「お前に傷つけられた僕の面子とプライド……
その命で贖わせてやる、思い知れ宙マン!!」
怪獣軍団の幹部候補生として、将来を嘱望されるバルタン星人Jr。
自信を持って臨んだ作戦と数々の侵略メカを宙マンに粉砕されて
著しくプライドを傷つけられた彼は、遂に自らが前線に立つことで
宙マンに挑戦状を叩きつけてきた。
激闘……死闘……超人戦が繰り広げられ……
そのバトルを制したのは、やはり宙マンの正義の力であった。
バルタン星人Jr「ひょ、ひょえぇぇぇ~っ!
ちゅ、宙マンめ、今度こそは見てろよ……覚えてろ~っ!!」
……などと言う、定番とも言うべき捨て台詞を地球に残して。
勇戦空しく、またしても宙マンにしてやられたバルタン星人Jrは
全身にダメージを受け、ほうほうの体で暗黒星雲に帰ってきた。
イフ「おおっ、戻ったか、バルタン星人Jrよ!」
バルタン星人Jr「う、うううっ……申し訳ございません、魔王様」
バルタン星人Jr「ですが、今度こそ……この次こそは、必ず!
だからこそ魔王様、再度の出撃の機会をこの僕に――」
「ケッケッケッケッ、やめとけやめとけ……
また、無様にやられンのがオチだぜぇ!?」
バルタン星人Jr「(キッと振り返り)だ……誰だっ!
幹部候補生たる僕を侮辱するのは、一体どこのどいつだ!?」
不意に聞こえてきた、どこか嘲るようなその声の主は……
高らかに足音を響かせながら、軍団本拠の大広間に姿を現した!
イフ「おおっ、そなたは――」
バルタン星人Jr「ぐぬぬぬっ、お、お前は……」
バルタン星人Jr「……僕と同じ、怪獣軍団の幹部候補生。
グローザ星系人、“氷結の”グロッケン……!」
グロッケン「ピンポォン、覚えててくれたかよォ!」
グロッケン「お久しぶりでございます、魔王様――
宇宙荒修行の旅から、たったいま帰って参りましたぜェ!」
イフ「うん、うんっ、息災で何よりじゃ!」
怪獣軍団が誇る邪悪の五人衆、人呼んで“ダークネスファイブ”。
バルタン星人Jrと同様、怪獣軍団の若きエリートとして将来を嘱望されており
それぞれが宇宙の各地へ散って、修行に励んでいた彼ら五人の宇宙人――
その一翼を担うのが、かのエンペラ星人に仕えた冷凍星人・グローザムと同じく
グローザ星系の出身者、“氷結の”グロッケン。
宇宙での武者修行先から、いち早く怪獣軍団の本拠地へ帰ってきたのである。
バルタン星人Jr「いや、だがしかし……
武者修行の期間終了は、まだまだ先のはずじゃないか。
修行途中のお前が、何をノコノコと暗黒星雲まで出戻ってきた!?」
グロッケン「ヒュヒュヒュ……お前が不甲斐なさすぎるからさ、お坊ちゃん」
バルタン星人Jr「――何っ!?」
グロッケン「幹部候補生ともあろうお前が、こうも失敗続きたぁ……
不甲斐ないやら、情けないやらで、もう居ても立ってもいられず
俺がこうして戻ってきたってわけよ、魔王様のお役に立つためになァ」
グロッケン「チチチ、俺っちはこれから魔王様へのご挨拶があるんだ。
お前にゃ用はねぇやな、引っ込んでな、お坊ちゃん!」
バルタン星人Jr「(ワナワナ震えて)こ、このぉっ、言わせておけば……!」
イフ「まぁまぁ、グロッケンよ……
帰ってきて早々、仲間との口喧嘩でもあるまい。程々にな?」
グロッケン「懐かしの怪獣軍団で、のんびりしたいのは山々スけど……
でも、安心して俺っちが休むには、一人邪魔者がいるようスねぇ。
……ズバリ、プラネット星の宙マンが!」
イフ「うむ、なかなかのやり手でな――ワシらも手を焼いておる」
グロッケン「なるほど、さっそく修行旅の成果の見せどころってわけですな」
イフ「おお、やってくれるかグロッケン!」
グロッケン「そりゃもう、今こそ魔王様への恩返しの時スよ!」
イフ「よし、ならば行け! 宙マンを倒し、一気に地球を征服するのだ!」
おお――
かくて今また、宙マン打倒の使命を胸に、次なる刺客が解き放たれた。
危うし地球、危うし宙マン!
