える宙マン。
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトルの幕開けだ!
宙マン「行くぞ、パンプキンラッパー!」
パンプキンラッパー「……あ、てめえっ!
俺様渾身のリズムと歌詞を、完全無視して流しやがったな!?
たな、たなたな、ふざけやがったな~っ!?」
激突、宙マン対パンプキンラッパー!
ハロウィン気分の街を舞台に、二つの巨体がぶつかり合う。
巨大な頭と、蔦まみれの全身……
一見すると鈍重そうでいて、意外にも動きは軽快そのものの
巨大怪物パンプキンラッパー。
ステップを踏むような軽快な身のこなしで、宙マンを挑発するように
猛然と迫って来るその様が、かえって不気味さを感じさせる――
だが、そんな怪物のトリッキーな攻撃に、いたずらに惑わされて
戦意を喪失するような宙マンではない。
宙マン「それっ、これでもくらえ!」
流石だ、宙マン!
パンプキンラッパーの猛攻に生じた、一瞬の隙を逃すことなく……
鋭い正面跳び蹴りが、かぼちゃ怪物の腹部へと炸裂した!
パンプキンラッパー「だハァァァッ、こりゃ効いたぁぁ~っ!」
ながもん「よしゃっ。……宙マン……上手いっ」
ビーコン「おーし、こうなりゃバトルの流れはアニキのもんっス!」
落合さん「このまま一気に決めちゃって下さいませ、お殿様!」
宙マン「さぁ、どうするね、パンプキンラッパー君?
このまま退くと言うなら、私も深追いはしないが……」
パンプキンラッパー「らっぱっぱ……愚問、珍問、こっちのもんっ!」
宙マン「(よろめき)!?」
顔を上げると同時に、破壊閃光を放つパンプキンラッパー!
その威力に宙マンの目がくらみ、巨体が大きく揺らいだところへ……
すかさず、蔦鞭の容赦ない一撃が叩きつけられた!
「う、うわぁぁぁぁ……っ!」
ズッシィィーンっ!!
みくるん「ああっ、宙マンさんが!」
ビーコン「どひ~っ、とんだハロウィンになっちまったっスねぇ!」
ながもん「季節ネタ、だからって……気合、入りすぎ」
ピグモン「はわわわ、宙マン、負けちゃ嫌~んなの~!」
落合さん「お殿様……頑張って下さいませ、お殿様!」
宙マン「(苦悶)……う、うう……っ!」
パンプキンラッパー「らっぱっぱ……思い知ったか、チータカタッタ!
どうやらこの辺でジ・エンド……ってことで、えぇんど!?」
「なんの、まだまだ……負けて、たまるかぁぁッ!」
宙マン、パワー全開で大ジャンプ!
パンプキンラッパー「(狼狽)……わ、わぁ~おっ!?」
宙マン「くらえ――宙マン・閃光波!」
ピッキュイィィーンっ!
高らかな音とともに、宙マンの手にストロボ状の発光が生じ……
次の瞬間、パンプキンラッパーのボディで激しい爆発が起こる。
閃光波の連続発射が、パンプキンラッパーに次々と命中!
そのダメージに、かぼちゃ怪物がフラフラになったところへ――
宙マン「とどめだ! 宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、パンプキンラッパーを直撃!!
パンプキンラッパー「らっぱっぱっぱっ……ぱっぱらぱぁぁ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
ピグモン「はうはう~、やったのやったの、宙マンの勝ちなの~!」
ビーコン「さっすがアニキ、お見事としか言いようがねーっス!」
落合さん「これで私たちも、街の皆様も一安心ですわ」
喜びに沸く人々へ、宙マンの巨体がにこやかに振り返りかけた時。
……そう、まさにその時である!
ながもん「(鋭く)…………待って!」
ビーコン「へっ!?」
ながもんの見つめる方向……
そこには、もうもうと噴き上がる不気味な赤い煙があった。
「ぐぁぼはははは……!!」
そして、その赤い煙の中に佇み、一気に巨大化を遂げたのは……
筋肉組織が剥き出しになったかのような、異形の怪人ではないか!?
宙マン「(ハッと身構え)……お前はっ!」
「ぐぁぼははは……聞けィ、我が名はゼッド、ロード・ゼッド!
