別宇宙の支配者として君臨し、今また地球をもその毒牙にかけんと
侵略の魔手を延ばしつつある魔界の帝王がいる。
その極寒の中に、忽然とそびえる鉤爪上の超巨大オブジェ。
まさにそれこそ、大悪党ロード・ゼッドの居城。
……そしてゼッドは絶対の支配者として、玉座につき君臨しつつ
今日もまた、地球攻撃の機会を伺っていたのであった。
ロード・ゼッド「……と、言う前置きではあるが」
ロード・ゼッド「ぶっちゃけ、その辺どうなのだ、フィニスターよ?
完璧主義も、芸術至上主義も結構だが……
そのたびに、こう待たされるのでは我輩の威厳にも関わる!」
フィニスター「まぁまぁ、そうカッかなさりますな、我が君よ。
……既に我が芸術は、ゼッド卿の魔力で誕生を迎えるその瞬間を
今や遅しと待ちかねておりますからして!」
ロード・ゼッド「おおっ、遂にか!」
ロード・ゼッド「して、こたびの趣向はどのような……?」
フィニスター「ぬふふ、それは見てのお楽しみと言うことで」
ロード・ゼッド「こやつめ、わはは、勿体つけおってからに。
……よかろう、では貴様の自信作、とくと拝ませてもらおうではないか!」
「ウソル・デラピダトーレ・テンタトーレ・ソイナトーレ……
デボラトーレ・マンシトーレ・エシェデュクトーレェ……
朽ち果てし万物の精霊よ、大気に遍く邪悪の意思よ!」
「悪の心を呼び醒まし、魔可異の姿を創り出せ!
カァァーッ!!」
と、言うわけで……
今回はのっけから、ゼッド一味の侵攻で幕を開けた『宙マン』!
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラッ!
落合さん「これはもしや、またまた事件の……」
ビーコン「だとしたら、かなり唐突でいきなりっスねぇ!?(汗)」
そう!
迫り来る悪の魔の手は、いつだっていきなり、かつ唐突。
ガラガラと崩れ落ちるビル、鳴動する大地。
人々の意表を突き、地底からその巨大な姿を現したもの……
怪物職人・フィニスターの次なる「芸術作品」とは!?
「ギャオォォォーッ!!」
ピグモン「ああっ、なんか出てきたの!」
ビーコン「怪獣……とは、ちょっと違うみたいスねぇ?」
落合さん「かと言って、宇宙人と言うわけでもなさそうですし……」
ビーコン「ってコトは、アレっスか!?」
宙マン「(頷き)間違いない、ロボットだ。
……破壊活動用の、侵略ロボットだ!」
そう、まさにこれこそ今回の恐るべき敵。
フィニスターの手で造られ、ロード・ゼッドの魔力によって起動した
巨大なる侵略ロボットだ!
フィニスター「ふぉふぉふぉ……いかがですかな、この雄姿!」
フィニスター「左様、さよう――
どんな攻撃にも耐える宇宙金属によってその全身を形成し、
居並ぶ敵を叩いて砕く。
勝利のみを目的とした、完全無欠なる悪の申し子……
それこそ我が芸術、この“ファイア二世”にございます!」
ロード・ゼッド「…………(無言)」
フィニスター「……ありゃま、いかがなされました、我が君?
日頃より新作を完成させろ、完成させろ……と、あれほど口やかましく
ワシをせっついていた割には、いささかご反応が鈍いようで……」
ロード・ゼッド「あ゛ー、いや~、その……何と言うか……だな?」
フィニスター「何ですゼッド卿、何かご不満な点でも?」
ロード・ゼッド「いや、不満と言うか、何と言うかだな……
……エェイッ、この際だからぶっちゃけさせてもらうぞっ。
もう少しこう、デザインを今風に出来なかったのか!?」
フィニスター「今風、ですと?」
ロード・ゼッド「ほれ、アレだ……
例えば昨今流行のカ●キ風アレンジとか、NA●KI風スタイルとか。
……何かこう、もっと……あるだろう!?」
フィニスター「(間髪入れずに)お黙らっしゃい!!」
フィニスター「偉大なる悪の帝王、ロード・ゼッドともあろうお方が……
何ですかっ、その情けない物言いはッ。
よいですか、安易なディテールの追加や複雑化だけで良しとしてしまう
そういうトコロから、モンスターデザインの堕落と言うものが……」
ロード・ゼッド「だーっ、もういい、わかったわかった!
