日に日に、秋の気配も深まりを見せ……
耳を澄ませば、冬の足音がすぐそこまで聞こえてくるかのよう。
ここ、北海道千歳市。
ほんわか町5丁目の「宙マンハウス」周辺も、今やすっかり
木々の紅葉がはらはらと散り出していた。
と言うわけで、今日もスタートする『宙マン』のお話。
毎度お馴染み、「宙マンハウス」の庭先から物語を始めよう。
落合さん「……ふぅ~、今の季節はこれだから!
掃いても掃いても、落ち葉が舞ってきて」
庭先の掃き掃除の手を止め、ほっと一息つきつつボヤいたのは
「宙マンハウス」のメイドこと落合さん。
ビーコン「うおーい、落合さん、落合さーん!」
落合さん「あら、どうしましたの、ビーコンさん?」
「ハラ減ったっス、メシメシっ!」
落合さん「……あぁもう、全く、この穀潰しときたらっ!」
落合さん「日頃ダラダラしておきながら、よくも抜け抜けとッ。
大体、私が今こうして庭掃除の仕事をしているわけなんですから
その間に、貴方がみんなのお昼ご飯を用意してくれるとか……
……もっとこう……あるでしょう!?」
ビーコン「や、それはオイラも考えたんスよ、落合さん!」
ビーコン「でもね、そう思いつつも、家事の実務能力はまるでダメ。
このギャップがね、女性ファンの心を絶妙なまでにくすぐって
キュンキュン萌え萌えさせちゃうんじゃなかろうか、と!」
落合さん「あーら、あらあら、それはそれはッ。
そんなキュン萌え、私には一生無縁ですのでお気遣いなく!」
ビーコン「っがー、何たるつれない態度! もしかして愛っスか!?」
落合さん「いけしゃあしゃあとッ。警察呼びますわよ!?」
ピグモン「えう~、落合さんとビーコンちゃん、またやってるの~」
宙マン「あれはもう、あの二人の日課みたいなものとは言え……」
ピグモン「二人とも、毎日毎日よく飽きないの~」
宙マン「(苦笑)……たっはっはっ」
と、今日も今日とての賑やかな時間。
でもって、そんな平穏なる日常の延長線上でもって……
連れ立って、街へ買い物に出てきた宙マンファミリーである。
ビーコン「やー、こうして並んで歩いてるってぇと……
まるでオイラと落合さんが、新婚夫婦みたいっスねぇ!」
落合さん「よして下さい、縁起でもないッ。
それよりポーター(荷物持ち)役、しっかりこなして下さいね!」
ビーコン「……うぇ~いっ」
だが、その時……
いつまでも続くと思われた長閑さは、極めて唐突に破られた!
ズゴゴゴグワーンっ!!
おお、見よ! 驚愕せよ!
何の前触れもなしに……
突如、落合さんたちの背後に上がった巨大な火の手!
落合さん「……あ、あらあらあらあらっ!?」
ビーコン「うわ、うわ、うわぁぁ~っス!(汗)」
爆発! 炎上!
そして、事態はただそれだけにとどまらず――
「グワオォォ~ンッ!!」
大方の予想通り、またも現れた大怪獣。
空間に歪みを生じさせ、そこからすり抜けるように現れた巨体は
怪獣軍団の一員にして時空界の覇者、超力怪獣ゴルドラスだ!
ピグモン「ああっ、何か出てきたの!」
落合さん「……あれはもう、怪獣以外の何物でもございませんわ!」
ビーコン「毎度毎度の、イヤ~な流れになってきたっスねぇ!(汗)」
ゴルドラス「ぼやけ、ぼやけ、もうお前たちの時代は終わりだ!
このゴルドラス様が、これから千歳の街を徹底的に破壊して
怪獣時代の幕開けを高らかに宣言してやるぜ!」
ビーコン「どひ~っ、しかもイヤな方向にやる気一杯っス!」
落合さん「えぇ、方向性はどうあれ、素晴らしいやる気ですわね。
うちのビーコンさんも、少しは見習ってくれたら……」
ビーコン「……って、そこでオイラに振るっスかぁ!?(汗)」
ピグモン「えう~、そんなこと言ってる場合じゃないの~!」
イフ「わははは……今ぞ、その時!
