のどかな、のどかな、午後のひととき――
そんな穏やかな時間の中にある、ここは北海道千歳市・ほんわか町。
こちら、ご存じ千歳の「宙マンハウス」。
血相変えて訪ねてきたのは、これまたおなじみの……。
「ふぇぇん……宙マンさん、宙マンさ~んっ!」
宙マン「やぁやぁ、いらっしゃい、みくるんちゃんにながもんちゃん!」
落合さん「縁側で冷たいお飲み物でも……と言う感じではなさそうですわね。
何か変わったことでもございまして?」
みくるん「(頷き)な、なんか、いるんです!
……変なって言うか、様子がおかしいって言うか……」
ながもん「(も頷き)いわゆる、ひとつの……不審者」
ピグモン「はわわ、フシンシャ!?」
落合さん「不審者ですって!?」
ビーコン「……や、落合さん、どうしてそこでオイラを見るんスか!?(汗)」
宙マン「みくるんちゃん、もう少し詳しく聞かせてくれるかな」
みくるん「私たちが、いつも出かけてる山へ木の実を採りに行ったら……
何だかこの辺じゃ見慣れない人が、草むらでごそごそ何かやってたんです。
目が合ったら、すっごく怖い目でギロッと睨みつけて来て……」
ながもん「それで、慌てて……逃げてきた」
宙マン「ふむ、なるほど……」
落合さん「清々しいまでに典型的な不審者、としか言いようがございませんわねぇ」
落合さん「我が家にも格好のサンプルがございますから、よく分かりますわ」
ビーコン「だ~、かぁ~、らぁ…
そこでいちいち、オイラの方をチラチラ見るの禁止っス!(涙目)」
落合さん「ビーコンさんはともかくとして……お殿様、この件、どう思われます?」
宙マン「確かにクサいね――
何かある前に、ちょっと様子見しておいた方がいいかもしれないな」
ビーコン「ドイヒー! オイラへのフォローは一切なしっスか!?(泣)」
……などと言う、ビーコンの不平不満はさて置いて……
物語の方は、あくまでも本筋に沿ってサクサク進むのでどうか悪しからず。
さて、こちらは、コロポックル姉妹が不審者を目撃したと言う山の中。
生い茂る原生林の草むらをガサガサと掻き分けて、その姿を現したのは!
「クワッカッカぁぁ~っ!!」
甲高い鳴き声と共に現れたのは、もちろん怪獣軍団の一員。
頭脳派エリートであるガッツ星人にしては珍しく、若い頃には怪獣星で
喧嘩三昧の青春を過ごしていた、と言う腕自慢の無頼派だったりする。
イフ「作戦の準備は順調に進んでおるか、ガッツよ!」
ガッツ「クワッカッカ~、既に整っております、魔王様!」
ガッツ「あとはこの俺が、スイッチひとつ押しさえすれば……
密かに設置した発火装置が作動して、千歳の山に火災が発生致します。
炎はみるみる燃え広がり、渦を巻いて、千歳を地獄に変えるでしょう」
イフ「ううむ、素晴らしい! “千歳ファイヤー作戦”と名付けよう!」
ガッツ「遥かなる暗黒星雲からどうぞご覧下さい、魔王様!
千歳ファイヤー作戦が成功し、この街が焼け野原と化す様を――」
「おおっと、待った待った……
その物騒な作戦、ちょっと待ってもらおうか!」
ガッツ「(慌てて)クワワッ、だ、誰だっ!?」
不意に響いてきた凛たる声に、驚いて振り返るガッツ。
次の瞬間、華麗な空中回転とともに舞い降りてきたのは……もちろん!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
この私がいる限り、千歳の平和を乱す真似は許さんぞ!」
ガッツ「クワワァ~、おのれ宙マン、またしても邪魔だてを!」
宙マン「なるほど……これは確かに、疑う余地のない不審者だ。
それにしても、山の原生林につけ火とは……
怪獣軍団もいよいよ、作戦のネタに詰まってきたと見えるな!?」
ガッツ「クワッカッカ~、ほざくな宙マン!
