今や8月、夏の気配が充満し――
その一角、千歳市ほんわか町5丁目の「宙マンハウス」。
乾いた洗濯物を落合さんが取りこむ、平和な日常がそこにあった。
ながもん「(ボソッと)……こんにちは」
みくるん「どうも、こんにちは~。
今日は何だかご機嫌ですね、落合さん!」
落合さん「うふふ、お分かりいただけますかしら?」
宙マン「ここ数日、雨模様が続いていただけに……
このスカッとした青空は、何よりうれしいものだよ」
落合さん「(頷き)何といっても、お外にお洗濯ものが干せますでしょう?
その解放感と言ったら、もう!」
みくるん「あー、わかります……それ」
ビーコン「ヒヒヒ、そ~んなことで嬉しいなんて……
泣く子も黙る落合さんも、案外単純なんスねぇ!」
ビーコン「そんなことぐらいで嬉しくなってるようじゃ、今夜あたり
オイラに抱かれて、全身にキスと愛撫の雨を降らされた日にゃ
もうどうなっちまうんスかねぇ? ヒッヒッヒ!」
落合さん「(ジト目)……おぞましい妄想はやめて下さいっ!」
そんな軽口の叩き合いも、また平和な証拠。
だが……その時である!
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラっ!
落合さん「……あ、あらあらあらっ!?」
ビーコン「おろろっ、今日は早めに来たっスね!(汗)」
ピグモン「きゃああんっ、怖いの~!」
大地が揺れ、めきめきと音を立てて道路が割れ裂ける。
そして、巨大な水の柱を立ち上げて……
濛々たる蒸気の中から、姿を現わした異形の巨体とは!?
「ぎゃごぎゃご~んっ!!
水煙とともに姿を現したのは、もちろん怪獣軍団の一員。
リュミット星出身の暴れ者、雷雨怪獣アメゴンだ!
みくるん「きゃああん、今日も今日とてですぅ!」
ながもん「もはや……千歳の……風物詩?」
ピグモン「あうえう~、そんなの全然嬉しくないの~」
宙マン「雷雨怪獣アメゴン、今度はその力で何をやらかす気だ!」
落合さん「まさか、まさかとは思いますけど……
大雨を降らせて、お洗濯ものを屋外で乾かせないように
嫌がらせなさるおつもりじゃないでしょうね!?」
アメゴン「ぎゃご~、冗談言っちゃいけねェ。
この俺、アメゴン様のやる事ァ、もうちっと派手だよ――
手当たり次第に千歳をぶっ壊す、それだけさ!」
ビーコン「……だ、そうっスよ、落合さん」
落合さん「あぁよかった、それなら安心してお洗濯ものを……」
みくるん「……ちょ、全然安心じゃないですよ~、落合さん!(汗)」
落合さん「あらあらまぁまぁ、確かにそうでしたわね!(汗)」
アメゴン「ぎゃご~、悪いが茶飲み話に付き合ってる暇はねぇ。
早速だがひと仕事、テキパキ始めさせてもらうぜィ!」
宙マン「……うぬっ!」
イフ「わははは……ようし、行け、行くのだアメゴン!
地球人どもが小賢しくも拵えた、文明と言う名の寄木細工……
怪獣の前には無力と、今こそ思い知らせてやれィ!」
アメゴン「ぎゃごぎゃご~、合点でさぁ、魔王様!」
アメゴン、のっそりと進撃開始!
迫る巨体を前に、悲鳴をあげて逃げまどう人々。
落合さん「あらまぁ、降ったりやんだりだけでも厄介ですのに……」
ビーコン「その上、今度は怪獣ときたっスよ!(汗)」
市井の平穏を脅かす、怪獣アメゴンの猛威!
この恐るべき異変は、直ちに防衛隊基地へと通報がなされ……
航空防衛隊の精鋭たちが、アメゴン迎撃のために発進した。
ピグモン「あっ、防衛隊のおじさんたちなの!」
ビーコン「期待してるっスよ~、毎度かなりマジで!」
落合さん「なんだかんだで、やはり来て下さると安心感ありますものねぇ!」
「これ以上の好き勝手を許すな――攻撃、開始っ!」
怪獣めがけ、矢継ぎ早やに叩きこまれるロケット弾!
そんな戦闘機隊の猛攻にも、いささかも怯まないアメゴン。
アメゴン「ぎゃご~っ、、こいつを受けてみろ!」
「う、うわぁぁぁぁ……っ!!」
げに恐るべきは、怪獣アメゴンの火炎噴射!
戦闘機隊は勇戦空しく、一機、また一機と撃墜されていく。
みくるん「ああんっ、防衛隊の皆さんが……」
ビーコン「ホントいつもね、期待だけは高まるんすよ――」
落合さん「あとはその期待が、実績に結び付いてさえくれれば!」
……などと、落合さんたちがボヤいているその間にも。
アメゴンはますます猛り狂い、千歳を炎に包んでいた!
ビーコン「どひ~っ、もうダメっス、おしまいっス!」
ながもん「ここは、一発……ヒーローの、出番」
ピグモン「はわわ、宙マン、宙マン、なんとかしてなの~」
宙マン「ようし、やるぞ! 宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、荒れ狂うアメゴンの前に舞い降りる!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
宇宙の与太者、のぼせ上がるのもそこまでだ!」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「いよっ! 出た出た、アニキの十八番っス!」
ながもん「(ポンと膝打ち)おお……待って、ました」
みくるん「宙マンさーん、頑張って下さいねーっ!」
アメゴン「ぎゃごご~、出たな宙マン!」
宙マン「ああ、この世の正義に呼ばれたからにはな!」
アメゴン「ぐぬっ、判ったような判らないようなコトを……!」
全身にみなぎる怒りを力に変え……
ファイティングポーズをとって、敢然と身構える宙マン。
アメゴン「ぎゃごぎゃご、行くぞ~っ!」
宙マン「どこからでも来い、受けて立つぞ!」
真っ向激突、宙マン対アメゴン!
