日本全国津々浦々、のんびりまったりのお正月……
だが、そんな中であっても、よせばいいのにワルはやって来る。
宇宙を走り、次元を裂いて、次々に現れる怪獣・怪人・宇宙人。
その猛威に立ち向かい、平和を守り抜くことが出来るのは……
プラネット星からやって来た彼をおいて他にはいない!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
悪の手先め、もうお前の好きにはさせんぞ!」
ズ、ズーンっ!!
正義のヒーロー、新年もまた颯爽の巨大化。
迎え撃つ敵は……悪の帝王ロード・ゼッドの魔力によって生み出された
獣面の異形、キングスフィンクスだ!
キングスフィンクス「グェルルル、新年あけましておめでとう……
そして同時に、お前にとって最大の厄年になるんだ、宙マン!」
キングスフィンクス「何故ならば、お前はこのキングスフィンクスの手で……」
宙マン「(その言葉を遮って)おおっと、悪いがそこまでにしてもらおうか――
せっかく年明けの三が日らしく、気持ちのいいほろ良い気分でいるんだ。
悪党のたわごとなんかに付き合っている暇はないね!」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
さぁ、今日もまた世紀のスーパーバトル開幕だ。
ロード・ゼッド「ぐぁぼははは……大口を叩きおってからに!」
ロード・ゼッド「めでたい新年の景気づけだ――
キングスフィンクスよ、思い切り暴れて宙マンを倒せ!
そして彼奴めの首を、年賀の供物として我輩に捧げるのだァ!」
キングスフィンクス「グェルル~っ、承知致しました、マイ・ロード!」
キングスフィンクス「グォオオオーッ、行くぞ宙マン!」
宙マン「どこからでも来るがいい!」
激突、宙マン対キングスフィンクス!
千歳の街を舞台に、今日も凄絶な巨大戦が展開される。
携えた魔法の杖を縦横に揮うキングスフィンクス!
叩きつけられる痛烈な打撃ををクロスガードで受け止めながら
宙マンも相手の隙を伺い、果敢に反撃へと打って出ていく。
ビーコン「おお~、やってる、やってるっスねぇ!」
落合さん「流石はお殿様、年始二日目も素晴らしいご活躍ですわ!」
……などと、半ば物美遊山気分で呑気に巨大バトルを見守るのは
毎度おなじみ、落合さん&ビーコンの極楽コンビ。
ビーコン「んー、物見遊山ってのはちょっと語弊があるっスけど……」
ビーコン「でも、この戦いもまた、アニキが勝つに決まってるっしょ?」
落合さん「えぇ、えぇ、そう言う安心感はございますわよねぇ!
これもまた、お殿様のご人徳の賜物と申しましょうか……」
ビーコン「にしても、落合さん。……
……毎度毎度こんな戦いを続けて、もう75回めなんスよねぇ」
落合さん「(頷き)年明けらしからぬ感慨かもしれませんが……
月日の過ぎ行くのは、本当に早いものですわねぇ」
ビーコン「そう! そこでなんスけどね、落合さん。
新年になってまた新しく、このシリーズを知ってくれた読者さんのために
この『宙マン』シリーズはどんな物語なのか、この場でもって
いっちょ、ご紹介しようじゃねぇか、と!」
落合さん「あらまぁ、えらく急なお話ですこと!」
ビーコン「ヒヒヒ、こう言うのは思いついた時が始め時っスよ。
と言うわけで、『飛び出せ!! 宙マン』のシリーズ紹介……
不肖このオイラ・ビーコンちゃんがご案内、ご案内~っと!」
落合さん「どうぞっ♪」
……と言うわけで、ここからはガイダンス・モード。
ビーコン「そもそもは、地球から遠く離れた大宇宙……
1972万光年の彼方に、プラネット星って惑星がありまして」
落合さん「はぁ、それからそれから?」
ビーコン「このプラネット星が生んだスーパーヒーロー。
それが「銀河連邦」の英雄、ご存じ宙マンのアニキっス!」
落合さん「いよっ! 待ってましたわ、千両役者っ!」
ビーコン「そしてそして、その宙マンの弟分にして……
常にアニキを好サポートする頼もしき相棒、それがオイラこと
電波怪獣・ビーコンちゃんってワケっスよ~♪」
落合さん「……ちょっ、俄かに雲行きが怪しくなってきましたわね!?」
ビーコン「宙マンのアニキの力さえも及ばない場所……
例えば辺境宇宙の彼方や異次元で、オイラってば大活躍。
こないだなんかも、暗黒宇宙魔女の城に乗りこんで……」
「ほほほほ、よく来ましたわね、勇者ビーコン!」
ビーコン「遂に出たっスね、銀河暗黒魔女・グレートオチアイ!」
「よくぞここまで来ましたね……でも、ここまでです。
我が偉大なる暗黒の力の前には、この宇宙の全てが……」
ビーコン「ねーいっ、受けてみるっス、ブレイブソードの一撃を!
