遊びをせんとや生まれけり

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『ウルトラマンブレーザー』第9話、見ました!

1話読み切りのSF怪奇アンソロジーとして企画をスタートさせ、そこに「怪獣」出現と

その破壊絵巻と言うダイナミックなエンターテインメント要素が組み込まれることで

結果として海外のSFアンソロジー作品にはなかった「独自性」の獲得にも繋がったのが

ウルトラシリーズ全ての原点、1966年放映の『ウルトラQ』。

ウルトラヒーローの戦いや成長などを主眼に据え、各話毎の連続性を強める必要性や

それらと密接に連動した各種関連商品の販促ノルマ……の中では忘れられがちになる

『Q』的なるもの、1話完結編ならではのアイディアや余韻嫋々たる物語展開などを

決して「なかったこと」にさせまいとする現行シリーズ制作陣の意識と言うのは

それこそニュージェネ路線の中に時折点在する「不思議な余韻を残す単発話」からも

強く明確に感じることが出来……今朝の『ブレーザー』9話も、空想特撮シリーズたる

ウルトラシリーズだからこそ描ける物語そのものの面白さを、弦の音色とともに

不思議な余韻を残しつつ伝えてくれる「ウルトラらしい」一編となりました。

ウルトラアクションフィギュア ウルトラマンブレーザー

ウルトラアクションフィギュア ウルトラマンブレーザー

 

10年前のアンリが出会ったセミプロ演奏集団の正体は、60年前に宇宙から来た

「銀河のあちこちに同志をばらまき、呼び寄せ、奪いつくす」侵略種族……

そんな一団が地球人の姿を取り、「音楽」と出合う中で魅了されて行ったと言うのは

果たして蝉に似たその姿ゆえの本能的なものだったのか、自身でも音楽を奏でる中で

地球と地球人、音楽を純粋に愛する文化への愛着も確かに芽生えていたのではないか。

 

そして侵略兵器たるロボット怪獣・ガラモンを呼び寄せる「ラストコンサート」への

招待状をわざわざ10年後のアンリ、SKaRD隊員になった彼女のもとへ送ったのは

種族のしがらみと音楽への愛の中で身動きがとれなくなってしまっていた自分らを

「止めて」欲しかった気持ちがあったからではないのか。

 

……そんな繊細な思いを必要以上の台詞で語り過ぎずに「映像」によって見せ、

かつ「いつもと違う」雰囲気づくりの醸成に、今話の重要ゲスト出演者であり

雅楽師にしてミュージシャン、東儀秀樹氏の演奏による弦のドラマチックな響きを

最大限に活用することによって、説明台詞の連呼ではなく「映像」によって語る

「ウルトラらしい余韻」の研ぎ澄まされた一編に本話も成り得たと思います。

バンダイ(BANDAI) ウルトラマンブレーザー DXアースガロン

バンダイ(BANDAI) ウルトラマンブレーザー DXアースガロン

 

とは言え連続ストーリーの一編として挿入される本話が、映像詩的な雰囲気づくりや

余韻ある演出のみにかまけて、「本筋」の要素をおざなりにしていたかと言えば

全くそんなことはなくって……体内でのブレーザーとの「同化」が強まったかのように

不意うちのように奇矯な行動に走ったり、己の内面でブレーザーとの対話を試みるも

そもそも言葉が通じるかも怪しく、基本的な意思の疎通にさえも四苦八苦(笑)する

ゲント隊長の姿を通じて、今後のストーリー展開における期待以上の一抹の不安要素を

視聴者に投げかけてみたりするなど、これからの物語で重要な位置をしめるのであろう

新たな進展の要素をも、「SFアンソロジー的不思議な余韻」を重視した本話の流れを

途中でぶった切ったり、テンポを損なうことなく自然に提示。

 

そもそも今話において「宇宙人たちの変身したセミプロ楽団が、奏でる音楽によって

ガラモンを操る」と言う発想自体が、『ウルトラQ』第16話オマージュである以前に

今回のゲスト出演者たる東儀秀樹氏のユニット「TOGI+BAO」との連動を大前提に

彼らの演奏する楽曲と本編とを密接に連動させるタイアップでもあるわけで……

それら執筆オーダー時における数々の要請を的確に捌き、無理なく反映させながら

一本の見ごたえあるSF譚として紡ぎあげていく様は、かつてのアニメ脚本家集団

ぶらざあのっぽ」出身者の中から頭角を顕わし、各種のスポンザード要請などの

「縛り」の中で数々の名作をものしてきた故・植竹須美男氏ならではの流石の手際で

今更ながらに、その突然すぎるご逝去を心から惜しまずにはいられません。

ウルトラ怪獣シリーズ 201 ガラモン

ウルトラ怪獣シリーズ 201 ガラモン

 

で、そんな今回のゲスト怪獣たるガラモン!

「ガラモン」としては実に57年ぶりとなる復活であり、その感の顔出しはと言えば

圧倒的に(ガラモンのスーツ流用から生まれた)「ピグモン」の可愛いイメージの方が

人口に膾炙し、定着しきっていたものですから、「今」ガラモンを描くこと意義は、と

内心ひそかに不安であり、半信半疑でもあったのですが……

いざ蓋を開けてみれば、あのぴょんぴょん跳ね回る軽いステップのコミカルな挙動から

不意に攻撃的なアクションへと移行して襲い掛かって来る衝動的な「怖さ」だったり

鳴き声ではなく金属的な駆動音(?)を絶えず響かせながら動く不思議さに加えて

アースガロンの多目的レーザーを衝撃拡散で跳ね返し、直後のブレーザー戦をも含めて

格闘戦での直接打撃を物ともしない「硬さ」の表現、あるいは体当たりの一撃によって

アースガロンに著しい損傷を与える(アースガロン装甲が貫通され、操縦席ヤスノブの

すぐ目と鼻の先にまでガラモンの「棘」が迫ると言うロボットアニメ的演出!)など

ピグモンの可愛らしさとは明らかに異なる恐怖と強さが明確にアピールされており

正直、今話で改めてガラモンの魅力に気づかれた方も多いんじゃないでしょうか。

 

あとはアレですね、”操縦指令波を遮断されるたガラモンが、口から液体を吐き出して

機能停止する”と言う『Q』由来の描写に、その液体が自分の顔にかかってしまうのを

露骨に警戒し、嫌がるブレーザー(笑)と言う形で、シリーズ旧作へのリスペクトと

全く新しいウルトラヒーロー像の描写を自然に両立させていたのも魅力的でしたし……

何たって60年前に飛来した宇宙人たちの円盤が由緒正しい「あのデザイン」だったり

地球に降り立った宇宙人たちが、あの「透明な背広姿」だったのも嬉しかったですねぇ。

 

えぇ、もう今回、何たって狂喜乱舞させられたのは……

セミ人間の登場が完全なサプライズ・プレゼントだったってコトですよ(興奮)!!

TOGI(初回限定盤)

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またひとつ、『ウルトラ』史に残った心地よくも不思議な傷痕。

今はあの鮮烈な弦の音色とともに、その余韻を繰り返し、繰り返し反芻しつつ

また来週の『ブレーザー』を楽しみに待たせてもらいたいと思います。