日本全国、連日の厳しい冷えこみが続く1月……
こと、列島の最北端にあたるここ・北海道ともなれば尚のこと。
そんな寒さとともに、否応なしのお付き合いを強いられるのが
この、白くて美しくも厄介な「雪」というやつである。
そんな、寒い寒いある日の昼下がり。
今回の『宙マン』もまた、そんな千歳市から物語を始めよう
こちらお馴染み、「宙マンハウス」……
その住人たちは、果たして今、何をしているのか?
ビーコン「……って、そんなの見りゃわかるっしょ!?
雪かきっスよ、ゆ・き・か・き!
エイこら、ヒィこら、ハァめんどくさ~!(汗)」
宙マン「はっはっはっ、ビーコンの気持ちは分かるけど……
そうボヤかない、ボヤかない!」
ピグモン「みんなで協力して、雪かき終わらせちゃうの~」
落合さん「えぇ、お殿様の言う通りですわよ、ビーコンさん。
普段からロクに家事も手伝わない食っちゃ寝なんですから
その分の埋め合わせをなさる絶好の機会じゃござませんこと?」
ビーコン「ケケーッ、オイラ別に求めてないッスよ、そんな機会!」
落合さん「まぁまぁ、そう仰らず。
頑張って下さった分、ビーコンさんにも皆様方にも……
今日はうんと体の暖まるお夕飯を用意するつもりですから」
ビーコン「ほーほー、具体的には?」
落合さん「冬の定番ってことで、まず豚汁は外せませんかしら?」
ビーコン「オオーッ! 豚汁いいっスよねぇ、豚汁!
っしゃー、オイラ全力で雪かき終わらせちまうっスよー!」
落合さん「嬉しいですわ、分かって下さいましたのね!」
宙マン「おっ、良い傾向だねェ。
今日は何だか珍しく、円満に話がついて纏まったじゃないか」
ピグモン「……えう~、なんだかそうでもなさそうなの~」
宙マン「……えっ?」
と言うわけで、もう少し極楽コンビの会話に耳を傾けてみよう――
ビーコン「いや~、豚汁いいっスよねぇ、豚汁!
「豚」と「汁」との絶妙な並び、美しき文字列の配置が
オイラの脳内のポルノ中枢をびんびんに刺激するっスよ!
落合さんの「豚汁」、しかと味わわせてもらうっス~☆」
落合さん「……食いついた理由はそっちですかっ!
しかもアナタ、二重にも三重にも失礼じゃございません!?」
ビーコン「ヒヒヒ、苦情と言い訳はベッドで聞くっスよ~。
そう、落合さんがいつも悶えてる寝室のベッドで……」
落合さん「っがー、ビーコンさん、それ以上仰ったら……!(怒)」
落合さんの憤りが、例によっての鉄拳制裁になろうとした刹那。
そう、事件が起こったのは、まさに「その時」であった!
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラっ!
ビーコン「ど、ど、どひ~っ!(汗)」
落合さん「あらあらまぁまぁ、これはまた……!?」
ピグモン「はわわわ、これってひょっとして……」
宙マン「うむむっ、ひょっとすると……!」
ビーコン「どひ~っ、ひょっとするんスかねぇ、やっぱ!?(汗)」
凄まじい勢いで地面が割れ裂け、そこから無数の岩石が飛び出して
さながらレミングの大群のごとく空中を移動していく。
ピグモン「あっ、岩がいっぱいなの!」
宙マン「ああ、だが尋常の岩ではないね」
落合さん「と言いますか、まるで生き物のように……!」
おお、見よ! 驚愕せよ!
千歳市民らの見守る前で、飛び散った岩石群は地上へ舞い降り
一箇所に集合・合体して、ひとつのカタチを成していくではないか。
「ぐおぉぉ~んっ!!」
ピグモン「ああっ!」
ビーコン「どひ~っ、ただの岩じゃねぇと思ったら……」
落合さん「やっぱり、やっぱり今日も怪獣さんでしたのね!」
宙マン「富士山麓の、岩石怪獣か……!」
赤い発光体を中心に、無数の岩で形成された重量級のボディ。
その名も岩石怪獣ゴルゴス、もちろん怪獣軍団の一員である!