必殺、ビーコン・ダイナミック!!」
「……ちょっ、さ、最後まで言わせて下さいよ~っ!!」
勇者の証・ブレイブソードが一閃して、銀河暗黒魔女を一撃で斬り倒す。
やったぞビーコン、大勝利!
ビーコン「かくして囚われのお姫様たちを救い出し……
一緒に元の惑星へ帰ろうとしたものの、っスね!」
落合さん「(呆れ)……はぁ、帰ろうとしたものの?」
ビーコン「助け出した彼女たちってば、オイラの美貌に一目ぼれ!
帰りたくないって泣くやら、すがりつくやらで……
……いやぁ、嬉しい悲鳴ってのはああいう時のを言うんスねぇ!」
落合さん「(もはやツッコむ気力も失せて)……はぁ。それはそれは」
ビーコン「快男児たるオイラの行く所、先々でロマンスの花が咲く。
……ってのが、このシリーズの概要なんスよ~。
い~っひっひっ、めでたし、めでたし!!」
落合さん「(ジト目)…………あのですね、ビーコンさん」
ビーコン「はいな?」
落合さん「ご自分で仰ってて、空しくなりません?」
ビーコン「(キッパリ)ヒヒヒ、ちっとも、ぜ~んぜんっ!
と言うわけでここからは“純愛港町編”の一幕を……」
落合さん「ねーいっ、もう結構です、お腹いっぱいですっ!
お殿様が、今もああして戦っておられると申しますのに……」
落合さん「これ以上ビーコンさんの与太話で、一記事あたりの容量限度を
無駄に費やされて堪るものですかっ!」
ビーコン「う~ん、オイラ的には大マジだったんスけどねぇ……」
落合さん「だったらなおひどいですッ」
そう、あんなビーコンの妄想語りの間にも……
宙マンとキングスフィンクスは真剣勝負の真っ最中だったと言うことを
いちおう念のため、読者諸賢にはお伝えしておかねばなるまい。
落合さん「あー、もはや貴方には任せておけませんっ!」
落合さん「こうなったら、私がやります――
この『飛び出せ!! 宙マン』とは、一体いかなるシリーズなのか
過不足なく、適切に、皆様にご紹介してご覧にいれますわ!」
ビーコン「……ど、どうぞ~? っス~」
……と言うわけで、仕切り直しのガイダンス・モード。
落合さん「そもそもは、地球から遠く離れた大宇宙……
1972万光年の彼方に、プラネット星という惑星がございまして」
ビーコン「ほぉ、それからそれから?」
落合さん「このプラネット星が生んだスーパーヒーロー。
それが「銀河連邦」の英雄、ご存じ宙マン様なのですわ!」
ビーコン「うんうん、ここまではまァ、妥当な流れっスねぇ」
落合さん「そして、そんな宙マン様を「お殿様」と呼んで慕い……
住み込みのメイドとして忠誠を尽くす、かよわくも健気な美少女。
それがこの私……不肖・落合なのでございます」
ビーコン「(ジト目)……美「少」女ぉ……?」
落合さん「ねーい、うるさいですっ!」
落合さん「家事一切を任され、熟練の手際で日々の仕事をこなしつつも……
私の胸の中にともった仄かな思慕は、淡く消え去るどころか
日に日に確かな「愛」の炎となって燃え盛る有様」
ビーコン「……へー、それでそれで?」
落合さん「あぁ落合、仕事に生きるか、恋に生きるか……。
そんな日常の中での、美人メイド・落合の細腕奮戦恋模様こそ
『宙マン』シリーズの大きな見せ場なのですわ!」
ビーコン「ほへ~、そ~りゃまた初耳っスねぇ!」
