暗黒星雲・怪獣軍団の怪獣魔王イフ。
異次元空間に君臨し、超獣たちを操る異次元人・ヤプールの怨念。
そして、今またここに、地球を狙う新たな巨悪の影があった――
別宇宙の支配者として君臨し、今また地球をもその毒牙にかけんと
侵略の魔手を延ばしつつある魔界の帝王、ロード・ゼッド。
邪悪な魔城を打ち立て、怪獣軍団やヤプールに先んじるかたちで
地球征服を成し遂げんと、その野望に燃えていたのであった――
エンケラドゥスの白く凍てつく地表……
その極寒の中に、忽然とそびえる鉤爪上の超巨大オブジェ。
まさにそれこそ、悪の帝王ロード・ゼッドの居城。
……そしてゼッドは絶対の支配者として、玉座につき君臨しつつ
今日もまた、地球攻撃の機会を伺っていたのであった。
ロード・ゼッド「ぐぁぼははは……ごきげんよう、親愛なる読者諸君!
我輩の名はゼッド、偉大なるロード・ゼッド。
間もなく地球のあるじとして、諸君らの頭上に君臨する統治者である」
ロード・ゼッド「征服……支配……独占……
悪の生を受けし者として、これほど胸に響く言葉はない。
悪の帝王、このロード・ゼッドは、まさに地球を征服したいのだ」
ロード・ゼッド「強き者が弱き者を従え、その上に君臨する。
これこそが宇宙の摂理、当然のなりゆき……
絶対の強者たる我輩に与えられた、当然の権利なのだ」
ロード・ゼッド「なればこそ、この我輩は地球を征服するのだ……
いや、できるのだ。
我輩はいつでも、この凍てつく星に居ながらにして……
こうしていつでも諸君らを、地球の全てを見通せるのだからな!」
エンケラドゥスからも地球の万物を見ることが出来る、ゼッドの千里眼が
今また、地球侵略のために「狙い」を定めた。
「ウソル・デラピダトーレ・テンタトーレ・ソイナトーレ……
デボラトーレ・マンシトーレ・エシェデュクトーレェ……
朽ち果てし万物の精霊よ、大気に遍く邪悪の意思よ!」
「悪の心を呼び醒まし、魔可異の姿を創り出せ!
カァァーッ!!」
Zスタッフから迸る、邪悪そのもののエネルギー!
それは宇宙空間を飛び越え、エンケラドゥスから一気に地球へ、
北海道千歳市某所・とある古道具屋の倉庫へと達し……
無造作に放置されていた中古のギターを触媒に増幅しながら
みるみるうちに邪悪なモンスターを創造、実体化させていく。
「ミミミミミミ……!!」
みくるん「ああっ、何か出てきたですぅ!」
ながもん「(眼鏡をくいっと上げて)なんて言うか……セミの、おばけ?」
ピグモン「えう~、それってまるっきり季節外れなの~!(涙目)」
「ミミミミミ! 俺の名はギタールド。
悪の帝王ロード・ゼッド様の偉大なる魔力で想像された忠実なる下僕……
そしてゼッド様に地球を献上する、破壊のパフォーマーだ!」
ピグモン「ほにゃ、ろーど・ぜっど……?」
宙マン「(うんざりして頭を搔き)……ああ、またアイツかね!」
ビーコン「で、そのギタールドさんとやらが、千歳に何の用っスか!?」
落合さん「基本的にお呼びではございませんので、どうぞお早いお帰りを!」
ギタールド「ミミミミミ、そう言うわけにはいかねぇんだよ!」
ギタールド「晴れ舞台が夏場だけだと思うのは、地球の蝉の浅はかさ。
ギタールド様の華麗なるパフォーマンス、全宇宙に魅せつけてやるぜ――
千歳市破壊と言う名の、超ハイテンション・ライブをな!」
みくるん「ふぇぇん、結局やることはいつもと同じじゃないですかぁ~!(泣)」
宙マン「……むうっ、何て身勝手な奴だ!」
ロード・ゼッド「「ぐぁぼははは、「前説」ははそのくらいにしておけィ。
さぁギタールドよ、ここからがライブの本番である――
お前の力、地球の者どもに思い知らせてやるがよい!!」
ギタールド「ミミミミミ……イエス・マイ・ロード!」
ロード・ゼッドの命を受け、猛然と進撃開始するギタールド!