ゴルゴス「ぐおぉぉ~、ナレーター君、説明有難う!」
ゴルゴス「だけど、それ以上の説明台詞は要らねぇぜ――
オイラの威力を分かってもらうにゃあ、アレコレ設定の羅列より
具体的な行動で示すのが一番だからなぁ!」
ビーコン「う~ん、確かに筋は通ってるみたいっスけど……」
落合さん「要は今度も「暴れる」ってことですわよねぇ!(汗)」
ビーコン「どひ~っ、やっぱりっスか~!!(汗)」
スライ「んー、ふふふ、いかがでしょうか魔王様……
私の選んだ精鋭、ゴルゴス君のあの張り切りようは!」
イフ「うむっ、見事だ!」
スライ「冬の寒さを吹っ飛ばし、ついでに千歳の街も吹っ飛ばし……
そして、その跡には怪獣軍団の前線基地が築かれて
地球侵略のための大いなる第一歩となるのです!」
イフ「うむっ、怪獣軍団にとっては最高の未来予想図だな。
……頼んだぞゴルゴス、全てはそなたの働き次第だ!」
ゴルゴス「ぐおぉぉ~、お任せ下さい、魔王様!」
怪獣魔王の命を受け、進撃開始のゴルゴス!
迫り来る巨体を前にして、悲鳴をあげて逃げまどう千歳の人々。
ビーコン「ひぇぇ、お助けぇ!
これなら雪かきの方がナンボかマシっスよ~!」
落合さん「そもそも比べるものでもございませんけどね!?(汗)」
ピグモン「はわわ、いいからとにかく逃げなきゃなの~!(涙目)」
岩獣ゴルゴスの出現で、またまた混乱の巷と化した千歳市!
だが、こんな緊急事態を、航空防衛隊は放置などしない。
直ちに空の精鋭が、怪獣攻撃用の戦闘機で……
同時に地上部隊もまた、勇ましくスクランブル!
先んじて駆け付けた、タクティカル・スーツ姿の防衛隊員たち。
まずはレーザー銃の射撃でゴルゴスを牽制し、その間に……
ビーコン「おおっ、今日もまたまたお出ましっスよ!」
ピグモン「はうはう~、いいところで来てくれたの~!」
落合さん「戦闘機こそが本命……で、よろしいんで
すのよね!?」
「ようし……全機、怪獣への攻撃開始っ!!」
怪獣めがけて、怒濤のような猛攻撃!
だが、その凄まじいばかりの弾着にも、ゴルゴスの岩石の巨体は
ひるむどころか小揺るぎもしない。
ゴルゴス「ぐおぉぉ~、俺にそんなモンが通じるかよ~っ!」
「……ど、どっひゃぁぁ~っ!?」
ゴルゴスの口から吐き出される、超高圧・超高温の蒸気!
その熱波をまともに食らってしまい、戦闘機隊は一機、また一機と
奮戦空しく撃ち落とされていく。
イフ「わはは、いいぞゴルゴス! その調子だ!
暗黒星雲の全怪獣が、期待をこめて見守っておるぞ……
お前の力で、見事ソレに応えてみせるがよい!」
ゴルゴス「ぐおぉぉ~、やらいでか~っ!」
大いに張り切るゴルゴス――
それは即ち、千歳が絶体絶命の大ピンチだと言うことだ!
落合さん「……あらあらまぁまぁ、何てことでしょう!」
ビーコン「どひ~っ、もうダメっス、おしまいっス!(汗)」
ピグモン「はわわわ……宙マン、宙マン、何とかしてなの~」
宙マン「(頷き)おのれ、もう許さんぞ!
宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、岩獣ゴルゴスの前へと舞い降りる!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
平和を乱す暴れ者、この私が容赦はしないぞ!」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「いよっ! 出たっスよ、アニキの十八番!」
落合さん「この安心感と来ましたら……やはりもう、ですわね!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
ゴルゴス「ぐおぉぉ~、またまた出てきやがったか、宙マン。
毎度そうやって、よくも出しゃばってくるもんだな!?」
宙マン「平和を愛する一道民として、黙っちゃいられないからさ!」
ファイティングポーズを取り、敢然と身構える宙マンーー
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ。
ゴルゴス「理屈はさておき、邪魔するンなら容赦はしねぇ!」
宙マン「さぁ来いゴルゴス、勝負だ!」
激突、宙マン対ゴルゴス!
落合さんたちが見守る中、巨大バトルは早くも白熱。
宙マン「えい、やぁっ――どうだ、これでもか!?」
ゴルゴス「ぐおぉぉ~、屁ぬるいわぁぁ~ッ!」
鉄面皮ならぬ「岩面皮」が売りの岩獣ゴルゴス。
宙マンの繰り出すパンチの連打にも、全く動じない。
宙マン「うぬっ、何て固いやつなんだ!」
ゴルゴス「ぐおぉぉ~、ビビッたかぁ!?
