暗黒星雲・怪獣軍団の怪獣魔王イフ。
異次元空間に君臨し、超獣たちを操る異次元人・ヤプールの怨念。
そして、今またここに、地球を狙う新たな巨悪の影があった――
別宇宙の支配者として君臨し、今また地球をもその毒牙にかけんと
侵略の魔手を延ばしつつある魔界の帝王、ロード・ゼッド。
邪悪な魔城を打ち立て、怪獣軍団やヤプールに先んじるかたちで
地球征服を成し遂げんと、その野望に燃えていたのであった――
エンケラドゥスの白く凍てつく地表……
その極寒の中に、忽然とそびえる鉤爪上の超巨大オブジェ。
まさにそれこそ、悪の帝王ロード・ゼッドの居城。
……そしてゼッドは絶対の支配者として、玉座につき君臨しつつ
今日もまた、地球攻撃の機会を伺っていたのであった。
ロード・ゼッド「ぐぎぎぎぎ……それにしても不愉快だわい!
思い出すだに腹の立つ、あの宙マンの小癪なことよ……
たかだか一介のプラネット星人風情が、どこまで我輩のやる事なす事に
仇なし、水差し、邪魔をしおると言うのか!?」
……そう。
別宇宙の支配者たるを自任するロード・ゼッドは、Zスタッフの魔力によって
次々と異形のモンスター軍団を生み出し、地球に差し向けたのだが……
だが、彼の目標……
北海道千歳市に住むプラネット星人・宙マンのめざましい活躍によって
ゼッドの繰り出したモンスターは、そのことごとくが打ち倒されていた。
……そう、まさに。
それは絵に描いたような「連戦連敗」の構図そのものであった。
ロード・ゼッド「えぇい、黙れ黙れッ! 言うな、ナレーター!」
ロード・ゼッド「おにょ~れ、ことごとく我輩の顔に泥を塗りおって!
宙マンよ、何が何でもお前を倒し……
宇宙のどの悪よりも先に、地球を我が手中に収めてくれるわ!」
「と、なりますと……
ふふふ、この私の力では不足でしょうかな……!?」
ガチャリ、と金属質の足音を立てて……
魔城の大広間に堂々と入って来たその者の姿を目にした瞬間、
無骨な仮面に覆われているはずのロード・ゼッドの顔に表情が宿り
確かに、嬉し気にほころんだかのように見えた。
ロード・ゼッド「おおっ……その声は……」
ロード・ゼッド「やはりそなたであったか、ヴォイド・ナイト!」
「(頷き)お久しぶりにございます、我が君よ」
今、ここに姿を現した彼の名はヴォイド・ナイト。
ロード・ゼッドが自らの右腕と恃む存在であり、ゼッドの覇業に
多大な功績を果たしてきた甲冑の魔人である。
ロード・ゼッド「よくぞ参った、そなたがいてくれれば万人力じゃわい。
積もる話もあるがな、まずはゆるりと休んで……」
ヴォイド・ナイト「――折角ですが、ご辞退させて頂きます」
ロード・ゼッド「何っ?」
ヴォイド・ナイト「私が来た以上、一刻も早く任務につくこと……
その上で使命を果たすこと、ゼッド様も間違いなくそれをお望みのはず。
そう……例えば、あの”宙マン”めの排除に関することなど!」
ロード・ゼッド「おおっ、やはり流石よの……既に知っておったか!」
ヴォイド・ナイト「ふふふ、我が君が手こずっておいでであるとか」
ロード・ゼッド「まこと忌々しい奴よ……あのプラネット星人めが!」
ヴォイド・ナイト「なればこそ……と、敢えて申し上げましょう。
宙マンめの存在もろとも、我が君の御心から苛立ちを取り除く……
そうでなければ、小生が帰参を果たした意味もございません」
ロード・ゼッド「ウムッ、よくぞ申してくれた。
……だが気をつけろ、宙マンは強いぞ!?」
ヴォイド・ナイト「それもまた……小生の独断によって、調査済み。
仰る通り、宙マンは強い……
流石、銀河連邦の元・英雄と言わねばなりませんでしょう」
ヴォイド・ナイト「されど、奴に対する勝算なくして……
なぜに小生が、こうして我が君の前に来ることが出来ましょうや?」
ロード・ゼッド「ううむっ、見上げた心意気だわい!」
ロード・ゼッド「ようし! ならば行けぃ、ヴォイド・ナイト!
お前の戦略と技量によって宙マンと戦い……そして、勝て!
宙マンを倒して、我輩の心から苛立ちを取り除け!」
ヴォイド・ナイト「イエス・マイ・ロード……御意のままに!」
かくして……
今ここに出撃する悪の戦士、甲冑の魔人ヴォイド・ナイト。
目指すは地球、狙うは宙マンただ一人!
さて、そんな恐るべき魔手が迫っているとは露知らず。
我らが宙マンは今日もまた「日常」の中にあった。
これもまた、彼にとっての「日常」のひとつ。
性懲りもなくやってくる、暗黒星雲の怪獣軍団からの使者たちを
くんずほぐれつ激闘の果てに追い返すことだ!
「ギョヴォアァァ~っ! 今日はこの俺が相手だぜ、宙マン!」
宙マン「さぁ来い、衝角怪獣ナイフヘッド!」
全身にみなぎる怒りを力に変え……
ファイティングポーズをとって、敢然と身構える宙マン。
激突、宙マン対ナイフヘッド!