時空界の覇者・超力怪獣ゴルドラスよ、行けい!
お前の超時空パワーを、今こそ存分にふるう時が来たぞ!」
ゴルドラス「グワオォー、どうぞお任せを、魔王様!」
怪獣魔王の命を受け、進撃開始するゴルドラス!
迫り来るその巨体を前に、悲鳴をあげて逃げ惑う人々。
ビーコン「どひ~っ、えらいこっちゃっスぅぅ~!」
落合さん「こればかりは、何度味わっても慣れませんわねぇ!」
ピグモン「きゃああんっ、怖いの~!(汗)」
おお、まさに千歳の危機!
だが、巨大怪獣の進撃を阻むべく、ただちに防衛隊の陸の精鋭らが
最新鋭の戦闘車両とともに出動した。
ピグモン「あっ、防衛隊のおじさんたちなの!」
落合さん「毎度ながら、いつも絶妙の頃合いで!」
ビーコン「タイミング「は」いいんスよねぇ、タイミングは……!」
ロケット砲の一斉砲火が雨あられと叩きこまれる……が、
超力怪獣の皮膚は、それらをことごとく跳ね返してしまう!
ゴルドラス「グワーオォォッ、すっこんでろィッ!」
怒り、口から火炎を吐き出すゴルドラス!
その直撃を受け、次々に破壊されていく自走ロケット砲車。
爆発! 炎上!
ゴルドラスの大暴れによって、街はたちまち炎の巷と化す。
ビーコン「あぁ、結局……こうなっちまうんスねぇ!?」
ピグモン「このままじゃ、街がゼンメツなの~」
落合さん「今日も……お願いできますか、お殿様!?」
宙マン「(頷き)ああ、やるとも! 宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、ゴルドラスの前へと舞い降りる!
宙マン「トゥアーッ! 宙マン、参上!
時空界の荒くれ怪獣め、悪ふざけもそこまでだ!」
ズ、ズーンっ!!
ビーコ「っしゃ! アニキのコレを待ってたんスよ!」
落合さん「こうなってはもう、お殿様だけが頼りですわ!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
ゴルドラス「グワオォー、勝てるつもりで来たようだな、宙マン!」
宙マン「ひとつ、いいことを教えておいてあげようか。
(ニヤリ)……みんな、そう言ってやられていったんだ!」
ゴルドラス「(ムカッ)……野郎ッ!!」
正義の怒りを力に変え……
ファイティングポーズをとって、敢然と身構える宙マン。
ゴルドラス「グワオォー、許しちゃおけねェ! 血祭だッ!」
宙マン「どこからでもかかって来い!」
激突、宙マン対ゴルドラス!
人々が見守る中、巨大な両者の死闘は早くもクライマックス。
時空界仕込みの獰猛さで、接近戦を挑んでくるゴルドラス。
その超怪力の前には、ヒーローもたじたじである――
だがしかし、そこで戦意を衰えさせるような宙マンではない。
ゴルドラスのパンチ攻撃を、右に、左にと軽快にかわしながら
油断なく、冷静に相手の隙を伺い続ける。
宙マン「さぁ、次はどう来るね!?」
ゴルドラス「グワオォ~ン、これならどうだッ!」
口から火炎を吐き出すゴルドラス!
その灼熱の洗礼を、華麗な回転戦法で回避していく宙マン。
ゴルドラス「グワオォー、これでもか、これでもか!」
ムキになって火を吐きまくるゴルドラス。
だが、その見境ない攻撃も、宙マンの防御技・プロテクションが
完全に受け止め、無力化してしまっている。
ビーコン「っしゃ、上手いっスよ、アニキ!」
ピグモン「これでもう、宙マンのペースなの~」
落合さん「あとはもう、華麗なお殿様の勝利あるのみですわ!」
ゴルドラス「グワオォ~ン、外野席が好き勝手抜かしゃがって……
こうなりゃ、とっておきの奥の手だ!」
シュバっ! シュバシュババッ!
