早くも夏本番を思わせる気温と、太陽の照りつけ……
が、それさえ除けば、実に穏やかな時間がゆったりと流れている
ここ、北海道千歳市のほんわか町5丁目。
その一角、お馴染み「宙マンハウス」の庭先では、これまたお馴染み
メイドの落合さんが、好きな歌なんぞをリズミカルに口ずさみながら
今日の洗濯物を物干し竿に干しているところであった。
落合さん「♪私のラバさん お風呂屋の娘
番台ちょいと見上げりゃ ホッペタを染める~~♪♪」
ビーコン「うぃ~っス、やってるっスね、落合さん!」
落合さん「そういうビーコンさんは、相変わらずお暇そうですわねっ。
どうせ一日中ぶらぶらなさってるんでしたら……
少しは私の仕事を、手伝おうって気になりません?」
ビーコン「チチチ、オイラはオイラで忙しいんスよ!」
落合さん「な~にがですの、三杯めにグッと出す居候が!」
ビーコン「オイラの為すべきは、愛と言う名の心のシゴト……
さぁ、落合さん、もそっとこっちへっス!
可愛がってあげるっスよ、もちろんエロい意味で♪」
落合さん「ちょ、どこ触ろうとしてますの!?(汗)」
落合さん「って言うか何です、この妙なイメージ画像はっ!」
ビーコン「ヒヒヒ、落合さん、観念して素直になるっスよ~☆」
落合さん「っがー、いい加減にしなさーいっ!!」
ピグモン「あー、落合さんとビーコンちゃん、またやってるの~」
ピグモン「二人とも、ほんとに息が合って仲良しさんなの~」
宙マン「あぁ、日常の微笑ましい一ページだねぇ」
落合さん「……ちょ、そんな風にまとめないで下さいまし!(涙目)」
と、いつも通りに賑やかな宙マンハウス。
だが、賢明なる読者諸氏は既にお気づきのことであろう。
こういう日常が営まれているときに限って、『宙マン』ワールドでは
々にしてロクでもない事件が起きる、ということを――
そして残念ながら、今回もその例外ではなかったのである!
ゴ ウ ン ッ !
落合さん「!!(ハッと空を見上げる)」
ビーコン「(冷や汗)な……なんスか、今の!?」
ズゴゴゴグワーンっ!
耳をつんざく大音響とともに、上空から飛来し……
千歳市内の地面に激突して大爆発を起こす赤い球体。
濛々と吹き上がる、赤い噴煙の中から立ち上がったのは!?
「ダギゴギィィ~ッ!!」
ピグモン「はわわ、怪獣なの!」
ビーコン「いい加減、いろいろ見慣れてきたっスけど……」
落合さん「今日の怪獣さんは、また一段とグロテスクですわねぇ!」
岩を吹き飛ばしつつ、立ち上がった巨体……
ふたつの頭に四本の腕、ぬめぬめと不気味な光沢を放つ皮膚。
銀河の「なぞの星」で生まれ育った、宇宙怪獣ダギゴンだ!
ダギゴン「ダギゴギぃ~、イカにもタコにも……
……って言っても、俺ァイカでも、タコでもねぇ。
宇宙の荒くれ者、泣く子も黙るダギゴン様よ!」
落合さん「えぇ、えぇ、それは見れば判りますっ!(汗)」
ビーコン「でもって、今回もまたまた……」
落合さん「ろくでもないコトをなさろう、って魂胆なのでしょう!?」
ダギゴン「ダギゴギぃ~、そういうわけなんで、ヨロシクぅ!」
落合さん「あーもう、ホント、勘弁して下さいまし!(げんなり)」
スライ「んー、ふふふ……ご覧下さい、あの雄姿!
我々は、これまで幾多の使者を送りこんできましたが……
あのダギゴン君こそ、まさにその決定版でございますよ!」
イフ「うむっ、その言葉、実に説得力を感じるぞ!」
イフ「さぁ、遠慮はいらんぞダギゴン、思い切りやれィ!
地球征服の手始めに、まずは千歳市を破壊するのだ!」
ダギゴン「ダギゴギィ~っ、待ってましたぜ!
魔王様、全てこのダギゴンめにお任せを!」
怪獣魔王の命を受け、進撃開始するダギゴン!
迫る巨体を前にして、人々はただ逃げ惑うより他に術がない。
落合さん「ああ、もうっ、結局こうなっちゃうんですのねぇ!」
ビーコン「こればっかりは、ホントいつまでも慣れないっス~!(汗)」
ピグモン「はわわわ、タイヘンなことになっちゃったの~」
おお、何ということであろう――
宇宙怪獣ダギゴンの出現で、千歳市が洒落にならない大ピンチ!
怪獣軍団の暴虐、もはや断じて許すまじ。
千歳の平和を守るべく、航空防衛隊が直ちに出撃した。
ビーコン「おおっ、航空防衛隊のお歴々っスよ!」
落合さん「あぁ、来て下さるとやっぱり嬉しいものですわねぇ!」
ピグモン「はうはう~、おじさんたち、しっかりなの~!」
「ようし……全機、怪獣への攻撃開始っ!」
激しいアタックをかける、防衛隊の戦闘機!
