暗黒星雲の怪獣軍団が送り込む、恐怖の刺客を迎え撃ち……
今日も今日とて、颯爽と巨大化する正義の味方。
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
怪獣軍団の手先め、これ以上の好き勝手はさせんぞ!」
デスローグ「(唸り)グロロロ……っ!」
対戦相手は、怪獣軍団の幹部候補生「ダークネスファイブ」の一人。
デスレ星雲人、“炎上の”デスローグだ!
温和で気配り上手な性格で、ダークネスファイブの「癒し枠」と目され
怪獣たちからの信頼も篤いこのデスローグ……
だが、ひとたびこの性格が、「敵」と目した者に向かえば一転。
一切の容赦なく苛烈な猛攻を仕掛ける鬼神と化すのである。
宙マン「遠慮はいらんぞ、どこからでも来るがいい!」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ!
デスローグ「グロロロォォッ!」
真っ向激突、宙マン対デスローグ!
落合さんたちが見守る中、巨大な宇宙人ふたりが戦いの火花を散らす。
宙マン「正義の力で、お前を叩きのめしてやる!」
デスローグ「グオオオ……っ!」
低い唸り声をあげながら、宙マンめがけて襲いかかってくるデスローグ!
無言で淡々と攻撃をしかける姿は、さながら殺人マシンである。
宙マン「(よろめき)くッ……!」
デスローグ「(その機を逃さず)グオオ……っ!」
デスローグが放つ、必殺の火炎弾。
だが宙マンは、その攻撃を的確に見切り、ジャンプでかわす!
デスローグ「(驚愕)……ぐ、グオオッ!?」
宙マン「行くぞ、デスローグ!」
宙マン「エイヤァァーっ!
宙マン・ミラクル・キック!!」
出た、電光石火の必殺技!
ミラクル・キックの直撃を受け、悶絶してのたうつデスローグ。
デスローグ「……ぐ、グオオオオ……っ!!」
やったぞ宙マン、大勝利!
ピグモン「はうはう~、やったのやったの、宙マンの勝ちなの~!」
ながもん「今日も、今日とて……超、グッジョヴ」
ビーコン「やっぱねぇ、アニキはこうじゃなくっちゃっスよね!」
落合さん「お殿様、やっぱり素敵です……♪(うっとり)」
みくるん「宙マンさん、どうもありがとうですぅ!」
人々の歓声を受け、すっくと立つ宙マンの巨体。
陽の光を浴びた精悍な雄姿は、どこまでも頼もしかった――
と、言うわけで。
我らが宙マンの活躍によって、“炎上の”デスローグは撃退され
千歳の街には、再び元の平穏が戻ってきたのであった。
だが、その一方、それではおさまらないのが……。
イフ「ぐぬぬぬぬっ……おのれ、またしても宙マンめ!
よくも、よくもデスローグを……!!」
怒り心頭に発していたのは、何も怪獣魔王だけではない。
その温厚な性格から、血の気の多い乱暴者揃いの怪獣軍団における
貴重な「癒し系」として、アイドル的人気を得ているデスローグが
してやられたとあっては、怪獣たちの憤りもひとしおである。
グロッケン「宙マンの野郎、よくもやりやがったな!」
ジャタール「よくも私たちのデスローグを……」
ヴィラニアス「おのれ宙マン、只じゃ済まさんぞ!」
「あれれっ、それはそうと……」
「そのデスローグさんは、まだ帰ってないのかィ?」
「う~ん、何かの事故じゃなければいいんだが……」
怪獣軍団の荒くれたちから慕われ、帰りが遅いと心配される。
それもまた、デスローグの「人徳」には違いないだろう。
では、この時。
宙マンに敗れたデスローグは、一体どこでどうしていたのか?
結論から先に言おう。
宙マンに叩きのめされた“炎上の”デスローグ、まっすぐ帰らず
未だ、千歳市内に留まっていたのであった。
デスローグ「グロ、ロロロロ……っ」
痛む体を引きずりながら、よたよたと歩くデスローグ。
宙マンから受けたダメージが、予想以上に大きかったのもあるし
それ以上にエネルギーを消耗して、猛烈に腹が減っていたのだ。
こんな、くさくさした気分の時には……。
ああ、そうだ、いつもの行きつけの蕎麦屋に行こう。
出来の良い手打ち蕎麦を手繰って、「あの娘」の笑顔を見れば
今のこんな気分も、たちまちすっきりするに違いない。
デスローグ「グロロロっ……♪」
足取り軽く、行きつけの蕎麦屋に向かったデスローグ。
ところが、扉の前にかかっていた看板は、と言えば――
「ぐ、グロロロロぉぉ……っ!!」
がーん、である。
勿論、店には店のルールがあり、スケジュールがあるのだから……
今日が休業日だからと言って、大好きな「あの娘」を恨んだりする
そんなケチな了見のデスローグではない。
が、差し迫る切実な問題として、現在のデスローグが抱えている
この猛烈な空腹だけは如何ともしがたい。
一刻も早く、このお腹の中を充たしたい……
あぁ、早く、早く、早く!
そんな切実なる食欲に突き動かされ、辺りをきょろきょろ見回し
「どこか適当な店」を捜し歩いて……
デスローグ「……ご、ごっ!」
「初めての店」は、何となく入るのに勇気が要るものだが……
こと今日においては、空腹を満たしたいと言うデスローグの食欲が
全てを上回ってしまった、というわけであった。
で、デスローグが本日注文したのがこちら――
このお店の一番人気メニューで、文句なしのおすすめ品だという
“メンチカツ定食”である。
トンカツかと見紛うほどの、長方形のスタイルとボリューム。
噛みしめると溢れ出す肉汁のジューシーさは勿論のこと……
油のさっぱりした切れ具合が絶妙で、最後の一口まで美味しく、
重すぎずに頂けるこのメンチカツ。
デスローグ「(思わず感嘆)……ごっ……!」
油がよく吟味されているのか、経験に裏打ちされた名人芸か。
あるいは恐らく、その両方が相まった上での見事さか。
そしてそして。
通常のとんかつソースだけでなく、別添えのショウガ醤油で
この絶品メンチカツをよりさっぱりと、爽やかに食べさせるのが
こちらのお店ならではの頂き方。
他では余り見かけない独自のスタイル。
だが……この食べ方がまた、実に旨いのである。
デスローグ「(手と手を合わせて)グロロロっ……♪」
無我夢中で食べ進め、あっという間に綺麗に完食。
あぁ、本当に美味しいメンチカツだった――
口の中に残る肉と脂の余韻を楽しみながら、レジで代金を支払い
上機嫌で店を出たデスローグであった。
こういう、思いがけない「出会い」の喜びもあったりするから……
だから、たまの外食はやめられない。本当に。
ああ、それにしてもいい店、いい料理。
これは是非、仲間も誘ってみんなでワイワイ楽しく――
……いや、その前に。
まずは「あの娘」を誘って、今度の休みにでも二人で食べに来よう。
うん、そうだ。それがいい。
デスローグ「……グロロロっ……♪」
何となく上機嫌になり、暗黒星雲へ帰還していくデスローグ。
かくして、北海道千歳市のとある一日は……
ほぼ何事もなく、平穏なままに過ぎていったのであった。
今回のお話は、これにて。
続きは、また次回の『宙マン』で……。