宙マン「行くぞ、“魔導の”スライ!」
スライ「んふふふ、さぁ――ゲームの始まりですっ!」
怪獣軍団の幹部候補生たる五人衆、「ダークネスファイブ」のリーダー格である
メフィラス星人“魔導の”スライと、我らがヒーロー・宙マンとの息詰まる激闘が
スライの創り出した魔導ゾーンにおいて繰り広げられる。
だが、そんな中、魔導ゾーンの上空に生じた予想外の異変――
ピシッ……バシッ……バリバリバリッ……
スライ「なっ!」
宙マン「こ、これは……っ!?」
魔導ゾーンの空に走った亀裂に、同時に驚く宙マンとスライ。
そして、更にスライを驚かせたのは……
赤い亀裂の彼方から漏れ出てくる、あまりにも巨大な「邪念」の存在であった!
スライ「ぐぁぁぁっ……も、もう一歩のところで……!」
この驚くべき異変にうろたえたスライの隙を突き、宙マンのエクシードフラッシュが
戦いの決着をつけたことは、読者諸氏も既に御承知の通り。
そう、あの邪念の干渉がなければ……
あるいは、“魔導の”スライが宙マンに勝利していたのかもしれない。
そして、親愛なる読者諸氏よ。
賢明なる貴方がたは、もう既にご存知であるはずだ――
「それ」をもたらしたのは、我々の目には見えない四次元空間に
怨念となって渦巻く、異次元人ヤプールの意思なだということを!
「我ら異次元人の次なる挑戦は、既に始まっているのだ……
怪獣よ、宇宙人よ、もはやお前たちの出る幕ではない」
「……そうであろうがァ!?
我が剣、我が手足、そして我が意思を体現する者よ!」
「我が忠実なる配下、地獄より這い出た素晴らしき下僕……
さぁ、今こそ行くがよい!
地球の奴らに、異次元人の悪魔の力を見せてやれ……!」
かくして、ここに――
次元世界に悪名轟く異次元人ヤプールの攻撃が迫り来ようとしていた。
危うし地球、危うし宙マン!
だが、ひとまずそれはそれとして――
こちらは毎度お馴染み、北海道千歳市・ほんわか町5丁目の「宙マンハウス」。
みくるん「ほ~んと、寒い日が続きますよねぇ~」
ながもん「かげで、寝る時……湯たんぽ……欠かせない」
宙マン「湯たんぽかァ、私たちも寝る時にはお世話になってるよ。
ローテクながら効果絶大、生活の知恵ってやつだよねぇ」
ピグモン「はうはう~、ピグちゃんも朝までぬっくぬくなの~」
ビーコン「ヒヒヒ、オイラはどうせなら抱き枕でぬくぬくと……」
落合さん「あら、市販の抱き枕に、そんな機能ありましたかしら?」
ビーコン「いやいや~、オイラの言うのは落合さんと言う名の肉枕……」
げ し っ !
落合さん「ねーいっ、昼間っから下世話すぎですっ!(怒)」
ビーコン「ハンニャラ、ヒ~っ……」
宙マン「はっはっはっはっ」
「宙マンハウス」の昼下がり、和気藹々の団欒のとき。
だが、そんな平穏を破るかのように、突然……!
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラッ!
落合さん「じ、地震っ!?」
ピグモン「はわわわ、おっかないの~!(涙目)」
ビーコン「どひ~っ、これはまさか……例のアレっスかね~!?(汗)」
市内の中心部が激しく揺さぶられ、大地がメキメキ音を立てて割れ裂ける。
そして地中から、大量の土砂を巻き上げ……
邪悪なエネルギーを迸らせつつ、立ち上がった巨大な影とは!?
「ギャルルゥゥ~ンっ!!」
みくるん「(怯えて)ああっ、悪い怪獣さんですぅ!」
ピグモン「ながもんちゃん、あの怪獣、知ってる!?」
ながもん「(首を振り)……は。はじめて、見た……!」
怪獣に詳しいながもんが、存在を知らなかったのも無理はない――
そう、これこそは異次元人ヤプールの送り込んだ侵略兵器。
悪魔の異次元科学で歪んだ生を受けた、おぞましく呪わしき命!
落合さん「これはまた、何とも禍々しいと申しましょうか……」
ビーコン「超獣ともまた違う、危険な匂いプンプンっスよ!(汗)」
「ふっはははは……その通りだ!」
異次元空間からの、ヤプールの呪いの声……
それは虚空の彼方から、千歳市民らの頭上にも届いていた。
「これこそ我が傑作、超獣をも超えた“ベリアル融合獣”。
その邪悪さも、破壊力も、生半可であろうはずがないだろう……!」
「くっくっくっくっ、すなわち。
多々良島の暴れ者、どくろ怪獣レッドキングと……」
「ジョンスン島の顔役、古代怪獣ゴモラ。
ごくありふれた、二頭の怪獣の細胞組織を融合させ……」
「そして、ベリアル因子による急激な超進化を促してやることで……
これまでの超獣をも越える、全く新たなモンスターの形を成す」
宙マン「ベリアル……ベリアル因子と言ったか!?」
M78星雲・光の国に生まれた「ウルトラマン」の一人でありながらも
大いなる力の誘惑に負け、闇へと落ちた伝説的巨悪・ベリアル。
幾多の闘争の果て、その存在が消滅した今もなお、宇宙の至る所で
暴れ回り続けた彼の邪悪な因子……すなわち「ベリアル因子」は
ベリアル亡き今も、宇宙の各地・様々な惑星に散らばり、その邪悪な力で
様々な事件を引き起こし続けているのだ。
……そして「銀河連邦」の一員・プラネット星人である宙マンの耳にも
当然のように、その邪悪さの噂は伝わっていたのであった。
「これ、すなわちベリアル融合獣。
名付けて、スカルゴモラの誕生だ!!」
ビーコン「どひ~っ、言われてみりゃ確かに……
落合さん「生物の融合合体は、異次元人のお家芸でしたものねぇ!(汗)」
宙マン「……くッ、よりにもよって、とんでもないものを!」
「ひゃははは! さぁやれ、スカルゴモラ!
