７月、今やどこからどう見たって夏――
ぎらぎらと真夏の太陽が照りつけて、列島の最北端とは言えども
しっかり暑く、夏らしいのがこの季節。
「宙マンハウス」のある、北海道千歳市・ほんわか町５丁目もまた
決してその例外ではない。
落合さん「ふぅ、毎日毎日、暑い日が続きますわねェ。
……あら、これはどうも、こんにちは皆様。
毎度おなじみ、美人メイドの落合でございます！」
宙マン「いやぁ、今の季節だから当然とは言え……
本当に参るね、こう暑い日が続くと！」
落合さん「あら、怪獣退治の専門家たるお殿様でも、ですか？」
宙マン「（苦笑）……いやぁ、それはそれ、これはこれだよ」
ビーコン「アニキでさえ音をあげるんじゃ、この暑さも相当っスね～。
支笏湖へキャンプに出掛けた、うちのピグモンは大丈夫っスかね？」
宙マン「熱中症の怖い季節ではあるけれども……
まぁ、大丈夫だろうさ。
みくるんちゃんとながもんちゃんも一緒だし、ね」
落合さん「（頷いて）アウトドアでは経験豊富なお二人ですものね。
あの姉妹がついてて下さるなら、私も安心ですわ」
ビーコン「ヒヒヒ、オコチャマはオコチャマで楽しんでもらって……
その間にオイラたちは、大人だけでゆっくり楽しむっスよ～！」
ビーコン「ワサビの効いた寿司食って、旨い酒飲んで……
ヒヒヒ、まさに大人水入らずの楽しくアダルティな時間っス～」
落合さん「大人水入らず、実に良い響きですこと。
……ですが、それにはまだお邪魔な存在があるようですわ」
ビーコン「……ちょ、何でオイラの方を見るんスか！？（汗）」
落合さん「忖度なさって下さいな、私の口から言わせずに！
どうぞご遠慮なく、おひとりでお出かけなさって下さいませ――
あ、そのまま一生戻って下さらなくっても構いませんのよ！？」
ビーコン「っがー、言うに事欠いて、このオネーチャンはっ！
冗談のつもりでも、そりゃちょっと笑えないっス！」
落合さん「いえいえ、私はいつだって１００％の本気ですとも！」
ビーコン「どひ～っ、鬼っス、夜叉っス、落合さんっス！
ちょっと、アニキからも何とか言ってやって欲しいっス！」
宙マン「（苦笑）たはは、まぁまぁ、二人とも……」
と、そんな感じで、いつもの言葉の応酬が繰り広げられていた時。
そう、まさにその時であった！
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラっ！
宙マン「う、うおおっ！？」
落合さん「こ、これはまた……例によって、いつもの展開ですかしら！？（汗）」
ビーコン「……な～んかネェ、猛烈にそういう予感がするっスよ！（汗）」
のどかな、平穏な時間を破るかのように……
不意の局地的大地震が、またまた千歳の街を襲った。
大量の土砂を天高く柱のように撒き上げ、舗装道路をも引き裂いて
地の底から新たに、その姿を現わさんとしている邪悪な影。
……果たして、それは！？
「ぎゃほほぉぉ～んっ！！」
崩れ落ちるビル、大爆発を起こすオイルタンク。
人々が大混乱に陥る中、巨大な姿を現したのは……！
落合さん「あらまぁ、やっぱり怪獣さんですわ！」
ビーコン「恐竜、アロザウルス……」
宙マン「……にしては、いろんなディテールが少しづつ違うな！？」
「ぎゃほぉぉ～んっ、いい目の付け所だぜ！」
アロザ「宇宙の科学で強化改造されたこのアロザ様……
ただのアロザウルスとは、一味も二味も違うぜ！
……と来れば、俺が来た理由も分かるよねぇ～、っと！」
