遥かな宇宙の彼方、暗黒星雲の奥深くから……
美しい地球を我が物にせんと狙い続けている、恐怖の怪獣軍団。
今日も配下の怪獣たちへ向けて、怪獣魔王・イフの檄が飛ぶ。
またも恐るべき侵略の魔手が、我らの青い地球へ向けて伸びるのだ!
イフ「わははは……
もう間もなく、地球はワシら怪獣軍団のものとなるのだ!」
イフ「破壊と混乱を好む我が配下の前に、地球人は決して勝てはしない――
そしてゾネンゲ博士よ、そのための新たな作戦は進んでおろうな……!?」
「ご心配には及びません、魔王様!」
ゾネンゲ博士「魔王様のお言葉を待つまでもなく、戦士が名乗りを上げ……
確固たるコンセプトのもと、既に地球へと向かったところでございます」
イフ「おお、それは頼もしいな!
今度と言う今度こそ、必ず地球征服の使命を成功させてみせるのだぞ!
……して、そのコンセプトと言うのは……?」
ゾネンゲ博士「ははは……
“大いなる原点回帰”とだけ、今は申し上げておきましょう」
イフ「ううむ、楽しみだわい……言葉の意味はよく判らぬがな!」
ゾネンゲ博士「はははははは!」
怪獣魔王の大いなる期待を受け、暗黒星雲から送りこまれた刺客。
そいつは既に地球へ……北海道への潜入を果たし、じっと密かに息を潜めつつ
エネルギーを蓄え、来るべき決起の時を待ち続けているのである。
果たして……
今度の敵は、我々の地球にどんな恐怖をもたらすのであろうか!?
……が、それはひとまずさて置いて。
悲喜こもごも、様々な出来事のあった2023年が終わり……
どうにかめでたく、新たな年である2024年を迎えた日本列島。
そして、1月の北海道千歳市は、例年がそうであるように
深い雪に覆われて、外はもう一面の銀世界。
そんな中、千歳市ほんわか町5丁目の「宙マンハウス」には……
列島最南端・沖縄での新年旅行を終えた宙マンファミリーが既に帰宅しており
気のおけないご近所さんと、穏やかな午後の談笑を楽しんでいたのであった。
落合さん「……と、まァ、沖縄ではそのような次第でしたのよ」
みくるん「そうでしたか~、あちらでもいろいろ大変だったんですねぇ」
ながもん「千歳でも……ニュースでは……聞いてたけど」
宙マン「ああ、全くだよ――
魔神エタルガーなんて名乗る奴は出てくるし、爆発騒ぎは起こるし。
でも、それを差し引いてあまりあるくらい、素晴らしい旅行だったよ!」
ピグモン「はうはう~、ハイこれ……
みくるんちゃんたちにお土産、沖縄限定のいろいろ詰め合わせなの~」
みくるん「わぁ、すごぉい!!
こんなにいっぱい、頂いちゃって本当に良いんですかぁ?」
宙マン「ああ、勿論だとも!」
ビーコン「そのためにオイラたち、張り切って選んだんスから!」
ながもん「さすが、宙マン……それに、みんな……。
おお、なんという……外さない、チョイス」
ビーコン「こういうトコで、ついつい食い気が出ちまうってぇーのが
普段から食べるの大好きなオイラたちらしさ、っスかねぇ~」
ながもん「でも、それがいい、……そこが、いい」
みくるん「本当にありがとうございます、皆さん!」
ピグモン「はうはう、どういたしましてなの~」
ビーコン「やっぱ、アレっスかねぇ、
列島の最北端な北海道と、最南端の沖縄とじゃ気候や空気の違いもあって
そこが食い紋の味付けにも反映されてくる、っつーか……」
落合さん「そう言う違いですとか、逆に共通している要素ですとか。
そう言うことにも思いを馳せると、また美味しさもひとしおかと思いますわ」
みくるん「なるほど~、「深い」ですぅ」
ながもん「そう聞くと……ますます……食べるのが、楽しみに」
ピグモン「はうはう~、食べてみて、食べてみてなの~♪」
宙マンファミリーからの旅行土産、沖縄限定食品の数々。
さっそくその場で開封し、まずは試しに「かつおせんべい」でも試してみようと
コロポックル姉妹が手を伸ばしかけた、ちょうどその時である!
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラッ!
落合さん「……あ、あらあらあらっ、これは!?」
みくるん「じ、地震っ!?(汗)」
宙マン「いや、この揺れ方はただの地震じゃなさそうだぞー―」
ビーコン「……ってことは、まさか!?」
そう――誠に残念ながら、そのまさか。
千歳の街を激しく揺さぶる、異様な局地地震の正体は……
大地を引き裂き、巨大怪獣が姿を現わす前兆に他ならなかったのだ!
すわ何事と、家を飛び出した宙マンたちの眼前で……
ズゴゴゴグワーンっ!!
ビーコン「ど、どひ~っ!」
落合さん「な、何です? なんなんですの、いきなり!?」
連続的に、次々巻き起こる大爆発をBGMにしながら……
激しく噴き上がる土砂、崩れ落ちていくビル。
そして濛々たる土煙と、飛び散る岩塊の中……
傲然と、地底からその巨体を立ち上がらせた者とは!?
