遊びをせんとや生まれけり

全ての「面白がりやさん」へ――千歳より、愛をこめて。

『ウルトラマンブレーザー』16話、見ました!

 ゲント隊長が幻視した「自らのもっとも恐怖するもの」……

それは大破したアースガロンであり、ひいてはそれに象徴される「仲間」の

傷つき、斃れゆく姿そのもの。

 

だからこそ事件解決後、何気なくも他愛ないやりとりで戯れ、談笑している

かけがえのない部下にして仲間、SKaRD隊員たちの姿を見守っている

ゲントの笑顔の優しさが堪らなくよかったですねぇ、今回は。

と、いきなりラストの「オチ」から語る形になってしまいましたが……

地底にひそみ、その両手から放つ閃光の電磁波によって人間の視神経から偏桃体に

ダメージを与え、それぞれが最も苦手としていたり、怖れていたりするものの

幻のビジョンとして眼前に出現させる今回のゲスト怪獣の怪能力。

 

それらの恐怖と言うのは、あくまでも電磁波の閃光を浴びてしまった個々人の

内面世界に由来するものなので、最初にその光による幻覚を見た工事作業員たちの

目撃証言がそれぞれ極端に食い違っている、と言うところで事件への興味を煽りつつ

後にSKaRD隊員たちも遭遇するそれらの幻視……テルアキ副隊長はおはぎ(笑)、

アンリ隊員はタガヌラー(ああ、そう言えば虫嫌い設定だった!)、ヤスノブ隊員は

カナン星人、そしてエミ隊員は巨大な自分自身の姿……と、演出こそコミカルながらも

今後のストーリー展開において本質となるべき「縦軸」の部分にもさらっと触れる

そのさりげなさが実に心憎いですねぇ、『ブレーザー』は。

ウルトラ怪獣205 モグージョン

ウルトラ怪獣205 モグージョン

 

で、そんな状況を引き起こした今回のゲスト怪獣・モグージョン。

どこか愛興味をも感じさせるそのデザイン&造形に反して、先の電磁波閃光は

地底潜伏時には威嚇、地上に出てからは捕食のために用いる、怪獣生態的にも

実に理にかなったもので……

 

そう、こんな可愛いルックスなのに人食い属性なんですよ、コイツ!!

 

で、ちょうど今話の放送されている2023年10月は、ちょうど我が北海道においても

人里まで降りて来る野生のヒグマなどの駆除問題が取り沙汰されている真っ最中で、

そんなところに現実・日常との奇妙なシンクロ具合を感じて慄然とさせられつつ……

先の「己の中の恐怖心・トラウマ」ともども、重く掘り下げていこうと思えば

いくらでも重く、暗く、ハードに突き進めそうなところを、コメディの味付けにより

娯楽性を損なうことなく、軽快なテンポで見せきってくれた匙加減と言うのは

本話の大いなる美点として、脚本・演出に心からの拍手を送りたいと思います。

 

……で、再び話題をモグージョンに戻しますと。

ブレーザーの放ったレインボー光輪を爪で受け止め、逆に投げ返してみせたり

腕を(物理的に)伸ばしてのフェイント攻撃、頭部の硬質の角を電ノコのように

高速振動させながらの突進といった攻撃法の多彩さや、そもそもの出現の理由が

建設工事の際の地下へのボーリング作業により眠りを覚まされたからだったと言う

由緒正しい「いかにも」な理由付けであったことなど、自然の一部として存在する

「怪獣らしい」ディテールの色気に心地よく酔わされる思いです。

バンダイ(BANDAI) ウルトラマンブレーザー DXアースガロン

バンダイ(BANDAI) ウルトラマンブレーザー DXアースガロン

 

で、今話のもう一方のトピックスとして特筆しなければいけないのは……

今話より人工知能AIが搭載され、最悪の場合は操縦手抜きの一人乗りであっても

出撃・任務遂行が可能になった新生アースガロンの初出撃!

終始紳士的な対応でエミ隊員に語り掛ける「良い声」の主が、単なる二枚目ではない

内側に一物も二物も秘めた「胡散臭い二枚目演技」に定評のある人気実力派声優・

石田彰氏の担当と言うことで、その声色から早くも「禁断と背徳と裏切りの臭い」を

敏感にかぎ取っている声優ファンの方もおられるようですが、それはさておき(笑)。

 

先の話数でお気に入りの洗濯機に「クルル」と名付けたり、チームの専用指揮車に

「モッピー」と命名したりするヤスノブ隊員のクセを段階的に浸透させておいたことで

今回からの「アーくん」呼びにも違和感はないですし、そもそもその可愛い呼び方が

声優・石田氏のファンからの愛称とのダブル・ミーニングであろうという点なども

地味ながら気の利いたくすぐりポイントで思わずにんまり。

 

そしてそんな「アーくん」や、通信機からエミに呼びかけるSKaRDの仲間たちの声が

エミの恐怖心と同様を振り払わせ……その迷いのなさがアースガンの一撃となって

ブレーザーの逆転勝利を生むきっかけとなるなど、ドラマと特撮の無理がない連動も

今回、実に淀みなくて気持ちがよかったですね~。

 

アースガロンの活躍の渋さも勿論ですし、そもそもの経歴にダークな陰影を引きずり

独自の単独行動も多くて「チーム内の別動隊」と言うか一匹狼的印象の強いエミもまた

SKaRDのかけがえない一員なのだ、としっかり実感させてもらえて。

フィギュアライズスタンダード ウルトラマンブレーザー 色分け済みプラモデル

フィギュアライズスタンダード ウルトラマンブレーザー 色分け済みプラモデル

 

で、そんなエミへの呼びかけが、搬送先の病院からのものだった……ということで

その都度、ガンガン入院中のSKaRD隊員らを叱咤する看護婦さん

 

そのパワフルさと言い、頼もしさと言い……

無名のゲストとは言え、今回の隠れMVPはこの人だったのでは(笑)?