ビーコン「観光……ってわけじゃ、なさそうっスよねぇ」
落合さん「……いっそ、そうならどんなによかったか！（汗）」
イフ「わははは……さぁ行くがよい、戦うのだアロザ！
徹底的に破壊して、怪獣軍団の威力を見せつけてやれ！」
アロザ「ぎゃほほ～んっ、お任せだってばよ、魔王様っと！」
怪獣魔王の命を受け、進撃開始するアロザ！
迫り来る古代恐竜の巨体を前に、悲鳴をあげて逃げ惑う千歳の人々。
ビーコン「どひ～っ、やっぱりやりやがったっスよ、やっぱり～！」
落合さん「毎度とは言え、本当にハタ迷惑ですわねぇ！（汗）」
宙マン「みんな、逃げるんだ――早く安全な場所へ！」
古代恐竜の暴虐、許すまじ！
千歳の平和を守るべく、航空防衛隊が直ちに出撃した。
宙マン「おおっ、あれは千歳基地の！」
落合さん「どうか、どうか今回こそは頑張って下さいませ！」
ビーコン「くれぐれも、意気込みだけで終わらねーように……！」
「ようし……全機、一斉攻撃開始だッ！」
激しいアタックをかける戦闘機隊！
持てる火力の全てが、怒濤のごとくアロザへ叩きこまれる。
アロザ「ぎゃほほお～んっ、ちゃんちゃら可笑しいってばよ、っと！」
「う、うわぁぁぁぁ……っ！！」
アロザの吐き出す怪光線で、次々に撃墜されていく戦闘機！
そして、その洗礼は千歳の市街地にも容赦なく及び……
ズガーン！ グワーンっ！
平和だった街並みも、ご覧の有様。
千歳、大ピンチ！
アロザ「ぎゃほほお～んっ、見たか見たかよ、見たよね～、っと！」
ビーコン「どひ～っ、めっちゃチョーシづいちゃってるっスよ！」
落合さん「どうしましょう、このままでは大人水入らずどころか……
私どもみんな、揃って路頭に迷ってしまいますわ！」
ビーコン「ひぇぇ、アニキ～、ここは一発なんとかして欲しいっス！」
宙マン「ああ、勿論さ、なんとかするとも！
宙マン・ファイト・ゴー！！」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、猛り狂うアロザの前に舞い降りる！
宙マン「トゥアーっ！ 宙マン、参上！
怪獣軍団の荒くれ者、乱暴狼藉もそこまでだ！」
ズ、ズーンっ！！
デスローグ「（唸り）ご、ごうぅんッ……」
ヴィラニアス「なぁに、心配するなデスローグ……
かつてあのミラーマンも苦しめたアロザにかかりゃ、いくら宙マンでも
恐れるに足りず、ってなもんよ」
イフ「あぁ、その通りだともアロザ、お前は無敵の怪獣なのだ！
その力で、宙マンも捻り潰してしまえ！」
アロザ「ぎゃほほ～んっ、軽いもんだってばよ、っと！」
宙マン「いいや、叩きのめされるのはそちらの方だ！」
ファイティングポーズをとり、敢然と身構える宙マン。
さぁ、今回もまたビッグファイトの幕開けだ！
激突、宙マン対アロザ！
落合さんたちがハラハラと見守る中、両者のパワーが拮抗。
持ち前の野獣性を全開にして、荒々しい猛攻をかけてくるアロザ。
しかし宙マンも、洗練された格闘技の冴えで一歩も引かない。
アロザ「ぎゃほほぉぉ～んっ、なかなかやるじゃねェか、っと！」
宙マン「はっはっはっ、昔取った杵柄というやつさ！」
二つの巨体がぶつかりあって、戦いの火花を散らす！
お互い、格闘戦では五分と五分。
アロザ「ぎゃほお～ん、もう得意技は打ち止めかぁ！？」
宙マン「ようし――ならば、これで決めてやる！」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、ｱﾛｻﾞを直撃。
……したかと、思いきや！？
