遊びをせんとや生まれけり

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『ウルトラマンブレーザー』特別総集編①、見ました!

大地を砕き、海を割り、空を衝いて巨大怪獣が次々と出現。

それらとの戦いが半ば日常の一部となりつつある世界の中にあってもなお

戦いとは無関係な人々の営みも、想いも確かに存在している――

と言うわけで、放送開始から6回めにして「それまでの番組の流れを振り返る」ための

特別総集編が挿入されることとなった『ウルトラマンブレーザー』。

コミケやら行楽やらお墓参りやらで、通常の日とは別の意味で慌ただしさが増してきて

視聴率面では「夏枯れ」現象が起こりやすくなるお盆休みシーズンの放送予定を

一種の箸休め的な回に振り分けることは番組編成の上でも正解だと思いますし……

また、こういう特別回であるからこそ、むしろ通常回ではできない切り口であったり

新たな視点を導入することで世界観により奥行きを与えていこう、と言う姿勢もまた

ここ数年のニュージェネ作品群では特に顕著な傾向だったと思います。

ウルトラ怪獣アドバンス バザンガ

ウルトラ怪獣アドバンス バザンガ

 

そんな『ブレーザー』の特別総集編は、現場の第一線で怪獣相手に四苦八苦している

SKaRDの視点から一歩引いて距離を置いた民間人の視点を、頻出する怪獣事件が題材の

特別番組を作ろうと言う報道スタッフ陣の視点と、民間レベルでの憶測にもとづいた

ディスカッションを交えつつの過去映像紹介と言う趣向。

ウルトラ怪獣シリーズ 197 ゲードス

ウルトラ怪獣シリーズ 197 ゲードス

 

現場から引いた「報道」と言う第三者的スタンスからは伝わりきらないニュアンスでの

人々の困惑や、防衛隊サイドでなされているであろうある程度の報道管制などなどの

「怪獣の出現が日常化している世界観ならば、恐らくありえるであろうこと」の数々を

報道番組製作スタッフ三人の日常会話のキャッチボールの中から、あくまでさりげなく

「匂わせる」あたりが実に自然で上手く、どうしても本編・本筋の展開においては

SKaRD・ブレーザーと怪獣との攻防戦に徹さざるを得ないがために、ともすれば

「プロフェッショナルの冷徹な視点」にのみ固定されかねない劇中の世界観描写に

確かな潤いと広がりをも醸し出してくれます。

ウルトラ怪獣アドバンス タガヌラー

ウルトラ怪獣アドバンス タガヌラー

 

そう、毎週かっこよくヒーローと怪獣・防衛チームが戦いを繰り広げている

その足元にも人々の営みがあり、かまぼこ工場の壊滅的被害の悲惨さなど

この世界観における「怪獣出現」とは、決してエンターテインメントでもなく

イベント的に消化されるものでもないのですよね――

 

TVシリーズと言うタイトな予算枠の都合上、それらを具体的な「画」として

きっちり見せることにも限界がある分を、こう言った回のダイアログによって

しっかりと補足・補強していこうと言う姿勢は、必ずしも万全ではない環境下で

きっちり筋の通った作品作りをしていこうと言う、それこそ過去から現在までも

連綿と連なる「円谷的作品制作の姿勢」そのもののようで好感が持てます。

 

……またね、それらの主軸をなす報道スタッフ陣三人のキャストの演技もまた

極端な漫画的誇張をするのではなく、ぐっと抑制を利かせた「生っぽい」芝居を

ディレクションすることによって生まれる「らしさ」が本当に出色で、これまでの

ニュージェネ路線とは明らかに異なる、一本のドラマとしての『ブレーザー』を

しっかり作りあげていこうというスタッフ陣の意向はここでも明確です。

ウルトラ怪獣シリーズ 198 レヴィーラ

ウルトラ怪獣シリーズ 198 レヴィーラ

 

そして、そんな「一歩引いた一般人目線」での台詞の応酬の中で紹介される

過去映像での『ブレーザー』怪獣たちの姿と、ヒーローとの激闘の数々もまた

ひとまとめにして振り返ることで、改めて感慨深いものがあったりします。

 

ああ、ウルトラシリーズとは紛れもない怪獣たちの世界であり……

その中を闊歩する巨大怪獣たちは、こんなにも個性豊かで独自の魅力を放つ

怖ろしくも素晴らしき面々だったのか、と!

ウルトラ怪獣シリーズ 199 ドルゴ

ウルトラ怪獣シリーズ 199 ドルゴ

 

そんな抑制のきいた、落ち着きのある世界観を丁寧に形成してきた本番組において

次回、「過去シリーズからの再登場枠」第一号として登場するのはカナン星人。

ウルトラ怪獣シリーズ 200 カナン星人

ウルトラ怪獣シリーズ 200 カナン星人

 

これまでのニュージェネ作品群では、あまりにも人間臭く、また時として滑稽な

悪乗り半分での描写・演出がなされるあまり、著しいブランドイメージのダウンや

求心力の低下をも招きつつある感が否めなかった「ウルトラ宇宙人像」。

 

願わくば次回の再登場で、人間とは異質であり、かつ超然たる存在でもあると言う

そんなブランドイメージの回復が少しでもなされんことを!