……寒い、とにかく寒い!
真冬なのだから当然とは言え、それでも毎日の寒さが身に堪える
そんな北海道千歳市の日々。
加えて、今日はあいにくの曇り空。
まるで地上に押し込められるかのような、重たい圧迫感とともに
寒々とした気持ちにも拍車がかかろうと言うもの。
さてさて、そんなちょっぴり憂鬱な冬の一日。
お馴染み宙マンファミリーは、どんな風に過ごしているだろう?
宙マン「はぁ~、あったまった、あったまった!」
宙マン「いい風呂だった、すっかり堪能させてもらったよ」
ビーコン「やっぱね~、日本人は風呂っスよね!」
落合さん「日本人……って、あなた怪獣でしょう?」
ビーコン「ヒヒヒ、お約束、お約束っス♪」
宙マン「さてさて、お風呂を楽しんだ後は……
食事の方も、体の芯からあったまれるものがいいねぇ」
落合さん「了解ですわ、お殿様!……
そうなると、今夜は鍋料理一択ですわね」
ビーコン「鍋いいっスねぇ! 何度食っても飽きないっスよ」
落合さん「ふふふ、ですわよねぇ。
ちょうど、小樽産の良いのが手に入っておりますし……
あんこう鍋、と言うのはいかがでしょう?」
宙マン「ほう、茨城名物のアレかね?」
ビーコン「あー、大洗の戦車道女子たちも大好物の!」
ピグモン「前に食べたけど、すごく美味しかったの~」
落合さん「ややグロテスクにも思える、深海のお魚ですけれど……
一度その美味しさを知ってしまいますと、途端にあの肉塊が
至上の価値を伴って艶めかしく見えてくるのですから……」
宙マン「あの身の弾力と旨味、たまらないよ!」
ビーコン「そしてそして、汁はコクある味噌仕立て!
心地よい食感と旨味は、まるでオイラの唇のように……
あ、それとも、落合さんのおっぱいっスかねぇ?」
落合さん「だーっ、私に同意を求めないで下さいっ!(汗)」
あったかお鍋への期待だけで、寒さも吹き飛ぼうかというもの。
……だが、ちょうどその時であった!
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラッ!
落合さん「……あ、あらあらあらっ、これは!?」
ピグモン「きゃああんっ、地震なの、おっかないの~!(涙目)」
ビーコン「どひぇぇ、こ、これって、まさかまた……!?」
すわ何事と、慌てて家を飛び出した宙マンたちの目の前で!
大地を引き裂き、ビルを崩す、凄まじい大地震。
そしてまた――やっぱり今日も、千歳の街に現れた恐怖の大怪獣。
今回の悪の使者は……こいつだ!
「ゴワォォォ~ンっ!!」
ピグモン「あっ、怪獣なの!」
落合さん「う~ん、やっぱりそうだったんですのねぇ!」
ビーコン「……おろ? アイツ、前にも何度か見たような……」
宙マン「(頷き)凶暴怪獣・アーストロン……だったかな!?」
「ゴワォォ~ンっ、そりゃ俺の親戚の叔父貴だ。
俺の名前は凶猛怪獣・ギーストロン……
強さとワルさじゃ、親戚たち以上だぜ!」
ビーコン「どひ~っ、そんな自慢げに言われても……」
宙マン「で、そのギーストロン君が……
この寒い中、いったい千歳に何の用だね?」
ギーストロン「ゴワォォ~ンっ、アホか宙マン!
そう言うのを“愚問”ってんだぜ――」
ギーストロン「ド派手な大暴れとブッ壊し、これ以外に何があるよ!?」
ビーコン「うわ~、断言されちまったっス!(汗)」
落合さん「……それも、一番聞きたくなかった答えですわ」
宙マン「……うぬっ!」
ジャタール「ヒュホホホ……ご覧下さい、魔王様。
いかがでしょう、ギーストロンの猛々しい雄姿!
イフ「うむ、いかにも強そうで良いではないか!」
イフ「暴れぶり、とくと見させてもらうぞ……
さぁ行け! 徹底的に破壊するのだギーストロン!
お前の元気で、真冬の寒さも千歳の街も吹っ飛ばせ!」
ギーストロン「ゴワォォ~ンっ! どうぞお任せを、魔王様!」
怪獣魔王の命を受け、意気揚々と進撃開始するギーストロン!
迫り来る巨体を前に、たちまち街は大パニックへと陥った。
ギーストロン「ゴワォォ~ンっ、てなわけで、シクヨロ~っ!」
落合さん「……ちょ、そんなまとめ方アリですの!?(汗)」
ビーコン「どひ~っ、いつもながらの大迷惑っス~!」
大怪獣出現により、街はたちまち大パニック!
だが、この緊急事態に際して……
ギーストロンの進撃を阻むべく、航空防衛隊の空の精鋭たちが
ビーコン「おおっ、航空防衛隊が来てくれたっスよ!」
落合さん「頼みますわよ~、皆様方。
これで毎回、けっこう本気で期待しているんですから!」
ピグモン「はうはう~、おじさんたち、頑張ってなの~!」
「ようし……全機、一斉攻撃開始っ!」
大空の戦闘機編隊から叩きこまれる、ロケット砲の一斉攻撃!
だが、全くびくともしない凶猛怪獣。
ギーストロン「ゴワォォ~ンっ、このギーストロン様をナメるなっ!」
ギーストロンの体内に蓄えられたマグマ・エネルギーの高まりが
瞬間的に、強烈な電磁波を発生させ、急速な凝縮・収束とともに
頭部の角の先端から、レーザー光線となって迸った!
「う、うわぁぁぁっ……!!」
最新鋭機をもやすやすと斬り裂く、剃刀のごとき威力!