おお、何と言うことであろう！
宙マン渾身の一撃は――アロザの瞳の中へと吸い込まれる形で
完全に無力化されてしまったではないか！？
宙マン「……なっ！？」
アロザ「ぎゃほほお～ん、どんなもんだい、っと！」
イフ「おおっ、これは！」
ゾネンゲ博士「そうです魔王様、あれこそ宙マン打倒の切り札。
あらゆる光線技を無力化してしまう“光物質ガラス”でございます！」
光物質ガラス――
あらゆる光線を吸収するこの物質をコンタクトレンズ状に精製して、
怪獣アロザの両眼に装着。
宙マンの繰り出す全ての光線技を完全に封じることの出来る
ゾネンゲ博士の授けた秘策中の秘策なのだ！
アロザ「ぎゃほほお～ん、隙ありっと！」
間合いが離れるや否や、すかさず吐き出す怪光線！
宙マンが怯んだところを、容赦なく攻めまくっていくアロザ。
落合さん「お、お殿様っ！」
ビーコン「アニキ～、がんばるっス～！」
宙マン「――くっ！」
アロザ「オラオラオラ～ッ、この一発で地獄行き、っと！」
「う、うわぁぁぁぁっ……！！
落合さんたちが必死に応援するが、アロザの攻勢はあまりにも激しい。
激しいダメージを受け、がっくりと両膝をつく宙マン。
宙マン「う、ううっ……！」
アロザ「ぎゃほほお～ん！ とどめだぜ宙マン～、っと！」
勝利を確信して、、口から怪光線を吐き出すアロザ。
しかし宙マンは、その一閃を華麗なジャンプでかわして大空へ！
アロザ「（目をパチクリ）う、うおおおっ！？」
宙マン「エイヤぁぁぁーっ！ 宙マン・ミラクル・キック！！」
出た、電光石火の必殺技！
宙マン渾身のミラクル・キックが、アロザの頭部に命中！！
アロザ「（もんどりうって倒れ）……き、効いたぁぁ～っ！」
宙マン「ようし……今度こそ、これで決めてやるッ！」
右手にエネルギーを集中させ……
真赤な輝きを放つ手刀をかざし、猛然とダッシュする宙マン。
「どりゃあーっ！
パルサーチョップ・水平線打ち！！」
相手に駆け寄り、すれ違いざまに燃える手刀を見舞う必殺技……
パルサーチョップ・水平線打ちが、アロザの脾腹を射る！
アロザ「や、やられたってばよぉぉ～……っと！」
やったぞ宙マン、大勝利！
ビーコン「いえっふ～、さっすがアニキ、しびれるっス！」
落合さん「今回もまた一段と素敵でしたわ、お殿様！」
イフ「ぐぬぬぬ……またしても宙マンめ、我らの邪魔立てをっ！
だが覚えておれよ、この仕返しは必ずしてやるからな。
怪獣軍団の威力の前に、お前はひれ伏すさだめなのだ……！」
……などと言う負け惜しみは、いつも通りサラリと聞き流して。
我らが宙マンの活躍によって、恐るべき古代恐竜アロザは撃退され
千歳の街には再び平和が蘇ったのであった。
落合さん「お殿様、どうもお疲れ様でした！」
宙マン「やれやれ、これでどうやらゆっくりできそうだねぇ」
ビーコン「ヒヒヒ、大人水入らずっス！」
ビーコン「う～んと旨い寿司食って、旨い酒飲んで……
そいでもって、落合さんがいい感じで酔いつぶれかかったとこを
オイラが介抱するフリしてシッポリしけこみ甘い夜を――」
落合さん「……（ワナワナ震えながら、しばらく聞いていたが）」
げ し っ ！
落合さん「ねーい、このエロ怪獣っ！
やっぱりビーコンさんは、ずっと戻ってこなくて結構ですっ！！」
ビーコン「ひぇぇ～っ、完璧な計画だったのにっスぅぅ～」
宙マン「はっはっはっはっ」
希望を呼んで、未来に燃えて……
今日も行く行く、地域の味方。
ありがとう宙マン、次回も頼んだぞ！
