道内某所、荒涼たる“魔境岬”において……
今まさに、我らが宙マンと怪獣軍団との死闘が繰り広げられている。
宙マンの前に姿を見せた挑戦者、四番手は磁力怪獣・アントラー。
巨大な大顎を唸らせ、地中を自在に掘り進んで神出鬼没に現れ消える
アントラーの攪乱戦法に苦戦を強いられた宙マンであったが……。
宙マン「エイヤァァーっ! 宙マン・ミラクル・キック!!」
やったぞ宙マン、大勝利!
……だが、激闘は、この期に及んで更にヒートアップしようとしていた!
宙マン「はぁ……はぁ……はぁぁ……っ……」
これだけの戦いを休みなしで続けてきただけあって……
いかに百戦錬磨の宙マンと言えども、さすがに呼吸が荒くなってきていた。
だが、そんな彼の疲労などお構いなしとばかりに……!
「ふふふふ、ここまでよく戦い抜いた……
敵ながら見事だと褒めてやるぞ、宙マン」
宙マン「(ハッと振り返り)!?」
「ふふふ、ははははは……!!」
突如、崖の上へ……陽炎のように姿を現した黒い影。
怪獣軍団の一員、「邪悪宇宙生命体」の別名で呼ばれる宇宙人・ワロガだ!
ワロガ「ふふふ、その通りだよナレーター君、いかにも私はワロガ!
そして魔王様から、此度の「挑戦」における総指揮官を任ぜられておる」
宙マン「そうか……。
あの果たし状と言い、ここまでの小細工と言い、全てお前が……!」
ワロガ「連戦によって相手を消耗させる、単純だが実に有効な戦術だ。
まんまと罠に嵌ってくれて有難う、間抜けな宙マン君!」
宙マン「抜かせっ!」
怒り、崖の上のワロガめがけてヘッドビームを放つ宙マン!
だがワロガは、瞬間移動によってふっと消え、ビームをかわしてみせる。
ワロガ「ふふふふ、ここだここだ!」
宙マン「(慌てて振り返り)――ッ!」
ワロガ「どうやら足元も、判断力もおぼつかなくなってきたようだね。
ふふふ、それこそ私の望むところだ――」
ワロガ「――あとはゆっくり、貴様を料理してやるまでだ!」
宙マン「いいや、私は負けない。……負けて、なるものかっ!」
ファイティングポーズをとり、颯爽と身構える正義のヒーロー。
頼むぞ宙マン――長く続いたこの戦いに、今度こそ終止符を打ってくれ!
イフ「わははは! 戦えワロガよ、お前の作戦は見事に的中したぞ!
ここまで来れば、恨み重なる宙マンの最後も時間の問題じゃわい!」
ワロガ「ふふははは! 魔王様、あとはこの私にお任せを!」
激突、宙マン対ワロガ!
逆巻く荒波の音をBGMに、荒涼たる岩場で両者の死闘が展開される。
宙マンの消耗ぶりを見てとり、容赦ない猛攻を仕掛けてくるワロガ!
だが、宙マンもまた一歩も怯まず、残された気力と体力で果敢に渡り合う。
ワロガ「ふふはは、まだそんな力が残っていたか!」
宙マン「ああ、昔からの性分でね――
お前のような奴には、体中の血が燃えて力が湧いてくるんだ!」
ワロガ「ふはは、ほざくな!
この私の“マッハ突き”で、お前の体を穴だらけにしてやる!」
宙マン「ぬうっ!」
鋭くとがった両腕の鰭で、猛烈な突きを入れてくるワロガ!
その激しさの前には、宙マンも咄嗟に反撃のチャンスを見いだせない。
ブゥン! と大きく振り下ろされるワロガの唐竹割りチョップ!
その一撃を腕でブロックし……今、宙マンが反撃に転じる。
宙マン「そりゃあーッ! 宙マン・キック!」
ワロガ「(よろめき)うぬっ!?」
二発、三発、連続的に繰り出される宙マンのハイキック!
目にも止まらぬ早技を前にして、今度はワロガが防戦一方となる。
連続蹴りでワロガを怯ませ、更にダメ押しの宙マン・パンチ!
勢いの乗った「重い」鉄拳が、ワロガの腹部へ吸い込まれるようにヒット。
ワロガ「(苦悶)ぐ、ぐぶぅぅ……っ!」
宙マン「はっはっはっ、さっきまでの軽口と余裕はどこへ行った!?」
ワロガ「お、おのれぇぇッ……調子に乗るなよ、宙マン!」
ワロガの腕から迸る強力熱線“アームズショット”!
星人の怒りそのもののような紫色の光線が、周囲に凄まじい爆発を巻き起こす。
「う、うわぁぁぁぁ……っ!」
宙マン「(苦悶)う、うう……っ!」
ワロガ「ふふふ、やはり疲れは隠せないようだな、宙マン」
ワロガ「さぁ、今度こそとどめを刺してやる――行くぞッ!」
宙マン「いいや、まだまだだ……私は、負けないッ!」
宙マン「どりゃあーっ! 宙マン・ショット!!」
気合とともに、不可視の破壊衝撃波を放つ宙マン!
炸裂したその一閃が、突進してきたワロガに痛烈なダメージを与えた。
ワロガ「(苦悶)……ぐぬぅぅ……お、おのれぇぇ……っ!」
宙マン「とどめだ、受けてみろ――宙マン・超破壊光線!!」
両手の間にエネルギーを集中させ、激しいスパークとともに放つ大技。
「超破壊光線」の直撃を受け、火花を散らすワロガのボディ!
ワロガ「ざっ、残念無念……ま、魔王様、お許しを~~っ!!」
やったぞ宙マン、大勝利!
イフ「ぬ、ぬうううっ! 怪獣軍団、必殺必中の挑戦を破るとは……
おのれ宙マン、どこまでも恐るべき男よ!
だが、このままでは済まさんからな……この次こそは見ておれ~っ!」
……などと言う、怪獣魔王のいつもの負け惜しみはさて置いて。
作戦の総指揮官だと言うワロガを倒し、全ての戦いが終わったにも関わらず
「もう、次はいないよなぁ?」と、思わず周囲を見回してしまう宙マン。
……だが、そうしたくなる気持ちはもっともだし、思わずそうしてしまった彼を
果たしていったい誰が責められようか?
宙マン「(安堵)……ふぅ、よかったよかった。……
どうやら今度こそ、本当にやれやれのようだな!」
かくして全ての戦いを終え、家路を急ぐ宙マン。
宙マンファミリーの「いつもの笑顔」と、夕食のカレーの食欲をそそる匂いこそが
孤高の勝利者をねぎらい、讃える、何よりの勲章なのであった。
何はともあれ。
今日は本当にお疲れ様でした、宙マン。
見たか、思い知ったか、宙マンの底力!
今日も堂々、勝利の大団円。
さぁて、次回はどんな活躍を見せてくれるかな?