迫り来るその巨体を前に、悲鳴をあげて逃げ惑う千歳市民たち。
サンドロス「(驚きで目をパチクリ)ちょっ! あ~た、アレは……!?」
イフ「えぇいっ……おのれゼッドめ、またしても出しゃばりおって!」
ビーコン「どひ~っ、こっち来てるっスよ、こっち!」
落合さん「あらあら、まぁまぁ、どうしましょう!?」
ピグモン「とにかく逃げるの、急いで逃げるの~!」
ながもん「(空の一方を指さし)……あっ」
ビーコン「(も見て、表情が輝き)うひょひょひょっ、あれは!」
大空から響き渡ったジェットの爆音に、人々の歓声があがる――
ギタールドの進攻を阻むべく、千歳基地から出撃した戦闘機編隊だ。
ギタールド「ミミミミ……何かと思えば、地球人の悪あがきかよ!」
「目標を確認。全機、怪物に対して攻撃開始!」
戦闘機隊の攻撃開始!
ロケット曳光弾が驟雨のごとく、ギタールドめがけて叩きこまれていく。
通常の標的ならば、5分もせぬうち粉微塵になってしまうほどの砲火……
だが、もとより尋常の存在ではない怪物ギタールドは、この猛攻に対しても
いささかも動じず、その歩みをとめようとはしない。
「ミミミミ……見てな!」
自らの超音波を胸部に収束させ、音波ビームに変換して発射。
直撃を受けた高層ビルを、跡形もなく消し去ってしまうこの威力を見よ!
ギタールド「ミミミ、この調子で千歳を一気にブッ潰してやるぜィ!」
逃げ惑う人々をアザ笑うかのように、ギタールドの大暴れ!
その威力の前に、今、千歳市の平和は風前の灯であった。
みくるん「ああっ、どうしましょう!?」
落合さん「……これでは、本気で千歳が大ピンチですわ!」
ピグモン「はわわわ……宙マン、宙マン、何とかしてなの~」
宙マン「(頷き)おのれ、もう許さんぞ! 宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、荒れ狂うギタールドの前に舞い降りる!
宙マン「トゥアーッ! 宙マン、参上!
悪の使者よ、もはやお前たちの思い通りにはならないぞ!」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「ああ、やっぱここ一番で頼りになるのはアニキっスよねぇ!」
落合さん「えぇ、安心の度合いが全然違っておりますわ!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
ギタールド「ミミミ、出たな宙マン!」
宙マン「独りよがりのパフォーマンス、ここらで幕引きにしてもらおうか!」
全身にみなぎる怒りを力に変え……
ファイティングポーズをとって、敢然と身構える我らが宙マン。
ギタールド「哀れな奴だぜ、破壊の芸術を理解できねーとは!」
宙マン「屁理屈は結構だ、さぁ行くぞっ!」
かくしてここに今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕。
落合さんたちが見守る前で、大地を揺るがし激突する宙マンとギタールド!
鋭利な爪を振り回し、隙あらば宙マンを切り裂かんとするギタールド。
だが、我らがヒーローとて、そうやすやすとやられはしない。
相手の隙を的確に突き、果敢にギタールドの懐へと入りこんでいき……
パワフルな押さえこみとパンチの連打を叩きこんでいく宙マン。
宙マン「それだけじゃないぞ、もういっちょ……こいつを食らえ!」
出た、宙マンのストレートキック!
腹部へまともに蹴りを食らって、ずずっと後退のギタールド。
宙マン「それっ、どうだ――これでも、まだ参らないか!?」
ギタールド「ミミミミミ、やるじゃねェか宙マン――」
「だがな、調子に乗るのもそこまでだッ!!」
ギタールドの放つ収束音波ビーム!
