「ヤプール人は怖ろしい奴だ。
残忍な奴だ。
地球を侵略するためなら手段を選ばない、
何だってやるのだ。
それがまさに、ヤプール人なのだ」
(『ウルトラマンA』第23話・本編ナレーションより抜粋)
実態を持たず、怨念だけが異様に肥大化した「異次元の悪魔」……
同時にウルトラシリーズではお初となる「レギュラー敵」でもあった、ということで
そんなヤプールが、「トリガー&デッカーのいるこの地球」に初お目見えな今回。
かたくなな復讐の念に囚われ、「見える世界」が狭まっているアガムスの怨念に
甘くつけこみ、ささやきかけて共闘を呼びかける……と言う出現と接近の仕方が
まず「ヤプールらしく」て好印象。
近年ではすっかりお馴染みになった巨大ヤプールの姿ではなく、四次元世界に
不気味に揺らめいていた、あの「紫色のとんがり頭」の姿が『A』本放映時いらい
50年ぶりの復活をとげ、新造の意匠に絶えずソラリゼーション処理がかけられる事で
あの得体の知れなさも大切に堅持され、『A』とヤプールを愛する一人としては
そんなビジュアル面でも大いに膝を打ち、納得せずにはいられません(笑)。
ウルトラマンデッカー 電脳魔人 DXテラフェイザー(対象年齢:3歳以上)
また同時に、未来人デッカー・カナタの願いであり、懇願……
「アガムスを救ってやってくれ」と言うその言葉を胸に抱き、逡巡を続ける
カナタの姿が、過去にカルミラを救ってみせたマナカ・ケンゴの事も絡めつつ
無理なく、自然に言及&描写されているのも本話脚本のよさで、これについては
脚本担当のハヤシナオキさん、凄く良いお仕事をなさったな、って。
もちろん現時点ではまだまだ「フリ」の段階で、「あんたを救いたい!」と言う
カナタの心からの叫びに耳を貸すこともなく、アガムスはかたくなにそれを拒んで
地球とデッカーの「光」を焼失させることに固執し続けるわけなんですが。
そんなじれったくもハラハラ、ドキドキな本編の人間模様をあざ笑うように
ヤプールの尖兵として憎々しい暴れっぷりを見せてくれた超獣アリブンタ。
デッカー・フラッシュタイプの攻撃をことごとく跳ね返し、再登場した
テラフェイザーとの挟み撃ちによってヒーローを苦しめるパワフルな描写には
1972年当時の小学館学年誌で盛んに喧伝された「怪獣よりも強い超獣」という
異次元の生物兵器ならではの邪悪で怜悧な「造られたいのち」ならではの
クールな強さの魅力がいっぱいで……フラッシュ・ストロング・ミラクルに加えて
最強形態ダイナミックまでの全てのタイプチェンジを万遍なく見せきってしまう
坂本演出ならではのパワフルさとタクト捌きの適切さとが上手い具合に作用して
僕みたいな「怪獣大好きっ子」のハートにジャストミート(笑)。
「ギロン人&アリブンタの正面衝突」をテラフェイザーとの組み合わせで再現する
そんな小ネタの余裕まで含めて、今回は実に満足度の高い殺陣パートでしたね。
ウルトラマンA 美川のり子×西恵子 写真集 BEAUTIFUL WARRIOR
そして、やはり今回特筆すべきはクライマックス。
テラフェイザーの機内から廃墟の街に投げ出されたアガムスを救おうとして
自らの巨体を盾にして、アリブンタの爆発から彼をかばうデッカーでしたが
実はこのアガムス、本物ではなくヤプールの変身体で……
盾になったことで体力面で消耗したデッカーの隙を突き、異次元空間を発生させ
そのままデッカーを引きずり込んでしまう、と言う急展開!
この絡め手、この「優しさ」につけこみ、嘲笑うかのような厭らしさ!
正にそれこそが「ヤプールのヤプールたる所以」であり、魅力でもあるわけで
そんなヤプールらしい的確な描写に、思わず快哉を叫んでしまいました。
……って、ヒーローが大変なことになって喜んでる場合じゃないんですが’(笑)
それもまた、次回再び実現されるトリガー&デッカー共闘編への布石ということで
坂本&ハヤシコンビの剛腕に、色んな意味で(と言葉を濁す)ハラハラしつつも
まずは次回放映を楽しみに待ちたいと思います。