自信をもって臨んだ自らの戦略を、ことごとく宙マンに叩き潰され……
恨み骨髄、怒り心頭に発した怪獣軍団の幹部候補生、バルタン星人Jr。
その最大の戦力は、恐るべき「爆撃獣」グロイザーEXE(エグゼ)。
容赦ない空爆に晒され、クリスマスに浮かれる千歳市民の平和が脅かされた時
これ以上の暴虐は許さじと、我らがヒーロー・宙マンが立ち上がった!
だが……グロイザーEXEは強い、圧倒的なまでに強い!
その威力の前に、さしもの宙マンも絶体絶命のピンチに追い込まれてしまう。
ああ、宙マン風前の灯!
……かと、思われたとき。
疾風の速さで戦場へと駆けつけ、宙マンのピンチを颯爽と救った
ひとつの白い影があった!
宙マン「(目を見張り)おおっ。……あれは!」
ながもん「(ボソッと)……スカイエース……」
ビーコン「(面食らって)スカイ……な、なんスか?」
みくるん「知ってるの、ながもん!?」
ながもん「(頷き)スカイエース。……ジャッカー電撃隊の、空の要塞……!」
5人のサイボーグ戦士により編成された、国際科学特捜隊の最精鋭部隊。
かつて巨大犯罪シンジケート「クライム」を死闘の末に壊滅させ、また近年では
かの“レジェンド大戦”における活躍ぶりも記憶に新しい歴戦の勇者たち――
そんな彼らのことを、人は「ジャッカー電撃隊」と呼ぶ。
そしてこれが、彼らジャッカーの誇る大型戦闘機・スカイエース。
我らが宙マンを救うべく、いま千歳の空へと駆けつけてきたのだ!
バルタン星人Jr「ジャッカー電撃隊……
……き、貴様たちが、噂の!?」
スペードエース「大丈夫か!?」
ビッグワン「しっかりするんだ、宙マン!」
宙マン「来てくれたのか、ジャッカー!」
ビッグワン「よく聞いてくれ、宙マン!
爆撃獣を倒すには、ジャッカーと宙マンの共同戦線が必要だ――」
ビッグワン「我々の攻撃を一箇所に集中して、奴の装甲をぶち破るんだ!」
宙マン「ようし、判った!」
気力を振り絞り、再び大空へと舞い上がる宙マン。
ジャッカー電撃隊・スカイエースとの強力タッグを組んで、グロイザーEXEに対し
果敢に決戦を挑んでいく!
バルタン星人Jr「……なめるな!
どれだけ雑魚が群れを成そうと、爆撃獣の敵じゃないっ!」
宙マン「爆撃獣グロイザーEXE。これ以上お前の好きにはさせん!」
バルタン星人Jr「ほざくな、これでもくらえ!」
宙マン「なんの!」
見よ、この華麗なる防御技!
空間を湾曲させて形成するプロテクションにより、グロイザーのタキオン光線は
完全に受け止められ、無力化されている。
ビッグワン「ようし、今がチャンスだ!」
スペードエース「(頷き)エースロケッター、発射!」
幾多の敵戦闘機を撃ち落としてきた、スカイエースの強力武装……
“エースロケッター”が勢いよく火を噴いて、グロイザーの顔面を直撃する。
バルタン星人Jr「な、なんだそれしき、それくらい……!」
宙マン「いいや、まだまだ――お次はこれだっ!」
宙マン「エイヤァァーっ!
宙マン・ミラクル・キック!!」
出た、電光石火の必殺キック!
エースロケッターの直撃を受けた箇所めがけて、寸分たがわず蹴りが叩きこまれて
堅牢なグロイザーの装甲をついにぶち破り、内部メカにダメージを与える。
バルタン星人Jr「ど、どわぁぁぁぁっ!?」
二大ヒーローの見事な連携、怒涛のような連続攻撃!
その威力をまともに食らって、機体のあちこちから火花を吹きはじめる爆撃獣。
バルタン星人Jr「み……認めん、認めん、認めないぞっ!
僕の頭脳と技術、そして執念の結晶……」
バルタン星人Jr「この爆撃獣グロイザーEXEが、こんなことで……!」
グロイザーEXE機内、バルタン星人Jrの混乱をよそに……
爆撃獣にとどめを刺すべく、雄叫びとともに突撃していく宙マン。
その全身が、体内から溢れ出すエネルギーによってみるみる赤く染まっていく!
バルタン星人Jr「おおおお……こ、これはーッ!?」
「トゥリャァァーッ!
宙マン・エネルギッシュ・ボンバー!!」
出た! 宙マンの肉弾戦法、エネルギッシュ・ボンバー!
