何度叩きのめされても懲りることなく、地球を狙い続ける怪獣軍団。
だが安心してほしい、地球には……
この千歳には、正義の人・宙マンがいるのだ。
そんなわけで、今日もまた。
雪深い千歳市郊外の山奥にて、真冬の寒さをも吹き飛ばす勢いで
熱く繰り広げられる世紀の大激闘。
今度の相手は、かつて宙マンに挑んで敗れたあいつ。
「奇怪宇宙人」の異名をとるツルク星人だ!
ツルク星人「テュカカカっ、前に受けたあの屈辱……
今日こそはスッキリ晴らさせてもらうぜ、宙マンよ!」
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宙マン「何度来ようが同じことだ。正義は必ず勝つ!」
ツルク星人「テュカ~、その余裕、めっちゃムカつく~っ!」
氷点下の中、ひときわ高く響き渡る打撃音!
激しい力と技の応酬の果て、最後にこの戦いを制したのは……
やはり、我らが宙マンの必殺技であった。
宙マン「とどめだ!
宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、ツルク星人を直撃!!
ツルク星人「ひょんげ~、やっぱこうなっちゃうのねぇぇ~っ!」
やったぞ宙マン、絶好調!
怪獣軍団の野望は、またまた正義の前に潰え去ったのであった。
……と、いうような感じで。
相変わらず絶好調なヒーローの大活躍で幕を開けた『宙マン』。
で、そうなると甚だ面白くないのは、もちろん暗黒星雲の……。
イフ「ぬうううっ……おのれおのれ、またしても宙マンめが!
だが、これしきでワシらが諦めると思ったら大間違いだぞ。
既に、次なる計略が動き出しているのだからな!」
ゾネンゲ博士「ええ、仰るとおりでございます、魔王様!」
ゾネンゲ博士「宙マンが油断している隙に、次なる使者の選抜は済み……
あとは魔王様の出撃命令を待つばかりでございます」
イフ「おお、さすがだな、ゾネンゲ博士!」
ゾネンゲ博士「ふふふ、魔王様のお仕込みで♪」
ゾネンゲ博士「どうぞ、吉報をお待ち下さいませ!」
イフ「わははは、今に見ておれ宙マンめ!」
おお、又しても怪獣魔王の恐るべき命令が下された。
間髪入れずに次なる悪の使者が、我々の地球へと迫り来る!
……これが千歳の「日常」となって、既に久しいものがある。
が、ひとまずそれはそれとして……
こちらは毎度お馴染み、北海道千歳市の「宙マンハウス」。
既に怪獣軍団が動き出しているとは、全く露知らぬ宙マンたち。
そんな彼らの午後はと言えば、気の置けない友人・家族らが
暖かなリビングルームに集って、至極まったりとしたものであった。
宙マン「ほほぅ、なるほど、そんなことが?」
ながもん「(頷き)事実は、小説よりも……奇なり……珍なり」
みくるん「ねぇ、私もびっくりしましたよぉ。
お爺ちゃんの耳かきかと思ったら、動物の歯の化石だったなんて!」
ビーコン「しかもどうやら、新種らしいじゃないっスか」
ピグモン「はうはう~、世紀の大ハッケンなの~」
落合さん「何気ない日常の中で、そんな発見があったりする辺りが……」
宙マン「流石むかわ町、ダテに“化石のまち”を名乗ってないねぇ」
ビーコン「だったらまた、みんなで行こうじゃないっスか!」
落合さん「あら、ビーコンさんからのご提案とはお珍しいですわね。
オタク趣味関連の展示会とか、オタクショッピングばかりで
そう言うのには感心が薄いとばかり思ってましたら!
ビーコン「チチチ、心外っスねぇ落合さん!
オイラだって常日頃から、むかわ町には興味津々っスよ――」
ビーコン「そう、むかわ町ではね、今――
むかわ特産のシシャモから炊き出した旨味のエキスたっぷりの
ししゃもダシラーメンが食えるんスよ!!」
落合さん「(呆れて)あらまぁ……
結局は食欲絡みですのね、ビーコンさんの発想って!」
ビーコン「ヒヒヒ、あとは性欲っス~☆」
落合さん「……その追加事項は心底余計ですっ!(汗)」
むかわ産の本シシャモから炊き出され、念入りに焙煎を繰り返され
独特ながらも嫌味なクセを感じさせないダシを主体としたスープ。
この美しい透明感からの期待を、全く裏切ることはなく……
ビーコン「このスープに合わせて特注の、もちもち食感の太麺とも
また実に相性抜群、って寸法っスよ!」
みくるん「ほにゃ、お話聞いてるだけで美味しそうです~」
ながもん「何という、飯テロ……じゅるりっ」
ピグモン「はうはう~、ピグちゃんも食べてみたいの~♪」
宙マン「ようし、それじゃ今度みんなで行こうか!」
落合さん「となると、事前の情報収集と吟味も不可欠ですわね」
ビーコン「ヒヒヒ、ネット検索ならオイラにお任せっスよ~☆」
「宙マンハウス」の昼下がりは、良くも悪くもいつも通り。
だが、そんな平穏な日常を破ったもの……それは!
