北海道の2月、季節は真冬……
となると、外はもう一面の銀世界。
美しくもあり、厄介でもあり。
そんな雪に囲まれながら、2024年と言う年を迎えても
と、言うわけで。
今回もまた、雪化粧の「宙マンハウス」から物語を始めよう。
みくるん「皆さん、どうもこんにちはですぅ~!」
ながもん「(ボソッと)……ども」
元気で明るい声とともに、「宙マンハウス」に顔を出したのは
宙マンたちの最も仲の良いご近所さんにしてお馴染みの顔、
みくるん&ながもんのコロポックル姉妹である。
落合さん「あらまぁ、これはご丁寧に……
みくるん様にながもん様、ようこそおいで下さいました!」
ビーコン「ヒヒヒ、お二人ともようこそっス~。
世は全てこともなし、実に「おめ」でたいっスね~☆」
みくるん「はいっ、おかげさまで~。
……あの、ビーコンさん、その区切り方は一体……?」
ながもん「(静かに首を振り)……気に、したら……負け」
みくるん「えぇっと……(汗)」
みくるん「(ハッと気を取り直して)……あ、そうだ、そうでした!
これ、つまらないものですけど……」
落合さん「あらステキ……まぁまぁ、立派な鮭一尾ですこと!」
みくるん「よく行く魚市場で、すっごく安かったんですよぉ」
ながもん「きっと、みんなにも……喜んで、もらえると……思って」
ビーコン「やー、有難いっスねぇ、いいツボ突いてくれるっス!」
落合さん「みくるん様、ながもん様、お心遣い感謝致しますわね。
お殿様も、きっと同様に申されることと思いますわ」
ビーコン「つーか、こんな時にアニキがいねーってのは、ねぇ?」
みくるん「あれっ、宙マンさん、どこかへお出かけなんですかぁ?」
落合さん「(にっこり)いつもの日課のお散歩ですわ」
落合さん「すぐに戻られると思いますので、それまでの間……
どうぞ家の中で、暖まっていって下さいませ」
みくるん「はいっ、お邪魔しますぅ!」
ながもん「お言葉に……甘えて」
寒い中でも、ほのぼのと営まれる平和そのものの日常。
だが、そんな表向きの穏やかさの裏側に隠れて……
怪獣軍団の悪の野望は、今日も着々と進行中なのであった。
ここは千歳市街地を離れた、郊外の雪山。
深い雪に覆われたこの光景の中で、「異変」は起こった!
「テュカカカカカ……!!」
空間を跳躍し、雪山に忽然と姿を現した異形の巨体は……
「奇怪宇宙人」の異名をとる宇宙の切り裂き魔・ツルク星人。
もはや両手に剣を持つことさえもどかしくなり、外科手術によって
両腕に鋭利な刃を移植してしまった、手に負えない凶状持ちである。
ツルク星人「テュククク、そして勿論、俺もまた……
暗黒星雲の支配者、偉大なる怪獣魔王様の配下ってわけさ」
イフ「うむっ、まずはご苦労、ツルク星人!
地球へ到着したばかりのところ、悪いが……」
ツルク星人「テュクククッ、皆まで仰いますな、魔王様。
さっそくひと仕事、始めさせてもらいましょう!」
イフ「おおっ、張り切っておるな、素晴らしいぞツルク星人!
そのヤル気と言うパワーがあれば、今度こそワシらの悲願……
地球征服の前線基地建設も、現実のものとなろう!」
イフ「地球全域を無差別攻撃し、一気に勝負を決める……
前線基地さえ完成すれば、いつもたやすいことだ。
……頼むぞ、全てはお前の働きにかかっておる!」
ツルク星人「テュククク~、お任せ下さい、魔王様!」
ツルク星人「資材搬入用の下準備、見事なしとげてみせましょう。
この“星魔剣”で、原生林を片っ端から伐採しまくり……」
「おおっと、それは困るねぇ!?」
ツルク星人「(驚き)ムムッ、何者だ!?」
ツルク星人が驚いて、自分の足元を見下ろすと……
そこにいたのは勿論、お馴染みの宙マン・その人であった。
ツルク星人「げげげっ、お前は宙マン!?」
宙マン「散歩の途中、嫌な予感がしたんで来てみたら……
案の定、今日も怪獣軍団の悪企みか!」
宙マン「北海道の原生林は、かけがえのない地球の宝物だよ。
前進基地だか、全身麻酔だか知らないが……
伐採なんて乱暴な真似は、知事ならずとも認められないね!」
ツルク星人「チュカーっ、うるさい、うるさいっ!」
ツルク星人「邪魔をするなら、お前から先に始末するまでだ!」
宙マン「おおっと、危ない、危ない!」
地響きをたて、猛然と突き進んでくるツルク星人!
宙マン「(頷き)よかろう、やるならとことんだ!
宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、荒れ狂うツルク星人の前へ舞い降りる!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
ツルク星人、平和な山での乱暴狼藉は許さないぞ!」
ズ、ズーンっ!!