こうなりゃ“ファイヤー作戦”の前に、まずはお前を血祭にあげてやる!」
宙マン「受けて立つとも、どこからでも来い!」
全身に漲る怒りをパワーに変えて……
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン。
草木の生い茂る千歳の原生林、そこからほど近い荒れ地を舞台にして
今日もまた、スーパーバトルの幕が開く。
片や正義、片や悪、人知を超えた超人戦がダイナミックに展開。
さぁ行け宙マン、宇宙星人ガッツをやっつけろ!
ガッツ「クワッカカカ~、くたばれ、くたばっちまえ宙マン!」
宙マン「なんの、これしき!」
鳥類のそれを彷彿させる鋭利な両手の爪で、ひっかき攻撃を仕掛けてくるガッツ。
その一閃をかわし、受け流しながら、宙マンも怯むことなく挑みかかっていく。
ガッツ「クワカカッ、しぶとい奴め!」
宙マン「どれ、そろそろ私もお返しさせてもらうぞ!」
おもむろに跳躍し、ジャンプキック一閃!
胸板に炸裂したその蹴りが、ガッツを地面にブッ倒れさせる。
宙マン「どうだ、参ったか!
恐れ入ったなら、悪事はやめて大人しく――」
ガッツ「クワワワッ、なめやがって! これでもくらえ~!」
不意に、ガッツの両目から放たれる怪光線。
怒りのこもった悪魔の一閃が宙マンに命中し、その動きを鈍らせる。
宙マン「ううっ!」
ガッツ「クワッカッカ~、お次はこれだぁ!」
宙マンの動きが鈍った隙を逃さず、ガッツお得意のメガトン頭突き!
さしものヒーローも、これにはたまらず吹っ飛ばされてしまう。
宙マン「(苦悶)ぐ……う、ううむっ……!」
ガッツ「最期だ宙マン、俺のこの爪でミンチにしてやる!」
爪を振りかざして、宙マンにのしかかってくるガッツ。
だが、宙マンもさるもの……
地面を転がり、もみ合いながら形勢逆転し、逆にガッツ星人を高々と持ち上げる。
宙マン「そりゃっ! 宙マン・リフターだ!」
パワー全開の投げ技で、ガッツを投げ飛ばす!
山の斜面を転がり落ちて、星人が大ダメージを受けたところへ――
宙マン「受けてみろ、とどめだ!
宙マン・フラッシュボンバー!!」
シ ュ ッ パ ァ ァ ー ン ッ !!
右手に集中させた闘気を、裏拳とともに勢いよく解き放ち……
赤いエネルギー弾として、敵めがけて叩きこむ荒技。
フラッシュボンバーの一撃が、ガッツに大炸裂!!
ガッツ「……こ、こんなはずじゃなかったのに~!」
やったぞ宙マン、大勝利!
イフ「うぐぐぐぐ……おのれ宙マン、またワシの顔に泥を塗りおって!
だが、怪獣軍団のある限り、お前に決して安息の時はないのだぞ。
もっと強く、もっと怖ろしい怪獣で、次こそは必ず……!」
……などと言う、毎度毎度の負け惜しみはさて置いて。
かくして宙マンの活躍により、分身宇宙人ガッツは撃退され……
その後、星人が仕掛けた発火装置も機能停止されて、千歳の山における
近隣住民の不安は完全に取り除かれたのであった。
みくるん「宙マンさん、本当にありがとうございましたぁ!」
ながもん「これで、千歳の山も……やれやれな、感じ」
宙マン「(頷き)こんなにも美しくて、生命がみなぎる場所だからこそ……
みんなで気を付けあって、これからも守り続けていかなくっちゃね」
ピグモン「はうはう~、とってもきれいなの~♪」
宙マン「はっはっはっ、さぁ、帰って落合さんお手製のおやつを頂こうじゃないか!」
みくるん「はいっ♪」
戸締り用心、火の用心……
それからついでに、悪い怪獣にもご用心。
何かあったら、ほんわか町の宙マンまでご一報を!