相手への追撃に気をとられていた宙マンは、不覚にもその直撃を受けてしまった。
「う、うわぁぁぁぁ……っ!!」
くるん「ああっ、宙マンさんが!」
ながもん「まずい……あの武器は……強力」
ビーコン「ひぇぇ、いくらアニキが百戦錬磨の強者だからって……」
落合さん「あんな怖ろしいビームを、何発も受け続けた日には……!」
ピグモン「はわわわ、宙マン、まけないでなの~!」
ロード・ゼッド「ようし、よいぞギタールド、最高のパフォーマンスだ――
この最高潮の盛り上がり、我輩らの勝利は目の前である!
次で……次の一撃で、確実に決めるのだぞ!」
宙マン「(苦悶)うう……うっ……!」
ギタールド「ミミミミ、最期だ宙マン……残念だが、アンコールは無しだぜ!」
宙マンを吹き飛ばすべく、最大出力の音波ビーム・チャージに入るギタールド。
嗚呼、千歳のヒーロー、絶体絶命の大ピンチ――
だが、その時である!
ズバーン! シュパパパパーンッ!
ギタールド「(驚き)!?」
おお、見よ!
宙マンの窮地を救ったのは、防衛隊の戦闘機編隊であった。
「さぁ、今だ、宙マン!」
宙マン「(空を見上げて頷き)ありがとう!」
ギタールド「(怒り)ミミミ……ウゼェ茶々入れしやがって!」
苛立ち、胸から音波ビームを放つギタールド。
が、既に態勢を立て直していた宙マンは、その一閃をかわして大ジャンプ!
「エイヤぁぁーっ!」
「宙マン、反動……」
「三段……」
「キィーック!!」
怪物を蹴りつけた勢いで空中反転し、計三発のキックを見舞う猛烈技!
「反動三段キック」の威力に、ギタールドが吹っ飛んだところへ――
宙マン「とどめだ! 宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、ギタールドを直撃!!
ギタールド「ミミミミ……そ、そりゃないよォォ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
みくるん「わぁっ! やりました、宙マンさんがやってくれましたぁ!」
ながもん「おおっ。……さすが」
ビーコン「やっぱアニキの威力は、いつ見ても凄まじいっスね~!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、ありがとうなの~♪」
人々の賞賛と拍手喝采を受け、秋空の下にすっくと立つ巨体。
まさに宙マンこそは、千歳における正義と平和の守護者であった。
ロード・ゼッド「う、うがぉぉっ……おにょ~れッ、宙マン!!」
ロード・ゼッド「またも、またしてもやってくれおったな、若造めが!
だが覚えておれ、我輩の魔力ある限り、お前に安息の時はないのだ。
もっと強く、もっと怖ろしいモンスターで、次こそ必ず……!」
……などと言う、こちらも恒例になりつつある負け惜しみはさて置いて。
かくして、宙マンの活躍により……
怪物ギタールドは撃退され、また千歳市は救われたのであった。
落合さん「何はともあれ……お疲れ様でした、お殿様!」
宙マン「いやはや、仮に今日の戦いが夏場のものだったとしても……
ああいう形の「蝉時雨」は、ご勘弁願いたいものだねぇ」
みくるん「だけど、それも宙マンさんのおかげで一件落着ですよね?」
ながもん「宙マンが、いれば……すべて、安心」
宙マン「(頭を搔いて照れ笑い)いやぁ、はっはっはっはっ」
ビーコン「ヒヒヒ、な~に、あんな怪音波の一つや二つ……
アニキじゃなくっても、打ち消すぐらいワケないっスよ!
例えば、落合さんがオイラに抱かれてる時のえっちな声とかで……」
げ し っ !
落合さん「ねーいっ、まず打ち消されるべきは貴方の世迷言ですっ!!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、オイラの心も11月の夏模様っスぅぅ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
みんなの笑顔、みんなとの絆……
天下無敵のヒーローに、更なる「力」をくれる源。
さァて宙マン、次回はどんな活躍を見せるのかな?