別宇宙の闇の世界に、支配者として君臨し……
今またここに、地球を我が手中に収めるべく、この宇宙へと降臨せし
大いなる魔界の帝王である」
ロード・ゼッド「だが、この星を我輩のものとするためには……
宙マン、どうやら貴様が邪魔なようだな。
なればこそ宙マンよ、ここに言ってとらす――」
ロード・ゼッド「先のパンプキンラッパーは、ほんの名刺代わりの挨拶だ。
これからも次から次に、より強力なモンスターどもを送りこみ……
この地球を我輩好みの、邪悪な暗闇色に塗りこめてくれよう!」
宙マン「な……っ!?」
落合さん「突然アポなしでいらして、何を勝手な……!(憤慨)」
ロード・ゼッド「この我輩は、イフやヤプールのような間抜けどもとは違う。
よいか宙マン、今はよーく覚えておくがよいぞ――
新たなる、そして永劫なる地球の帝王、ロード・ゼッドの名をな!
ぐふふふ、ぐぁぼはははは……!」
雷鳴のような、砲撃のような哄笑とともに……
宣戦布告を終え、ロード・ゼッドの姿は虚空へと消えた。
「ま、魔王様! 魔王様っ!」
イフ「えぇい、うろたえるでない!……
……ムムムッ、それにしてもまさか……
ヤプールばかりか、今またロード・ゼッドまでが出張ってくるとは!」
「……ご存知なのですか、魔王様はアイツを」
イフ「(苦々しげに)……うむっ、昔……いろいろと、な!」
「うぬぬぬっ、そうか……
先日のあの気配は、やはりお前か、ロード・ゼッド!」
「よくも……あそこまでの大口を叩いてくれたな、ゼッド。
だが、今のうちだけだ……
いずれ、死にも勝る屈辱で、その大言壮語を後悔させてやる……!」
ここにまた新たに出現した魔界の支配者、悪の帝王ロード・ゼッドに対し
それぞれ警戒心を強め、闘志を燃やしつつある中。
こちら、北海道千歳市のほんわか町町内会では。
ひとまずそれはそれとして、当初の予定通りのハロウィン・パーティーが
賑やかに、楽しく開催されることになったのであった。
宙マン「まぁ、あの手のやからはどこの宇宙にもいるものだし……
いちいち相手にしていたら、それこそキリがないからねぇ!」
落合さん「素晴らしいですわ、流石はお殿様です♪(うっとり)」
ビーコン「豪気なんだか、呑気なんだか……(苦笑)」
みくるん「えへへ……トリック・オア・トリートですぅ♪」
ながもん「(ボソッと)お菓子を、くれないと……いたずら……しちゃうよ」
宙マン「はっはっはっはっ、ハッピー・ハロウィン!
みくるんちゃんもながもんちゃんも、今夜はまた可愛い仮装だねぇ」
落合さん「ささ、こちらのパネトーネをどうぞ」
みくるん「わぁっ、おいしそうですぅ!♪」
ながもん「端的に言って……ごっつぁん」
ピグモン「はうはう~、ピグちゃんも一緒に、お菓子もらいに行くの~!」
落合さん「えぇ、それはようございますわね~。
……あら、でもそのままでいいんですの、ピグモンちゃん?
せっかくのハロウィンなのに、何の仮装もなさらないで……」
ピグモン「今夜のピグちゃんはね、ロボット怪獣・ガラモンだから問題ないの~♪」
ながもん「なるほど。……その発想は、なかった」
ビーコン「てか、なんつーメタなネタを……(汗)」
ビーコン「まー、何はともあれ今夜はハロウィン、無礼講っス!
いつでも、どこからでも来ていいんスよ、可愛いお化けちゃんたち!?
さぁ、舐めてプリーズ、オイラのロリポップキャンディー……」
げ し っ !
落合さん「ねーいっ、毎度毎度このエロ怪獣ときたらっ!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、それでもやめられない、止まらないっスぅぅ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
ライトアップされた町、思い思いのきらびやかな仮装……
そう、今宵はハロウィン。
千歳の人々にとって、最高にハッピーで楽しい一夜であった。
新たな敵は、ひとまずさて置き……
今夜は楽しく、陽気に行こう!
さて、次回のお話はどうなるかな?