勇戦空しく、戦闘機隊は次々に撃墜されていく。
ギーストロン「ゴワォォ~ンっ、そらそら、どんどん行くぜィ!」
勢いに乗って、レーザー光線乱射のギーストロン!
その大暴れで、建物が次々に切り裂かれ、破壊されていく。
落合さん「あらあらまぁまぁ、何て乱暴な!」
ビーコン「どひ~っ、もうダメっス、おしまいっス!(汗)」
ピグモン「はわわ……宙マン、宙マン、なんとかしてなの~」
宙マン「(頷き)おのれ、もう許さんぞ!
宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、ギーストロンの前に舞い降りる!
宙マン「トゥアーッ! 宙マン、参上!
平和を乱す無法者、この私が懲らしめてやる!」
ズ、ズーンっ!!
落合さん「よろしくお願い致しますわね、お殿様!」
ビーコン「こうなったらもう、アニキだけが頼みの綱っス!」
ピグモン「はうはう~、宙マンにまかせちゃうの~!」
ギーストロン「ゴワォォ~ンっ、賑やかで結構なこったな、宙マン。
……そのギャラリーの目の前で、お前を地獄に送ってやるぜ!」
宙マン「いやいや、痛い目を見るのはお前の方さ!」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ。
ギーストロン「ゴワォォ~ンっ、行くぜ宙マン!」
宙マン「そらっ、どこからでも来い、勝負だ!」
真っ向激突、宙マン対ギーストロン!
重たい曇り空の下、巨大な両者の死闘は早くもヒートアップ。
全身からニョキニョキと生えた、鋭利で物騒な角……
持ち前の荒い気性とも相まった、ギーストロンの攻撃は苛烈!
さしもの宙マンも、迂闊に近づけば大怪我必至だ。
慌てず冷静に、磨き抜かれた格闘技の冴えで渡り合い……
ギーストロンの懐へと入りこみ、隙を見出さんとする宙マン。
宙マン「それっ、こいつを受けてみろ!」
出た、宙マン得意のストレートキック!
これを食らっては、ギーストロンもよろめかずにはいられない。
ギーストロン「ぐうぅっ……野郎っ、味な真似を!」
宙マン「どうだギーストロン、正義のキックに怖れをなしたか!?」
ギーストロン「ゴワォォっ……なめやがって、なめやがって!」
落合さん「(ハッとして)あらまぁ、あのモーションはっ!」
ビーコン「ありゃ何か、ヤバい前触れじゃないっスか!?」
ギーストロン「ゴワォォ~ンっ、その通り~!」
電磁エネルギーを収束させ、一本角から放たれるレーザー光線!
その威力が、宙マンの周囲に凄まじい爆発を生じさせる。
ズガーン! グワーンっ!
爆風と衝撃波、高熱に煽られて、大きくよろめく宙マン。
その隙を逃さず……
角を振りかざして突進してきた怪獣の、殺人頭突きがヒットした!
「う、うわぁぁぁぁ……っ!」
落合さん「ああっ……お、お殿様っ!?」
ビーコン「マジやばいっスよ、このままじゃアニキが……!」
ピグモン「はわわ、宙マン、まけないでなの~!」
宙マン「(苦悶)うう……うっ……!」
ギーストロン「ゴワォォ~ンっ、とどめだ宙マン!」
猛然、宙マンへと突進してくるギーストロン!
「なんの、負けるか!
デリャァァーっ! 宙マン・ショット!」
宙マンの気合とともに、不可視の衝撃波が飛ぶ!
その直撃に、ギーストロンの動きが止まったところへ――
宙マン「とどめだ!
宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、ギーストロンを直撃!!
ギーストロン「む、むむむ、無念だぁぁ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
そして、怪獣ギーストロンが斃れるのと同時に……
ヒーローの勝利を祝うように、太陽と青空が覗いたのであった。
ビーコン「いえっふ~、やっぱウチのアニキは頼れるっスねぇ!」
落合さん「えぇ、何たって私たちのお殿様ですもの!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、かっこよかったの~♪」
イフ「うぐぐぐっ……おのれ、またしても宙マンめが!!
だが、ワシらの威力、真の恐ろしさはこんなものではないぞ。
今に見ておれ、必ず仕返ししてやるかなら!」
……などと言う、怪獣魔王の負け惜しみはさて置いて。
かくして我らが宙マンの活躍により、大怪獣ギーストロンは撃退され
千歳の平和は無事に守り抜かれたのであった。
落合さん「お殿様、どうもお疲れ様でした!」
宙マン「やれやれ、これでどうにか一件落着だね」
ビーコン「おかげさんで、み~んな安心して過ごせるっス!」
ピグモン「はうはう~、宙マンのおかげなの~」
ビーコン「っと、安心したところで……」
落合さん「(頷き)改めましての、あんこう鍋ですわね?」
ビーコン「チチチ、それもいいんスけどねぇ……」
落合さん「……はい?」
ビーコン「ヒヒヒ、せっかく空も綺麗に晴れ渡ったことっスし……
あの青空みてーに、気持ちいいことしようって言ってんスよ!
具体的には、オイラと落合さんとがベッドの上で……」
げ し っ !
落合さん「ねーい、やめて下さい、おぞましい妄想はっ!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、その妄想を現実にしたかったんスぅぅ~」
落合さん「……なおの事ノーサンキューですっ!」
宙マン「はっはっはっはっ」
空は青空、とは言え街を往く北風は冷たい……
さぁ、早く家に帰るがいい、宙マンたちよ。
暖かな部屋と、暖かなあんこう鍋とが君たちを待っている。
怪獣去って、曇りのち晴れ……
すかっと爽やか、地域のヒーロー。
宙マン、次回も千歳の平和は任せたぞ!