……が、ひとまずそれはそれとして。
今まさに、怪獣軍団の魔手が迫っていることなど露知らず……
北海道千歳市「宙マンハウス」の住人たちは、呑気な日常の中にいた。
宙マン「いや~、それにしてもひときわ冷えるねぇ、今日は!」
落合さん「今朝からずっと、暖房は最高レベルで入れっぱなしなのですけれど……」
ピグモン「えう~、なのにちっともあったかくなんないの~」
ビーコン「システムの故障か何かっスかねぇ?」
落合さん「まさか……つい先日、業者さんに点検してもらったばかりですのよ」
みくるん「うう、それにしても本気で寒いですぅ~」
ながもん「いくら、北海道でも……これは……おかしい」
宙マン「ふむ……確かに」
落合さん「まさか、またまた……
例のごとく、怪獣軍団の方々の悪ふざけではないでしょうね!?」
ビーコン「たはは、まさかそうそう毎度毎度……」
……と言いかけた、ビーコンのその言葉を遮るかのように!
シュバババーンっ!
「ケッケッケッケッ……!!」
不意に、激しい雪煙を巻き上げ……
何処か陰湿な響きの含み笑いとともに、スーッとその姿を現す異形の巨体。
それは勿論……ダークネスファイブの一員、“氷結の”グロッケンだ!
みくるん「(怯えて)ああっ、やっぱり、今度もやっぱりですぅ!」
落合さん「うぅ、単なるあてずっぽうのつもりだったんですけれど……(汗)」
ビーコン「しっかり的中しちゃうのが、このシリーズのヤなとこっスよねぇ!」
宙マン「その姿……君は、グローザ星系人だな!?」
グロッケン「ケッケッケッ、おうよ、俺っちは人呼んで“氷結の”グロッケン。
怪獣軍団の幹部候補生、“ダークネスファイブ”の一員さ!」
宙マン「そうか、そういう事か……!」
グロッケン「同じ幹部候補生でも、甘ちゃんのバルタンJrとは一味違うぜ。
この千歳を氷漬けにして、前線基地を築きあげる様を見せてやる――
そうして地球はアッと言う間に、怪獣軍団のものになるってわけさァ!」
みくるん「ふぇぇん、そんなの見せてくれなくて結構ですぅ~」(
グロッケン「ケッケッケ、悪ぃが俺ァもう決めたんだ、断固やるってな!」
イフ「おおっ……その意気だ!
さすがはダークネスファイブ、ワシらの誇る未来の幹部候補生だけはある。
頼むぞグロッケン、お前の力を存分に奮え!」
グロッケン「ケッケッケッ、ハナからそのつもりでさぁ、魔王様!」
怪獣魔王の命を受けて奮い立ち、進撃開始するグロッケン!
迫り来る巨体に、慌てて逃げ出す人々。
ピグモン「はわわ、大変! 宙マン、なんとかしてなの~!」
宙マン「ようし、ここは一発――」
落合さん「(その言葉を遮って)……いえ、少々お待ちを、お殿様!」
ビーコン「防衛隊の戦闘機が来てくれたっス、頼んだっスよ~!」
大空を見上げ、歓声をあげる人々――
防衛隊の戦闘機部隊が、グロッケンめがけて千歳基地から発進したのだ。
戦闘機編隊によるレーザー光線一斉攻撃!
だが、宇宙武者修行で鍛え抜かれたグロッケンのボディは、相次ぐ光線の直撃にも
傷つくことさえなく、全く怯む様子を見せない。
グロッケン「ケッケッケッ……今度は、俺っちがお返しする番だな!」
「……う、うわぁぁぁ~っ!?」
グローザ星系人たちが「冷凍星人」の異名で呼ばれ、怖れられる所以……
グロッケンの口から勢いよく吐き出される、絶対零度の冷凍光線!
それを浴びた戦闘機が一瞬にして凍りつき、次から次へと墜落させられていく。
みくるん「ああっ、やられちゃったぁ!」
ながもん「今回も、また……相手が……悪かった」
ビーコン「どひ~っ、あの宇宙人、ただもんじゃないっス!」
グロッケン「ケッケッケッ、そうとも! 俺っちは誰にも止められねぇぜ!」
口から冷凍光線を吐き散らし、大暴れするグロッケン!
直撃を受けたものがみるみる凍りつき、凍てつく突風で人々が吹き飛ばされていく。
ビーコン「(目を回して)ハンニャラ、ヒ~っ……」
ピグモン「はわわわ、ビーコンちゃん、大丈夫!?」
落合さん「(唇を噛み)ああ、もうっ、何てことでしょう……
このままでは、千歳氷河期待ったなしですわ!」
みくるん「あわあわ……そんなの、そんなの厭ですぅ~!(涙目)」
宙マン「(頷き)ようし、そうなると私の出番だな!
宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、荒れ狂うグロッケンの前に舞い降りる!
宙マン「トゥアーッ! 宙マン、参上!
グローザ星系人グロッケン、そのサービスは余所でやってくれたまえ!」
ズ、ズーンっ!!
落合さん「ああ、何てホットなお殿様の雄姿でしょう!(うっとり)」
ビーコン「こうなりゃもう、アニキだけがオイラたちの頼みの綱っス!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
グロッケン「ケッケッケッ……今までの怪獣とは訳が違うぜ、俺っちはよ!」
宙マン「なんの、お前も他の連中同様に返り討ちだ!」
勇壮たるファイティングポーズで、敢然と身構える宙マンーー
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ!
激突、宙マン対“氷結の”グロッケン!
真冬の街が、一気にヒートアップしたかのような錯覚さえ感じさせる
荒々しく烈しい闘気のぶつかりあいが空気を、大地を揺さぶる。
両腕のカッターをひらめかせ、猛然と斬りつけてくるグロッケン!
嵐の速さで襲い来る鋭利な一閃をかわしつつ、宙マンも怯むことなく
相手の隙を伺い、果敢に接近戦を挑んでいく。
ガキーン! バキーンっ!
両者の鉄拳が幾度となく交錯し、周囲に凄まじい打撃音が響き渡る。
さすがに宇宙武者修行を経ただけあって、その強さはなかなかのもの――
グロッケンの猛攻に押されたかたちで、じりっと後退を余儀なくされてしまう
我らが英雄、宙マンである。
宙マン「――くッ!」
グロッケン「ケッケッケ、ざまぁないな宙マン! これでもくらえ!」
口から冷凍光線を吐き出すグロッケン!
得意の華麗なる回転戦法によって、何とかこれをかわしていく宙マンだが……
グロッケンの冷気は、そんな彼を執拗に狙って吐き散らされ続ける。
狙いの外れた冷凍光線が、街のあちこちを一瞬で凍りつかせていく――
げに恐るべきは、グローザ星系人の操る冷気の威力!
みくるん「あっ、宙マンさんが危ないですぅ!」
ながもん「あの冷凍光線を、まともに……受けたら……」
ビーコン「いくらアニキが無敵でも、只じゃすまねっスよぉ!」
落合さん「そんな……お殿様に限って、そんなことは!」
ピグモン「はわわわ、宙マン、気を付けてなの~!」
グロッケン「ケッケッケ、これで終わりにしてやるぜィ!」
宙マン「なんの!」
プラネット星人の得意技である宙マン・プロテクションが、グロッケンの冷気を
真っ向から受け止めて無力化してしまう。
グロッケン「(驚き)な、何っ!?」
宙マン「行くぞ、“氷結の”グロッケン!」
ジャンプ一閃、大空に舞う宙マンの巨体。
華麗な空中回転で勢いをつけ、急降下して繰り出すその技の名は!
宙マン「エイヤァァーっ!
宙マン・ミラクル・キック!!」
出た、電光石火の必殺技!
ミラクルキックをまともに喰らい、グロッケンが悶絶してブッ倒れたところへ――
宙マン「とどめだ!
宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、グロッケンを直撃!!
グロッケン「グァァァッ、ふ、不覚をとっちまったぜ~ィッ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
みくるん「わぁっ……やりました、宙マンさんの完封勝ちですぅ!」
ながもん「さすが、宙マン……任せて……安心」
ピグモン「はうはう~、宙マン、ありがとうなの~♪」
イフ「おのれェェ……またしても。またしても宙マンめが!
だが良い気になるなよ、最後に笑うのはワシら怪獣軍団なのだ……
ダークネスファイブは、あと四人が控えておるわ……!」
かくして、我らが宙マンの活躍により……
ダークネスファイブの一番手、“氷結の”グロッケンの野望は挫かれた。
みくるん「宙マンさん、どうもお疲れ様でしたぁ!」
ながもん「誰もが……納得の、良い仕事。……グッジョヴ」
宙マン「グローザ星系人も追い払ったし、これで少しは暖房もきくように……
……とは言うものの、やっぱりまだまだ寒いねぇ!」
ビーコン「ヒヒヒ、そう言う底冷えする時こそ……
肌と肌とを密着させて、お互いの体温で直にあっためあうに限るっスよ!
てなわけで早速、オイラと落合さんとで実践の上でのお手本を……」
げ し っ !
落合さん「……ッ!!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、無言の怒りは心の臓まで冷えちまうっスぅぅ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
怪獣軍団が誇る、腕自慢の若手ホープ……
悪の猛者連・五人衆、人呼んでダークネスファイブ。
その二番手による、次なる挑戦の日はいつか!?