遊びをせんとや生まれけり

全ての「面白がりやさん」へ――千歳より、愛をこめて。

『ウルトラマンブレーザー』25話(最終回)、見ました!

”そんなに地球人が好きになったのか、

           ウルトラマン――

「外宇宙から飛来してきた敵意なき来訪者の宇宙船を、侵略目的と誤解しての撃墜。

結果、来訪者=V99は地球人の存在を恐怖と見做して、彼らの船団が宇宙を移動する

同一軌道線上から、脅威を「排除」するための宇宙怪獣たちを次々に送りこんでいた」

 

ある意味、最初のところでの「不幸なボタンのかけ違い」。

そんなどうしようもないディスコミュニケーションを大前提にして物語がスタートした

ブレーザー』のTVシリーズが、最後の最後に「コミュニケーション」と言う本作品の

メインテーマによって巨大な脅威を乗り越えていくのは非常に綺麗な着地点であり

それをウェットすぎる「泣かせ」の描写に振りすぎることなく、あくまで抑制のきいた

「大人」の落ち着きある演出、そして全編に横溢する「センス・オブ・ワンダー」が

本作品を硬質かつ良質な「空想特撮シリーズ」として結実させてくれたことに対しては

心からの感動とともに、いくら感謝しすぎてもし過ぎることはないと思います。

バンダイ(BANDAI) ウルトラマンブレーザー DXアースガロン

バンダイ(BANDAI) ウルトラマンブレーザー DXアースガロン

 

そして、硬質なドラマ展開を最後まで緊張感を保ちつつ見せきった演出の中で

これまでの総決算として描写されるキャラクターたちの描写にもシリーズとしての

一貫性を感じさせてもらえ、胸が熱くなります――

 

「V99」の真実をあくまで隠蔽しようとするドバシ元長官の思惑に抗するかたちで

あくまで機密のヴェールに隠された謎を追い求め続けるも、ドバシの配下に拘束され

窮地に陥ったエミ隊員……そんな彼女に救いの手を差し伸べてアシストを果たしたのが

今やその職を解かれたはずのハルノ参謀長であったり。

このハルノさんって方もね、あの官僚主義的で色々ドロドロな地球防衛隊の組織の中で

現場からたたき上げてトップに登りつめていった人ですし、だからこそその両手が

処女雪のように汚れなき真っ白……であるはずは勿論ないのですが、逆にだからこそ

自身の立場において出来る、裏工作や根回しなどの、SKaRD現場組には出来ない

「裏の」立ち回りによって真実に迫っていく笑みを支える姿が、初期エピソードより

明らかに柔らかくなったその表情ともども嬉しかったり。

BANDAI SPIRITS(バンダイ スピリッツ) S.H.フィギュアーツ ウルトラマンブレーザー 約160mm 23式特殊戦術機甲獣 アースガロン PVC&ABS製 塗装済み可動フィギュア

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また、月面軌道上のV99迎撃に出撃すべしと言うSKaRDへの防衛隊上層部命令を敢えて

現場判断で故意に「曲解」し、市街地で暴れ続けるヴァラロン迎撃のためにこその

出撃を選択し、命令を下すテルアキ副隊長の姿にも、「ああ、そうそう、SKaRDって

こういう独自判断で動ける組織だったよなぁ」と、その独立愚連隊(笑)っぷりに

シリーズとしての描写の一貫性を改めて感じさせてもらえ、胸が熱くなり。

 

と同時に、撃墜されたV99宇宙船のテクノロジーを応用する形で開発されたのだと言う

(だからこそその機体は「中身が最高機密だらけ」だった!)アースガロンの存在が

搭載AIのアーくんともども、彼らV99との「対話」を試みるためにこそ活用されて

大一番で最高の大活躍を見せてくれたくだりにも、番組を追いかけてきた者として

素直に嬉しく、やはり胸が熱くなり。

 

そして。

ウルトラアクションフィギュア ウルトラマンブレーザー ファードランアーマーセット

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一度はゲント隊長とその肉体・精神を分離させ、力尽きてその体を大地に横たえる

神秘の巨人・ブレーザー

言葉によるコミュニケーションもままならず、それでも確かにお互いの「絆」を

深め合いながら戦い抜いてきた、ゲント隊長にとっては今やかけがえのない相棒、

いえ「半身」でもある彼が、最後の力を振り絞って身を起こし……

 

「オ、レ……オレモ、イク」

 

そう呼びかけた描写で、ゲント隊長と同様に、TVの前に座っている一視聴者の僕も

涙腺の決壊はもはや必至(涙)。

何故そこまでしてブレーザーが命を懸け、体を張って地球のために戦ってくれるのか

明確な答え合わせや説明台詞は一切なく、全く明かされる気配がないにも関わらず。

……だからこそ強調されるピュアな信頼と絆の重さに、改めて胸が熱くなり。

 

そんな二人の魂の結びつきが最高潮にまで高まった時、最愛の息子・ジュンから

「パパ」に託された腕輪を介する形で、十字に組んだブレーザーの腕(!!)から

眩く迸る必殺の光線!!

