3月上旬……暦の上では、既に春。
にも関わらず北海道はこの通り、未だ一面の銀世界が広がっていた。
今年の寒波が例年以上の厳しさであったことを抜きにしても、なにせもう
列島最北端であるから致し方なし、といったところであろうか。
そんな北海道の片隅、千歳市ほんわか町5丁目……
例によって、毎度お馴染み「宙マンハウス」から物語は始まる。
「うひ~っ、今日も一段と冷えるっスね~!」
ビーコン「こういう寒い日は、部屋の暖房をガンガンに効かせて……
家から一歩も出ずにゴロゴロしながら、AV鑑賞するのが一番っスよね。
てなわけで、落合さん! 膝枕要員の落合さんはどこっスか~!?」
げ し っ !
落合さん「ねーいっ、誰が膝枕要員ですか、誰がっ!(怒)」
ビーコン「ハンニャラ、ヒ~っ……
お、落合さん的にはパイ枕要員と呼ばれたいってことっスか!?」
落合さん「甚だしい大間違いですっ!……
……家でゴロゴロしてるだけならともかく、何ですかその問題発言はッ。
ピグモンちゃんの教育上よろしくないですから、自重して下さいな!」
ビーコン「仕方ないじゃないっスか、だって寒いんスも~ん☆」
落合さん「(ジト目)……それで全てが免責されるとでも?」
ああ、落合さんが呆れるのも無理はなかった――
同時に、ビーコンの感慨にもまた大いに頷けるところがあった。
もう3月だと言うのに、とにかく冷えるのである。
いかがであろうか、このいかにも寒々しい雪景色は!
宙マン「いやぁ、本当に寒い日が続くよねぇ」
ビーコン「もしかして、どっかで冷凍怪獣でも暴れてるんじゃないっスか?」
落合さん「いっそそうであってくれたら、少しは気が楽なんですけどねぇ」
ピグモン「こんなに寒いと、ピグちゃんなんにもしたくなくなっちゃうの~(欠伸)」
落合さん「あらあら、まぁまぁ……いけませんわよ、ピグモンちゃん。
明るく元気な千歳っ子たるもの、こんな寒さは吹っ飛ばす勢いで……」
宙マン「いやいや、ピグモンの言うことももっともだよ、落合さん」
宙マン「確かに、そんな生活ばっかりを続けていたなら問題だけど……
たまにはう~んと、気を抜いてのんびり過ごすのも健康法ってものさ。
だから私も、今日は家から一歩も出ずにゴロゴロすることにするよ」
落合さん「(うっとり)嗚呼……素晴らしいですわ、お殿様!
そうですわよね、暖かい家の中でゴロゴロ、これに限りますわよね!
さぁさぁ、私の膝枕でよろしかったら、どうぞご遠慮なく……❤」
「っがー、全く、このオネーチャンときたらっ!!」
ビーコン「なんなんスか、オイラとアニキとでその態度の違い!
この露骨過ぎる差別構造、断固として改善を要求するっス!」
落合さん「いけしゃあしゃあとッ。警察呼びますわよ!?」
ピグモン「はわわわ、二人とも、ケンカしちゃだめなの~」
宙マン「(苦笑)……たっはっはっはっ」
例によって例のごとく、「宙マンハウス」に流れる呑気な時間。
と――そんな“いつも通り”の平穏を打ち破るかのように!
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラッ!
落合さん「あ、あらあらあら~!」
ピグモン「きゃああんっ、揺れてるの、おっきいの~!」
宙マン「ううむ、これは只事じゃないぞ!」
ビーコン「どひぇぇ、こ、これって、例によってまた……!?」
すわ何事と、慌てて家を飛び出した宙マンたちの目の前で……
局地地震により、倒壊していく市内のビルディング。
そして勢いよく土砂を噴き上げ、地上に姿を現わしたのは!?
