1話完結のバラエティ豊かなアンソロジー路線として「お話」そのものの楽しさを
僕らに啓蒙してくれたウルトラシリーズは、また同時に「全ての放送期間内における
エピソードの蓄積そのものが、一本の大きな川のような物語を形成していく」ことをも
圧倒的な面白さと共に僕らへ伝えてくれた素晴らしい原体験そのものでした。
そんな各話の展開、登場怪獣とその対策に対するバラエティを「横軸」とするならば
ストーリー全体を貫く一本筋の「縦軸」が大きく詳らかになり、大きく「本筋」が
動き出した感のある今話。
そのキーパーソンとなってのはやはり、SKaRDのメンバーとして良く言えば遊撃隊的、
味方を変えれば単独行動が多く、チーム内に身を置きつつもどこかが謎めいていた
アオベ・エミ隊員の存在でした。
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前回から何気なく触れられていた「岐阜の研究所の爆発事故」……
当時、要人警護の任務に就いていたゲント隊長がまばゆい「光」の中に包まれて
ブレーザーとの邂逅を遂げた(であろう)場所であり、同時に多くの研究関係者が
今なお消息不明になっている事実をも隠蔽してまで、地球防衛隊が秘匿し続ける
(恐らくは宇宙怪獣にも関わるであろう)最重要機密情報「V99」の存在。
当時の研究所所長にして、元・地球防衛隊の高官でもあったドバシ・ユウの、
何しろ寺田農氏が演じているから胡散臭くしかなりようがない(笑・超賛辞!!)
確かな存在感と説得力をも伴って、魅力的な謎がちらちらと思わせぶりに提示され
次回以降への視聴意欲、「連続もの」としての興味を確実に煽ってくれます。
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そんな「V99の謎に迫るエミ」の一方でもう一人、本筋縦軸における存在感を
急速に発揮してくれるようになったのがハルノ・レツ参謀長で……
緒戦で怪獣デルタンダルを取り逃がしたSKaRDへの理不尽ささえ感じさせる叱責や
常に厳しさを崩すことのない姿勢や表情で、主人公たるSKaRDの隊員たちにとって
決してよき理解者、フォロワーなだけでは有り得ない「上層部」や「組織の在り方」を
ほとんど一人で象徴しつつ、同時にまた今回になって初めて明かされた新設定――
研究所の事故で装束不明となっている旧友アオベ・タツキの娘であったエミの後見人、
彼女の「おじさん」でもなければならないと言うことで、単純な憎まれ役では済まない
本作中での立ち位置も、一気に重さを増してきて。
それらの複雑なキャラクター設定や立場の「重さ」を受け止めて具現化してくれる
ハルノ4参謀長役・加藤雅也氏の演技が実に素晴らしくて、やはり出演者・スタッフが
掃除て若い「こういった作品」の中に、確かな演技力のベテランがいてくれるだけで
作品も、現場もぐっと引き締まる感じがしますね~(しみじみ)。
そんな「縦軸」のドラマに配慮して一歩引く形になりながらも、ナイトシーンでの
渋い存在感とともに、硬質のドラマ展開を側面から引き締めて呉れたデルタンダルも
今話を語る上では決して忘れてはならない存在で……その卓越しまくった飛行能力から
「宇宙怪獣ではないのか?」と当初誤解されて地球防衛隊上層部をピリピリさせたり
脱皮した外角やDNAの分析から純然たる地球怪獣であることが判明したり、緒戦での
交戦データや気象データなどをもとにSKaRDがデルタンダルの生態を推測・分析して
迎撃プランを練り上げていく……など、存在と生体そのものが物語の主軸に据えられ
強くドラマを引っ張っていくあたりには、やはり本作の「怪獣主体」の基本精神が
途切れることなく脈々と息づき続けていて嬉しくなってしまいます。
……ある意味では『帰マン』初期1クールにおける怪獣たちを彷彿させるような
いぶし銀の存在感だった、と言えばご理解いただけますでしょうか?
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他にもアースガロンが戦闘以外の土木掘削的任務で渋くリアルな活躍を見せていたり
デルタンダル迎撃作戦時の、SKaRD隊員たちの方の力が適度に抜けたやりとりの妙味で
隊員たちの個性やプロフェッショナル集団としての在り方をさりげなく描写してみたり
メイン監督・田口氏らしい演出も随所に光った今回の『ブレーザー』。
次回はそんな今回の緊張感とは真逆に位置するほのぼのムード、しかも登場するのが
田口監督お気に入りの、あの二次元怪獣ガヴァドン(!!)と来た日には!
硬軟取り混ぜた作品のバラエティも、一筋縄ではいかない「縦軸」連続物の緊張感も
同時に孕んで、またどうにも見逃せない『ブレーザー』であります。