落合さん「だから、いちいち変な茶々を入れないで下さいなっ!」
落合さん「……こほん、気を取り直しまして。
そんな私と、お殿様が二人で出かけた夜の街……
美味しい釜めしが、二人の愛のキューピット役なのですわ」
ビーコン「………(もはやツッコむ事すら面倒くさい)」
ぶつ切りにされてたっぷり炊き込まれ、プリプリの食感と
心地よい歯ごたえがまず堪らないのは勿論……」
そんなタコから、ご飯全体に行き渡る旨味をしっかり受け止める
山菜の味わいの力強さがまた頼もしく、そんな釜めし全体の中で
さながら宝石のように美しく光り輝くイクラのかすかな塩味が
釜めしの旨味における絶妙のアクセントとなっているのも心憎く。
そしてやっぱり、締めのダシ茶漬けが最高!
落合さん「でも、そんな最高のダシ茶漬けを頂いたあとで……
お殿様ったら、私にそっと囁いて下さいますのよ」
「落合さん、締めには君の甘い唇を味わいたいな☆」
落合さん「……ですって!!
なーんちゃって、なんちゃって、あぁ私どうしましょう!?
ぐふ、ぐふふっ、ぐふふふふ……」
ビーコン「……ちょ?
おーい落合さん、落合さんってば、帰ってくるっスよ!」
落合さん「……はぁ、何ですのビーコンさん、邪魔しないで下さいまし!
人がせっかく、いい旅夢気分でいましたのに……」
ビーコン「それどこじゃないっスよ! アレ見るっス、アレ!」
落合さん「は……?」
そう。
極楽コンビが与太と妄想にうつつを抜かしていたその間に――
宙マン「とどめだ!
宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、キングスフィンクスを直撃!!
キングスフィンクス「ぎゃひ~んっ、こ、こりゃたまらぁぁ~んッ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
ロード・ゼッド「う、うがぉぉっ……おにょ~れッ、宙マン!!」
ロード・ゼッド「若造め、我輩のお屠蘇を不味くしてくれおって!
だが覚えておれ、今年がお前の命日であることに変わりはないのだ。
もっと強く、もっと怖ろしいモンスターで、今年こそ必ず……!」
配下のモンスターを倒され、怒りに燃えるはゼッド卿。
そして、それに負けず劣らず怒り狂っていた者が、ここに一人いた――
げ し っ !
落合さん「っがー、バカバカ、ビーコンさんのスカポンタンっ!
一番の見せ場を見逃しちゃったじゃないですのっ!!(泣き怒り)」
ビーコン「どひ~っ、落合さんもノリノリだったクセにぃぃ~」
そして、宙マンたちの本来の敵。
暗黒星雲に本拠を構える、怪獣軍団はと言えば……。
「ぐご~っ、すか~っ、ぴぃぃ~っ……」
「ぐぅ~、ぐぅ~、がごぉぉ~」
「むにゃむにゃ、もう呑めねぇって……うい~」
「ヒック、ういっぷ……
でへへ、もう一杯いっちゃおうかなぁ~?」
お正月なのをよいことに、怪獣軍団は隅から隅までお屠蘇気分。
そう。
勘のいい新規読者の貴方であれば、もうお気づきのことであろう。
こんな風に、呑気かつ無軌道に進む物語……
正にこれこそが、この『宙マン』シリーズそのものなのであった。
明るく、呑気に、マイペース。
そんな『宙マン』シリーズを……
今年も、どうぞよろしくお願いします!