「ギェェェェーッ!!」
ピグモン「ああっ、また何か出てきたの!」
宙マン「おおっ、あの怪獣は!?」
落合さん「よくよく見れば、確か以前にどこかで……」
前にアニキと戦ったことのあるアイツっス!」
koumemylove4794.hatenablog.com
怪獣軍団の一員として、幾度となく地球を襲い……
我らが宙マンとも、幾度となく激闘を繰り広げた地底怪獣グドンの眷属。
今回、千歳に出現した”グドンⅡ”なる個体もまた、一族の復讐と息まき
殴りこみをかけてきた、獰猛無比の暴れ者なのである。
グドンⅡ「ギエェェ~っ、そう言うこった。
さぁさぁ宙マン、余計な前置きは抜きだ、今すぐこの俺と勝負しろ!」
宙マン「冗談じゃない、迷惑な話だ!」
グドンⅡ「ありゃりゃ、即答で断られちまったぜぇ。……
困ったな、これじゃ話が続かねぇぞ――魔王様、どうしましょう?」
イフ「わはは、グドンよ、何を悩むことがある?
宙マンがああ言うのなら、戦いたくなるようにしてやればよい――
あやつの目の前で、千歳の街を徹底的に破壊してやるのだ!」
グドンⅡ「なぁるほど、言われてみればそうですねぇ、さすが魔王様!」
イフ「(頷き)わかったのなら行けィ!」
グドンⅡ「ギェェェェーッ!」
高らかな咆哮とともに、進撃を開始するグドンⅡ!
迫り来る巨体を前に、逃げ惑う人々の悲鳴が交錯する。
ビーコン「どひ~っ、やっぱ大人しく帰っちゃくれないんスねぇ!」
落合さん「判ってはいても、毎度ゲンナリさせられますわねぇ!(汗)」
宙マン「みんな、とにかく逃げるんだ――早く!」
ピグモン「あわっ、あわわわわわ……!」
怪獣グドンⅡの出現により、千歳の街はたちまち大パニック!
だが、こんな緊急事態を、航空防衛隊は黙って見ているだけではない。
ビーコン「(ガッツポーズ)来てくれたっスね、航空防衛隊!」
落合さん「何とかして、怪獣の進攻を食い止めて下さいませ!」
ピグモン「はうはう~、防衛隊のおじさんたち、頑張ってなの~!」
「怪獣め、これ以上は好き勝手にのさばらせるものか!
全機、攻撃開始っ!」
大空の戦闘機編隊から叩きこまれる、ロケット砲の一斉攻撃!
人間相手の戦争ならば、絶大な威力を発揮するであろう通常兵器……
だが、重戦車にも勝る分厚い皮膚のグドンⅡには全く通用しない。
グドンⅡ「ギェェェェーッ、効かねェってんだよ、そんなもん!」
「う、うわぁぁぁっ……!!」
深追いしすぎた一機の戦闘機が、グドンⅡの鞭で叩き落とされる――
予測不能な軌道を描く鞭捌きを警戒して、戦闘機隊は迂闊に近づけない。
それをいいことに、ますます増長して街を破壊しまくるグドンⅡ。
爆発! 炎上!
ピグモン「はわわ、千歳が千歳が大ピンチなの!」
ビーコン「こればっかりは、何百回経験しても慣れないっス!(汗)」
落合さん「いけません、どうにもこうにもいけませんわ!」
ピグモン「はわわわ……宙マン、宙マン、何とかしてなの~」
宙マン「(頷き)おのれ、もう許さんぞ!
宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、荒れ狂うグドンⅡの前へと舞い降りる!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
千歳の平和を乱す者がどうなるか、私が思い知らせてやる!」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「よっしゃ、アニキの十八番が出りゃもう安心っス!」
落合さん「お殿様、やっぱり素敵です……♪(うっとり)」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
今こそこの俺様が、全部まとめて晴らしてやるぜ!」」
宙マン「なんの、君もまた、お仲間同様に返り討ちだ!」
ファイティングポーズを取り、敢然と身構える宙マン。
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトルの幕開けだ!