「ピャゴォォ~ンッ!!」
ピグモン「(怯えて)きゃああん、怪獣なの!」
ながもん「毎度毎度の、こととはいえ……」
みくるん「出来ることなら、出てきて欲しくなかったですぅ~」
「ピャゴ~、遠からずんば音にも聞け、近くば寄って目にも見よ!
俺様の名は熱火竜・バルバゴン……
暗黒星雲からやってきた、絶対無敵・熱血最強の怪獣・オブ・怪獣だ!」
宙マン「ううむっ……やっぱり怪獣軍団か!」
落合さん「さてはさっきの爆発も、あなた様の仕業でしたのね!?」
バルバゴン「ピャゴォォ~ンっ、おうさ!」
バルバゴン「日本列島でも、有数の火山地帯だったりする北海道……
その地底でマグマエネルギーを蓄えた俺様にかかりゃ、あんな芸当は
朝飯前の夕食後、ってなヤツよ」
バルバゴン「これからこの力で、千歳の街を焼き尽くしてやるぜ!」
ビーコン「どひ~っ、直球過ぎてぜんぜん笑いの要素がないっス!(汗)」
ピグモン「はわう~、そんなの困るの、すごく困るの~(泣)」
イフ「よしよし……掴みは上々、実にいい反応が得られたぞ!
さぁバルバゴンよ、今こそワシにお前の力を見せてみよ!」
バルバゴン「ピャゴォォ~ンっ、やりますぜ、魔王様~!」
怪獣魔王の命を受け、猛然と進撃開始するバルバゴン!
迫り来るその巨体を前に、悲鳴をあげて逃げ惑う千歳の人々。
ビーコン「どひ~っ! 来たっスよ、ずんずんこっち来てるっス!」
落合さん「言ってる間に早く逃げるんですよ、ビーコンさんっ!」
宙マン「こっちだ、早く安全な場所へ!」
猛然と進撃し、破壊を繰り広げんとするバルバゴン!
この危機に対処すべく、直ちに陸上自衛隊の機械化部隊が出動。
70式メーサー殺獣光線車で、熱火竜の進撃を食い止めようと図る。
バルバゴンめがけて迸る人類の英知、メーサー光線!
だが、北海道地底のマグマに鍛えられた大怪獣の強靭すぎる灼熱皮膚は
それらの相次ぐ直撃をも全く寄せ付けない。
「ば、バカなっ……これだけの攻撃でもダメなのかっ!?」
バルバゴン「ピャゴォォ~ンっ、無駄無駄ァ!」
悠然とメーサー光線を受け止めながら、バルバゴンの全身が赤熱化し……
次の瞬間、グワッと開いたその口から!
迸るバルバゴンの超火炎熱線!
その灼熱の洗礼を受け、メーサー車が次々に大爆発を起こす。
みくるん「ああっ、自衛隊さんがやられちゃった!?」
ながもん「(息を呑み)あの、威力……ハンパない」
ゾネンゲ博士「いかがでしょうか、これぞ“大いなる原点回帰”……
大地を踏みしめて口から火を吐く、これこそ凶悪怪獣の王道かと!」
イフ「ううむ、素晴らしい!
ワシも大いにテンションが高まってきたぞ!
さぁやれ、もっとやれ、ドンといくのだバルバゴンよ!」
ズガーン! グワーンっ!
バルバゴンの超熱線攻撃によって連鎖爆発が起き、炎に包まれていく街。
バルバゴン「ピャゴォォ~ンっ、見たか、俺様のこの威力!
このまま千歳なんて街は、日本地図から消し去ってやるんだィ!」
みくるん「ふええっ、あの怪獣さん、あんなこと言ってますぅ!」
ビーコン「でも、このままじゃマジでそうなりかねないっスよ!」
落合さん「大した自信ですこと……憎たらしいくらいですわねぇ!」
ピグモン「はわわ、えう~、ピグちゃんそんなの嫌~んなの~(泣)」
ながもん「ここは……ヒーローだけが……頼り」
宙マン「(頷き)おのれ、もう許さんぞ!
宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、荒れ狂うバルバゴンの前に舞い降りる!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
熱火竜バルバゴンよ、それ以上の乱暴は私が許しておかないぞ!」
ズ、ズーンっ!!
ながもん「……おおっ」
みくるん「宙マンさん、よろしくお願いしますぅ~!」
ビーコン「頼んだっスよ、アニキ~!」
バルバゴン「ピャゴ~っ、ノコノコ出てきやがったか、宙マン!
わざわざ死ににくるとはバカな奴だぜ!」
宙マン「そう言ってられるのも今のうちだ。正義の力を思い知れ!」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
さぁ、今日も世紀のビッグファイト開幕だ!
バルバゴン「ピャゴォォ~ンっ、だったら勝負だァ!」
宙マン「行くぞ、バルバゴン!」
同時に駆け寄り……
そしてどちらも一歩も退かず、真っ向からぶつかり合う両者。
大決闘開始、宙マン対バルバゴン!
落合さんたちがハラハラと見守る中、怪獣と巨人のスーパーバトルは
早くもテンション最高潮の正念場を迎えていた!
怪獣軍団の悪の使者、熱火竜バルバゴン!
早くも見せつける、その恐るべき猛威……
我らが宙マンは、果たしていかに戦い抜くか!?