ブアォォンッ!
ピグモン「(怯えて)きゃああんっ、おっかないの~!」
ビーコン「どひ~っ……なんスかなんスか、いきなり何なんスかぁ!?」
落合さん「飛行機の墜落でしょうか!?」
宙マン「いや、そうじゃない――あれを!」
慌てて家の外に飛び出した一同が見たもの……
それは真っ赤な尾を引き、飛来してくる真っ赤な光球であった。
光球はまっすぐに落ちてきて、地上に激突し……大爆発!!
ズゴゴゴグワーンっ!
ビーコン「(目を回して)ハンニャラ、ヒ~っ……」
落合さん「ケホ、ケホッ……もう、何なんですの!?」
ピグモン「はわわ……すごかったの、隕石だったの~」
ながもん「いや、違う。……隕石よりも……もっと、すごいもの」
地上激突の衝撃波と爆風は、人々を吹き飛ばさんばかりの勢い。
噴煙の中から、ゆっくりとその身を起こした巨大な影……
そう、それは!?
「ワギャギャギャ~ッ!!」
宙マン「……怪獣だったのか!」
ながもん「(無表情)ほらね。……やっぱり」
みくるん「もう、ながもん、得意がってる場合じゃないよぉ!(汗)」
「ワギャギャギャ……俺様は大怪獣・カンジラス!
怪獣魔王様の命を受け、暗黒星雲から来た破壊の使者だぜ!」
宙マン「何と、ジャミラじゃなかったのか!?」
カンジラス「(ジト目)……だぁー、かぁー、らぁ~。
そういうボケは、もうえぇっちゅーんじゃ!」
ビーコン「たはは、何つーか、そこはそれ……」
落合さん「一応の、お約束……とでも申しましょうか(苦笑)」
カンジラス「あー、もう、君らには付き合ってられんわ!
こっちはこっちで仕事始めるんで、ヨロシクぅ!」
宙マン「……仕事?」
みくるん「(震えて)……破壊活動ってことですよぉ!」
イフ「わははは……行けぃカンジラス、徹底的に街を破壊せよ!
働き如何によって、臨時特別賞与にたっぷり色をつけてやるぞ!」
カンジラス「イエーイ! そのお言葉、確かに聞きましたぜ魔王様!」
怪獣魔王の言葉に、俄然張り切るカンジラス!
赤いレンガ色の巨体が、猛然と進撃を開始する。
みくるん「やだー、怪獣さんが動き出したですぅ!」
ビーコン「ひぇぇ! キタキタ、こっち来てるっスよ!?」
落合さん「見れば判りますッ、いいから逃げるんです!」
宙マン「みんな、こっちだ――早く!」
おお、今日もまたまた大ピンチの千歳市!
大怪獣の暴虐、もはや断じて許すまじ。
平和を守るべく、航空防衛隊が直ちに出撃した。
ビーコン「おほっ、航空防衛隊のお歴々っスよ!」
落合さん「タイミング「は」いつも良いんですけど……(汗)」
ピグモン「はうはう~、おじさんたち、しっかりなの~!」
「ようし……全機、怪獣に一斉攻撃だっ!」
カンジラスめがけて、一斉に攻撃をかける戦闘機!
だが、その凄まじい弾着も、大怪獣を怯ませるには至らない。
カンジラス「ワギャギャギャ、効くもんかよォ!」
「う、うわぁぁぁっ……!!」
カンジラスの口から吐き出される恐怖の破壊光線!
その直撃を受け、一機、また一機と撃ち落されていく戦闘機。
ピグモン「あ~ん、やられちゃったの!」
ながもん「さすがに……一筋縄では、いかない……か」
ビーコン「がーっ、ヘンに納得してる場合じゃないっスよ!(汗)」
……などと言っている間にも、傍若無人の進撃は続く!
落合さん「きゃ、きゃああああっ!?」
ビーコン「うわ……うわ、うわ、うわ~っス!」
爆発! 炎上!
今や誰がどう見ても、千歳の街は絶体絶命の大ピンチ……
この事態をもたらした者こそ、大怪獣カンジラスなのだ!
ながもん「オウ……これは、いろいろ……シャレに、なってない」
ビーコン「このままじゃ、オイラたち丸焼きっスよ!」
みくるん「(涙目)ちゅ、宙マンさぁん、どうしましょう!?」
宙マン「……ううむっ、やるしかないか!
宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、荒れ狂うカンジラスの前に舞い降りる!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
怪獣カンジラス、乱暴狼藉もそこまでにしておけ!」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「出たっス、アニキの十八番!」
落合さん「こうなってはもう、お殿様だけが頼りですわ!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
カンジラス「ワギャギャギャ~っ、シャラ臭ェやな、宙マン!」
宙マン「あくまでやる気か……いいだろう、かかって来い!」
勇壮たるファイティングポーズで、敢然と身構える宙マンーー
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ!
カンジラス「宙マンめぇ、お前を倒してボーナス倍増額だぁ!」
宙マン「そうはいかんぞ、カンジラス!」
激突、宙マン対カンジラス!
寒風さえ寄せ付けない勢いで、熱い巨大バトルの幕が開く。
長い両腕でパンチ攻撃を仕掛けてくるカンジラス。
だが宙マンも怯むことなく、真っ向からこれと渡り合う。
ぶつかり合う闘志と闘志、パワーとパワー……
緒戦における格闘技の威力は、怪獣・超人ともにほぼ互角。
だが、次の瞬間、カンジラスの破壊光線が均衡を破った!
「う、うわぁぁぁぁ……っ!!」
宙マンの周囲に、次々と巻き起こる連鎖爆発!
高熱と衝撃波に煽られて、ヒーローの巨体がドドーッと倒れ伏す。
みくるん「ああっ、宙マンさんが!」
落合さん「お殿様……しっかりなさって下さい、お殿様!」
ビーコン「アイツ、ただのジャミラモドキかと思ったら、ガチで強いっスよ!?」
カンジラス「(ビーコンを一瞥)オラ、そこっ!……聞こえてンぞぉ!?」
ビーコン「……ど、ど、どひ~っ!(ガクガクブルブル)」
カンジラス「今の暴言への落とし前は、後でキッチリつけるとして……
とりあえず今は、宙マンの始末のほうが先決だ。
臨時ボーナス増額間違いなし、一足早い春の訪れだぜィ!」
宙マン「(苦悶)うう……うっ……!」
ピグモン「はわわわ、宙マンがほんとにあぶないの~!」
みくるん「どうしよう、このままじゃ……!」
ながもん「(拳を握り)宙マン……しっかり……負けないで……!」
カンジラス「ワギャギャギャ、くたばれ宙マン!
俺様のボーナス、ゴキゲンな消費生活と引き換えに!!」
口腔に破壊エネルギーを収束させていくカンジラス。
だが、エネルギーチャージのために生じる無防備な瞬間……
そうだ、宙マンはその一瞬を待っていた!
「本当の勝負は……ここからだ!」
カンジラス「(驚愕)な、何ッ!?」
全身のパワーと気力を振り絞り、大ジャンプする宙マン。
空中回転とともに繰り出す、怒りの必殺技の名は!
宙マン「エイヤぁぁぁーっ!
宙マン・ミラクル・キック!!」
出た、電光石火の必殺技!
ミラクル・キックの直撃に、カンジラスがブッ倒れたところへ――
宙マン「とどめだ!
宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、カンジラスを直撃!!
カンジラス「あまりに儚い、ボーナス倍額の夢でしたぁぁ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
ピグモン「はうはう~、やったのやったの、宙マンの勝ちなの~!」
ながもん「さすが、宙マン……任せて、安心」
みくるん「ありがとうございましたぁ、宙マンさん!」
イフ「ぐぬぬぬっ、またしても宙マンめが!
次こそは必ず……覚えておれ、今に見ておれよ~っ!」
……などと言う負け惜しみは、いつも通りにさて置いて。
かくして宙マンの活躍により、大怪獣カンジラスは撃退され……
千歳の街には再び、穏やかな「日常」が戻ったのであった。
ピグモン「はうはう~、宙マン、おつかれさまなの~♪」
宙マン「いやぁ、はっはっはっはっ……
なんかこう、ひと勝負終えたら無性にお腹がすいてきちゃったよ」
みくるん「あれだけの戦いの後ですもん、無理ないですよね~。
ししゃもラーメンもいいですけど、まずは軽く何か……」
落合さん「お任せ下さいませ、すぐにおやつの支度を致しますわ!」
ビーコン「ウッシッシ、そして主菜はオイラにお任せっス!
肉汁と旨味たっぷりのボローニャソーセージ、用意万端っス。
あ、勿論このソーセージ云々はエロい意味での比喩で……」
げ し っ !
落合さん「ねーい! よくもイケシャーシャーと、このエロ怪獣ッ!!」
ビーコン「どひ~っ、相変わらずガツンと来る一撃っスぅぅ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
いろんな日常あるけれど……
やっぱり、みんなと過ごす平和が一番。
だから宙マン、次回も頼んだぞ!