ビビったなら土下座してゴメンしな、許しちゃるぜィ!」
宙マン「(鼻で笑って)――誰がッ!」
……そう、そこで怯むような宙マンではない。
闘志をこめた渾身のキックをゴルゴスの腹めがけてヒットさせ
ついに、ゴルゴスをズズッと後退させることに成功。
宙マン「どうだゴルゴス、これが正義の力だ!」
ゴルゴス「ぐおぉぉ~、なめんなよ、この野郎がぁっ!」
ゴルゴスの吐き出す高熱蒸気!
その威力が、宙マンの周囲に凄まじい爆発を生じさせる。
「う、うわあぁぁぁ……っ!!」
落合さん「(驚愕)お、お殿様っ!?」
ビーコン「ただの岩の塊じゃないっスねぇ、アイツ!
舐めてかかると、いろいろトンでもないっスよ!(汗)」
ピグモン「はわわわ、宙マン、まけないでなの~!」
宙マン「(苦悶)う……うう……っ!」
ゴルゴス「ぐおぉぉ~、今度こそオイラが勝たせてもらうぜぇ~!」
重量級のボディにものを言わせ、宙マンにのしかかってくるゴルゴス。
そのまま宙マンを押し潰し、とどめを刺すつもりなのだ。
スライ「んーふふふ、やってますねぇ、ゴルゴス君!」
イフ「行け行け、攻めまくれ!
さぁゴルゴスよ、お前の手で恨み重なる宙マンにとどめだ!」
危うし、宙マン――
さすがの彼も、今度ばかりは命運尽きたであろうか!?
宙マン「なんの、これしき……負けて、たまるかッ!」
「怒れ稲妻! 宙マン・ボルトサンダー!!」
ピカッ、ゴロゴロドドーンっ!
宙マンの気合とともに、念動波で発生させる正義の稲妻!
眩い閃光とともに、ゴルゴスの急所を直撃したボルトサンダーが
岩獣の全身を猛然と駆け巡り、容赦なく痛めつけて――
ゴルゴス「ち、チキショウっ……よ、よくもまた俺の急所を……!」
宙マン「それっ、とどめだ!」
「 宙マン・ストロングノヴァ!!」
上下に開いた掌の間にエネルギーを集中・凝縮させ……
そこに生じた虹色の光弾を、敵めがけて叩きつける大技。
「ストロングノヴァ」の一閃が、ゴルゴスを直撃!!
ゴルゴス「ぐはぁぁっ、また負けちゃったぁぁ~ッ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
落合さん「やりました……お見事ですわ、お殿様!」
ビーコン「いえっふ~、やっぱアニキはこうじゃなきゃっス!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、ありがとうなの~♪」
イフ「うぐぐぐっ……またしても、またしても宙マンめが!
良い気になるなよ、怪獣軍団の闘志は衰えなどせんわ!
いまに、いまに見ておれ~っ!!」
……などと言う、怪獣魔王のいつもの負け惜しみはさて置いて。
かくして我らが宙マンの活躍により、岩石怪獣ゴルゴスは斃れ
街には再び、のんびりした日常が戻ってきたのであった。
ビーコン「いえっふ~、アニキアニキ、どーもお疲れさまっした!」
宙マン「いや~、お待たせ、お待たせ。
それはそうと、怪獣退治でお腹もすいたことだし……」
ピグモン「はうはう~、お待ちかねのお昼ご飯なの~♪」
落合さん「えぇ、勿論ですとも――
少し早めのお夕飯、豚汁であったまって下さいまし!」
宙マン「いいね~、豚汁、たまんないよ!
私は大盛りで頂こうかな、丼で食べちゃいたいね!」
ピグモン「ピグちゃんも、ピグちゃんもなの~!」
ビーコン「う~ん、オイラは……小盛りでいいっスかねぇ?」
落合さん「あら、ビーコンさんにしてはお珍しいですこと。
いったいどういう風の吹き回しですか?」
ビーコン「ヒヒヒ、どうもこうもねーっスよ――」
ビーコン「一番美味しい「汁」は、寝室でたっぷり味わうからっスよ!
そう、それすなわち落合さんの「雌汁」……
あ、SM調教的な意味で敢えて「豚」汁でもいいっスかねぇ?」
落合さん「……(ぷ ち っ!)」
げ し っ !
落合さん「ねーい、何重にも輪をかけて失敬なっ!!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、ちゃんと前半と話は繋がってたんスよぉぉ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
今日も本当に有難う、宙マン。
だが、怪獣軍団の野望は尽きない……
さぁ、次回はどうなるかな?