ベリアル融合獣の……
異次元人の力のほど、全宇宙に見せつけてやるのだ!」
迫りくる巨体を前に、人々が悲鳴をあげて逃げまどう。
ビーコン「どひ~っ、こっち来てるっスよ、こっち!(汗)」
落合さん「これは少々……いえ、かなりシャレになりませんわ!」
みくるん「あわわわ、とにかく今は逃げなきゃですぅ!」
ベリアル融合獣の出現により、たちまち大パニックの千歳市!
だが、その恐るべき「存在」に心底驚愕していたのは、何も千歳市民や
宙マンたちばかりではない。
暗黒星雲に陣取る怪獣軍団……
怪獣魔王・イフをはじめとした、配下の怪獣たちもまた同様であった!
スライ「(わなわな震えて)お……おおおっ、おおおお……」
スライ「ま、魔王様、あれですっ! あれでございますよ!
あの時、私の“魔導ゾーン”にまで強力に干渉してきたエネルギー、
得体のしれないあの「邪念」の正体は!」
イフ「うむっ、ベリアル因子……まさかヤプールが手に入れていたとはの!
そして、それにもまして問題なのが――」
イフ「あの融合獣とやらを構成する、二大怪獣の遺伝子の出所だっ!
……レッドキング、ゴモラ、詳しく話を聞かせてもらおうではないか……!」
ゾネンゲ博士「まさかとは思うが、よもやお前たち……
目先の欲得に目がくらんで、大恩ある魔王様を裏切ったのではあるまいな!?」
レッドキング「いやいや、そんなそんな、滅相もないですって!」
イフ「……ふむ、では改めて聞こうではないか。
先週の日曜日、お前たち二頭で連れだって出かけたようだが……
一体、どこで何をしておった?」
ちょいと二頭でホルモン焼きでも食って一杯やろうぜー、って話になって」
ゴモラ「楽しく飲み食いしながら世間話、ホントそんだけですってば」
ゾネンゲ博士「……他には、本当に他には何もないのか?」
「怪獣用の血液が不足していまーす。
どうか献血にご協力くださーいっ!」
レッドキング「ノンアルだけど一杯やってイイ気分になってた事だし、
たまには良いことするのもアリかなぁ……って感じで……あ゛っ!?」
レッドキング「も、もしかして、もしかしちゃうと……」
ゾネンゲ博士「そ、それだーッ! もしかしなくても絶対それだー!!(汗)」
ウチの連中の怪獣(ひと)のよさに、まんまとつけこみおって!」
……などと、暗黒星雲の怪獣魔王らが憤っている間にも。
ヤプールの悪意を乗せて、猛進撃を続けるスカルゴモラの威力により
千歳市は炎に包まれ、絶体絶命の大ピンチに晒されていた!
みくるん「……どうしよう、これじゃ、このままじゃ……!」
ピグモン「これじゃ、千歳の街がゼンメツしちゃうの~!(涙目)」
落合さん「そんな、そんな事は……ですが、これでは……!」
ビーコン「はわわわ、ひぇぇ……もうダメっス、おしまいっス!」
ながもん「ここは、一発……ヒーローの、出番?」
宙マン「(頷き)おのれ、もう許さんぞ! 宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
さぁ、今日もまた正義の味方のお出ましだ!
宙マン「ベリアル融合獣スカルゴモラ、千歳の平和は私が守る!」
ながもん「おお。……いつもながら……頼もしい」
ビーコン「いよっしゃ、出たっス! アニキの十八番!」
落合さん「今日もよろしくお頼みしますわ、お殿様!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
宙マン「ただ破壊し、壊し尽くすためだけに生まれてきた……
その呪われた運命に、私がピリオドを打ってやろう!」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ!
激突、宙マン対スカルゴモラ!
同時に駆け寄り、激しい打撃音とともに格闘戦を繰り広げる両者!
千歳の人々が見守る中、両者のテンションは早くも頂点に。
果敢に接近戦を挑み、技を繰り出す宙マンであったが……
異次元人ヤプールの肝入りたる、スカルゴモラの強さも相当以上。
怪力自慢の凶暴性が更に増幅され、牙を剥いて宙マンに襲いかかる!
宙マン「なんの、負けてたまるかっ!」
大きく振りかぶり、勢いの乗った正義の鉄拳。
だが、宙マン・パンチでは倒せず!
素早い身のひねりとともに、真っ向から繰り出す鉄脚。
だが、宙マン・キックでも倒せず!
宙マン「なんて奴だ……この強さ、確かに超獣以上かも知れん!」
咆哮とともに、口から吐き出される“スカル振動波”。
その恐るべき一閃が、宙マンの周囲に凄まじい爆発を生じさせた!
ズガーン! グワーンっ!
「う、うわぁぁぁっ……!!」