ウルトラマンと言えば光線! とも言う感じで慣れ親しんできたお馴染みの描写も

シリーズとしての道のりとその積み重ねが違えば、こんなにも新鮮な興奮と感動を

もたらしてくれるものなのだ、と改めて膝を打ちましたね。

BANDAI SPIRITS(バンダイ スピリッツ) S.H.フィギュアーツ ウルトラマンブレーザー 約150mm ABS&PVC製 塗装済み可動フィギュア

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最終決戦の中で、ヴァラロンが地球上に敷設しつつあったあの激ヤバな生体時限爆弾へ

地球の怪獣たちが群がりよって食べて(!)しまうことでその脅威を無力化するという

意外な形での怪獣再登場にも唸らされつつ(あくまでそれが「彼ら」にとっての本能で

人間視点でのセンチメンタリズムとは無関係の動きだってのがまた良いんですよね)、

ひとつの事件が解決し、人類の危機が去った後も、この「怪獣がいる世界」においての

SKaRDの任務と、ブレーザーの活躍は続いていくことを匂わせてのクロージング。

 

劇中において「まずやるべきこと」をこなし、消化し「昇華」してくれたからこその

視聴後の余韻が、実に爽やかで心地よく……

この後に控える劇場版への期待も自然に膨らむ、とても素敵なエンディングでした。

ビジュアルシリーズ ウルトラマンブレーザー 全バトルクロニクル (講談社 Mook(テレビマガジン))

ビジュアルシリーズ ウルトラマンブレーザー 全バトルクロニクル (講談社 Mook(テレビマガジン))

 

思えば僕にとっての『ウルトラマンブレーザー』は「風」でした。

 

「〇〇の息子」「××の弟子」、「過去ヒーローの力を「お借りする」路線」などなど

そんな過去設定弄りであったり、或いは玩具販売スケジュールとの擦り合わせにより

同じところばかりを堂々巡りしているような閉塞感や、内々で近親婚を繰り返すように

年々「血が濃く」なり過ぎていく自家中毒的な状況に対して一種の息苦しさを感じ、

もっと端的に申し上げれば「心底」とつくレベルで辟易していた僕からしてみれば

いつかはどこかで、そうした「状況」を一度終わらせるためのカウンターとして

ブレーザー』のような作品が来るのはむしろ必然でしたし、ウルトラシリーズ

「ニュージェネ」と称されるようになってからの約10年の重たいしがらみや因習をも

一度綺麗に脱ぎ捨てたからこその「風通しの良い」物語展開の心地よさに、劇中での

無暗にぴょんぴょん跳ね回るブレーザーのような(笑)清々しさを感じていたのは

そりゃもう、紛れもない事実だったわけです。

ウルトラマン ニュージェネレーション英雄伝 (講談社 Mook(テレビマガジン))

ウルトラマン ニュージェネレーション英雄伝 (講談社 Mook(テレビマガジン))

 

もちろん現代のキャラクター・ビジネスにおいて、関連各商品と本編との連動が

ますます重要なものになってくるであろうことは間違いなく、避けて通れないですし、

それを否定する気も毛頭ないんですが……

 

そんな中で敢えて一度あらゆる「旧弊」から解き放たれ、空想特撮シリーズ怪獣路線の

根源的でピュアな面白さを改めて追及・再発見してくれた『ブレーザー』と言う作品は

もしかしたらほんの束の間、『ウルトラシリーズ』と言う絢爛豪華な作品世界の宇宙に

突如開いて閉じたワームホールのごとき一瞬の蜃気楼だったのかもしれません。

 

だけど、そうであったとしても。

ブレーザー』と向き合えた半年の放映期間中は、夢のように幸福な時間でした。

ウルトラ怪獣アドバンス ヴァラロン

ウルトラ怪獣アドバンス ヴァラロン

 

だからこそ、今はただ。

本作『ブレーザー』のもたらしてくれたものが、かけがえのない「財産」として

後続の円谷特撮作品にも発展的に継承されるよう願ってやみません。

 

ありがとうSKaRD、お疲れ様アースガロン……

そして、ひとまずはさようなら、ウルトラマンブレーザー

その戦いと、スタッフ・キャストの皆様に対し、心からの感謝と最敬礼を!