ただ怪獣を倒す無機質なマシーンと言うだけではない「優しさ」……
どのウルトラマンにも共通して流れる、情感に訴えるハートウォームさを
５話めにして前面に押し出してきたシリーズ最新作『ウルトラマンデッカー』。
スフィアバリヤーによって地球から出られなくなり、閉塞した状況に陥ったのは
何も私たち地球人だけではなく……不慮の事故によって地球に不時着を余儀なくされ
母星からの助けを待っていた一人のピット星人の少女もまた同様だった。
そんな彼女の境遇に共感し、異郷の地における彼女の心の支え・拠り所ともなっていた
宇宙怪獣エレキング（ここでは「エリー」という個体名で呼称）を救おうとする
イチカ隊員の行動は、GUTS-SELECTの隊員と言う「組織人」としてのみ見るならば
明らかにでっかいバッテンマークがつくものの、それに対して一定の叱責はしつつも
むしろ共にエレキングを救う（空腹を充たしてやる）ため、イチカの判断に対して
一定以上の理解を示してくれたムラホシ隊長の采配の「融通のきき具合」が
未熟な若手隊員たちを温かく見守る『デッカー』の作風ならではの良さとして
この番組の独自性アピールに繋がっていましたし、ともすれば「甘い」その判断が
単なるお題目にならずに済んだ点でも、これまでの四話分における地に足の着いた
地道なキャラ描写の積み重ねがしっかり活きていたと思います。
ガシャポン HG ウルトラマン31 湖のひみつ編 (ピット星人A入り)6種
やー、でもコレね、他のウルトラシリーズ……
例えば『レオ』あたりだと、ダン隊長や同僚隊員から頭ごなしに叱責されたあげくに
謹慎処分だったりシャレにならない悲劇的結末を迎えてもおかしくなかったとこだけに
こういうところで出る「番組ごとのカラー」は改めて興味深くありますね～。
バンダイ(BANDAI) 05 エレキング ウルトラ怪獣シリーズ 3歳以上
さて、それはさておき、今回のゲスト怪獣であるエレキング（エリー）。
オリジナルの『ウルトラセブン』３話ではあくまでピット星人の地球侵略怪獣として
無機的かつクールな印象もあった彼（彼女？）が、本日放送分の『デッカー』では
悪意のないペット怪獣として、愛嬌たっぷりの存在感をアピール……
ウルトラマンデッカー DXウルトラディメンションカード02 ウルトラマンデッカー ミラクルタイプセット
そんなキャラクター性の乖離に対してご批判の声もあるのではないかと思いますが
これに関しては『デッカー』に登場したこの個体「は」そうなのだ、ということで
受け止め方のスイッチ切り替えも十分可能だと思いますし……
何より『セブン』から５５年の時を経て、硬軟のキャラクターを演じ分けるに至った
エレキングの芸域の広がりっぷりをこそまず褒めるべきではなかろうか、と（笑）。
で、悪意の有無はともかく、エネルギーの過剰摂取によって体の制御がきかなくなり
半ば狂ったように暴れ出してしまうエレキング……と、そういう状況に陥らなければ
我らがウルトラマンデッカーの出番もないまま終わってしまうわけで（笑）。
ウルトラアクションフィギュア ウルトラマンデッカー ミラクルタイプ
デッカーの登場とともに、特撮パートとが夕日・落日の過程をすっとばして
一気にナイトシーンになってしまうのには、若干のせっかちさも感じましたけれど
そのぶん暗闇の中において、全身から絶えず電気エネルギーを迸らせながら荒れ狂う
手の付けようがないエレキングのかつてないパワフルさと、それを表現するうえでの
凄まじいばかりの光学合成、そしてそれをも上回るミラクルなサイキックパワーで
事態を収拾するデッカーの新形態・ミラクルタイプの初お披露目のはったり具合も
共に視覚的にわかりやすく、鮮烈な形で活きましたね。
……まぁ、そんなエレキングの「噛ませ」として、『セブン』第３話以上の速さで
「瞬殺（死んでないですが）」されたミクラスは気の毒でしたが（苦笑）！
そしてラストはカイザキ副隊長が結構ノリノリ（にしか見えない！）で講師を務める
「エレキングへの正しい餌のあげ方」の動画を見ながら、元の小さなサイズに戻った
幼獣エリーへと餌の電池をやっているイチカ＆ピット星人ユウコちゃんとの
和気藹々な様子でクロージング。
「地球の外に出ることも、逆に誰かが来ることも叶わない閉塞的状況」……
そんな中だからこそ絶えず外界を夢見、突き進むフロンティアスピリッツと同時に
自らの足元にある「小さな絆」もまた慈しみ、守っていかなければならない。
ウルトラヒーローシリーズ 88 ウルトラマンデッカー ミラクルタイプ
何かとシリーズ構成上のスケジュール過密な「ニュージェネレーションズ」以降の
『ウルトラ』において、必ずどこかでやっておかなくてはならないこの手の挿話を
このタイミングで挿入した「正しさ」まで含めて、心地よい余韻の５話でした。