講釈はいいから、とにかくファイア二世を暴れさせろ!」
フィニスター「(溜息)やれやれ……本当に判っておられるのやら!?」
フィニスター「さぁ、我が子よ、我が芸術よ……
そなたの欲するままに行え、蹂躙せよファイア二世!」
ファイア二世「ギャオォォォーッ!!」
造物主フィニスターの命令を受け、進撃開始する怪ロボット!
迫り来るファイア二世の巨体を前に、悲鳴をあげて逃げ惑う人々。
ビーコン「どひ~っ、今回は急展開にも程があるっスよ~!」
落合さん「全くですわ、打ち切り漫画の最終回じゃあるまいし!(汗)」
怪ロボットの暴虐、許すまじ!
千歳の平和を守るべく、航空防衛隊が直ちに出撃した。
ピグモン「あっ、航空防衛隊のおじさんたちなの!」
ビーコン「今回こそは……やってくれるといいんスけどねぇ!?」
落合さん「ええ、それはもう……物凄く、切実に!」
「ようし……全機、攻撃開始だっ!」
大空の戦闘機編隊から叩きこまれる、ロケット砲の一斉攻撃!
人間相手の戦争ならば、絶大な威力を発揮するであろう通常兵器……
だが、宇宙金属製のファイア二世には全く通用しない。
フィニスター「ふぉっほほ、我が芸術にそんな攻撃が通じるものかよ!」
「う、うわぁぁぁぁ……っ!」
ファイア二世の指先から迸る、稲妻状の破壊熱線!
その直撃を受け、戦闘機隊は一機、また一機と撃墜されていく。
爆発! 炎上!
今や焦熱地獄、破壊と混乱の巷と化していた!
落合さん「……あらあらまぁまぁ、どうしましょう!?」
ビーコン「ひぇぇ、もうだめっス、おしまいっス!」
ピグモン「はわわわ、宙マン、宙マン、なんとかしてなの~」
宙マン「(頷き)こうなったらもう、やむを得ん!
宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、暴れるファイア二世の前へ舞い降りる!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
怪ロボットめ、これ以上の傍若無人は私が許さんぞ!」
ズ、ズーンっ!!
土砂を巻き上げ、宙マンの巨体が勇ましく地に降り立つ。
新たなる「敵」の出現を感知し……
今、ファイア二世がぎろりと眼光鋭く向き直った。
フィニスター「ふぉっほほほ、そうじゃファイア二世……
そやつが宙マン、お前の倒すべき相手じゃ。
我が芸術の子よ、宙マンなど捻り潰してしまえィ!」
ファイア二世「(咆哮)ギャオォォォーッ!!」
宙マン「ようし、来るなら来い。……勝負だ!」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ。
真っ向激突、宙マン対ファイア二世!
千歳市中心部を舞台に、巨大な両者の死闘が展開される。
ビーコン「ひぇぇ……ウチのアニキは大丈夫っスかねぇ!?」
落合さん「なんの、お殿様の勝利を信じましょう!」
ピグモン「(頷いて)宙マ~ン、がんばってなの~!」
落合さんたちの声援を受け、懸命に戦う宙マン!
だが、宇宙金属の鋳造によって全身を形成し、山を砕くパワーを有する
ファイア二世の「固さ」には、さしものヒーローも手を焼かされる。
宙マン「ううむっ、何て……何て言う、頑丈なやつだ!」
ファイア二世「(咆哮)ギャオォォォーッ!」
宙マン「ようし、こうなったら……
怪ロボットめ、エクシードフラッシュを受けてみろ!」
幾多の怪獣・宇宙人らを倒してきた、宙マン自慢の必殺光線。
が、ファイア二世のボディは、それをも容易く無力化したではないか!