真っ向激突、宙マン対グドンⅡ!
落合さんたちが見守る中、両者の死闘はのっけからヒートアップ。
ビュンビュン風切り音を響かせ、両手の鞭を振り回して迫るグドンⅡ!
その打撃をかわし、かいくぐり、宙マンも果敢に相手へ肉薄していく。
グドンⅡ「ギェェェェーッ、くそう、ちょこまかと!」
宙マン「グドンよ、今度はこっちからお返しだ!」
グドンⅡの巨体を抑えこみ、その腹部めがけて宙マンの膝蹴りがヒット!
一撃をまともに喰らい、ダメージを受けて後退してしまうグドンⅡである。
グドンⅡ「(カッとなり)うぬッ、野郎っ!!」
怒りに任せて、更に激しく二条鞭を打ち振るグドン!
だが、冷静さを欠いたその攻撃は、完全に見透かされていた――
鞭の一閃をひらりとかわし、大空へと舞い上がる宙マンの巨体!
グドンⅡ「(驚き)げ、ゲゲェーッ!?」
宙マン「行くぞ、グドン!」
「エイヤぁぁぁーっ!
宙マン・回転フルキック!」
出た、宙マン怒りの蹴り技!
回転フルキックを胸板に食らい、たまらずグドンⅡが倒れたところへ――
宙マン「よし、今だッ――正義の刃、受けてみろ!
秘剣・スーパー大波崩し!!」
ズバァァッ!
スーパー剣の刀身にエネルギーを集中させ……
怒涛のような突進の勢いに乗り、斜め一文字にひるがえる光の刃!
宙マンの「大波崩し」が、グドンⅡの巨体を見事に切り払った。
グドンⅡ「ひ、ひギィィィッ……こ、こりゃたまら~んっ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
ピグモン「はうはう~、やったのやったの、宙マンの勝ちなの~!」
ビーコン「いえっふ~、やっぱこうじゃなきゃイカンっスよねぇ!」
落合さん「(うっとり)お殿様、いつも惚れ惚れ致します……♪」
イフ「ぐ、むむむむっ……なんたることだ、不甲斐ないグドンめが!
そして宙マン、これで勝ったと思うのはまだ早いぞ――
次はもっと強力な怪獣を送りこみ、必ずお前の息の根を止めてやる!」
……などと言う、怪獣魔王の負け惜しみはさて置いて。
かくして、今回もまた宙マンの活躍により……
獰猛な地底怪獣グドンⅡは倒され、千歳に平和が蘇ったのであった。
宙マン「はっはっはっはっ……やぁ、みんな、お待たせお待たせ!」
ビーコン「ヒヒヒ、アニキ、どうもお疲れ様っした!」
落合さん「これにて一件落着、ですわねっ」
宙マン「ああ、これで私もゆっくり一息つけるわけだね」
ピグモン「はうはう~、だったら宙マン、おうちに帰ってゴロゴロ、ぬくぬく?」
宙マン「そうだねぇ、今日みたいな寒い日はそうするに限……
……いや、寄り道しながらのんびり帰るのも悪くない、かな?」
ピグモン「はう?」
ビーコン「あれぇ、アニキ、どういう風の吹き回しっスかぁ?」
宙マン「いや、ちょっとした思いつきなんだけど……
春の前触れを探しながらの散歩、ってのも悪くないかと思ってね」
宙マン「ほら、例えばこんな感じのを……」
落合さん「(表情がほころび)……まぁっ♪」
宙マンが笑顔で指差した、何気ない道端の「春の前触れ」。
雪と氷の下から顔を出していた、なんとも気の早いフキノトウに、
思わず自然に声が出て、笑顔になってしまう宙マンファミリーであった。
季節は巡り、徐々に雪解けの頃……
みんなに笑顔の春を呼ぶ、我らが街のヒーロー。
さぁて、次回はどんな活躍を見せてくれるかな?