今、夕焼けが静かに街を赤く染め……
北海道千歳市の一日も、ひと区切りつこうかと言うそんな時期。
子どもたちは家路を急ぎ、商店街は夕飯の食材を求める人々で賑わい
家庭のあちこちからは、ぷ~んと料理のいい匂いも漂ってきたりして。
と言うわけで……今回も暮れなずむ千歳市・ほんわか町5丁目の
毎度おなじみ「宙マンハウス」から物語を始めよう。
落合さん「あら、もうこんな時間……。
いけませんわね、そろそろお夕飯の支度にかかりませんと」
宙マン「本当に、楽しい時間は過ぎて行くのがあっという間だねぇ!」
ビーコン「っても、茶ァ飲んでダベってただけなんスけどね~」
ピグモン「はうはう~、そう言えばピグちゃんもお腹すいてきたの~」
みくるん「さてと、それじゃ私たちもそろそろおいとましなきゃ……ですね」
ながもん「今日も、いろいろ……ありがとう」
宙マン「こちらこそだよ。二人とも気を付けて帰ってね!」
みくるん「はいっ♪」
ピグモン「ねーねー落合さん、今日のおかずはなぁに?」
落合さん「そうですわねぇ、鶏の胸肉がございますから……
それをメインに、何か一品作るとしましょうか」
ビーコン「ヒヒヒ、そしてオイラは落合さんの胸肉をおかずに……」
落合さん「(怒)すぐそっちに持っていくんじゃありません!」
お互いに軽口を叩き合いながら、賑々しくも楽しい夕餉前のひととき。
だが……。
その平穏を破るかのように、宇宙の彼方から飛来してくる怪物体。
赤い光球は宇宙を飛んで太陽系に達し、地球の大気圏を突き抜けて
ピューっと尾を引き、千歳市のど真ん中に落下した!
ズゴゴゴグワーンっ!
大爆音と衝撃波を伴って、巨大な火柱が立ち上がる。
濛々たる砂煙と飛び散る瓦礫の中から姿を現したのは!?
「しゃぎゃぎゃぁぁ~っ!!」
みくるん「ふえぇっ、何かと思って来てみたら……!」
ながもん「あれは……彗星怪獣・ガイガレード?」
「しゃぎゃぎゃぎゃ、惜しいなお嬢ちゃん。
ガイガレードってのは俺の弟――
俺は更にそのまた上を行く、趙合成獣ネオガイガレード様だぁ!」
宙マン「どっちにせよ、嬉しいお客様ではなさそうだね……!」
落合さん「で、そのお兄様が、こんな時分にどんなご用向きでしょう?」
ビーコン「(ボソッと)どうせまた、ろくでもない事だろうっスけど……」
ネオガイガレード「しゃぎゃぎゃ、分かってるんじゃねぇか、話が早いぜ!」
ネオガイガレード「そうさ、このネオガイガレード様が来たからにゃ……
こんな辺鄙な街、日が落ちるまでには完全に叩き潰してやるぜ!」
ビーコン「どひ~っ、判っちゃいたけどやっぱ恐ろしいっス~!(汗」
落合さん「……あらあらまぁまぁ、何てことでしょう!」
イフ「行け、戦えネオガイガレード、怪獣軍団の戦士よ!
千歳の街を滅茶苦茶に破壊して、ワシら怪獣軍団の前線基地を築くのだ!」
ネオガイガレード「しゃぎゃぎゃ、荒仕事ならお手のモンですぜ、魔王様!」
怪獣魔王の命を受け、猛然と進撃開始するネオガイガレード!
迫り来るその巨体を前に、悲鳴をあげて逃げ惑う千歳の人々。
右手の鎌をぶんぶんと激しく振り回して、我が物顔での大進撃。
その鋭利な一撃が、街並みめがけて容赦なく叩きつけられた。
鎌の一撃で切り裂かれ、ガラガラと音を立てて崩壊していくビル。
連鎖爆発が巻き起こって、千歳は今や破壊と混乱の巷と化した!
ながもん「これは、まずい……落ち着いて、夕食が……楽しめない」
ビーコン「それどころか、オイラたちが料理されかねない勢いっスよ!(汗)」
ピグモン「はわわわ……宙マン、宙マン、何とかしてなの~」
宙マン「(頷き)おのれ、もう許さんぞ!
宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、ネオガイガレードの前へと舞い降りる!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
暗黒星雲の手先め、悪ふざけはそのくらいにしておくがいい!」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「やった、アニキの十八番が出たっス!」
ながもん「おおっ……いつもながらの……この、安心感」
ピグモン「はうはう~、宙マン、頑張ってなの~!」
ネオガイガレード「しゃぎゃぎゃ……出たな宙マン!」
宙マン「ああ、君のような無法者がいる限り……
まだまだ体の動くうちは、余計なお節介を続けさせてもらうよ!」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ。
真っ向激突、宙マン対ネオガイガレード!
