「ナックル星人」や「ババルウ星人」など、初登場時において明確な「悪役」だった
宇宙人キャラに、また別のキャラクター性の切り口でスポットを当てること……
知的生命体の個体差、と考えれば当然の事とは言え、トータルイメージ的に見るなら
それはキャラ・コンセプトの散漫さと混乱をも招きかねない諸刃の剣なわけですが。
翻って、今朝の『デッカー』9話。
『ダイナ』登場の宇宙格闘士・グレゴール人の同族を、加齢に伴う体力面などの理由で
そろそろ衰えのきつつあるロートル的存在として登場させる、ある意味においては
非常に「ニュージェネ・ウルトラらしい常套のアレンジ」を施しつつ……
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「スフィアのために地球から出られなくなった宇宙人」と言う本作ならではの事情を
上手く本筋のガジェットとして活かしつつ、人間の姿をとって地球で細々と暮らす
グレゴール人グレースとその娘・ミカとの情愛やグレース自身の中の格闘家の誇りを
GUTS-SELECTの新装備実装試験やゲスト怪獣とのパワフルな渡り合いなどとも絡めて
無駄なく、見やすく描いてくれて、結果なかなかの好編に仕上がったかと思います。
良くも悪くも「見せたい画」と勢いを最優先するのが坂本演出の特徴なんですが
今回はその熱量と脚本のコンセプトが上手く噛み合ってくれたな、と。
で、そんな熱さの中で語られる、「今も格闘家としての父を誇りに思っている」
グレースの娘・ミカの明るいキャラクター性や、その思いを真っ向から受け止めて
彼との「試合」に臨もうとするGUTS-SELECTの姿など、「燃え」を活かすための
情のあるドラマパートのしみじみした味わいがまた良いんですよねぇ――
そんなストレスなく見られる安定感があったればこそ、今回初めて示された
「実はムラホシ隊長は料理上手で、いつも隊員たちの食事をも作っていた」と言う
驚き&納得の新事実にも、素直にクスッと出来ようと言うもので。
にしても、今回グレゴール人グレースの人間態を演じてくれた中村浩二氏……
かつて『ティガ』『ダイナ』時代のスーツアクターとして、その力強い体格と
演技力とをフルに発揮して数々の名勝負を繰り広げてくれた中村氏。
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そんな彼のキャスティングは、多分にファンサービス的な意味もあるのでしょうが
リタイヤ寸前の身としてのショボクレっぷりと今なお熱い宇宙格闘士の誇りとを
見事に同居させた演技力の確かさと……
そして何と言ってもあの肉体美、あの筋肉の説得力とが半端じゃありません。
ねぇ、皆さんもご覧になりましたでしょ、あの二の腕(笑)!!
一方、今回の敵役たるスフィアレッドキング。
キャラとしての印象度ではややグレゴール人に食われ気味だった感もありましたが
まず前フリとして「普通のレッドキング」を先に登場させておく丁寧な物語運びと
デッカー・ストロングタイプでも抑えきれない超怪力のインパクトが相まって
「ヒール役」を見事に務めおおせてくれた印象は決して悪くないです。
ただクライマックス、デッカーがウルトラデュアルソードの力を奮って
爆発寸前のところでグレースを救出するシーン……玩具としてのギミックを
丁寧に見せなければならない販促ノルマがやや足を引っ張ったかたちとなって
テンポがややまだるい感じになってしまったのだけが残念要素かも。
そして今回の戦いを通じて、有効性が実証されたGUTSグリフォンの強化武器
「ハイパーソーンレーザー」が、未来への希望と共に一抹の不穏の種をも
同時に撒き散らしてしまった可能性をも示唆しつつ……
最後は一命をとりとめたグレースが、TPUの関連病院施設に入院できるように
ムラホシ隊長が取り計らっていた、と言う形での心温まるクロージング。
ああよかった、これでまた安心して『デッカー』を楽しめそうです――
……正直、前回はかなりその辺アブなかったんですが(苦笑)。