千歳の人々がハラハラと見守る中、巨大なる正邪の死闘が展開される。
持ち前の破壊衝動を全開にして、荒々しく宙マンに迫るナイフヘッド。
その鋭い牙を、爪をかいくぐりながら、宙マンは務めて冷静さを保ちつつ
相手の隙を伺い、果敢に敵の懐へと飛びこんでいく。
パンチにチョップ、打撃の連打!
だがナイフヘッドもさるもの、宙マンの猛攻を受けるほどに猛り狂い
むしろ更なる荒っぽさでヒーローめがけて肉薄していく。
ナイフヘッド「ギョヴォアァァ~っ、アンタの本気はそんなもんですかぁ!?」
宙マン「なんの、なめるなッ!」
宙マンの放った回し蹴りが、ナイフヘッドの腹部へヒット!
さしもの衝角怪獣も、この一撃にはたまらずズズっと後退させられた。
ナイフヘッド「ギョヴォアァァ~っ、こりゃたまらん、やられたぁ……
……なんて言うと思ったら、大間違いだぁぁ~っ!」
バ キ ィ ィ ッ !
刃物のように鋭い硬質化した角による、ナイフヘッドの頭突きが命中!
この突進力の前に、さしもの宙マンも大きく吹っ飛ばされてしまう。
みくるん「ああっ、宙マンさんが!」
ながもん「なんていう……威力」
ビーコン「どひ~っ、まずいっスよ、あの角は色々ヤバいっス!(汗)」
ピグモン「はわわわ、宙マン、負けないでなの~!」
落合さん「(手に汗を握って)……お殿様っ!」
宙マン「(苦悶)うう……うっ……!」
ナイフヘッド「ギョヴォアァァ~っ!
宙マン、いよいよアンタの最後の時が来ちゃいましたですよぉ!?」
巨大な爪の一撃を、宙マンめがけて叩きつけんとするナイフヘッド。
だが、これしきで容易くやられるような宙マンではない――
残された気力を振り絞り、ナイフヘッドめがけて渾身の前蹴り!
その一撃で大きく吹っ飛ばされ、もんどりうって倒れるナイフヘッド。
ビーコン「いよっしゃ、上手いっスよ、アニキ!」
ピグモン「はうはう~、今がチャンスなの、宙マン!」
ナイフヘッド「(悶絶)ぎょ、ギョヴォアァァ~っ……」
宙マン「まだまだ、ここからのキックがとっておきさ!」
宙マン「エイヤァァーっ!
宙マン・ミラクル・キック!!」
出た、電光石火の必殺キック!
燃える足先が、ナイフヘッドの眉間を叩き割るように炸裂したところへ――
宙マン「とどめだ!
宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、ナイフヘッドを直撃!!
ナイフヘッド「ギョヴォアァァ~っ……ま、魔王様、お許しを~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
イフ「ううむっ、にっくき宙マンの奴めが!
今に……今に見ておれ、この礼は何倍にして返してやるぞ!」
みくるん「わぁっ、やりました、宙マンさんの勝ちですぅ!」
ながもん「宙マン……グッジョヴ」
ビーコン「いやぁ、今日も今日とて流石っスねぇ、アニキは!」
落合さん「えぇ、そしてどなたよりも素敵です……お殿様♪(うっとり)」
ピグモン「はうはう~、宙マン、ありがとうなの~♪」
かくして、我らが宙マンの活躍によって、暗黒星雲の怪獣軍団が送りこんだ
衝角怪獣・ナイフヘッドは撃退された。
万事がすべて丸くおさまり、めでたしめでたしの一件落着。
そう、誰もが信じて疑わなかった時……
「それ」は、そこに生じた隙をこそ待っていた。
「クォコココココ……!」
グワーン! ズガガガガーンっ!
「う、うわぁぁぁぁ……っ!!」
ピグモン「はわわわ……ちゅ、宙マンっ!?」
落合さん「ちょっと……ずっこくございませんこと、今の攻撃は!?」
ビーコン「チキショーめっ……
こんなナメた真似すんのは、どこのどいつっスかぁ!?(憤慨)」
宙マン「くぅぅっ……い、今のは、一体……!?」
「はははははは……!」
嘲るような、勝ち誇るような……
高らかな哄笑とともに、宙マンの前へ姿を現した者。
……その高笑いの主は、勿論ヴォイド・ナイトである。
ヴォイドナイト「ははは、どうやら驚いてもらえたようだな。
……そうでなければ、小生が出張った甲斐もない」
ヴォイド・ナイト「宙マンよ、本当の地獄はここから始まると知れ!
カァァァァーッ!!」
おお、見よ! 驚愕せよ!
楯の宝石から放たれる、邪悪な魔力の光に包まれて……
みるみるうちに、等身大から巨大化を果たすヴォイド・ナイト!
みくるん「ああっ、そんな!?」
ながもん「(ボソッと)お約束と、言うには……あまりに……邪悪」
落合さん「あぁもうっ、怪獣退治で一件落着のはずでしたのに……」
ビーコン「どひ~っ、とんでもねーのが出てきやがったっス!」
ヴォイド・ナイト「ははははは……我が名はヴォイド・ナイト!
偉大なるロード・ゼッド様に仕えし、最も忠誠心篤く武勇なりし者……
そして宙マン、貴様の英雄伝説に終止符を打つ者ぞ!」
宙マン「く……ぬ、ううっ……!」
悪の戦士、甲冑の魔人……
遂に、その恐るべき姿を現したヴォイド・ナイト!
果たして宙マンは、この強敵に勝てるであろうか!?