落合さんたちが見守る中、巨大な両者が戦いの火花を散らせる。
ネオガイガレード「しゃぎゃぎゃ、死んでもらうぜ宙マン!」
宙マン「やる気満々のところ悪いがね、そう簡単にはやられない!」
ネオガイガレード「(苛立ち)……口の減らない野郎だぜ!」
ネオガイガレード、縦横無尽の鎌さばき!
その切っ先をかいくぐりつつ、果敢に接近戦を挑んでいく宙マン。
巨体に似合わぬスピーディーさで、目まぐるしい攻防を展開する両者。
一瞬の油断が死につながる、先読みの出来ない熾烈なバトルである。
宙マン「それっ、どうだ、参ったか……これでもか!?」
ネオガイガレード「しゃぎゃぎゃ……粋がるのもその辺にしておけ!」
立ち上がりざまに、ネオガイガレードの鎌が一閃!
胸板を鋭く切り裂かれ、たまらずドドーッと倒れ伏す宙マン。
みくるん「ああっ……ちゅ、宙マンさんが!」
ながもん「あの、鎌は……かなり、危険」
ビーコン「もう一歩踏み込まれてたなら、流石のアニキでも……」
落合さん「首と体が生き別れ……に、なりかねませんでしたわね!」
ピグモン「はわわわ……宙マン、負けないでなの~!」
ネオガイガレード「しゃぎゃぎゃ……無駄だ、無駄だぁイ!」
駄目押しに、目からの破壊光線で攻め立てるネオガイガレード。
エネルギーの奔流が、大爆発とともに街を吹き飛ばし……
そして宙マンの巨体をも、その衝撃波で激しく揺さぶり倒す。
グワーン! ズガガガーンっ!
「う、うわぁぁぁぁ……っ!!」
イフ「わははは!
素晴らしいぞネオガイガレード、流石は宇宙の戦士だ!
さぁ、その自慢の鎌で、宙マンの素っ首を叩き落としてしまえ!」
ネオガイガレード「しゃぎゃぎゃ、お安いご用!」
宙マン「(苦悶)……う……うっ!」
ながもん「これは、まずい……かなり、まずい!」
みくるん「(必死に)宙マンさん、早く! 早く逃げて下さいですぅ!」
ネオガイガレード「しゃぎゃぎゃ、とどめだァッ!!」
「なんの……これしきで、負けはしないっ!」
宙マン、起死回生のパワー全開!
気力を瞬時に爆発させ、前蹴りでネオガイガレードを吹っ飛ばす。
ネオガイガレード「しゃぎゃぎゃ、野郎、ナメやがって……」
宙マン「いいや、まだまだこれからが本番さ! 行くぞ!」
宙マン「エイヤァァーっ!
宙マン・ミラクル・キック!!」
電光石火の必殺キックが、ネオガイガレードめがけてヒット!
これにはたまらず、悶絶しながらのたうち回る超合成獣めがけて――
「とどめの一撃、受けてみろ! 宙マン・超破壊光線!!」
両手の間にエネルギーを集中させ、激しいスパークとともに放つ大技。
「超破壊光線」の直撃を受け、火花を散らす超合成獣のボディ!
ネオガイガレード「ひゃぎょぎょ……ま、参ったぁぁ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
みくるん「わぁっ、やりましたぁ、宙マンさんの勝ちですぅ!」
ながもん「やっぱり、千歳のヒーローは……伊達じゃない」
ピグモン「はうはう~、宙マン、今日もありがとうなの~」
イフ「うぐぐぐっ……おのれ宙マン、にっくき奴め!
よくもまた、ワシら怪獣軍団の邪魔をしてくれおったな。
だが忘れるな……最後に笑うのは、怪獣軍団だと言うことをな!」
……などと言う、いつもの負け惜しみは例によってさて置き。
我らが宙マンの活躍で、恐るべき超合成獣ネオガイガレードは撃退され
千歳市には再び、夕暮れ時の穏やかな時間が戻ってきたのであった。
落合さん「改めましてお殿様、大変お疲れ様でした!」
宙マン「いや~、こんな時間に一戦交えたら、すっかりお腹ペコペコさ。
とびきり美味しい晩ごはんを頼むよ、落合さん!」
落合さん「はいっ、それはもう、お任せを♪」
ビーコン「また安心して飯が食える千歳になって、ホントよかったっスよ!」
宙マン「(頷き)はっはっはっ……さぁ、みんな、帰ろうか!」
ピグモン「はうはう~、夕焼けがとってもきれいなの~♪」
ひとつの危機は去った……
だが、怪獣軍団の野望は未だ尽きない。
くれぐれも油断は禁物だぞ、宙マン!