ツルク星人「テュカカカ、よほど俺に斬られたいようだなぁ!?」
宙マン「いやいや、悪い冗談にも程があるってものさ!」
ファイティングポーズを取り、ウーに対し敢然と身構える宙マン――
さぁ、今日もまたまた、世紀のスーパーバトル開幕だ!
ツルク星人「冗談かどうか、その身で直に確かめてみな!」
宙マン「さぁ来いっ、この切り裂き魔め!」
激突、宙マン対ツルク星人!
凍てつく雪山を舞台に、巨大な正邪の死闘が展開される。
両手の刃を縦横に奮い、嵐の激しさで襲い来るツルク星人!
宙マンもまた、怯むことなく果敢に渡り合っていく……が。
宙マン「ううむっ、この二段攻撃は相変わらず厄介だな!」
ツルク星人「当たり前だ、こっちもしっかり鍛えて来てるンだぜ!」
更にその凄まじさを増した、ツルク剣技の冴え渡り!
連続攻撃の苛烈さに、反撃の好機を見いだせずに焦燥の色が濃い
宙マンの中に生じた、一瞬の隙を見逃すことなく……!
ツルク星人「隙あり、宙マン! きえぇぇぇーいッ!!」
ズバシュうぅぅっ!
振り下ろされた刃が、宙マンのプロテクターをも切り裂いた!
これにはたまらず、ドドーッと勢いよく倒れ伏したヒーロー。
スライ「んー、ふふふ……お見事!」
ヴィラニアス「あれからまた腕を上げやがったぜ、アイツ!」
ジャタール「魔王様、これは今度こそ……いけるのでは!?」
イフ「(頷く)うむっ、そうだとも、そうでなくてはならん!
さぁツルク星人よ、今こそ宙マンにとどめを刺すのだ!」
宙マン「(苦悶)うう……うっ……!」
ツルク星人「さぁ、覚悟しな――なます切りにしてやるぜ、宙マン!」
「なんの……宙マン・プロテクション!」
とっさの判断でこそ、発揮されるのがヒーローの真価……
防御壁発動で、ツルク星人の刃を受け止めた宙マンである。
ツルク星人「ぐぬぬっ……つまんない小細工しやがって!」
宙マン「行くぞ、ツルク星人!」
ツルク星人「な、何ぃっ!?
空中ジャンプし、ツルク星人めがけて急降下していく宙マン。
激しいきりもみ回転とともに、繰り出すその技の名は!
「エイヤぁぁぁーっ!
宙マン・回転フルキック!!」
高速回転の勢いを加え、両足で蹴り込む正義のキック!
鋭い足先を食らって、ツルク星人がブッ倒れたところへ――
宙マン「とどめだ!
宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、ツルク星人を直撃!!
ツルク星人「だハぁぁっ、今度こそはイケると思ったのにぃ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
イフ「ぐぬぬぬ……おのれおのれ、おのれぇぇっ!
宙マン、やはりお前こそはワシらにとって最大の敵……
今に見ておれ、この仕返しは必ずしてやるぞ……!」
……などと言う、いつもの負け惜しみはさて置いて。
我らが宙マンの活躍によって、兇悪無比のツルク星人は撃退され
千歳の山には、再び元の静謐さが戻ったのであった。
そして、場面は変わって……
再び、千歳市ほんわか町5丁目の「宙マンハウス」。
宙マン「ふぅ~、みんな、ただいまぁ~」
ピグモン「あ、宙マンが帰ってきたの!」
みくるん「わぁっ、お帰りなさいですぅ、宙マンさん――
お帰りが遅かったみたいですけど、お散歩中に何かありましたぁ?」
ながもん「もしや、またまた……事件とか」
宙マン「やぁやぁ、みくるんちゃんにながもんちゃん、こんにちは。……
……なぁに、何て事はないよ、ちょっとした野暮用さ!」
ビーコン「ヒヒヒ、とかなんとか言って……
どっか、カワイコちゃんのいっぱいいるお店に寄り道とかして
よろしくやってたり、しちゃってたり、ねぇ!?」
落合さん「(呆れ)……ビーコンさんじゃあるまいし!」
宙マン「はっはっはっ、考えすぎ、考えすぎ。……
こんなに散歩を長引かせるつもりじゃなかったんだけど……
なんだかんだ帰りが遅れて、すっかり体が冷えちゃったかな」
落合さん「あらまぁ、それはいけませんわね……。
少々お待ちを、直ぐに体の暖まるお料理を用意致しますので!」
落合さん「ちょうど、頂きものの良い鮭がございますので……
今日のお昼は、ちゃんちゃん焼きなどいかがでしょう?」
宙マン「おおっ、いいねぇ、言う事なしだよ!」
宙マン「落合さんのことだ、多めに作ってくれるはずだから……
よければ、みくるんちゃんたちもお土産に持って帰っておくれ」
みくるん「わぁっ、いいんですかぁ?」
ながもん「それは、嬉しい……かなり、本気で」
ピグモン「美味しいものは、みんなで食べるのがいちばんなの~♪」
宙マン「はっはっはっはっ……ああ、そうとも、そうだとも!」
いつも仲良く、和気藹々……
ほっこり楽しい、宙マンファミリーの日常。
次回もどうぞ、お付き合いの程を!