真紅のエネルギーで全身を包んで、自らを巨大な光の弾丸と化し……
グロイザーEXEの装甲ダメージへ突っ込み、一気に機体を貫通してしまう。
「こっ、こんな……こんな事がぁぁ~っ!?」
見事に決まったとどめの一撃――
炎に包まれ墜落し、グロイザーEXEは大爆炎とともに砕け散っていく。
スペードエース「おおっ、やった!」
ビッグワン「(頷き)見事だ。……素晴らしいフィニッシュだったぞ、宙マン!」
ピグモン「はうはう~! やったのやったの、宙マンの勝ちなの~!」
落合さん「素晴らしいですわ、それでこそお殿様です!」
ビーコン「電撃隊の皆さんも、どうもありがとやんした~!」
みくるん「(瞳を潤ませ)よかった。……ホントに、ホントによかったですぅ!」
バルタン星人Jr「ひょ、ひょえぇぇぇ~っ!
宙マンもジャッカーも……どいつもこいつも、覚えてろ~っ!!」
やったぞ宙マン、大勝利!
イフ「おのれ! よくもワシらのとっておき、爆撃獣をよくも!
だが見ておれ、怪獣軍団の真の恐怖を知るのはこれからだ。
よいか、この次こそ必ずお前に一泡吹かせてやるぞ、宙マン……!」
……などと言う、怪獣魔王の相変らずな負け惜しみはさて置いて。
かくして二大ヒーローの共同戦線によって、バルタン星人Jrの猛攻は
爆撃獣・グロイザーEXEもろとも砕け散ったのであった。
ビッグワン「お疲れ様、宙マン。相変わらず見事な活躍ぶりだったな」
宙マン「ジャッカー電撃隊、君たちが加勢してくれたおかげだよ。
それにしても、どうしてジャッカーがここに……?」
スペードエース「我々は密かに、ここ数か月の未確認飛行物体……
その頻繁な飛来に伴う日本領海内での不穏な動きを察知して、調査を続けていたんだ。
偶然とは言え、その過程で爆撃獣の千歳襲撃の情報をキャッチし……」
ビッグワン「こうして、君のもとへとはせ参じたってわけさ。宙マン」
宙マン「そうだったのか……有難う。
しかし、未確認飛行物体が頻繁に……ねぇ。
もしかして、またクライムの残党が今になって蜂起を……?」
ビッグワン「クライムだけ、というわけでもなさそうなんだ。
君も薄々は勘付いているだろう、宙マン――
様々な悪の勢力が、それぞれに様々な思惑をもって暗躍を続け
その動きが近年、にわかに活発化していると言うことを」
スペードエース「君も何かと気を付けてくれ、宙マン」
宙マン「や、御忠告ありがとう、肝に銘じるよ。
でも私はあくまで現役引退の身の上だし――」
スペードエース「(苦笑)いや、それにしては――
君も少々、派手にやり過ぎたかもしれないな」
ビッグワン「怪獣軍団に異次元人ヤプール、ロード・ゼッド……
そして、それ以外の悪の勢力も、君を狙って動き出す可能性が大いにあるってことだ」
宙マン「う~ん、参ったなぁ。
私はただ、のんびり気楽な隠居暮らしを決め込みたいだけなんだが……(汗)」
ビーコン「あ、いたいた……お~い、アニキ~っ!」
落合さん「そろそろ参りましょう、お殿様。今夜はクリスマスパーティですわよ!」
ピグモン「宙マン、早く早くなの~!」
宙マン「おお、みんな……」
ビッグワン「それじゃ、我々はここでおいとまするとしよう」
ビッグワン「また何か新しい動きがあった際には、追って君にも連絡させてもらう」
スペードエース「そしてまた、君の力を借りることになるかもしれないが……」
宙マン「ああ、任せてくれ、そのつもりだ!
……あ、だけど、土日とランチライムは出来れば避けてもらえると……」
ビッグワン「ははははっ、君らしいな――ああ、善処しよう!」
ひとつの戦いを終え、宙マンファミリーに別れを告げて……
電撃隊は再びスカイエースに乗り、本来の任務へと飛びたっていった。
宙マン「ありがとう……ジャッカー電撃隊!」
クリスマスの街に、再び平和が訪れた。
だが。今回かなり手痛い目にあったとは言え、暗黒星雲に本拠を置く
怪獣軍団の怪獣魔王・イフは、未だ地球を諦めたわけではないし……
我々の目には見えない異次元空間には、ヤプールの怨念が渦を巻き
土星の衛星エンケラドゥスには、悪の帝王ロード・ゼッドの居城もある。
本人的には楽隠居のつもりとは言え、千歳在住・宙マンの前途は
現役引退後もなかなかに多難である、と言えた――
が、ひとまずそれはそれとして!
クリスマス用の美しいイルミネーションが夜の街を彩る中で、宙マンたちによる
身内のクリスマス・パーティが今年も催されていた。
夜空を華麗にデコレートする、イルミネーションの輝き。
「宙マンハウス」を彩る光に誘われて、親しい仲間たちの顔が
今年もまた続々と集まってきた。
素敵なプレゼント、テーブル一杯のご馳走からの芳香……
そして何より、気のおけない仲間たちの笑顔。
明るく、騒がしく、賑々しく……そして、思いっきり楽しく。
2021年の聖夜は、今年も「とびっきり」であった。
そう――あの場所、この場所、今宵は聖夜。
「今」を生きる誰もが等しく、幸福と優しさで包まれますように!
メリー・クリスマス!