落合さん「(驚愕)ああっ、何てことでしょう!?」
ビーコン「まさか、アニキのフラッシュが効かねぇなんて!」
ピグモン「(涙目)えう~、そんなのってないの~!」
宙マン「くッ、なんて奴だ……!」
ロード・ゼッド「ぬははは……これよ、こうでなくてはならん!」
ロード・ゼッド「あの破壊力、宙マンをも凌駕する頑健さ……
流石は宇宙に轟く怪物職人・フィニスターの芸術作品じゃ。
この素晴らしさ、我輩には最初から全て分かっておったとも!」
フィニスター「(ボソッと)……やれやれ、本当に分かっとったのかのォ!?」
ロード・ゼッド「うン、何か言ったか?」
フィニスター「(慌てて)あぁ、いえいえいえ、何も何も!?」
……などと言う、エンケラドゥスでのやり取りの間も戦いは続き。
宙マンにとどめを刺すべく、ファイア二世が破壊熱線を放った!
だが、その攻撃は……
宙マンの防御技・プロテクションで受け止められ、無力化された!
ロード・ゼッド「ぬぬ、味な真似を!」
宙マン「押してダメなら何とやら。力で負けても技で勝つ!」
ロード・ゼッド「ほ、ほざくなぁぁッ!」
ゼッドの怒りそのもののように、ファイア二世の鼻先の砲門から
ダダダダダッ! と断続的に放たれる火炎弾。
その猛烈な砲火をかわして、宙マンは大空高くひらりとジャンプ!
ファイア二世「ギャゴゴゴッ!?」
宙マン「行くぞ! 宙マン・超音波ストリーム!」
空中で全身を超速回転させ、発生させた超音波を敵にぶつける大技!
宙マンの超音波ストリームが、ファイア二世を直撃し……
その体内の精密機器に干渉して、正常な稼動と連動とを乱した。
ズ、ズーンッ!
内部メカニックの機能を乱され、たまらず倒れる怪ロボット。
そして宙マンは、そこに生じた絶好のチャンスを掴んで……
遂に伝家の宝刀、伝説のスーパー剣を抜き放った!
宙マン「正義の刃、受けてみろ!
秘剣・スーパー滝落とし!!」
ザシュウッ!!
スーパー剣を抜き放ち、刀身にエネルギーを集中させ……
豪快な空中回転とともに、真っ向から振り降ろされる光の刃!
宙マンの「滝落とし」が、ファイア二世を唐竹割りに切り裂いた。
ファイア二世「ギャ……ゴガァァァ……ッ!!」
やったぞ宙マン、大勝利!
フィニスター「(がっくり膝をつき)あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ……
ファイア二世が、ワシの自慢の芸術が……っ!」
ロード・ゼッド「おにょれ、おにょれ、またしても……
だが覚えておれよ宙マン、この仕返しは必ずしてやるぞ……!!」
……などと言う、ゼッド一味のいつもの負け惜しみはさて置いて。
我らが宙マンの活躍により、怪ロボット・ファイア二世は撃退され
北海道千歳市には、再び元の平和が戻ってきたのであった。
落合さん「どうもお疲れ様でした、お殿様!」
ピグモン「宙マン、とってもかっこよかったの~」
宙マン「いやいや、私の格好なんてどうでもいいけれど……
みんなが無事でいてくれて、それが本当に嬉しいよ。
……ああ、それにしても、戦いの後はいつもお腹がすくねぇ」
落合さん「お任せ下さい、すぐに美味しいご馳走をご用意いたしますわ。
お疲れの時に「効く」のは、何と言っても肉料理……
ステーキの歯ごたえとハンバーグの柔らかさを、ひとつの器で同時に
食べ比べられる丼めし、などはいかがでしょうか?」
宙マン「おおっ、聞いただけで嬉しくなる料理じゃないな。
うんうん、それ頼むよ、それを大至急!」
落合さん「(にっこり頷き)はい、かしこまりました♪」
ビーコン「ヒヒヒ、肉料理いいっスよねぇ、肉料理!
そして食後のデザートは、オイラと落合さんがしっぽりシケこんで
別の意味での“肉料理”を……♡」
落合さん「(ムカッ)……は ぁ !?」
げ し っ !
落合さん「っがー、大概になさいませ、このエロ怪獣っ!!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、すっごく自然な流れだと思ったのにぃぃ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
悪魔の新兵器も、卑怯な罠も……
軽~く一蹴、正義の宙マン・パワー。
さて、次回はどんな活躍を見せてくれるかな?