人々が見守る中、今日もまたまたビッグファイトの幕が開く。
宙マン勝つか? アメゴン勝つか?
全ての攻撃と防御に意味があり、一瞬たりとも目を逸らせない
凄まじいばかりの格闘戦が展開されていく。
パワーの面では、アメゴンがやや優位……
だが、宙マンにはその差を補ってあまりあるほどに冴える技と
軽快なフットワークが生むスピードがあった。
宙マン「そぅれ、行くぞっ!」
ストレートパンチ、続けざまにキック!
嵐のような連続技に、さしものアメゴンもズズッと後退。
宙マン「どうだアメゴン、正義のパワーに恐れをなしたか!」
アメゴン「ぎゃごぉぉ……あんまナメんな、宙マンっ!」
アメゴン「この俺を怒らせたこと、たっぷり後悔させてやるぜ。
受けてみやがれ、俺のとっておき――そりゃーっ!!」
耳をつんざくアメゴンの気合とともに――
一天にわかにかき曇り、千歳上空が不気味な黒雲に覆われる。
そして、その黒雲から地上めがけて……!
ピカッ、ゴロゴロドドーンっ!
宙マンめがけて襲いかかる雷撃!
幾条もの稲妻が炸裂して、凄まじい爆発を生じさせる――
これぞ奥の手、アメゴンの“雷雨怪獣”と言う異名の所以である。
宙マン「(怯んで)う、ううむっ!?」
アメゴン「ぎゃごぎゃご~、そうら、どんどん行くぜ!」
グワーン! ズガガガガーンっ!
「う、うわぁぁぁぁ……っ!」
みくるん「ああっ、ちゅ、宙マンさんが!」
落合さん「い、稲妻落とし……」
ビーコン「……な、なんつー無茶苦茶な攻撃っスか!?」
ながもん「でも、それだけに……威力は、抜群」
落合さん「この威力……これが、怪獣魔王の底力……!」
ピグモン「はわわわ、感心してる場合じゃないの~!(汗)」
宙マン「(苦悶)うう……うっ!」
アメゴン「ぎゃごぎゃご~、どうやら最期だなぁ、宙マンよォ!」
宙マン「なんの……勝負は、ここからだッ!」
とどめを刺すべく、猛然と迫り来るアメゴン!
だが、宙マンもまた、気合と共に最後の力を振り絞った。
アメゴン「死ねや、宙マン!」
アメゴンの火炎噴射!
だが、その攻撃は、宙マンの回転戦法で見事にかわされる。
宙マン「行くぞ、アメゴン! トゥアーっ!」
アメゴン「(目をパチクリ)ぎょ、ぎょごごごっ!?」
気合一閃、ジャンプで大空に舞いあがる宙マン!
華麗な空中回転とともに繰り出す技の名は、もちろん――
宙マン「エイヤぁぁーっ! 宙マン・ミラクル・キック!」
出た、電光石火のミラクルキック!
その一撃を食らい、アメゴンがブッ倒れたところへ――
宙マン「とどめだ! 宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、アメゴンを直撃!!
アメゴン「ぐわぁぁっ、ガツンと効き過ぎぃぃ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
落合さん「ああんっ、やっぱり素敵です……流石はお殿様♪(うっとり)」
ビーコン「っスよねぇ、やっぱそうこなくっちゃっス!」
ピグモン「はうはう~、宙マンが勝ってよかったの~♪」
ながもん「(ボソッと)……グッジョヴ」
みくるん「宙マンさん、どうもありがとうですぅ!」
人々の笑顔と歓声が、宙マンの勝利を讃える――
千歳の街に立ちつくす巨体は、どこまでも雄々しく、逞しかった。
イフ「うぐぐぐっ……おのれ宙マンめ、よくもアメゴンを!
だが、これしきで引き下がる怪獣軍団ではないぞ。
次なる怪獣こそ、お前の死刑執行者だと知るが良い!」
……などと言う、怪獣魔王のいつもの負け惜しみはさて置いて。
我らが宙マンの活躍によって、千歳市を急襲した怪獣アメゴンは
見事に撃退され、街に再び平和が蘇ったのであった。
ピグモン「はうはう~、やったのやったの、宙マンが勝ったの~!」
落合さん「どうもお疲れ様でした、お殿様!」
みくるん「これで安心して、お料理もお洗濯もできますぅ!」
ながもん「(頷きつつ)チトセ・シティは……日本晴れ」
ビーコン「いえっふ~、アニキのおかげで平和が戻って一安心っスね!
まったりしたトコで心置きなく、落合さんと甘く濡れ……」
げ し っ !
落合さん「ねーいっ、このエロ怪獣!
それ以上仰ったら、さすがに鉄拳制裁ですわよっ!?(怒)」
ビーコン「(目を回して)ハンニャラ、ヒ~っ……
て、鉄拳制裁してから言わないで欲しかったっスぅぅ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
千歳の空に青空を呼ぶ……
みんなが嬉しい、正義の味方。
ありがとう宙マン、次回も頼んだぞ!