「……ぬ、うおぉぉぉぉ……!?」
ゴルドラス「グワオォ~ン、思い知ったか宙マン!
これが、このゴルドラス様の“超時空パワー”だ!」
角からの閃光と共に、周囲の空間がぐにゃりと大きく歪んで
異様なプレッシャーがヒーローの全身に襲いかかる!
“超時空パワー”の圧力が、宙マンを容赦なく痛めつけ――
ドッスゥゥーンっ!
落合さん「ああっ……お、お殿様っ!?」
ビーコン「あの攻撃を食らい続けたら、いくらアニキでも……!」
ピグモン「そんな、宙マンが負けるなんて嫌~んなの~!」
宙マン「(苦悶)……うう……うっ!」
ゴルドラス「グワオォ~ン、次ので終わりにしてやるぜ!」
ゴルドラスを時空界の覇者たらしめる“超時空パワー”……
それは、ゴルドラスの角の閃光と共に発動する。
「そう、つまり……最大の武器が、最大の弱点だ!
怒れ稲妻! 宙マン・ボルトサンダー!」
ピカッ、ゴロゴロドドーンっ!
ゴルドラス「(悶絶)……ぎゃ、あひぃぃ~んっ!?」
正義の稲妻が、ゴルドラスの脳天を直撃!
力の源を攻められ、超力怪獣が大ダメージを受けたところへ――
宙マン「正義の刃、受けてみろ!
秘剣・スーパー滝落とし!!」
ザシュウッ!!
スーパー剣を抜き放ち、刀身にエネルギーを集中させ……
豪快な空中回転とともに、真っ向から振り降ろされる光の刃!
宙マンの「滝落とし」が、ゴルドラスを唐竹割りに切り裂いた。
ゴルドラス「やられちゃったよ、ぐやじぃぃ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
ピグモン「はうはう~、やったのやったの、宙マンの勝ちなの!」
ビーコン「いえっふ~、さっすがアニキっス!」
落合さん「お見事でしたわ、お殿様!」
人々の笑顔と歓声が、宙マンの勝利を讃える――
青空の下に立ちつくす巨体は、どこまでも雄々しく、逞しかった。
イフ「ぐぬぬぬ……おのれぇぇ、またしても宙マンめが!
どこまでワシらの顔に泥を塗り、邪魔をすれば気が済むのか。
だが覚えておれよ、次こそは思い知らせてくれる!!」
……などという、怪獣魔王のいつもの負け惜しみはさて置いて。
我らが宙マンの活躍によって、超力怪獣・ゴルドラスは撃退され
千歳の街には、再び元の平穏が戻ってきたのであった。
落合さん「どうもお疲れ様です、お殿様!」
宙マン「やぁやぁ、ごめんごめん、お待たせしちゃって。
さて、それじゃ改めて日用品の買い物といこうか!」
落合さん「えぇ、喜んで!
今夜はう~んと、ご馳走を用意することに致しますわ――」
落合さん「そのためにも、ポーター(荷物持ち)にはしっかりと
己の役目を果たしてもらわなくては、ねぇ。
……いいですね? ポーター役のビーコンさんっ!」
ビーコン「いえっふ~、万事オイラにお任せっスよ、落合さん!」
落合さん「(拍子抜けして)……あら、どういう風の吹き回しですの。
ビーコンさんには珍しく、頼もしいお返事ですこと!」
ビーコン「ヒヒヒ、オイラはいつだってやる気のカタマリっスよぉ。
荷物持ちとして買い物のサポートを果たした後は、寝室直行で
落合さんの火照った体を慰める「愛」のお手伝いを……♪」
げ し っ !
落合さん「黙って聞いていれば、言うに事欠いて……!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、上手いこと言えたと思ったのにぃぃ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
怪獣・怪人、どんと来い……
千歳の平和は、渡しやしない。
次回もまたまた、宙マン大活躍だよ~!