持てる火力の全てが、怒濤のごとく怪獣へ叩きこまれるが
ダギゴンの巨体はびくともしない。
ダギゴン「ダギゴギィ~、攻撃ってのはこういうのを言うんだよっ!」
「……ど、どわぁぁぁ~っ!?」
ダギゴンの口から、勢いよく吐き出される分子光線!
その一閃により、戦闘機隊は次々に撃墜されていく。
落合さん「あぁもうっ、毎度のこととは言いながら……」
ビーコン「こいつァ色々、シャレになんない事態っス~!」
ピグモン「はわわわ……宙マン、宙マン、何とかしてなの~」
宙マン「(頷き)おのれ、もう許さんぞ!
宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、ダギゴンの前へと舞い降りる!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
宇宙怪獣ダギゴン、正義の力で打ち砕いてやる!」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「うホッ、アニキはやっぱ頼もしいっスねぇ!」
落合さん「当然ですわ、私たちのお殿様ですもの!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
ダギゴン「ダギゴギぃぃ~っ……宙マン、出てきやがったな!
今は格好つけてても、直ぐに泣きっ面の赤っ恥だぜ!」
宙マン「なんの、お前たちの思い通りにはいかん!」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
さぁ、今日も世紀のビッグファイト開幕だ!
ダギゴン「ダギゴギギ~っ、捻り潰してやる!」
宙マン「さぁ、来るがいい、ダギゴン!」
激突、宙マン対ダギゴン!
落合さんたちの見守る中、ふたつの巨体が真っ向から衝突し
凄まじい戦いの火花を散らす。
左右二対・四本の腕と双頭で、激しく迫るダギゴン!
獰猛そのもののアタックは、百戦錬磨の我らが宙マンと言えども
決して油断の出来ない痛烈打撃である。
宙マン「なかなかやるな……だが、負けないぞ!」
おお、だがしかし……
相手が手強いほどに、宙マンの闘魂も熱く燃え上がるのが常。
水平空手チョップを、ダギゴンの胸板に炸裂させた!
ダギゴン「ぐふぅぅっ……ダギゴギギっ!」
宙マン「どうだね、降参するなら今のうちだぞ!?」
ダギゴン「ダギゴギ~っ……舐めんな、宙マン!」
怒りとともに迸る、分子光線の一閃!
宙マンの周囲に、凄まじい衝撃と爆発が同時に生じる。
ズガーン! グワーンっ!
「う、うわぁぁぁぁ……っ!!」
落合さん「(蒼白になり)お、お殿様っ!?」
ビーコン「どひ~っ、やべーっスよ、こいつァ!
誰がどっからどう見ても、文句なしにアニキのピンチっス!」
ピグモン「はわわわ……宙マン、まけないでなの~!」
イフ「わははは! そうだ、その調子だダギゴン!
お前の威力に物を言わせ、宙マンなど叩き潰してしまえ!」
宙マン「(苦悶)うう……うっ……!」
ダギゴン「うおおおお~っ! 死ねや、宙マン!」
「なんの……負けて、たまる、かぁぁっ!」
宙マン、パワー全開!
ダギゴンの分子光線を、ひらりとかわして宙に舞い……
スパークとともに、虹色の残像を描きながらの超速回転!
ダギゴン「(驚愕)……な、何ですとぉぉっ!?」
宙マン「行くぞ、ダギゴン!」
「エイヤァァーっ!
宙マン・レインボーキック!!」
全身のエネルギーを瞬時に増幅させ、両足で蹴りこむ大技……
虹色の一撃、レインボーキックがダギゴンめがけて炸裂!
ダギゴン「おぉ……オーバー・ザ・レインボぉぉ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
ビーコン「いえっふ~、やったっスね、アニキ!」
ピグモン「これでまた、安心してゆったりできるの~」
落合さん「お殿様……どうもお疲れ様でした!」
イフ「ぐがががっ……またか、またしても宙マンめにしてやられたか!
もう一歩、あと少しでワシら怪獣軍団の勝利だったものを!」
……などと言う、毎度毎度の負け惜しみはさて置いて。
かくして、我らが宙マンの活躍によって……
宇宙怪獣ダギゴンは打倒され、街に平和が蘇ったのであった。
宙マン「やぁやぁ……みんな、お待たせっ!」
宙マン「こっちの用事も片付いたことだし、改めて……
のんびり、午後の予定を決めようじゃないか」
落合さん「ええ、異議なしですわ、お殿様!」
ピグモン「はうはう~、ピグちゃん何かおやつがが食べたいの~。
ケーキとか、パフェとかぁ……」
ビーコン「チチチ、それもいいんスけどね……
ここは一発、アカデミックに本屋行くっスよ、本屋!」
落合さん「はぁ、アカデミック!
意外ですわねぇ、ビーコンさんの口からそんなお言葉……」
ビーコン「ヒヒヒ、アカデミックっス、オイラもうとことん行くっスよ~!
成人向けコーナーで、女体の神秘に関する研究から……」
げ し っ !
落合さん「ねーいっ、何を言い出すかと思ったらっ!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、6月の太陽が眩しすぎるっスぅぅ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
みんなの笑顔と、日々の平穏無事のため……
これからもますます張り切って激ファイト!
次回の宙マンにも、どうぞご期待あれ!